子育てと仕事の両立を目指して創業
――同社では数多くのママ社員が活躍していますが、子育て支援制度が充実している理由を教えてください。
瀧澤さん:そこには、社長・岩崎裕美子の創業時の強い思いがあります。岩崎は、以前ベンチャー広告代理店で取締役営業本部長を務めていました。残業や休日出勤が多い労働環境のなかで多くの有能な社員が辞めていく実態を目の当たりにし、「これではいけない。子育てしながらでも働き続けられる会社をつくろう」と決意したそうです。前職で自身も悩んだ子育てと仕事の両立を可能にする会社を目指して、2005年にランクアップを立ち上げました。
――子育てと仕事の両立を掲げて創業されたのですね。どのような制度がありますか?
瀧澤さん:仕事と子育ての両立で困ることの一つは、子どもが病気になったときです。その際に利用できる制度として看護休暇制度があります。子ども一人につき、年5日間の休暇を取得でき、どうしても仕事を休めない場合は病児シッター制度を利用することもできます。ベビーシッターを依頼すると通常1日2万円以上の費用がかかりますが、その大半を会社が負担し、社員の負担額は1日300円で利用できます。金銭面で大変助かりますし、地域の病児保育は定員などの理由で利用できないケースも多々あるため、この制度が大きな安心感につながっています。
そのほか、小学3年生まで使える時短勤務制度や、子どもを会社に連れてくることが可能な子連れ出社制度もあります。乳幼児はもちろん、小学生でも夏休みなどの長期休暇に連れてくることもできて重宝しています。
――出産後の職場復帰率が100%と非常に高い割合ですが、産休、育休時~職場復帰までどのようにサポートしていますか?
瀧澤さん:妊娠が分かった時点で報告してもらい、上長や人事担当者を交えて出産予定日や復職時期のスケジュールを確認し、保育園の見学も始めてもらいます。育休前には上長と2回ほど面談し、産休に入るタイミングや業務の引き継ぎ状況などを確認します。
育休期間中には、育休チャットと呼ばれる、休んでいても社内情報が共有できるようなチャットグループを作成し、育休中に復帰に向けて病児保育の申請や病児シッターを探すなどの準備をしてもらっています。
復帰するときには、社長、人事担当者、復帰するママ社員で1時間半ほどランチの時間を設けます。社長も子育て経験者なので、「○カ月は大変な時期だね」などと子育てについてざっくばらんに話を聞いたり、アドバイスをしたりします。そこで子どもの体調面など復職にあたって不安に感じることを聞き、安心して復帰してもらえる状況を整えます。復職後には、ここ1年間の社の動きや最新商品の紹介など、新入社員研修に近いかたちでスムーズな職場復帰を促すための研修を設けています。
勤務時間の乖離をなくして生産性を高める
――手厚い制度ですが、業績アップと制度を両立する難しさはありませんか?
瀧澤さん:その両立の実現においては、各社員の勤務時間に大きな差が生まれないようにしているのがポイントです。当社の定時は8時30分から17時30分で、だらだらと残業しないことを徹底しているので17時30分に退社する人がほとんどです。そうすると、時短勤務のママ社員との時間差は1日あたり1時間程度と短くなります。働く時間に大差がないため、ママ社員は早く帰ることに引け目を感じないで済みますし、同等の仕事を任せてもらえます。時短勤務でも成果が求められるため厳しい面もありますが、ママであっても仕事で成果を上げるチャンスがあり、やりがいを感じられるので、この点が生産性向上と子育て支援の両立を可能にするポイントの一つです。
小林さん:少数派である男性社員に、こうした職場環境をどう感じているか聞き取りをしたことがあります。ある社員からは、「ママ社員は提出書類の期限を日にちではなく時間で細かく指定するなど、良い意味で時間にシビアなため、自身も仕事を効率良く進めることができるようになった」という話を聞きました。限られた時間で効率的な仕事の進め方が実践されるので、女性だけが働きやすいのではなく、男性にとっても効率が上がって働きやすい環境になっており、こうした環境が全体の生産性向上にも役立っていると実感しています。
風通しの良い環境が充実した制度を生む
――子育て制度が充実した職場づくりができているポイントは何でしょうか?
小林さん:一つの要因として改善提案制度が挙げられます。これは、社員から自由に意見を出してもらう制度で、採用、不採用にかかわらず、1件の提案につき500円が支給されます。
これまでに「手帳代支給の制度」や、ボランティア活動に参加する時に休みを取れる「ボランティア休暇制度」などが実現しました。子どもが小学3年生になるまで使える「時間休制度」もここから生まれた制度の一つで、子育てに関する改善提案は他にも生まれています。この取り組みを通じて、社員のアイデアを会社に提案しやすい環境が生まれ、今では改善したいことがあれば、各社員から直接上司に伝えられるようになりました。こうした風通しの良さをつくることが子育て支援制度の充実にもつながっています。
――今後も働きやすい職場として進化を続けていくのでしょうか。
小林さん:当社では「一生活躍し続けたい女性が諦めなくていい会社」というスローガンを掲げています。女性を主体にしていますが、これは男性にとっても同じです。ランクアップで仕事をするなかで、女性が働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場だと実感していて、社内だけでなく世の中の多くの人が続けたい仕事を諦めなくていい社会になればいいなと感じています。当社がその先駆者になれたらうれしいです。
瀧澤さん:当社が掲げるキーワードの一つが「悩み解決カンパニーになろう」です。この夢を実現するためにも、今後もママであるかどうかは関係なく、誰しもが活躍できる土壌をつくっていきたいです。
※記事内で取り上げた法令は2021年7月時点のものです。
<取材先>
株式会社ランクアップ 人事部 瀧澤朋美さん、広報部 小林みかさん
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト