労働者名簿とは
◆労働基準法で定められる「法定三帳簿」の一つ
労働者名簿とは、賃金台帳、出勤簿と並び、労働基準法第107条および109条によって作成・保管が義務付けられている「法定三帳簿」の一つで、人事担当者が管理する帳簿です。
労働者の適切な労務管理のためにも、企業には法定三帳簿を整備しておくことが義務付けられており、適切に整備していない場合は罰則の対象になります。
役員と日雇労働者を除く、全従業員の名簿をそろえることが必要です。パートやアルバイトなどの非正規雇用者も対象となっているので注意しましょう。
労働者名簿に記載する内容とは
◆全9つの項目で構成される
労働者名簿に記入が必要な事項は、労働基準法第107条および労働基準法施行規則第53条により、下記のとおり定められています。
- 労働者の氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入の年月日
- 退職年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合はその理由を含む)
- 死亡の年月日およびその原因
9項目ありますが、従業員が30人未満の事業場の場合は「6. 従事する業務の種類」の記入は不要です。
3. の履歴は、社内での配属先や異動先などの社内履歴を指します。企業によっては、入社前の職歴なども記載している場合があります。
◆名簿を管理する上で注意したいこと
労働者名簿は、該当する労働者が入社してすぐに作成します。項目に変更があったら、その都度更新する必要があります。
労働者名簿を使うシーン
◆異動があったときに社内で参照する
規模の大きな企業では、従業員数が多く、お互い面識がないこともあります。
異動があった場合などに、これまでどの部署でどのような業務をしていたか、上司や管理職が任意の従業員について情報を得るときなどに使用します。
住所などは重要な個人情報になるので、伏せて閲覧させるなどの注意が必要です。
◆現住所の確認や通勤費支給の確認にも
労働者名簿には現在居住している住所を記入します。ここに記載された住所を基に通勤費などを支給するほか、連絡が取れないといった非常時の参照先にすることもあります。
◆「退職証明書」の発行
退職者から、転職先の企業から求められたことなどを理由に「退職証明書を発行して欲しい」と依頼されることがあります。その場合は労働者名簿の記載内容を基に、入社・退社年月日や、希望があれば社内で従事した業務などを記載して、退職証明書を作成します。
◆企業の労務管理の評価に
労働者名簿は、企業によってはよく使うものでないかもしれません。しかし、会社で適切な労務管理を行うために法律で義務付けられているものであり、労働者名簿を正しく作成することは、企業がきちんと労務管理を行っている会社であると示すことにもなります。
労働者名簿の保管期間
◆退職してから3年間は保管義務がある
労働者名簿は、従業員が入社してから作成し、その従業員が退職、または死亡退職してから3年間保管することが義務付けられています。
◆人事管理ソフトで作成・保管もできる
会社の規模が大きいと従業員の異動なども多く、労働者名簿を管理するのはとても手間がかかるもの。
労働者名簿については、パソコンのシステムを利用した作成も認められているため、給与計算のシステムに労働者名簿の機能が搭載されたソフトで管理する企業もあります。また、賃金台帳と兼用して作成している企業もあります。
ペーパーレスの時代、オンラインシステムを使った労働者名簿の管理もおすすめです。ただし、保存にあたっては、必要であればすぐに印字・出力できることが政府の定めている要件ですので注意しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_33.html
※記事内で取り上げた法令は2020年10月時点のものです。
<取材先>
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト