業務委託採用

業務委託の採用準備からアフターフォローまで一挙解説【はじめての採用ガイドブック】

ビデオ会議で議論しているイメージ
企業が業務の一部またはすべてを外部の事業者や個人に委託することを「業務委託」と言います。企業が業務委託を活用することで、自社の労働力を補ったり、教育コストや採用リスクの削減ができたりするというメリットがあります。

この記事では、企業が業務委託の採用を行う場合の方法・注意点などについて、ここ数年で浸透したテレワークの考え方にも触れつつ、アプリの開発・制作会社を舞台にストーリーを織り交ぜながら解説していきます。
登場人物
M社副社長 Nさん
M社副社長(採用担当) Nさん(38歳)
アプリの開発・制作会社M社の副社長。以前はエンジニアとして活躍しており、M社の創業メンバー。主に受託開発を行っていたが、自社開発のオリジナルアプリが高評価を受け、事業拡大のために人員補強のため即戦力が欲しい。直近ではシナリオライターやデザイナーを採用したいと考えている。
アプリの開発・制作会社M社の副社長。以前はエンジニアとして活躍しており、M社の創業メンバー。主に受託開発を行っていたが、自社開発のオリジナルアプリが高評価を受け、事業拡大のために人員補強のため即戦力が欲しい。直近ではシナリオライターやデザイナーを採用したいと考えている。
M社 社員 Iさん
M社 社員 Iさん(38歳)
中途採用でM社に入社。新卒で就職した制作会社ではアプリ制作以外にも採用活動などにも対応してきた経歴があり、採用経験も豊富。業務委託で採用した人材の正社員登用なども成功させてきた実績がある。キャリアアップを目指してM社に入社したが、会社の規模は以前の会社に比べて大きいものの、柔軟性がないと感じている。
中途採用でM社に入社。新卒で就職した制作会社ではアプリ制作以外にも採用活動などにも対応してきた経歴があり、採用経験も豊富。業務委託で採用した人材の正社員登用なども成功させてきた実績がある。キャリアアップを目指してM社に入社したが、会社の規模は以前の会社に比べて大きいものの、柔軟性がないと感じている。
目次
h2 アリバイト採用の基本の流れ

業務委託という働き方とは?

男性2名が打ち合わせしているイメージ

アプリの受託開発が事業の中核であるM社。最近リリースしたオリジナルアプリが口コミで高評価を得たため、さらなるアップデートのためにリソースを投入したい状況となっている。しかし、現在の従業員数では対応しきれないと、副社長であり採用を担当しているNさんは頭を抱えています。そこに採用経験が豊富なIさんがやってきて……?

M社副社長 Nさん
Nさん
困った……。自社アプリがヒットしたのはいいけど、案件のスケジュールやタスク一覧を見ると、人手が足りない……。開発途中のアプリも進めなきゃいけないけど、既存アプリの更新もしっかりしていかなきゃいけないし……なんとか経験のある人が社員になってくれないものかね
M社 社員 Iさん
Iさん
その件だけど、業務委託っていう方法もあると思うんだ。お願いできるシナリオライターさんやデザイナーさんなら、結構あてがあるじゃない。そういう人たちを業務委託として動員して、社内の人員不足を補っていこうよ
M社副社長 Nさん
Nさん
それが、つながりのあるクリエイターさんやエンジニアの人たちが軒並み忙しくって、お願いできなさそうなんだよ。かといって、公に募集するにしても、うちは受託開発を中心にしてきた会社だから、なんかうまくやりとりするイメージが湧かないんだよ……立場が変わるわけだし
M社 社員 Iさん
Iさん
そんなこと言ってたら、せっかくのチャンスも逃しちゃうよ。大事なのは「どうしたら最善の結果につながるのか」じゃないのかな
M社副社長 Nさん
Nさん
……そう言われるとその通りなんだけど……ちょっとまだイメージしきれてないんだよね……
M社 社員 Iさん
Iさん
世の中には才能にあふれた人材がいっぱいいるはず。フリーでやっているシナリオライターさんやデザイナーさんは、やはり独立するだけあって、スキルが高い人も多いんだからここで足踏みしてるのはかなりもったいないと思うよ
M社副社長 Nさん
Nさん
なるほどね。さっきも言ったけどイメージが湧かないというのは、俺がそもそもきちんと情報をきちんと入れていないからだろうな。採用方法とか
M社 社員 Iさん
Iさん
その認識があるなら全然だいじょうぶだと思うよ。まあやってみよう。俺、前の会社で採用もやってたから、サポートできるし。久しぶりだから新しいことは勉強しなくちゃいけないけどさ。「業務委託」自体は当然わかってるわけだよね?
M社副社長 Nさん
Nさん
委託「される」側としては当然知ってるよ

IさんはNさんに「業務委託で採用する」という観点から改めて理解をそろえることから始めることにしました。一体どんな働き方なのでしょうか。

業務委託採用とは

ここでは業務委託とはどういう働き方か、また企業が業務委託採用をするメリットと注意点について見ていきましょう。

そもそも業務委託とは

「業務委託」とは、業務の依頼主と雇用関係を結ばずに、対等な関係で業務を引き受ける契約形態を指します。民法で定義されている雇用形態には「請負契約」「委任(準委任)契約」「雇用契約」の3種類があります。そのうちの「請負契約」と「委任(準委任)契約」を総称して「業務委託契約」と呼んでいます。

さまざまな契約の種類

業務委託契約と雇用契約の違いは、以下のようになっています。

雇用形態 雇用主 勤務時間の制限 賃金の種類 成果物の完成責任
業務委託契約(「請負契約」と「委任(準委任)契約」) なし なし 報酬 場合による
雇用契約(正社員など) 勤務先企業 あり 給与 負わない

「委任(準委任)契約」は、「働いた期間」に対して報酬が支払われます。「請負契約」は「成果物」に対して報酬が支払われます。「委任(準委任)契約」は成果物が完成しない場合にも報酬が保証されています。

企業が業務委託で採用するメリットと注意点

企業が業務委託で人材を採用する場合のメリットと注意点は次のようなことが挙げられます。

【メリット】
・企業の従業員教育や採用コストの削減
・経験豊富な人材や専門的スキルのある人材を雇用することで、より良い成果をあげることができる
・企業の利益や売上に直結する業務(コア業務)に専念できる

【注意点】
・報酬金額が高くなるケースがある
・社内にノウハウが蓄積されない

業務委託で契約を交わす場合、最小単位としては「時間ごと」「成果物ごと」の契約が発生しますので、雇用契約よりも契約内容を細かく確認する必要があります。報酬額、成果物の量、修正回数、期間の延長があった場合や、「事前には想定していなかった経費が発生した場合はどうするか」などの取り決めがなかった場合など、その後のトラブルに発展する危険性があるため、契約内容の認識の違いをなくしてから業務に入ることが重要です。

それから、雇用契約であっても重要ですが、「業務単位」「プロジェクト単位」など、細かな単位で経験を確認し、どのようなスキルを持っているか具体的に確認する必要があります。

