内定者研修を行うべき2つの理由
企業が内定者研修を行うべき理由は大きく2つ挙げられます。「入社意思固め」と「入社準備・オンボーディング」です。
「入社意思固め」とは、内定を受諾した学生に「内定ブルー」を乗り越えて、入社の決意を固めてもらうことを意味します。内定ブルーとは、内定を受諾したあと自分の選択に対する不安に苛まれ、精神的に不安定になってしまう状態のことです。
また「入社準備・オンボーディング」とは、入社前に身につけておいてもらいたい知識やスキルを教えるための機会を設けることを意味します。入社後スムーズに業務へと移ってもらうための施策全般を指します。
内定者研修を行うメリット
内定者研修のメリットについて、「入社意思固め」「入社準備・オンボーディング」それぞれの側面からメリットを見ていきましょう。
◆内定固めの側面におけるメリット
入社意思固めという側面から見た内定者研修のメリットは、主に以下の2つです。
- 内定者同士の絆づくり
- 会社に対する愛着の育成
研修によって内定者同士のつながりをつくることは、内定ブルーに陥っている学生の気持ちを引き上げるという好影響を生み出します。学生にとって、入社に対する不安を払しょくし、覚悟を固めるための機会になるでしょう。
会社の事業や歴史、カルチャーについてあらためて知る機会を設けることも、愛着の育成に効果的です。勉強会やワークショップを通して、内定者が会社情報に触れる機会を設けましょう。
◆入社準備・オンボーディングの側面におけるメリット
入社準備・オンボーディングという側面から見た内定者研修のメリットは、内定者が入社後に感じるギャップを埋められることです。入社前に抱いていた理想との間に大きなギャップが生じると、早期離職や五月病の発症につながる可能性があります。
内定受諾から入社までの期間に職場のリアルな情報を学生に伝えていくことで、理想と現実との乖離は小さくなり、入社後の定着につながるのです。
内定者研修に組み込むべきカリキュラムとは
内定者研修は、「入社意思固めを行った上で入社準備・オンボーディングに進む」という流れで行うようにしましょう。内定を通知した日から年末までに「内定固め」、翌年1月から3月までに「入社準備・オンボーディング」を目安にスケジュールを組むと、入社前までに効率よく内定者研修を実施できます。
入社の意思を強固にすることが目的の内定固めでは、内定者同士のコミュニケーションの促進プログラムや、会社について知ってもらうためのワークショップなどを設定します。おすすめなのが、上司や先輩へのインタビューを通して現場のことを改めて知り、会社への愛着を促すことのできる「会社取材」です。取材で集めてもらった情報をチームメンバーで持ち寄り次年度の会社説明会用資料を作るといったワークショップを行えば、作業を通して内定者同士の絆を深めつつ会社への愛着を育てることができます。
次の段階である入社準備・オンボーディングに関してですが、目的はギャップを埋めることですから、リアルな仕事に触れられるようなカリキュラムが適しています。内定者インターンや、場合によっては報酬の発生するアルバイトをしてもらう「リアリスティック ジョブ プレビュー(RJP)」などを採り入れると良いでしょう。あえて現場社員が仕事に対する本音を伝えることで、配属後のギャップを埋めることができます。
その他、入社前に身につけておいてもらうべきスキル
コロナ禍により対面式の研修が難しいというケースもあるでしょう。あるいは、企業側で手取り足取りフォローできないようなカリキュラムもあります。その場合、会社側がプログラムを準備して、各自スキルを身につけておいてもらうことも有効です。
スマホで多くのことが済ませられる最近では、パソコンに触れたことのない学生も少なくありません。「パソコンの使い方がわからない」「キーボードの操作に慣れていない」という学生には、事前に簡単なパソコンスキルを身につけておいてもらいましょう。特にWordとExcelの操作は、どの部署に配属されたとしても必要になりますから必須といえます。
配属先部署でパソコン業務がメインになる内定者であれば、WordやExcelの習得具合を可視化できるマイクロソフト社の認定資格「MOS」の取得を目指してもらうのも良いでしょう。最低限のビジネスマナーについてもある程度勉強しておいてもらうと、入社後の研修や業務がスムーズに進みます。
当然のことながら、業種・業界によって身につけておいてもらうべきスキルや資格は異なります。語学・簿記・宅建など、必要に応じて、会社側でプログラムを用意しましょう。
内定通知から入社までの期間を有効に活用する
入社意思固めと入社準備・オンボーディング、この2段階で内定者研修を行うことで、入社までの間に生じる学生の不安や心の揺れを防ぎ、スムーズに入社を迎えてもらうことができます。内定通知からの半年間を有効に活用できるよう、企業側の準備が肝になってくるでしょう。
<取材先>
株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光さん
TEXT:卯岡若菜
EDITING:Indeed Japan +波多野友子 + ノオト