ドライバー採用の準備からアフターフォローまで一挙解説【はじめての採用ガイドブック】



ドライバー採用をとりまく現状と知っておくべきこと

「トラックドライバーがひとり辞めてしまうから、募集してほしい」とI社長に言われたNさん。これまで通り求人情報誌に求人を掲載したものの、なかなか募集が来ないのでやきもきしています。人手不足のまま一月が経過し、他のドライバーからも「できるだけ早くお願いします」と言われて……。









ドライバーの応募者がなかなか集まらないと悩むNさん。I社長とNさんの運送会社に限らず、物流・運送会社は常に人材不足に悩まされています。
物流・運送会社をとりまく現状
先ほどのI社長とNさんの会話でも出てきた「有効求人倍率」とは、「求職者1人あたりに何件の求人があるか」という指標です。この数値が高いほど、求職者1人に対する求人数が多いということになり、求職者にとってはたくさんの企業から就職先を選べる状態だと言えます。しかし、企業にとっては、有効求人倍率が高ければ高いほど「なかなか自分の会社を選んでもらえない」という厳しい状態となってしまいます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の『図14 有効求人倍率、新規求人倍率(四半期平均、季調値 1963年第1四半期~2019年第3四半期)』によると、物流・運送会社に限らず、10年ほど前から日本全体での有効求人倍率は上昇を続けており、全職業の平均で見ても、1986年12月から1991年2月頃までのバブル景気の頃より有効求人倍率が高くなっていることがわかります。
また、有識者によれば、ドライバー職に注目すると、1995年ごろから2019年第3四半期までは常に全職業平均より高い数値になっており、昨今の有効求人倍率は3を超えているようです。つまり、ドライバー職は他の業種と比べて、人材採用が難しい傾向があると言えるでしょう。




ドライバー職の採用をとりまく状況を先ほどの「トラックのドライバー不足が続くのはなぜ? 物流・運送会社の現状と課題」をもとにまとめると、次のことが挙げられます。
①事故の可能性や長時間労働などのイメージが先行している
ドライバーには、常に交通事故などの可能性がつきまといます。また、長時間労働や体力に不安を覚える年代になったときにどうするかといったドライバーとして働き続ける難しさを感じるといったこともあるでしょう。
②配偶者など家族の反対
ドライバーとして働きたいと本人が思っていても、「家族(特に配偶者)に反対された」という理由から、内定まで進んでも辞退するケースも多く見られます。
③免許制度の改正や働き方の変更
以前は、トラックドライバーは報酬が多く、体力のある若者には一定の人気がありました。しかし、最近ではデジタルタコグラフなど労務管理機器が車載されていることが多くなっており、やる気と体力次第で長時間働くということが、業界的に難しくなってきています。
また、2017年の運転免許制度の改正により準中型免許が新設され、若者がトラックに乗るハードルが高くなりました。新しい普通免許では、車両総重量3.5トン未満に限定されています。つまり、運転できるのは軽貨物車両か1トントラック、一部の2トントラックのみとなります。上記のような給与の件もあり、わざわざ準中型免許を取ってまでトラックドライバーになろうという人は少なく、これも求職者が離れる原因となっています。





















次は求人票の作成方法について詳しく見ていきましょう。
ドライバーの求職者は求人票のどこを見ている?求人票の作り方は?

いよいよNさんとI社長は求人票を作成することに。しかし、なにかつまづいているようで……?



押さえるべき求人票の基本
求人票は、人材を呼ぶための重要な情報です。次のような点に気をつけながら、採用に繋がりやすい求人票を作成しましょう。自社の売りなども含めつつ、丁寧に作成することが重要です。
1.仕事内容を明確にする
2.具体的な数字を用いる
3.十分な情報量を揃える
4.専門用語ばかりを使わない(未経験者募集の場合)
募集要項に必ず記載するべき項目には、以下の5つがあります。
(1)仕事内容
「ドライバー募集」のみでは漠然としているため、興味を持つ人を減らしてしまいます。どのようなタイプのトラックを運転するのか、何を運ぶのかなど、できるだけ具体的に記載してください。求職者がその職場で働くイメージを持つことができるだけの情報量が必要です。
(2)求める人材
業務を行う上で、どんなスキルや技能、資格が必要なのかを明確に提示しましょう。運転技術については必ず明記する必要があります。
(3)勤務時間
出勤と退勤の定時、平均残業時間を記載します。1日の業務の流れを記載すれば、より職場の雰囲気が伝わりやすいでしょう。また、現在のスタッフが実際にこなしている労働時間のパターンを紹介することも重要です。
(4)交通アクセス
勤務地の住所や最寄り駅からの所要時間を記載しましょう。
(5)給与・待遇・福利厚生
給与は「月給○○万円〜」と下限だけではなく、上限の金額も書くことをお勧めします。昇給・賞与などの待遇(福利厚生)は自社のアピールポイントになるので、詳しく記載しましょう。
以上は必要最低限の情報ですが、必ず揃えるようにしましょう。なお、職業安定法などの労働に関するルールが変化したことで、以前に比べより詳しい内容の掲載が求められるようになっています。
たとえば、試用期間や求人する事業所・個人名、派遣労働者として雇用するのかどうかといった項目も募集要項にはっきりと記載しなくてはなりません。また、固定残業代を支給する場合、裁量労働制の場合などについても、必ず記載する必要があります。福利厚生や有給、産休や育休など、求職者が欲しいと考える情報を不足なく揃えるようにしましょう。
求人票の見直しや、掲載先に合わせた見せ方についても考えてみましょう。
Nさんは求人票の基本事項を埋めるべく、昇給や賞与、残業代や交通費などの待遇面、労働環境など、自社の「売り」について言語化できるよう、自社ホームページなどを見直していました。そうしているうちに、ドライバーとして働くことを希望する人に届く魅力的な情報発信ができていないのかもしれないのでは……という考えに至りました。












Nさんは知らず知らずのうちに、在職中の従業員に、理想とする人物像についてのヒアリングと分析をおこなっていたようですね。
ドライバー向け求人情報作成のポイント
Nさんが得た情報から、ドライバー向け求人情報作成のポイントを見ていきましょう。
①若手ドライバーの場合は特に「稼げなくても、休みは多い方が良い」
かつて、ドライバーの募集広告では「月収○○万円以上可能」といったストレートな文言が多く見られました。しかし、最近ではむしろ広告に掲載する月給が高いと「給料が高い分だけたくさん働かされるのでは」と警戒される可能性があります。以前よりもワークライフバランスが重視されるようになり、きちんと休めることの優先度が上がっているのです。
②家族向けの発信で不安を取り除く
ドライバーの家族が、運送業界について「仕事が大変そう」「労働時間が長そう」といった印象を抱き、不安を感じているケースは多いようです。ドライバーとして働くことを家族から止められる原因にもなり得るため、自社のホームページや求人情報などに家族向けの内容を載せるのもひとつの方法です。
たとえば、「土日祝が休みなので、家族だんらんの時間も十分取れます」「こんな福利厚生があります」「健康管理もしっかりやっています」などのテキストや、実際に働くスタッフの雰囲気がわかるような写真や動画などを掲載することで、家族に配慮があることが伝わります。
③男性に限らず、女性に向けた発信を。シニアに対してもアプローチ
いまやドライバーは男性だけの仕事ではありません。最近は軽貨物のドライバーの需要も多く、そのような職場では多くの女性やシニア世代も活躍しています。「残業なし」「女性・シニアも活躍中」「重い荷物は運ばない」など記載すると間口が広がります。「普通免許があればOK」「AT限定可」などもよいでしょう。
④アルバイトの場合は短期でしっかり稼ぎたいというケースも
今回の採用では直接の関係はありませんが、ドライバーのアルバイト採用を検討する場合は、上記と少し考え方が異なります。「1日フルに働いて、短期間でしっかり稼ぎたい」という要望が多いと考えましょう。「日雇い」「日払い」「単発」といったキーワードを効果的に利用したいところです。





採用につながりにくい求人原稿とは?
なかなか採用につながりにくい求人票の特徴も確認しておきましょう。以下の点で、作成した求人票に該当箇所はないか、チェックしてみてください。
(1)仕事内容が明確に書かれていない
(2)抽象的でわかりにくい(具体的な数字などが記載されていない)
(3)情報が少ない(勤務地住所、交通アクセスなどが記載されていない)
(4)未経験歓迎と言いながら、専門用語が多い
実際になにをするのかわからない、情報が少ない、難解な専門用語が多いといった求人票では、「ここで働けるかな」と求職者を不安にさせ、応募につながらないケースが多くなってしまいます。
今回の採用では、物流・運送会社の経験者と社会人経験のある業界未経験者を求めています。「未経験者歓迎」の場合は、専門用語や業界特有の言い回しなど、経験者でないとわからない文言の使用は避けましょう。詳しくは「求人原稿のわかりやすい書き方と例文」をご覧ください。
一口に「求人票」と言っても、募集要項として必須の内容や、職場にマッチした人材の採用のために掲載するべき内容など、考えるべき項目は多くあるのです。
ドライバー採用の応募者の対応から面接、採用可否の連絡まで

初めてのネットを使った採用活動。応募者が来るかどうか、ドキドキしていたのはNさんだけではありません。I社長も内心ひやひやしていましたが、想像以上の応募が来たようです。Nさんは張り切って応募書類をチェックしています。





履歴書チェックのポイント
人材を募集する際、大多数の企業が応募者に提出を求める履歴書ですが、これには志望動機、学歴や職務経歴、取得資格、希望する勤務条件(形態や就業場所)といった、基本的事項を確認する目的があります。応募者がどのような人物かを判断するための材料であり、その後、応募者と面談をすることになります。履歴書があると、採用判断の助けになります。
内容をチェックする際は、過去の経験やスキルを重点的に確認しましょう。業界経験のない人の場合など、特に教育に力を入れる必要がありますので、そのチェックも行うようにしてください。逆に、経験者の場合は教育コストが軽減できます。能力や経験に応じて給与に今後の昇給などに反映させるようにしましょう。
また、書類選考の際、 適切な基準で採用者を選ぶためには、何より採用方針を決めることが重要です。方針や基準が統一されていないと、採用業務の担当者ごとに評価がバラバラになってしまいます。自身の職場が求める人材を明確にし、共有するようにしましょう。







直接やり取りが発生してからの対応方法
Nさんの対応のように、直接応募者とやりとりが発生してからは、スピーディーな対応がおすすめです。直接やり取りが発生してからの対応方法について、詳しく見ていきましょう。
①面接日程は早目に設定する
面接日程は早めに設定するようにしましょう。応募者は他の企業の面接も控えている可能性が高く、早目のスケジュール確保が有利となります。面接官の選択や日程確保などの社内調整がスムーズに行えるよう準備しておく必要があるでしょう。
②合否の決定など、いつまでに連絡するか明確にする
合否の決定や連絡、その他手続きなどを含め、すべてに対してスピードをもって対応しましょう。すぐに連絡できない場合にも、「〇日以内には必ず連絡」など、日程を明確にしておくことが重要です。ただし、その場合においても長い期間を置かないようにしましょう。
③求職者の負担を軽減する工夫をする
「面接は一回だけで完結」「履歴書は当日持参」など、求職者の負担を最小限にすることを心がけましょう。






面接のポイント
次に面接でのポイントについて見ていきましょう。
①面接での質問内容
面接での質問内容はリストにまとめておきましょう。仕事に関係ない内容(家族構成、出身地など)は聞かないよう注意してください。また、待遇面の希望などについても確認しましょう。なお、体調・体力面での不安がないかどうかについての質問も含めてください。
②面接時に見るべきポイント
ドライバーはひとりの時間が多く、そうしたニーズを持った方からの応募もあるとはいえ、仕事はひとりで完結するものではありません。緊急時などすみやかに連絡できることや、コミュニケーション能力も重要です。柔軟性を持った人材であるかどうかを面接のやりとりで見極めるようにしましょう。
また、未経験であっても、ある程度業界についての知識を構築しているなど、学びの姿勢があるかどうかも見るようにしてください。運送業に対する需要は大きくなっていますので、その動きに対して意識を向けられることも大切です。
③面接の際に企業側が注意するべきポイント
自社について不安や疑問を抱えていないか、丁寧な確認をすることが重要です。「家族に心配されている」といった発言があった場合にも、企業としてどのように向き合っているか、きちんと説明するようにしましょう。
さて、面接を終えたI社長とNさん。今回の面接について、反省会をしているようです。



Indeedは求人情報を掲載するだけでなく、掲載した求人情報に対する応募者の管理もできます。
以下のように、自社の管理画面から、選考中の応募者や、面接の予定、次にやるべきことなどが把握可能です。

ページ上部にある「応募者」タブから、以下のような各応募者の管理画面に進みます。
それぞれの応募者の選考状況が一覧で表示され、選考状況の確認のほか、応募者へのメッセージ送付や、面接のオファーなども可能です。

Indeedの応募者管理機能の詳細な使い方については、以下をご覧ください。
採用面接後の対応は?アフターフォローなど

よい人材が集まったため、今回の採用活動では2名を採用することになりました。慢性的だった人手不足が解消できるのではないかとI社長も喜んでいます。




採用面接後の応募者対応のポイント
I社長とNさんは、採用面接後の応募者対応をしていくようです。ポイントを見ていきましょう。
ポイント①選考結果は早めに伝える
選考結果はできるだけ早めに伝えましょう。他の企業の選考を同時に受けている可能性もあるからです。また、内定時に他の職場で働いている人の場合、いち早く離職の準備に取りかからなければなりません。メールでも構いませんが、確実に伝えるために電話も活用してください。
ポイント②条件交渉
認識の違いや入社後のトラブルを起こさないためにも、双方が納得できる落としどころを見つけるのが重要です。候補者の要求にどのくらい応じるべきか、事前に検討しておく必要があります。「既存社員とのバランスを取ること」が重要です。
ポイント③入社時期の調整
入社時期は内定前に求職者と話し合って決定しておきましょう。なんらかの事情で入社時期を遅らせてほしいという要望が出る場合もあります。中途採用では内定者の入社時期が遅れる可能性があると想定しておくべきです。無理のないスケジュールを組むようにしましょう。
ポイント④内定承諾
応募者が内定を受け入れ入社を決めることを「内定承諾」と言います。内定誓約書、就職承諾書、入社承諾書などを内定者に渡すケースもあるでしょう。法的な拘束力はありませんが、応募者のはっきりとした意思表示となり、連絡なしでの辞退といったトラブルは減る可能性があります。





定着率改善の対策
物流・運送会社の離職率については、入社1年未満で退職する人が約7割、1カ月以内で辞めている人が約4割というデータもあるそうです。ドライバーに長く働いてもらうためには入社後のフォローも大切。I社長とNさんは定着率を改善するために対策をするようです。
対策①添乗指導員向けマニュアル、および新人教育カリキュラムの徹底
入社後の研修期間中の退職率が圧倒的に高く、定着率アップのカギは「新人教育」にあると言えるそうです。そのため、新人ドライバーの最初の1カ月は、おおむね添乗指導員、つまり先輩ドライバーが付き添って指導するケースも。
しかし、新人教育にマニュアルが存在せず、先輩ドライバーの経験や勘に任せているケースは注意が必要です。先輩ドライバーたちも「適切な教え方を自分たちが教えられていない」という状態を改善するためには、指導マニュアルの作成や改定などを行うなど、新人教育システムの見直しが必要となります。
物流・運送会社のなかには、試験を実施し、一定基準を満たした人しか添乗指導できないようにする「ライセンス制度」を設け、手当をつけているところもあるようです。
対策②「1日体験入社」の実施
ドライバーの定着率アップのために、「1日体験入社」を実施している会社もあるようです。先輩ドライバーの助手席に乗って一緒に配送先をまわり、自分もできる範囲かどうかを見極めてもらうのです。この時点で辞退する場合には、企業側としても大きなロスになりにくいでしょう。
なお、体験入社は「企業側が応募者を見る」ためにも役立ちます。いわゆる「長時間の面接」と同じ意味合いもあると言え、会話を重ねたりさまざまなシーンに立ち会ったりすることで、その人をより深く知ることができるようです。
まとめ

新人教育も終わって1カ月後。ドライバーそれぞれが自分のペースで仕事をスタートしています。長距離のドライバーから短距離のドライバーになって、家族と過ごす時間を増やしたいと転職してきたOさん。また、車の運転が好きだからドライバーとして働きたいと異業種から未経験で転職してきたMさん、それぞれ毎日楽しく働いているようです。








無事にドライバーを採用できたNさんとI社長。今後はさらに工夫を重ね、よい人材を探し出すことができるのではないでしょうか。
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