償却資産と償却資産税
「償却資産」とは、「土地および家屋以外の事業用資産」を指します。企業が所有している土地や家屋に対して課税されるのが「固定資産税」であり、償却資産を有している場合に課される税金が「償却資産税」です。
便宜上、償却資産税と呼んではいますが、償却資産税という税金の種類はありません。地方税法において、償却資産税は固定資産税の規定の中に存在することから、厳密には「償却資産に対する固定資産税」という位置づけになります。
償却資産税の仕組み
償却資産税はその資産が所在する市町村から課税される税金です。特例として、東京都23区のみ、都が課税することになっています。
1月1日(賦課期日・ふかきじつ)現在の償却資産に対し、その償却資産の価格(課税標準額)をもとに償却資産税を算定します。
課税標準額は国が定めた固定資産評価基準に基づき、各資産の取得価額、取得年月、耐用年数から割り出します。その課税標準額に1.4%を掛けた額が償却資産税として課税される仕組みになっています。ただし、課税標準額が150万円(免税点)未満は課税されません。
◆償却資産税の算式
【償却資産税=課税標準額×税率[1.4%]】
課税対象となる償却資産
課税対象となる主な償却資産は以下の通りです。デスクワーク中心の業務であればパソコンやプリンターなど、飲食店であれば内装・造作などが対象となります。
◆課税対象となる償却資産
1.構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板、受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等
2.機械および装置
各種製造設備等の機械および装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
3.船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
4.航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
5.車両および運搬具
大型特殊自動車等
6.工具、器具および備品
パソコン、陳列ケース、看板、医療機器、測定工具、金型、理容および美容機器、衝立等
償却資産税の申告の流れ
償却資産税を申告する際の流れは以下の通りです。
◆申告の流れ
1.申告書の提出(書類を郵送、または電子申告)
企業は「償却資産申告書(償却資産課税台帳)」に1月1日現在所有している償却資産を記載し、1月31日までに、その償却資産が所在する自治体に申告します。償却資産申告書には資産の明細と取得価額を記載するだけです。確定申告などとは異なり、税額を自分で計算する必要はありません。
2.価格等の決定および課税台帳への登録と公示
申告書の提出を受けた自治体は、申告内容や調査に基づき償却資産の価格(課税標準額)を決定します。価格等を償却資産課税台帳に登録した後、その旨を公示します。
3.税額の算出および納税通知書の交付
自治体は、下記の算式により税額を算出し、6月上旬に企業に納税通知書を交付します。
【税額=課税標準額×税率[1.4%]】
※課税標準額が150万円(免税点)未満は課税されないので、納税通知書は交付されない。
4.納税
企業は、納税通知書が届いたら納期日までに税金を納めます。
償却資産税に関する注意点
企業は自治体が決定して償却資産課税台帳に登録した価格を閲覧できます。もし、その価格に不服があるときは、文書により「審査の申出」をすることができます。さらに、審査の決定に不服がある場合は、「取消訴訟」を提起することも可能です。
審査の申出は、償却資産課税台帳に価格等が登録された旨の公示の日から納税通知書を受け取った日後3カ月以内と決められています。
また、申告の際には次の点に注意してください。
◆申告における注意点
- 複数の自治体に償却資産を所有している場合、その資産が所在する自治体ごとに償却資産税申告書を提出する。本社・本店所在地のある自治体に一括提出することはできない。
- 遊休または未稼働の資産(※1)や耐用年数が経過して帳簿上の残存価格(※2)のみが計上されている資産であっても申告の対象となる。
- 租税特別措置法の規定を適用し、取得価額30万円未満の資産に関する即時償却(※3)をしている資産も償却資産税の対象となる。ただし、取得価額10万円未満の資産、一括償却(※4)を選択した資産は対象とされない。
正当な理由なく申告をしなかった場合、地方税法第386条などにより、過料を課されることがあります。また、虚偽の申告をした場合には地方税法第385条により、懲役または罰金を課される可能性があります。定められた期間内に正しく申告し、価格に不服がない限り期日を守って納税しましょう。
※1 遊休資産は事業に使用できるが稼働していない資産のこと。未稼働資産は使用目的で保有しているがまだ使用していない資産のこと
※2 法定耐用年数が経過して、減価償却が終わった後に残る資産の価値
※3 固定資産税を初年度に一括で償却すること
※4 固定資産税を3年にわたって償却すること
※記事内で取り上げた法令は2022年3月時点のものです。
<取材先>
高橋創税理士事務所 高橋創さん
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト