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M社副社長 Nさん
Nさん
応募者がどんなスキルを持っているのか具体的に確認するときは、以前雇用されていた企業やどんなプロジェクトでどんな役割を担ったのかといったことが大きなヒントになるよね
M社 社員 Iさん
Iさん
そうだね。どんなスキルを持っていて、どういう案件でどう活かしたのかとか、念入りに確認しないと、業務内容が違ったとか、こちらの求めているスペックじゃなかった……なんてことになりかねないから慎重にならないとね
M社副社長 Nさん
Nさん
うんうん。あと、うちはプロジェクト単位で受けるケースばかりだからわからないんだけど、業務委託の募集には、うちだけじゃなくて他の会社の仕事もしている人からの応募も来る可能性はあるよね?そういう場合に社員がフォローしなくちゃならないことも多いんじゃないのかな?社員の負担が大きくならないか検討しておきたいな
M社 社員 Iさん
Iさん
業務の範囲を事前に明確にすることが重要だね。『ここまでを依頼しますよ、されますよ』ってことを依頼する側もされる側もしっかり意識するようになるはずだし、しっかり考えておくべきことだよね
M社副社長 Nさん
Nさん
ああ、それはそうだ。となると、スタッフの層を厚くできるし、対応できる仕事のパターンも増えるから、業務委託で働いてくれる人は多いほうがいいな……。でも母数を増やすにはどうすればいいんだろう?
M社 社員 Iさん
Iさん
そうだなあ……本当は常駐してくれるのがいいんだけど、リモート勤務とかテレワークとかでもいいんじゃないかな
M社副社長 Nさん
Nさん
ああ、リモートかテレワークか。……それって意味が違うんだっけ?
M社 社員 Iさん
Iさん
テレワーク、リモートワークって、自宅やサテライトオフィスとか、会社以外の場所で、ICT(情報通信技術)を使って業務を行う働き方のことで、基本的にはどちらも同じ意味で、大きな違いはないよ
M社副社長 Nさん
Nさん
うちのオフィスに出社せずに働いてもらうって認識だよね。自宅でやることが多いのかな
M社 社員 Iさん
Iさん
そうだね
M社副社長 Nさん
Nさん
勤怠管理とか、チームのコミュニケーションとか、どうしてた?
M社 社員 Iさん
Iさん
リモートの場合は勤怠管理はクラウド型の勤怠管理システムと社内の各システムを連携させていたね。あと、チームビルディングについても工夫次第。前の会社では業務や案件別に共通の認識が持てるように社内のポータルサイトにまとめたり、こまめにオンラインミーティングをしたりしてたかな。けっこうトラブルは避けられたよ。 出社とリモートのハイブリッド型っていう手もあるし
M社副社長 Nさん
Nさん
成功例があって、そのロードマップがあるっていうのはいいな……。だんだん前向きな気持ちになってきたよ
M社 社員 Iさん
Iさん
じゃあテレワークについても確認しておこう。くれぐれもこれは業務委託に限った話じゃなくて、社員でも適用できることだからね。お間違いなきよう
M社副社長 Nさん
Nさん
オッケー!

テレワークとは

ここで、働き方のひとつとして、「テレワーク」について理解しておきましょう。

一般社団法人日本テレワーク協会によると、「テレワーク」は「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。従来の職場通勤ありきの働き方とは異なり、業務委託で働く人々にはこの働き方を選択している場合も多いものです。

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ただし、テレワークはメリットもあれば、注意点もあります。詳しく見ていきましょう。

企業側のメリット

企業側から見たテレワークのメリットは次のような内容が挙げられています。

①人材の確保

働く場所や時間の自由度が高いので採用の間口が広がり、より多くの求職者を募ることができます。遠方居住者はもちろん、場合によってはシルバー人材や通勤が困難な障がい者などの新規雇用にもつながります。

②人材の離職抑制・就労継続支援

育児や介護などさまざまな家庭の事情に合わせて柔軟な、働きやすい環境を社員に提供することで離職率を下げることができます。

③事業運営コストの削減

オフィススペースの維持や通勤等にかかる費用を削減できます。

④非常時の事業継続

地震や台風などの非常災害時やパンデミック時においても、業務を継続しやすくなります。

⑤企業イメージの向上

「さまざまな事情に合わせて柔軟に働くことのできる環境を提供している企業」というメッセージを発信することによる企業イメージの向上が期待できます。

従業員側のメリット

テレワークは従業員側にとってもメリットは多く存在します。もちろん、このような働き方ができるという点で、応募の増加につながる可能性があり、結果的には企業側のメリットにもなるでしょう。

①ワークライフバランスの向上

通勤時間が不要になるので、趣味の時間の確保、家事や育児、介護あるいは病気治療などと仕事との両立がしやすくなります。あるいは、オフィス所在地に縛られず、居住地を自由に選択することなども可能になります。

②生産性の向上

通勤中の満員電車や渋滞などのストレスがない、人によっては自宅の方が作業に集中しやすいなどの理由で生産性の向上が期待できます。

テレワークの注意点

多くのメリットがあるテレワークですが、社内で広く実施するためには、勤怠管理、労働時間管理、人事評価制度を整え、情報セキュリティのリスクに対応していく必要があります。

業務内容やその進め方についてのコミュニケーションは、可能な範囲で入念に行うようにしましょう。チャットツールの利用やオンライン会議の活用が有効です。ただし、成果物での契約の場合、時間を拘束する会議形式の打ち合わせそのものに報酬が発生しない場合については、おたがいの確認の上で実施するようにしましょう。

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M社副社長 Nさん
Nさん
うんうん、テレワーク、やっぱうちの業界に合っているというのもわかる気がする
M社 社員 Iさん
Iさん
よかった!まあ、そうじゃないと俺も推さないわけだけど。納得してもらわないと、いい求人票もつくれないし
M社副社長 Nさん
Nさん
求人票……!そうだ、いままでとは違った求人票になりそうだな……。苦手なんだよな……。これまでは リファラルで採用することばかりだったし。うちの特色を表現するのも難しいし、業務委託での採用となると難易度高そう!

業務委託で働きたい人は求人票のどこを見ている?求人票の作り方は?

オフィスで打ち合わせをしているイメージ

業務委託やテレワークといった働き方について学んだNさん。いよいよIさんと求人票の作成に移るようですが……?

M社副社長 Nさん
Nさん
今まで『みんなで同じ場所に集まってやる』みたい働き方しかしてこなかったからしっくりこなかったけれど、クリエイターやプログラマーは個人でコツコツやることが多いし、業務委託やテレワークでもまったく問題ないかもね
M社 社員 Iさん
Iさん
うん。もちろんコミュニケーションとか気をつけなきゃいけないことはあるけどね。いろんな働き方の人を迎えた方がいいよ!……というわけで、さっそく業務委託採用で、テレワークOKという求人票をつくってみよう
M社副社長 Nさん
Nさん
よーし、求人票!結構具体的に仕事内容や働き方について書く必要があるな
M社 社員 Iさん
Iさん
あっと、その前に基本的な求人票の書き方について復習してもいい?久々だからさ
M社副社長 Nさん
Nさん
もちろん!

NさんとIさんは業務委託採用の求人票を作成する前に、基本的な求人票の書き方を確認するようです。

基本的な求人票の書き方

効果的な採用活動のためには、求職者の知りたいことをカバーしながら、いかに魅力的な募集要項とするかが重要です。求人票作成のポイントについて見ていきましょう。

募集要項に必ず記載すべき項目には、以下の6つがあります。

・業務内容(取り扱い商品などがあれば問題のない範囲で明記)
・就業場所
・勤務時間
・給与
・保険に関する事項
・契約期間

以上は必要最低限の情報ですが、試用期間や求人する事業所名、今回の場合であれば「業務委託」といった雇用形態なども募集要項にはっきりと記載しなくてはなりません。

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そして、NさんとIさんは、上記の募集要項に必ず記載するべき6つの項目をベースに、業務委託採用向けの求人票にするために必要なポイントについて考えていくことになりました。

業務委託の求人情報作成のポイント

M社副社長 Nさん
Nさん
業務委託の求人情報って、どんなポイントに注目するのかな。
M社 社員 Iさん
Iさん
まずは『雇用形態は業務委託であること』や、業務の内容や必要なスキルが分かる内容にすることだね。誰に向けた求人か明示しないと
M社副社長 Nさん
Nさん
なるほど。あとはさっきの「テレワーク」は入れないとだよね。それと、業務内容や勤務時間とか書いておいたほうが働き方のイメージがしやすいかな。あ、そうだ、あと給与のことも書かないといけないんだ
M社 社員 Iさん
Iさん
既に社員として働いている人の給料や業務内容、仕事で必要な能力に対応させた額にしよう。実際に働いてもらうようになったら、成果と能力見ながら見直してもいいしね。……そういうことも求人票に書こう!
M社副社長 Nさん
Nさん
そうだね、あと他にはなにがあるかな……
M社 社員 Iさん
Iさん
服装や髪型が自由とか?僕たちは当たり前だと思っているけれど、意外と働きやすさに関係することだよね
M社副社長 Nさん
Nさん
うんうん。自分の好きな格好で、楽しく働いてほしいからね。そうだ、あとうちは業務効率化のため、PC周辺機器は好きなものを購入していいよね。業務に応じて、windowsかmacか選べるし、ペンタブレットや液晶タブレットの選択もできる。業務委託契約の場合は、希望を聞いて会社で購入して貸与ってことになるかな
M社 社員 Iさん
Iさん
あと、勉強のため業務で必要な専門書や書籍、ゲーム費用だって会社が負担してくれる。これは業務委託の人の場合も経費として請求してもらえればいいよね
M社副社長 Nさん
Nさん
なんかうちのよさを再発見したよ……

Nさんが自社の魅力に改めて気づいたところで、業務委託採用向けの求人票作成のポイントを確認しましょう。主に次の3つが重要です。

ポイント①雇用形態と業務の範囲を明記する

「業務委託で働きたい」人に向けた求人であることがわかるように、具体的なキーワードを入れましょう。

それから求人票には具体的な業務内容の範囲も記載するようにしましょう。今回のゲームアプリ制作の場合は、依頼された作業をこなすというケースもあれば、提案にかかわるケースも考えられます。業務委託の方がどこからどこまでを担当するのか、どういったポジションを担うのかなど、より詳細に書くことが大切です。それから、勤務時間についても記載しましょう。フレックスタイム制度を導入する場合は、コアタイムなども明記してください。

また、今回はデザイナーやシナリオライターなどクリエイターの採用ですので、作品をまとめたポートフォリオを事前に送付するように記載しておくことで、応募者が過去にどんな役割やポジションで働いてきたのか、どんなスキルを持っているのか、入社後に即戦力として働けるのかなど判断しやすくなったり、面接時のコミュニケーションのきっかけとして活用できたりするでしょう。

ポイント②依頼する仕事の分量や内容に応じた給与を設定する

今回のような業務委託採用の場合、既に社員として働いている人の給料などをもとに、業務内容、仕事で必要な能力に対応させた額を判断しましょう。実際に働くようになった後で、給与を見直したり、成果による加算を行ったりするということを記載するのも有効です。

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ポイント③社内制度や福利厚生について記載する

NさんとIさんの会話で出たように、備品や資料の購入補助といった従業員の業務をサポートするような制度などがあり、業務委託の方も対象となるケースは求人票に記載するようにしましょう。

M社副社長 Nさん
Nさん
だんだん求人票が埋まってきたぞ……。どこか気になるところない?
M社 社員 Iさん
Iさん
大丈夫だと思うよ。一応、採用につながりにくい求人票っていうのもあるから、それも確認しておこうか。反面教師になるからね
M社副社長 Nさん
Nさん
そうだね。念には念を入れないと……!

採用につながりにくい求人原稿とは?

ここまで「良い求人票」を作成するためのポイントを確認してきました。反対に、なかなか採用につながりにくい求人票の特徴も確認しておきましょう。以下の点で、作成した求人票に該当箇所がないか、チェックしてみてください。

(1)仕事内容が明確に書かれていない
(2)抽象的でわかりにくい(具体的な数字などが記載されていない)
(3)情報が少ない(勤務地住所、交通アクセスなどが記載されていない)
(4)未経験歓迎と言いながら、専門用語が多い

実際になにをするのかわからない、情報が少ない、難解な専門用語が多いといった求人票では、「ここで働けるかな」と求職者を不安にさせ、応募につながらないケースが多くなってしまいます。

今回は経験者を採用することを目的としたケースなので該当しませんが、「未経験者歓迎」の場合は、専門用語や業界特有の言い回しなど、経験者でないとわからない文言の使用は避けましょう。詳しくは「求人原稿のわかりやすい書き方と例文」をご覧ください。

一口に「求人票」と言っても、募集要項として必須の内容や、職場にマッチした人材の採用のために掲載するべき内容など、考えるべき項目は多くあるのです。

M社副社長 Nさん
Nさん
よ~し、求人票できた!アップするぞ~!ってどこに?
M社 社員 Iさん
Iさん
あ、そうだ!Indeed使おうと思っていたんだ。バイト募集のイメージがあるけど、実は意外とエンジニアとかクリエイティブな職でも応募が来るから使い勝手良いんだよね
M社副社長 Nさん
Nさん
あ、よくCMで見かけるところだよね。採用実績がある君が言うなら、そうしよう!

求人票に入れ込むべき要素を整理して記載できたNさん。いよいよ募集開始です。

業務委託採用の応募者対応から面接、採用可否の連絡まで

書類を確認しているイメージ

求人票を出したところ、さっそく応募者が来て、Nさんは大喜びです。応募者の中には、業務委託で出社とテレワーク併用で働きたい方、地方在住で完全にテレワーク希望の方などがいます。さっそく書類選考を進めていくことになり、NさんとIさんは応募書類を確認することに。押さえるべきポイントについても見ていくようです。

M社副社長 Nさん
Nさん
よかった~!ちゃんと応募が来たー!
M社 社員 Iさん
Iさん
我々が求めている人材に向けた求人票がつくれたってことだよね。よかった。どんな方が来てくれそう?
M社副社長 Nさん
Nさん
結構有名なアプリに関わってた人もいるね。そんな人から応募が来るのは嬉しいなあ。このアプリ好きなんだよね。あのキャラクターは発明だと思うんだよな。わかるかな〜
M社 社員 Iさん
Iさん
……感想が別の方向に飛んでるけど?
M社副社長 Nさん
Nさん
……よーし、書類選考といきましょうか~!

履歴書や職務経歴書などの書類選考

提出された履歴書や職務経歴書などを参考にしながら、書類審査や面接を進めていきます。経験値やスキルを確認することも重要ですが、今回は業務委託での採用となるため、働き方についてのスタンスを確認するようにしましょう。

履歴書では、特に過去の経験やスキルを重点的に確認しましょう。人材を募集する際、大多数の企業が応募者に提出を求める履歴書ですが、これには志望動機、学歴や職務経歴、取得資格といった、基本的事項を確認する目的があります。応募者がどのような人物かを判断するための材料であり、その後、応募者と面談をすることになります。

職務経歴書とは履歴書とは別物で職務についての詳細が記載される書類です。応募者がこれまで携わってきた仕事の詳細を知るために提出してもらう書類で、自社が求めている人材とのマッチングを見極める上での参考になります。企業側が指定しない限り、フォーマットはなく書き方は自由ですが、応募者がどのような内容を記載してくるかも、合否の判断材料になります。職務経歴書では次のようなポイントをチェックしましょう。

(1)自社が求めている職種を強調している
(2)採用者の立場に立ってわかりやすく整理されている
(3)在籍期間や退職理由を明記している

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さて、次に面接をすることになったNさんとIさん。面接の日程調整を進めているようです。

M社副社長 Nさん
Nさん
う~ん、話を聞いてみたい人がたくさん集まってくれたね……
M社 社員 Iさん
Iさん
なるべく多くの人と話したいから、面接の日程調整、どんどん進めていかないとね。うちの会社以外にも応募している可能性があるから
M社副社長 Nさん
Nさん
そうだよな……。応募に対するリアクションが遅れると、面接まで至らないこともあり得るからな。苦い経験あるよ……
M社 社員 Iさん
Iさん
応募が来たタイミングでできるだけ早く返信し、応募者にお礼を伝えよう。手伝うよ
M社副社長 Nさん
Nさん
助かる!ありがとう!
M社 社員 Iさん
Iさん
あ、そうだ、 面接の注意点とか念のため、確認しておいていいかな。あと、今回、 オンライン面接じゃん。その注意点もおさえておきたい!
M社副社長 Nさん
Nさん
うんうん。オンライン面接さ、過去の作品を見せてもらったりするのにはいいなと思っててさ。話し方や雰囲気も重要だけど、ポートフォリオや職務経歴書見ながら、詳しい話を聞きたくて
M社 社員 Iさん
Iさん
直接来てもらえそうな人は最終面接だけ対面にしてもいいかな。基本はオンラインで、 ハイブリッド面接を試してみよう。よ~し!きっちり準備しておこう!

面接

面接では以下のポイントを意識しましょう。

①面接設定、注意点

応募が来たらなるべく早く対応しましょう。応募通知が来た場合にはお礼の返信(あるいは電話)を、電話での募集の場合はお礼をしつつその場で簡単なヒアリングをします。氏名、連絡先、経験者か未経験者か、希望の勤務条件などを確認し、折り返し連絡する旨を伝えてください。

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②面接での質問内容

一般的な質問以外にも、今回のようなケースでは過去に関わった作品や提示されたポートフォリオなどをもとに、その制作においてどのような経験やスキルを得たかについて聞きましょう。作品制作・執筆にかかった時間、得意ジャンルなども重要です。

また、「面接で聞いてはいけない内容」を把握しておきましょう。応募者が自発的に話し出す場合には問題ありませんが、企業側から尋ねてはいけない内容については、しっかりと把握しておきましょう。また、求職者の適性・能力とは関係ない事柄を採否の判断要因にすることも、同様に認められていません。

【避けるべき質問の例】
・本籍・出生地に関する質問
・家族に関する質問
・生活環境や家庭環境に関する質問

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面接官になったら押さえたい、面接時の雰囲気づくりや応募者とのやりとりのコツ
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③面接時に見るべきポイント

今回の業務委託採用の場合、経験やスキルを重視するものですが、今後のキャリアプランについて確認することも重要です。それから、応募者が業務委託という働き方を続けていく予定なのか、正社員になる希望はあるのかなどについても確認してみてください。

そして、NさんとIさんが取り入れることにしたオンライン面接ですが、対面とは異なる注意点があります。しかし、うまく使い分けることできちんとした審査が可能です。

④オンライン面接の注意点

オンライン面接に関しては、次のような注意点を押さえておきましょう。距離や時間を問わないことが大きなメリットであるオンライン面接。実施するにあたっての注意点は次の通りです。


1. 候補者が準備できるよう十分な時間を与える
2. 静かで邪魔のない場所を選んで面接を行う
3. インターネット接続を確認する
4. オンライン面接の招待をメールで候補者に送る
5.服装もビジネス用のものを
6. 対面での面接と同様の緊張感を持つ

また、Iさんが言っていた、対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド面接」を実施する企業も増えています。オンラインと対面でそれぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。

対面面接とオンライン面接それぞれのメリットとデメリットのスクリーンショット
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オンライン面接を実施するうえでの基本的なポイント
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オンライン採用における面接マニュアルの作り方
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Indeed上で面接を設定することも可能です

Indeedのサービスについて、ここまで求人情報の掲載と、応募者の管理について紹介しましたが、それらに加えて面接の設定にも対応しています。オンライン面接もIndeed上で行えるため、採用活動の一連の流れが完結できます。

応募者との面接の設定には、[自社の管理画面]→[応募者一覧ページ]→[応募者詳細ページ]と進み、[応募者詳細ページ]の上部右にある「面接を予約するボタン」を押すと以下の画面になります。

面接予約画面の「招待状を送信」ボタンの位置を示したスクリーンショット

日付、面接形式を入力し、応募者に宛てたメッセージを入力し、「招待状を送信」のボタンを押すと、面接の招待がメールで応募者に送付されます。

このとき、面接形式で「Web面接」を選択すると、招待メール内にリンクが掲載されます。

招待メールを受け取った応募者が、内容を承諾すれば設定は完了です。


Indeed上でのオンライン面接のやり方の詳細は以下をご覧ください。

参照記事
Web面接もIndeed(インディード)におまかせ!面接機能の使い方とオンライン面接の6つのポイント
Web面接もIndeed(インディード)におまかせ!面接機能の使い方とオンライン面接の6つのポイント

⑤採用可否の連絡

基本的には複数の企業に応募していると考え、できるだけ早めに合否の連絡をしましょう。他の連絡に紛れてしまわないよう、メールのタイトルに「選考結果に関しまして」とするなど、工夫するようにしてください。

M社副社長 Nさん
Nさん
オンライン面接、やってよかった。いやいや、またこれも俺が古かっただけだけど、すべての展開が早い。自分の就職活動のときとはもう全然違うし、数年前の採用活動とも違うね
M社 社員 Iさん
Iさん
オンライン面接にして、僕たちも夜に自宅から面接できたからよかったな。でも、みんなさすがに夜に働くなあ。俺は自分が働いている時間帯だから助かったけど……
M社副社長 Nさん
Nさん
働き方も、働く時間帯も、その人のパフォーマンスが発揮できるように選べるという環境が大事なんだな
M社 社員 Iさん
Iさん
すごいじゃん。最初の方と言ってることがぜんぜん違う……。柔軟に考え方を変えていくって大事なことだと思うよ
M社副社長 Nさん
Nさん
恥ずかしいからやめて(笑)

まとめ

2人のビジネスパーソンがビデオ会議をしているイメージ

「じゃあ、その件は業務委託のMさんをアサインしよう」「Sさんが出社したときにこの資料渡しておいて」……そんなやりとりが増えたM社。業務委託で3名の方と契約を交わすことができました。2名の方は出社とテレワークの併用で業務にあたってもらいますが、もう1名の方は地方在住のため完全にテレワークで対応してもらっています。また、希望する場合には正社員登用の可能性もあると伝えてあります。

M社 社員 Iさん
Iさん
よかった!それにしても経験値の高い人が多いなあ
M社副社長 Nさん
Nさん
本当に。でもさ、今回の業務委託採用、テレワークがOKだからという理由で応募してくれた人がほとんどだったね。テレワーク不可だったらそもそも応募してないって人もいたし。いろんな働き方ができるって、大事なんだなあと改めて思ったよ
M社 社員 Iさん
Iさん
前にNさんも言ってたけど、どう働くかを選べるというのが大切なんだろうな
M社副社長 Nさん
Nさん
昔とはもう違うな。うちもトレンドに乗って、社員やパートナーには効率的に働いてほしい。いい仕事ができれば働き方はなんでもいいという考え方で進みたいよ
M社 社員 Iさん
Iさん
いいね!いい仕事ができるための環境はしっかり整えよう。これでうちの会社全体のステータスもパワーアップといきたいね
M社副社長 Nさん
Nさん
ほんとほんと!そうなるようみんなでがんばっていこう!

業務委託採用がうまくいって、会社自体もうまく機能し、事業拡大も順調なようです。業務委託の導入にあたって整備や調整は必要ですが、よい人材と出会えるチャンスが増加すると言えるでしょう。

* 利用規約・弊社が定める掲載基準・及び使用制限が適用されます。

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