中途採用をしたのに即戦力にならないケースとその理由
中途採用で即戦力にならないケースには、次の3つが挙げられます。
◆会社の期待通りの実力ではなかった
会社の過度な期待による採用ミスマッチが起きたことが原因と考えられます。
こういった期待値と実力の差によるミスマッチは、人事・IT・建築などの職種で起こりやすい傾向にあります。なぜなら、これらの職種は資格や実績から華々しい印象を与えやすく、職務経歴書に書かれた魅力的な内容に引っ張られて合否を判断してしまいがちだからです。その結果、入社後に「思っていたイメージと違った」という事態が起こります。
◆社風・既存社員と相性が合わなかった
この場合は、面接段階に原因があると考えられます。たとえば面接時に候補者へ会社の実態を伝えきれていなかったり、候補者の経験・能力・スキルだけを見て採用を決めてしまい、社風や既存社員との相性を見極め切れていなかったりというミスが挙げられます。入社後のフォローが不十分な場合にも起こるケースです。
◆前職でのやり方に固執する人だった
3つ目も、会社側のフォローや説明が不足しているために起こるケースです。
いくら能力がある人であっても、その会社独自のやり方や価値観、行動規範は、先輩社員に教えてもらわなければ身に付きません。入社後すぐに活躍してもらうためには、その会社のやり方を伝えて理解してもらう必要があるのです。
即戦力を得るために。採用時に注意すべきこと
採用段階で注意すべき点には、以下の3点が挙げられます。
◆候補者の言葉を鵜呑みにしないで、本質的な素養を見極めること
候補者は、内定を得るために、面接の場では良いことにフォーカスをして語りがちです。だからこそ、「何らかのプロジェクトを動かしました」といった表面上の言葉だけを鵜呑みにするのは避けましょう。
たとえば、候補者の発言から「プロジェクト全体を管理する仕事をしていたんだな」といったイメージを抱いたとしても、実際には、プロジェクトの一部分に関わっただけという可能性もあります。候補者の発言から具体的なエピソードを深堀して聞いていくことで、採用後に「思っていたよりも仕事ができない」といったギャップを防げるでしょう。
◆能力・スキルだけではなく意識や精神といったマインドも踏まえて総合的に合否を判断すること
新たな会社で活躍してもらうには、仕事の能力やスキルだけではなく、自社に合うマインド(意識や精神)を持ち合わせているのかも見ておく必要があります。たとえばチームワークを大事にする企業の場合、他人と円滑にコミュニケーションを取ろうという意識が低い人は、いくらスキルが高くても転職後になかなか新しい環境に慣れることができず、活躍しづらいかもしれません。
職務経歴書に書かれている実績やスキルだけに左右されず、求職者のマインドも含めて総合的に合否の判断を下すことが大切です。
◆表面的な業務内容の説明だけでは伝わらない会社の実態について、できる限り具体的に伝え、入社前後のギャップをなくすこと
たとえば「営業経験有り」といっても、その詳細は多岐に渡ります。新規営業なのかルート営業なのか、BtoBなのかBtoCなのか……その内容によって、求められる能力は異なります。また、同じ法人向け新規営業だとしても、扱う商材によって、これまでの経験がすべて活かせるとは限りません。
「経験があるからできるはずだ」と双方が思い込み、入社後に大きなギャップを感じてしまうことのないよう、求人票の文字だけでは伝わらない業務内容を含めた会社の実態について、ネガティブな情報可能な限り具体的に伝えるよう意識しましょう。
即戦力となってもらうために。採用後にできるフォロー
中途採用者の場合、採用・入社後には何もフォローがないまま、いきなり現場に立つことになったという例も少なくありません。しかし、いくら優秀な人であっても、その会社では新人ですから、何らかの研修やフォロー体制を整えておく必要があります。
たとえば、正式に入社する前段階で内定者面談や会社見学を行い、社員との交流機会を設けることで、入社前後のギャップを減らせるでしょう。
また、その会社独自の価値観、出社時間や清掃、朝礼といったルール、社内用語などを理解してもらうことも仕事を円滑にする上で必要です。
その後も、中途採用者が持っている強みを十分に発揮できるまで、放置せず適切なフォローを続けることが大切です。
何のフォローもなく即活躍できる「即戦力」はいないと理解する
「即戦力」という言葉のイメージから、「何も教えなくてもすぐに結果を出してくれるのでは」「私たちが何か教えてもらえるのでは」と過度な期待を寄せてしまっている既存社員もいるかもしれません。
もちろん、前職と業務内容が大きく変わらない場合は、入社早々に即戦力として活躍することもあります。しかし、ほとんどの職種は会社によって、独自のルールを持つ部分が多く、たとえ経験者であっても入社初日から活躍するのは困難です。
大切なのは、即戦力になり得る人材に、その能力や経験を最大限発揮してもらうことです。そのためにも、適切な見極めや入社後の受け入れ体制の整備、フォローが必要となります。採用担当者だけが理解するのではなく、現場で関わる社員たちにも「経験のある中途採用者だからといって放置しないように」と伝え、正しく理解してもらうようにしましょう。
<取材先>
株式会社新経営サービス 経営支援部 コンサルタント大園羅文さん
現在は、中小企業を対象とした人材採用支援、若手人材の定着・即戦力化支援、人事制度の構築・運用支援に従事。特に、「人材採用力の強化」を得意テーマとしており、『採用活動に時間やコスト・労力を割けない』等の中小企業独自の課題に寄り添った支援を通じて、顧客とともに“勝つべくして勝つ”採用活動を展開。
TEXT:卯岡若菜
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト