業務委託の採用準備からアフターフォローまで一挙解説【はじめての採用ガイドブック】

この記事では、企業が業務委託の採用を行う場合の方法・注意点などについて、ここ数年で浸透したテレワークの考え方にも触れつつ、アプリの開発・制作会社を舞台にストーリーを織り交ぜながら解説していきます。


業務委託という働き方とは?

アプリの受託開発が事業の中核であるM社。最近リリースしたオリジナルアプリが口コミで高評価を得たため、さらなるアップデートのためにリソースを投入したい状況となっている。しかし、現在の従業員数では対応しきれないと、副社長であり採用を担当しているNさんは頭を抱えています。そこに採用経験が豊富なIさんがやってきて……?









IさんはNさんに「業務委託で採用する」という観点から改めて理解をそろえることから始めることにしました。一体どんな働き方なのでしょうか。
業務委託採用とは
ここでは業務委託とはどういう働き方か、また企業が業務委託採用をするメリットと注意点について見ていきましょう。
そもそも業務委託とは
「業務委託」とは、業務の依頼主と雇用関係を結ばずに、対等な関係で業務を引き受ける契約形態を指します。民法で定義されている雇用形態には「請負契約」「委任(準委任)契約」「雇用契約」の3種類があります。そのうちの「請負契約」と「委任(準委任)契約」を総称して「業務委託契約」と呼んでいます。
さまざまな契約の種類
業務委託契約と雇用契約の違いは、以下のようになっています。
雇用形態 | 雇用主 | 勤務時間の制限 | 賃金の種類 | 成果物の完成責任 |
---|---|---|---|---|
業務委託契約(「請負契約」と「委任(準委任)契約」) | なし | なし | 報酬 | 場合による |
雇用契約(正社員など) | 勤務先企業 | あり | 給与 | 負わない |
「委任(準委任)契約」は、「働いた期間」に対して報酬が支払われます。「請負契約」は「成果物」に対して報酬が支払われます。「委任(準委任)契約」は成果物が完成しない場合にも報酬が保証されています。
企業が業務委託で採用するメリットと注意点
企業が業務委託で人材を採用する場合のメリットと注意点は次のようなことが挙げられます。
【メリット】
・企業の従業員教育や採用コストの削減
・経験豊富な人材や専門的スキルのある人材を雇用することで、より良い成果をあげることができる
・企業の利益や売上に直結する業務(コア業務)に専念できる
【注意点】
・報酬金額が高くなるケースがある
・社内にノウハウが蓄積されない
業務委託で契約を交わす場合、最小単位としては「時間ごと」「成果物ごと」の契約が発生しますので、雇用契約よりも契約内容を細かく確認する必要があります。報酬額、成果物の量、修正回数、期間の延長があった場合や、「事前には想定していなかった経費が発生した場合はどうするか」などの取り決めがなかった場合など、その後のトラブルに発展する危険性があるため、契約内容の認識の違いをなくしてから業務に入ることが重要です。
それから、雇用契約であっても重要ですが、「業務単位」「プロジェクト単位」など、細かな単位で経験を確認し、どのようなスキルを持っているか具体的に確認する必要があります。















