開発費はどう会計処理する? 開発費の計上方法と償却方法

女性の研究員のイメージ


開発費の会計処理には、費用ではなく「繰延資産」として数年にわたって償却することができる特例措置が設けられています。そもそも開発費とはどういった費用を指すのでしょうか。また、会計上でどのように計上し償却するのか、開発費の会計処理について高橋創税理士事務所の高橋創さんに伺いました。

 
 

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開発費の会計上の定義


「開発費」とは、業務上で新しく何かを始める際「特別に」支出する費用のことです。

 
 

◆開発費の支払い目的

 

  • 市場の新規開拓のための調査費
  • 新技術の開発や設備投資
  • 新たな経営組織の採用 など


開発費は会計上、「繰延資産」として資産計上することができます。
 
ただし「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会)には、「経常費( 毎年決まって支出される経費)の性格をもつものは開発費には含まれない」と記載されています。つまり、たとえ開発中に発生したものであっても、通常の営業活動で発生する類の費用は開発費には含まれません。あくまで特別な支出であることがポイントです。

 
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開発費と研究開発費の違い


開発費と混同しやすいものに「研究開発費」があります。「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計基準委員会)では、以下の通り定義づけしています。

 

一 定義
1 研究及び開発
研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。
開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。

金融庁「研究開発費等に係る会計基準」より


「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」において、それぞれの会計処理を以下の通り規定しています。

 
 

◆会計処理の方法

 

  • 開発費……原則は支出時に費用として処理(売上原価、販売費および一般管理費(※1)) 、もしくは繰延資産として資産計上することができる
  • 研究開発費……発生時に費用として処理しなければならない


つまり、開発費と研究開発費は、会計上、繰延資産として資産計上できるかどうかに大きな違いがあるといえるでしょう。
 
※1 売上原価には仕入や外注費などが含まれ、販売費および一般管理費には広告宣伝費や人件費、水道光熱費などが含まれます。内容によって費用項目が変わります。

 
 

繰延資産とは


前述したように、開発費の会計処理には「支出時に費用として計上」する方法と、「繰延資産として資産計上」する方法の2種類があります。
 
繰延資産とは、すでに発生・支払い済みの支出のうち、その支出の効果がおよぶ期間にわたって
費用化することが認められた費用のことです。たとえば、会社の設立費用は、その支出をした年度だけではなく会社が存続する間はその効果が発揮されると考えられます。このように、支出した費用の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものについては、繰延資産としていったん資産計上し、固定資産の減価償却のように効果の及ぶ期間にわたって償却することができます。
 
会計上、繰延資産として資産計上が認められているのは次の5つです。

 
 

◆繰延資産が認められている費用

 

  1. 株式交付費
  2. 社債発行費
  3. 創立費
  4. 開業費
  5. 開発費

 
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開発費の償却方法


繰延資産の償却方法には、「均等償却」と「任意償却」があります。

 
 

◆均等償却


償却期間が定められており、期間内に均等に償却する方法

 

  • 創立費、開業費、開発費……5年以内
  • 株式交付費……3年以内
  • 社債発行費……社債の償還期限内

 
 

◆任意償却


償却期間や償却金額の制約がない方法
 
いつ、どれだけの金額を償却するかを、企業が自由に決定することができます。そのため、利益が出たときに償却金額を増やしたり、利益が少ないときに償却額を減らしたりすることが可能です。

 
 

開発費の計上および償却する際の注意点


開発費の計上にあたっては、「経常費の性格をもつものは開発費には含まれない」という点を忘れてしまいがちなので注意しましょう。また、「資産の取得に要した金額とされるべき費用を除く」とされています。会計処理の際に資産取得費用を含めてしまわないように気をつけてください。
 
本来、繰延資産はその効果が長期間にわたって発揮されるものについて、適切な期間で費用を配分するための特例措置です。しかし、現実には効果の及ぶ期間を測定するのは困難といわざるを得ません。利益の調整という面では、任意償却のほうが有効に感じますが、適切な期間損益計算という点からは、均等償却のほうが望ましいかもしれません。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年3月時点のものです。
 
<取材先>
高橋創税理士事務所 高橋創さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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