改正電子帳簿保存法とは? 中小企業が把握しておくべき改正点

コピーを取る女性のイメージ


デジタル化の推進を背景に創設された電子帳簿保存法。企業の業務や経理に必要な書類などを電子データで保存することを認めるもので、これまでも時代の流れに応じて、何度か改正されてきました。2022年1月にも改正電子帳簿保存法が施行されましたが、そもそもどのような法律なのか、また、今回の改正の背景や抑えておくべきポイントについて税理士の甲田拓也さんにお話をお聞きしました。

 
 

求人を掲載

デジタル化社会に対応するための法律


――電子帳簿保存法とはどのような法律ですか?
 
正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、1998年7月に施行されました。各税法で原則紙での保存が義務付けられている帳簿書類について、一定の要件を満たした上で電子データによる保存が行われるように保存要件などを定めた法律です。
 
高度情報化、ペーパーレス化が進み、会計処理の分野でもコンピューターを使用した帳簿書類の作成が普及してきたことから、経済界を中心とする各界から帳簿書類の電子データによる保存などが求められ、この法律が創設されました。電子データによる保存を認めることで、適正公平な課税を確保しながら、納税者の帳簿保存の負担軽減を図ることなどを目的としています。
 
――今回、なぜ改正されることになったのでしょうか?
 
法律自体は20年以上も前から存在しており、時代の流れに応じて何度か改正が行われていますが、私自身、公認会計士や税理士として仕事に携わるなかで、法律が非常に複雑で処理が煩雑になってしまうことなどから、あまり広く浸透せずに形骸化してしまっていたような印象を持っています。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、日本のデジタル化の遅れが浮き彫りとなり、この遅れを取り戻すためにも、日本のITリテラシーを高めることが急務だという観点から大幅に要件を緩和し、2020年度の税制改正大綱に盛り込まれるかたちで改正に至ったのではないかと見ています。

 
 

電子取引に関する電子データの保存が義務に


――今回の改正で、どういった点が変わるのでしょうか。
 
まず、改正電子帳簿保存法上の電子データによる保存は、大きく分けて次の3つの区分に分けられることから説明します。

 

  1. 電子帳簿等保存……電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存すること
  2. スキャナ保存……紙で受領・作成した書類を、画像データで保存すること
  3. 電子取引……電子的に授受した取引情報をデータで保存すること


このうち1と2は任意ですが、今回の改正によって3が義務となることが、最大のポイントです。これは、個人事業主に至るまで、すべての事業者に対応が求められるので抑えておいてください。
 
今回の改正で、1と2について、これまでは必要だった税務署長の事前承認制度が廃止され、届け出を出さなくても保存できるようになったことや、2に関して電子データが作成された日時を証明するタイムスタンプ付与の要件が緩和されるなど、より電子帳簿の保存を導入しやすくなるよう、様々な手続きを緩和する内容も盛り込まれた改正になっていると思います。

 
 

猶予期間は従来通りの対応でOK


――施行直前になって2年間の猶予期間が設けられましたが、どのような経緯があったのでしょう。また、その間はどのように対応すればよいでしょうか?
 
電子帳簿保存法の改正が盛り込まれたのは2021年度の税制改正大綱だったため、準備期間が1年余りと短く、多くの企業に浸透せず、準備が間に合わないなどの声がありました。さらにそうしたなかで国税庁が違反した場合には青色申告の取り消しの可能性もあるような含みも残していたことから、企業に不安があったこともあり、そのような声を受けて2年間の猶予期間が設けられたのではないでしょうか。
猶予期間について国税庁は、「2023年12月31日までの間に電子保存に対応できない事情があると税務署長が認め、かつ出力書面での提出等に応じることができる場合は出力書面での保存も認められる」としていますが、事前の申請が必要ないとの見解も示していて、猶予期間は引き続き紙での保存が容認され、実質的にこれまで通りの対応で問題がないと考えられています。
 
ただし、2年間の猶予期間ができたことにより、その期間の終了後はきちんと改正法に則って処理することが求められることになります。まだ余裕のある今のうちに法律の重要なポイントを知り、準備をして万全の体制を整えておきましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年1月時点のものです。
 
<取材先>
公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表 甲田拓也さん
4大監査法人と個人会計事務所に勤務した後、2009年に甲田拓也事務所設立。新規事業・会社設立支援、会計税務顧問、経理業務代行など幅広く企業をサポートする。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。