介護職採用の準備からアフターフォローまで一挙解説【はじめての採用ガイドブック】
(※) 厚生労働省「介護分野の現状等について」(2019年3月18日発表)
介護職採用をとりまく現状と知っておくべきこと
ある地方の中心都市の郊外にある介護付き有料老人ホーム「Yの里」。ホーム長のNさんは親からこの老人ホームを受け継ぎ、順調に運営を続けてきました。「地域の人々のために」と真剣に取り組んできた甲斐あって、評判も上々です。
近年、入居申し込みの数が増えてきていることもあり、施設を増築する予定ですが、まだスタッフの増員が不十分です。しかし、人手不足は常に悩みの種。不慣れなインターネットを使ってリサーチをするなど、Nさんはスタッフを増やす手掛かりを見つけようと必死です。
介護現場をとりまく現状
Nさんの老人ホームに限らず、介護業界は常に人手不足に悩まされているようです。その現状を正しく把握し、問題を理解しなければ、採用活動もスムーズには進まない……そう考えたNさんはIさんと改めてこの業界の状況について確認することにしました。
①有効求人倍率は全体の3倍以上
厚生労働省発表の令和4年4月分の「一般職業紹介状況」によると、介護業界の求人倍率は4.46と、全体の有効求人倍率(季節調整値)1.23の約3.6倍にも及び、他の業界と比べて高い水準となっています(2022年4月)。同省の「介護分野の現状等について」(2019年3月18日発表)では、多くの介護サービス事業者が人手不足の理由を「採用が困難」と回答しており、これは突出して高い割合であると言えるでしょう。
②高まる介護現場の人材ニーズ
同じく「介護分野の現状等について」によると、2025年には介護需要の高まりにより、必要となる人材数が2016年度の190万人から約55万人増加の約245万人になると予想されています。そして、今後も増え続けるサービス需要を満たすだけの人材を提供できるかどうかが、懸念されています。
とはいえ、「介護業界はなぜ人手不足なのか? 需要と供給の関係、人材不足の実態と課題」における野沢悠介さんの話によると、「2000年以降で最も人数が増えた職種は介護職員」と言われるくらい、介護職員の数は増加傾向にあるため、「需要に供給が追い付いていない」状態であると言えるようです。
③離職原因の多くが「きつい仕事が多い」「給与水準が低い」
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、全産業を平均した離職率は14.2%です。異なる調査ではありますが、公益財団法人介護労働安定センターの「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について」によると、2020年度については介護職の離職率が14.9%となっており、全産業の平均を0.7ポイント上回っています。介護業界は離職率が高くなっているのです。
「きつい仕事が多い」「給与水準が低い」といった仕事内容や待遇に対する不満が、介護業界の離職原因で多いそうです。他にも、採用段階でのミスマッチや、導入段階での受け入れ態勢・教育制度の不十分さなども挙げられるようです。
待遇の改善が人材難を解消する重要な鍵であるという声がありますが、そのためには、資金や人材、ノウハウをどう確保するかが大きな課題とも言われているようです。
これらの問題は、近年頻繁に取り上げられるようになったことで、解決に向けての取り組みにつながるかもしれないというポジティブな期待ができる一方、「ネガティブイメージばかりが取り上げられている」という現状があることも指摘されています。
④構造上の課題
介護業界の報酬は介護保険制度で売上の上限が決まっており、事業者の裁量で増減させることができません。年金や医療費など社会保障費の増大により、介護の報酬に予算が回らないという原因もあるようです。
(※)「令和2年社会福祉施設等調査の概況」によると2020年10月1日時点で全国の都道府県、指定都市、中核市の有料老人ホーム数は1万5956施設。前年から822施設(5.4%)増えており、伸び幅は前年(4.7%)より大きくなっています。
介護業界のことをIさんとおさらいし、Nさんはいままで自分がずいぶん曖昧な捉え方をしていたようだと気づいたようです。Nさん自身が長く介護業界にいるために肌で感じていたことや、自然と理解していたことはありましたが、それを採用活動に活かしていたという自覚はあまりありませんでした。
介護職の求職者は求人票のどこを見ている?求人票の作り方は?
はじめてのインターネットを使った採用活動をスタートした二人。求人票を作り始めたようですが、その内容について話し合っているようですが……?
押さえるべき求人票の基本
求人票は、人材を呼ぶための重要な情報です。次のような点に気をつけながら、採用に繋がりやすい求人票を作成しましょう。企業側の熱意と受け止められることも多いため、自社の売りなども含めつつ、丁寧に構築することが重要です。
1.仕事内容を明確にする
2.具体的な数字を用いる
3.十分な情報量を揃える
4.専門用語ばかりを使わない(未経験者応募の場合)
募集要項に必ず記載すべき項目には、以下の5つがあります。
(1)仕事内容
「介護職」などの職種名だけではなく、どのような業務があるのかを具体的に記載しましょう。求職者がその職場で働くイメージを持つことができるだけの情報量が必要です。
(2)求める人材
業務を行う上で、どんなスキルや技能、資格が必要なのかを明確に提示しましょう。
(3)勤務時間
出勤と退勤の定時、平均残業時間を記載します。1日の業務の流れを記載すれば、より職場の雰囲気が伝わりやすいでしょう。
(4)交通アクセス
勤務地の住所や最寄り駅からの所要時間を記載しましょう。
(5)給与・待遇・福利厚生
給与は「月給○○万円〜」と下限だけ書くと、高給が見込めないと捉えられる可能性があるので上限の金額も書くことをお勧めします。昇給・賞与などの待遇(福利厚生)は自社のアピールポイントになるので、詳しく記載しましょう。
以上は必要最低限の情報ですが、必ず揃えるようにしましょう。
たとえば、試用期間や求人する事業所・個人名、派遣労働者として雇用するのかどうかといった項目も募集要項にはっきりと記載しなくてはなりません。また、固定残業代を支給する場合、裁量労働制の場合などについても、必ず記載する必要があります。福利厚生や有給、産休や育休など、求職者が欲しいと考える情報を不足なく揃えるようにしましょう。それから、求人票の見直しや、掲載先に合わせた見せ方についても考えてみましょう。
次に、介護職向け求人情報作成のポイントについて見ていきましょう。
介護職向け求人情報作成のポイント
「人の役に立つ」など。介護職に向いている人へのメッセージを込める
介護職に向いている人材としては、相手に興味を持って関われる人、「人の役に立ちたい」といった意識を持つ人、状況に合わせて動くことが得意な人などが挙げられます。ジャンルとしては未経験者も参入しやすいのが特徴ですので、関心さえあればチャレンジすべきと言えるでしょう。介護業界はそういった関心を持っている未経験者を迎え入れる体制を準備することが重要です。
介護職は無資格・未経験でも可能である理由を明確にする
今回のストーリーでは経験者採用のため、該当しませんが、介護職は無資格・未経験でも可能であると応募者を募るケースがあります。そのとき「誰でもできる仕事」という意味合いではなく、「入社してからスキルを積み上げることができる」という内容を伝えることが重要だと言えます。無資格・未経験の方を採用する場合は、研修、職場体験、仕事体験を実施するなど、求職者の不安を払拭する工夫を考えましょう。
自社のアピールポイントを記載する
職場の「売り」はなにかを見直し、言語化して求人票に含められるようにしましょう。昇給や賞与、残業代や交通費などの待遇面、まかないや特典などもアピールポイントのひとつです。
また、働く環境についてのアピールも重要です。「○○というITツールを導入して、業務改善をしています」「3年前と比べて、残業時間が○時間減りました」など、職場において積極的な環境改善を行っている場合は、できるだけ具体的な内容で表現するようにしましょう。同業ではなく、他業界のアピール方法を参考にするのもひとつの方法です。
~~~~~1時間後~~~~~
NさんがIndeedに求人情報を掲載した2日後、さっそく応募が来たようです。次の項目では、応募者対応から面接、採用可否の連絡について見ていきましょう。
介護職採用の応募者の対応から面接、採用可否の連絡まで
初めてのIndeedによる募集は、しっかり練り上げた求人票の内容が功を奏して多くの求職者から応募が来ました。
書類選考のポイント
書類選考で履歴書や職務経歴書を提出してもらうメリットや企業が見るべきポイントについて解説していきます。
履歴書
履歴書には志望動機、学歴や職務経歴、取得資格、希望する勤務条件(形態や就業場所)といった、基本的事項を確認する目的があります。応募者がどのような人物かを判断するための材料であり、その後、応募者と面談へ進みます。
履歴書では特に過去の経験やスキルを重点的に確認しましょう。また、面接では書類の情報をヒントに、こちらから聞き出すことも重要です。本人がアピールポイントだと意識していないだけで、隠れたスキルを持っている可能性もおおいにあります。
職務経歴書
職務経歴書とは履歴書とは別物です。応募者がこれまで携わってきた仕事の詳細を知るために提出を求める書類で、自社が求めている人材とのマッチングを見極める上での参考になります。企業側が指定しない限り、書き方は自由ですが、応募者がどのような内容を記載してくるかも、合否の判断材料になります。職務経歴書では、次のような観点からチェックしましょう。
