姓の変更の有無や住所変更を確認
労務手続きのため、従業員が結婚した場合は人事労務などの担当部署に報告をもらうようにします。担当者は以下の4項目を確認するようにしましょう。
- 入籍日
- 姓の変更の有無
どちらの姓が変わるか分からないので、男女どちらの場合でも確認します。また、社内で旧姓を使いたいかどうかもこのときに確認しましょう。 - 結婚によって扶養が増えるかどうか
従業員自身、またはパートナーが結婚を機に扶養に入る場合もあります。子どもがいる人と結婚する場合や相手の親が扶養に入るケースなどもあるので、その点を確認しておきましょう。 - 住所変更の有無
住所が変わったら社内で管理する名簿類も変更しましょう。交通費などの精算があるので通勤ルートの確認も必要です。また、入籍日と住所の変更日は違う可能性があるので、住所の変更日も確認しておきましょう。
上記4項目の確認漏れがないよう、あらかじめ情報更新用のひな形を用意しておくと便利です。紙で処理する企業もありますが、今はこうした業務手続きを電子化したワークフローシステムもあるので、上手に取り入れていくと余計な手間を省くことができます。
簡略化された社会保険、雇用保険の手続き
◆社会保険(健康保険・厚生年金保険)
結婚して姓や住所が変わった場合、これまでは氏名、住所変更の手続きをしなければなりませんでした。しかし、2018年3月から、マイナンバーと基礎年金番号が紐付けられるようになり、氏名・住所変更の届け出が原則不要となりました。結婚の際に、本人が市区町村の役所に氏名と住所の変更手続きをすれば、自動的に社会保険の登録情報も変更され、名前が変更された保険証が届くようになっています。ただし、まれに基礎年金番号とマイナンバーが紐付いていない人や、外国籍の人のようにまだマイナンバーが付番されていない人もいます。それらの人については、氏名や住所変更の手続きをしなければならないので注意しましょう。
ちなみに、マイナンバーと基礎年金番号の紐付けは、紐付いていない厚生年金保険者がいる事業所に送られる「マイナンバー未収録者一覧」で確認できます。従業員本人が確認したい場合には、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」や近隣の年金事務所で確認できます。
◆雇用保険
これまでは速やかにハローワークに氏名変更届を提出しなければなりませんでしたが、2020年6月以降は、被保険者資格喪失届や転勤届・個人番号登録変更届、育児休業給付金など、給付金の支給申請の手続きを行う際に同時に届け出をすればよいことになっています。また、住所変更については、そもそも雇用保険に住所が登録されていないので手続きは発生しません。
労働者名簿などの更新や諸手当の確認を
◆社内の手続きで注意したい点
まず重要なのが各種書類の更新です。労働基準法で作成、保管が義務付けられている労働者名簿や賃金台帳、出勤簿の法定三帳簿と呼ばれるものをはじめ、各種書類の氏名を更新しましょう。緊急連絡先も結婚すると変更になる可能性があるので確認しておきましょう。
加えて、各種手当ての確認も必要です。配偶者が扶養に入る場合には、扶養手当や家族手当が追加されることもあるので、速やかに各種手当てを変更しましょう。結婚を機に通勤区間が変われば、通勤手当の変更も必要になります。これらの届け出について月単位で変更を行っている会社の場合は、支給額の開始時期を確認して、遅れる場合は従業員に事前に説明しておくとよいでしょう。
◆業務について確認は必要か
昔は「寿退社」という言葉があり、結婚した女性は退職するケースが多かったと思いますが、今は結婚したからといって女性従業員の働き方が変わるケースは、かなり少ないと感じています。ただ、今まで通りの働き方が可能かどうかは確認しておいた方が、企業側、従業員側双方にとって良いことだと思います。
結婚した従業員に出産の予定があるかどうかを聞くのは好ましくありませんが、出産や介護などで短時間勤務やアルバイトを希望するケースもあるかもしれないので、「これまで通りの働き方で大丈夫ですか?」とやんわり状況を尋ね、会社側が配慮すべきことがあるのかを確認しておきましょう。
※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
<取材先>
社会保険労務士法人出口事務所 代表 出口裕美さん
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト