在職証明書とは
「在職証明書」とは、その会社に現在就労している、あるいは過去に就労していたことの事実を証明する書類です。住宅入居の審査、保育園の入所申請、転職など、対象者の経済力や勤務の事実を相手方が確認したい場合に提出を求められます。在職証明書のほかに、「在籍証明書」「就労証明書」「就業証明書」「雇用証明書」「勤務証明書」など様々な呼び名があります。
在職証明書は、その企業の人事担当者が作成します。依頼があった場合、規則に従ってすみやかに書類を作成しましょう。在職証明書を発行する対象は、正社員、アルバイト・パートなど雇用形態に関わらず、すべての社員です。なお退職した元従業員から作成依頼があった場合、労働基準法第22条の規定により、退職日から2年間は対応することが義務付けられています。
◆在職証明書の作成を求められるシーン(一例)
- 従業員が保育園の入所申請をするとき
- 従業員が住宅ローンを組むとき
- 従業員が転職をするとき
- 従業員が引っ越しをするとき
在職証明書の作成方法
実際に依頼があった場合、どのように在職証明書を作成すればいいのでしょうか。
◆退職者から依頼があった場合
労働基準法第22条の定めにより、下記の事項のうち退職者が請求した事項を記述する必要があります。請求しない事項は記述してはならないので、注意が必要です。
- 使用期間
- 業務の種類
- 当該事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合、その理由も含む)
◆現在も働いている従業員から依頼された場合
在職している従業員の在職証明書は、記述項目や様式が法律で定められていません。したがって、依頼者から指定がある場合はそれに準じて作成し、指定がない場合は自社で作成したり、インターネット上で配布されているフォーマットを用いたりすればいいのです。
2018年10月1日、内閣府番号制度担当室が運営するオンラインサービス「ぴったりサービス」に、保育園入所申請用の「就労証明書作成コーナー」が設置されました。申し込み予定の保育園が所在する市町村を入力すると、その地域ごとの就労証明書(在職証明書)のフォーマットを調べることができます。
▼ぴったりサービス
https://app.oss.myna.go.jp/Application/wrkCert/search
▼就労証明書作成コーナーについて
https://www.cao.go.jp/bangouseido/pdf/shuroushoumei_intro.pdf
作成した在職証明書は、従業員に直接手渡すか、または郵送します。いずれの場合でも、いつまでにほしいのかを依頼主に聞いておきましょう。
在職証明書の作成における留意点
先に述べたとおり、在職証明書は記述項目や様式に明確な決まりがないため、人事担当者の判断で作成できます。しかし、提出先の求める事項が在職証明書に記述されていなかったり、または記述情報に誤りがあったりする場合は、再発行や電話確認などの対応を求められることがあります。そうした手間を省くため、以下のことに注意しましょう。
◆事前に使用目的と記述項目を聞く
たとえば、保育園の入所申請では勤務日数や就労時間の記述が必要だったり、賃貸契約の書類審査では月収や年収の記述が必要だったりするケースがあります。その項目が記述されていない場合、再発行を求められる可能性があるため、あらかじめ依頼主に使用目的と記述項目を確認しましょう。
◆事前に氏名や現住所を確認する
在職証明書には個人を特定する情報として、依頼主の氏名を記述する欄が設けられています。また選ぶフォーマットによっては、現住所を記述するケースも。在職中の従業員であれば、それらの情報を把握できているはずです。
一方、退職者の場合は、退職後に結婚して名字が変わっていたり、引っ越しをして現住所が変わっていたりすることもあります。依頼主から氏名や現住所の変更について申告があった場合は、新しい情報を記述しましょう。申告がない場合は、作成前に依頼主へ確認することをおすすめします。
◆作成に時間がかかる旨を伝える
在職証明書の作成時は、数多くの事項を確認しなくてはいけません。そのため、作成に時間を要する可能性があります。依頼主には、作成にかかるおよその所用期間を事前に伝えておくのがよいでしょう。日頃から社内の人事情報を調べやすいように管理したり、自社の在職証明書のフォーマットを作成しておいたりすると、以降の作業に役立ちます。
在職証明書を効率的に作成するための準備をしよう
在職証明書が必要になるシーンは限られますが、従業員数が多くなればそれだけ作成依頼の頻度も高くなります。他の人事業務と並行しながらスムーズに対応できるように、日頃から人事情報の管理やフォーマット作成など、業務効率化を意識して準備をしておきましょう。迅速でかつ正しく在職証明書を発行することは、会社への信頼度アップにもつながります。
※記事内で取り上げた法令は2020年3月時点のものです。
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:水上歩美
EDITING:Indeed Japan +ノオト