(1)募集している仕事内容に合った能力や経歴が記載されている
(2)採用者の立場に立ってわかりやすく整理されている
(3)在籍期間や退職理由を明記している
自社の求めているスキルと合致する経歴が盛り込まれている場合、基本的なチェックポイントと同時に、内容の信ぴょう性を見抜くポイントも意識することがおすすめです。実績や評価が記載されているか、志望動機が自社に向けての内容になっているかという観点で見るようにしましょう。
面接のポイント
面接日程は早めに設定するようにしましょう。応募者は他の企業の面接も控えている可能性が高く、早目のスケジュール確保が有利となります。面接官の選択や日程確保などの社内調整がスムーズに行えるよう準備しておく必要があるでしょう。
面接のとき、Nさんはつい雑談で盛り上がってしまうようですね。面接では、限られた時間のなかでいかに必要な情報を引き出せるかが重要です。事前の準備として、次のポイントを押さえましょう。
①面接での質問内容
仕事に関係ない内容(家族構成、出身地など)は聞かないよう注意しましょう。また、待遇面の希望などについても確認しましょう。どういった介護を経験してきたか・それについてどう考えたかなど、書類には書かれていない体験などについても質問するようにしてください。
途中採用は経験やスキルを重視するものですが、「入社してからどうするか」についても確認しましょう。ただし、離職を気にしすぎて「長く働くつもりがあるかどうか」だけにこだわらないように注意してください。面接の発言だけでは判断できないことです。
主に、次のような過去の経験やスキルについて尋ねます。
これまでの経験について
・経験のある職業、職務
・自分のスキルを発揮できたエピソード
・仕事を進める上で気づいた自分の長所と短所
・前職の退職理由
志望動機
・なぜこの仕事、職場に興味を持ったのか
・親しい人にこのような施設を利用している人がいるなどの動機
これからの働き方
・施設で働くことについてどのように考えているか
・どの程度働くことができそうか
・働く上で気になる点はないか
また、面接のときは、休憩が必要になるほど長い時間にならないようにしましょう。1回あたり30分から1時間程度を目安にすることがおすすめです。
②面接時に見るべきポイント
介護業界は今後、さらに需要が高まっていくことが予想されます。そのような世間の動きに対し、求職者自身が長く働いていく上でどのような考えを持っているか確認することも重要です。世間を騒がせている話題などについても、自分なりの解決策や意見を聞いてみましょう。意識のあり方が垣間見えるはずです。
③オンライン面接の注意点
Uターン、Iターンの求職者や、現在他の職場で働いている求職者と面接を行うためにも、求職者の状況に合わせて、適宜オンライン面接も活用できると良いでしょう。
現在の職場で仕事をしながら転職活動を行う求職者も多く、こちらの職場まで面接に来るという時間が取れないケースも少なくありません。そうしたなかで、オンライン面接が可能であることはひとつの強みとなります。
とはいえ、オンラインでは把握しきれない部分がお互いに多くあるかと思いますので、選考段階のいずれかで直接対面する機会を設ける「ハイブリッド面接」を実施する企業も増えています。
オンライン面接と対面面接、それぞれの特徴を整理すると以下のようになります。
なお、オンライン面接では、通信環境によっては音声や映像が乱れて進行が滞ったり、中止になってしまったりするという可能性があります。応募者には事前にWi-Fi環境など安定したインターネット接続が可能な場所を選んでもらうよう依頼するなど、面接を円滑に進められるように対策をしておきましょう。
これまでにオンライン面接の経験がない場合には、Indeedの「Web面接」機能を利用するのがおすすめです。
また、面接を実施するのに伴い、どのようにどのタイミングで評価するのか決めておくようにしましょう。
④評価の方法(合格基準)を決めておく
経験や技術を問う場合には、どれほどの経験年数や技術力であれば合格とするか、その基準を決めておきましょう。「言葉遣いが正しい」「自分自身のことについて順を追って説明できる」といった基準も重要です。
⑤面接から一定時間をおいて評価する<
その場で合否を伝えることは可能な限り避けましょう。時間をおいて分析することにより、より客観的で落ち着いた判断ができます。また、面接後のやりとりなどでもどんな人物かがわかることもあります。判断材料が増えることで、より適切な人材を選べる確率もアップします
⑥採用可否の連絡
選考結果はできるだけ早めに伝えるようにしてください。応募者が他の企業の選考も受けている可能性があるからです。連絡方法はメールでも構いませんが、採用の場合は特に確実に伝える必要があるため、リアルタイムで会話ができる電話連絡がおすすめです。初出社日の目安なども打ち合わせができれば、さらによいでしょう。
