人事考課制度とは? 目的や運用のポイント

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従業員の業務に対する貢献度などを、賃金や役職などに反映する人事考課制度。その目的や、メリット、デメリットについて、人事コンサルティングに詳しい株式会社MillReef代表の榎本あつしさんにお聞きしました。人事評価制度との違いや、人事考課制度を運用する上でのポイントも紹介します。

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人事考課制度とは

人事考課制度とは、従業員の日頃の業務に対する貢献度などから客観的な指標を出し、従業員の評価・査定を行う制度です。これにより、給与や賞与などの賃金や役職などを決定します。昇給や昇格に関わる人事考課は年に1度、賞与に反映する人事考課は年2回行われる会社が多いようです。

人事評価制度との違い

人事考課は、賃金や役職についての査定という意味合いが強く、人事評価はそれらに加えて来期の目標設定や動機づけなど、より人材育成の意味合いを持つといわれています。そのため、人事評価の中に人事考課が含まれるという考え方があります。とはいえ、実際には明確に区別されておらず、同じ意味で使われるケースが多いようです。今回は、人事評価と人事考課が同じ意味で使われるケースを想定して説明します。

人事考課を設ける必要性と目的

人事考課制度を設ける大きな目的として、下記の5つが挙げられます。
 
1.従業員の適正な処遇を決める
社員が発揮した能力や成果を明確にし、それに応じた処遇の決定をする
 
2.人材育成
従業員が「求められている能力」と「現状」とのギャップを認識し、成長につなげる
 
3.動機づけ
会社側が、頑張っている人や成長している人を見逃さず、認めて評価することで、従業員のモチベーションを向上させ、動機づけにつなげる
 
4.方向性合わせられる
企業理念や会社としての目標を従業員に理解してもらい、その上で会社の業績につながる個人の目標を設定することで、組織が団結しやすくなる
 
5.組織の目標達成
1~4までが正しく機能することで、組織全体の目標達成に導く

人事考課の流れ

人事考課は導入後、次のような流れで行います。
 
1.企業基準を決める
自社の企業理念や企業戦略をもとに、評価項目や基準値を定めます。
 
2.目標設定を行う
企業や部署の目標と従業員の意向を鑑みながら、従業員本人が目標を設定します。
 
3.評価を行う
評価においては、上司と従業員(被評価者)が同じ評価項目について、上司からの評価と、本人評価の両方を行うケースがほとんどです。上司は、日頃から本人の行動や業務への関わり方などの事実情報を踏まえ、本人評価と上司からの評価の2つの評価シートを参考にしながら公正に評価を行います。
 
4.フィードバックする
面談において、上司から従業員へ評価をもとにしてフィードバックを行います。評価して終わりではなく、良かった点や改めたい点、新たな目標設定など、上司が従業員をフォローすることが望ましいです。

人事考課の流れ 1 企業が自社に合う評価項目や基準値を決める 2 従業員が目標を設定する 3 上司と従業員がそれぞれ評価する 4 上司から従業員へフィードバックする

人事考課で生まれる弊害とは

人事考課は重要な制度ですが、自社の業績に関わる日々の業務に比べると緊急度が低いと見なされ、どうしても後回しになってしまいがちです。浸透させるには、ある程度の時間がかかるため、機能し始める前に形骸化してしまうのが難点といえます。
 
人事考課はダイエットや試験勉強などと似ており、一足飛びではなく、日々コツコツ行っていくことで成果が現れるもの。日々の業務に追われる現場の社員は、緊急度の低いものに時間を割き続けることが難しいため、まずは上司たちが人事考課への理解を深め、良きコーチとして人事考課の必要性と重要度を周知していくことが大切です。

人事考課を運用する際のポイント

◆目標達成には、期初と中間が肝心

多くの会社では、従業員が設定した目標を達成したか否かを期末のみにチェックし、その結果を評価につなげます。これでは、従業員が途中でつまずいてしまった場合、上司が放置して、最後に評価だけをつける状態になります。生産性も落ち、本人の意欲も上がりません。
 
こうした事態を避けるためには、期初に目標設定をさせ、達成に向かっているかを上司が期の中間に必ず確認することが重要です。うまくいっているのなら認め、立ち止まっているようならどこが問題なのか振り返りを促して、ヒントを与えます。単純に評価するだけでなく、目標達成できるようアシストしていく姿勢が必要です。

◆まずは浸透度25%を目指す

人事考課の導入は、始めてからすぐ結果の出るものではありません。浸透するのに時間がかかるため、定着する前に多くの会社があきらめてしまうケースが見られます。早くても2年はかかると見込んで腰を据えて取り組みましょう。
 
効果的な浸透のさせ方は、説明会など一度の機会で全社員に対して理解を促すのではなく、まずは社内で影響力の強い人物とじっくり話して理解してもらいます。それを繰り返して、味方を少しずつ増やしていくことがポイントです。
 
人事考課制度は、あくまでも会社をよりよくするための手段の一つです。導入や見直しを考えている会社は、「人事考課制度を使って何をしたいのか」を今一度再考してみましょう。


※記事内で取り上げた法令は2021年5月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社MillReef 代表取締役 榎本あつしさん
2002年、大手派遣会社の人事部より独立。「人材育成」と「業績向上」を実現する「A4一枚評価制度」や、「評価をしない評価制度」の開発者。シンプルで運用重視の中小企業向けの人事評価制度コンサルティングを主要業務としている。著書に『人事評価制度の課題がこれで解消!「評価をしない評価制度」』など。社会保険労務士法人HABITAT代表社員、「人事制度の学校」代表。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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