Indeedは求人情報を掲載するだけでなく、掲載した求人情報に対する応募者の管理もできます。
以下のように、自社の管理画面から、選考中の応募者や、面接の予定、次にやるべきことなどが把握可能です。
ページ上部にある「応募者」タブから、以下のような各応募者の管理画面に進みます。
それぞれの応募者の選考状況が一覧で表示され、選考状況の確認のほか、応募者へのメッセージ送付や、面接のオファーなども可能です。
Indeedの応募者管理機能の詳細な使い方については、以下をご覧ください。
さて、応募者との面接をひと通り終えたNさんとIさん。いよいよ採用する人を決めることになり、採用面接後の対応について相談しているようです。いったいどんなことを話しているのでしょうか。
採用面接後の対応は?アフターフォローなど
応募者との面接を行ったIさんとNさん。同じ市内に住んでおり、前々からIさんの老人ホームの評判を聞いていた人で、今回インターネットを使った求人を見たことで応募に踏み切った人もいました。また、こちらに実家があり、Uターン前提の就職活動をしている人もいました。
条件交渉
中途採用での入社の場合、求職者が条件を交渉してくることもあります。どのような交渉が想定されるでしょうか。
①入社時期の調整
なんらかの事情で入社時期を遅らせてほしいという要望が出る場合もあります。入社時期は内定前に求職者と話し合って決定しておきましょう。中途採用では内定者の入社時期が遅れる可能性があると想定し、採用計画の時点で無理のないスケジュールを組むようにしましょう。
②待遇面の希望を言われたときの対処
認識の違いや入社後のトラブルを起こさないためにも、双方が納得できる落としどころを見つけるのが重要です。候補者の要求にどのくらい応じるべきか、事前に検討しておく必要があります。「中途採用の給料を決定、待遇や条件の交渉にはどう対応するべき?」において、有識者は次のようなポイントを解説しています。
交渉に応じるかは採用の緊急度・重要度で判断する
報酬について候補者が交渉してきたとしても、基本的には提示した金額から変更しないほうがいいと言われています。既存の人事制度が意味をなさなくなってしまったり、今後の給与設定にも影響したりするためです。ただし、「他の施設で責任者を務めていた」「マネージャー職を10年以上経験している」といった場合には、ある程度の交渉に応じる価値があります。
調整手当や入社一時金などでフォローする
「調整手当」や「入社一時金」などの一時的な手当で納得してもらう方法です。入社後はどのくらいの期間で昇給するかなど、将来的な情報を伝えてフォローするのも有効でしょう。
年収や待遇以外のメリットを提示する
「仕事内容の面白さ」「企業の将来性」など、金銭面以外のメリットを伝える方法もあります。ただし、これらは「やりがい」などと同じで目に見えない、保証できないものであり、全面に出すのは危険です。可能な限り他の方法を優先するようにしましょう。
交渉の内容が事実かどうかを確認する
「現職年収が500万円で、3カ月後には600万円に上がる予定」といった、他社の条件を提示しての交渉については、事実確認が必要です。源泉徴収票や直近3カ月の給与明細を提出してもらうようにしましょう。
内定承諾書の準備
応募者が内定を受け入れ入社を決めることを「内定承諾」と言います。内定誓約書、就職承諾書、入社承諾書といった名称で書面にして、内定者に渡すケースもあるでしょう。法的な拘束力はありませんが、応募者のはっきりとした意思表示となり、連絡なしでの辞退といったトラブルは減る可能性があります。
まとめ
Nさんのつながりで1名、Indeed経由で2名採用してから2カ月が経過しました。増築が完了し、スタッフ増員後の体制図や今後の教育計画など、Nさんがパソコンで作業をしているところに、Iさんがやってきました。
インターネットを上手に活用することで、求めていた人材の採用に加え、業務の効率化も進めることができたNさんとIさん。今回舞台となった施設のように、介護業界は今後も多くの人材を必要とします。魅力的な発信と職場づくりを心がけ、人材不足を解決していきましょう。
なお、ヒントとなったIndeedにはさらに多くの情報や求人のためのツールがあります。ぜひご利用ください。
Indeedで採用活動をもっと効率的に進めたいという方は、「Indeedスタートガイド」や「マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう」にてIndeedの仕組みや使い方について分かりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
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