テレワークとは
ここで、働き方のひとつとして、「テレワーク」について理解しておきましょう。
一般社団法人日本テレワーク協会によると、「テレワーク」は「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。従来の職場通勤ありきの働き方とは異なり、業務委託で働く人々にはこの働き方を選択している場合も多いものです。
ただし、テレワークはメリットもあれば、注意点もあります。詳しく見ていきましょう。
企業側のメリット
企業側から見たテレワークのメリットは次のような内容が挙げられています。
①人材の確保
働く場所や時間の自由度が高いので採用の間口が広がり、より多くの求職者を募ることができます。遠方居住者はもちろん、場合によってはシルバー人材や通勤が困難な障がい者などの新規雇用にもつながります。
②人材の離職抑制・就労継続支援
育児や介護などさまざまな家庭の事情に合わせて柔軟な、働きやすい環境を社員に提供することで離職率を下げることができます。
③事業運営コストの削減
オフィススペースの維持や通勤等にかかる費用を削減できます。
④非常時の事業継続
地震や台風などの非常災害時やパンデミック時においても、業務を継続しやすくなります。
⑤企業イメージの向上
「さまざまな事情に合わせて柔軟に働くことのできる環境を提供している企業」というメッセージを発信することによる企業イメージの向上が期待できます。
従業員側のメリット
テレワークは従業員側にとってもメリットは多く存在します。もちろん、このような働き方ができるという点で、応募の増加につながる可能性があり、結果的には企業側のメリットにもなるでしょう。
①ワークライフバランスの向上
通勤時間が不要になるので、趣味の時間の確保、家事や育児、介護あるいは病気治療などと仕事との両立がしやすくなります。あるいは、オフィス所在地に縛られず、居住地を自由に選択することなども可能になります。
②生産性の向上
通勤中の満員電車や渋滞などのストレスがない、人によっては自宅の方が作業に集中しやすいなどの理由で生産性の向上が期待できます。
テレワークの注意点
多くのメリットがあるテレワークですが、社内で広く実施するためには、勤怠管理、労働時間管理、人事評価制度を整え、情報セキュリティのリスクに対応していく必要があります。
業務内容やその進め方についてのコミュニケーションは、可能な範囲で入念に行うようにしましょう。チャットツールの利用やオンライン会議の活用が有効です。ただし、成果物での契約の場合、時間を拘束する会議形式の打ち合わせそのものに報酬が発生しない場合については、おたがいの確認の上で実施するようにしましょう。



業務委託で働きたい人は求人票のどこを見ている?求人票の作り方は?

業務委託やテレワークといった働き方について学んだNさん。いよいよIさんと求人票の作成に移るようですが……?





NさんとIさんは業務委託採用の求人票を作成する前に、基本的な求人票の書き方を確認するようです。
基本的な求人票の書き方
効果的な採用活動のためには、求職者の知りたいことをカバーしながら、いかに魅力的な募集要項とするかが重要です。求人票作成のポイントについて見ていきましょう。
募集要項に必ず記載すべき項目には、以下の6つがあります。
・業務内容(取り扱い商品などがあれば問題のない範囲で明記)
・就業場所
・勤務時間
・給与
・保険に関する事項
・契約期間
以上は必要最低限の情報ですが、試用期間や求人する事業所名、今回の場合であれば「業務委託」といった雇用形態なども募集要項にはっきりと記載しなくてはなりません。
そして、NさんとIさんは、上記の募集要項に必ず記載するべき6つの項目をベースに、業務委託採用向けの求人票にするために必要なポイントについて考えていくことになりました。
業務委託の求人情報作成のポイント









Nさんが自社の魅力に改めて気づいたところで、業務委託採用向けの求人票作成のポイントを確認しましょう。主に次の3つが重要です。
ポイント①雇用形態と業務の範囲を明記する
「業務委託で働きたい」人に向けた求人であることがわかるように、具体的なキーワードを入れましょう。
それから求人票には具体的な業務内容の範囲も記載するようにしましょう。今回のゲームアプリ制作の場合は、依頼された作業をこなすというケースもあれば、提案にかかわるケースも考えられます。業務委託の方がどこからどこまでを担当するのか、どういったポジションを担うのかなど、より詳細に書くことが大切です。それから、勤務時間についても記載しましょう。フレックスタイム制度を導入する場合は、コアタイムなども明記してください。
また、今回はデザイナーやシナリオライターなどクリエイターの採用ですので、作品をまとめたポートフォリオを事前に送付するように記載しておくことで、応募者が過去にどんな役割やポジションで働いてきたのか、どんなスキルを持っているのか、入社後に即戦力として働けるのかなど判断しやすくなったり、面接時のコミュニケーションのきっかけとして活用できたりするでしょう。
ポイント②依頼する仕事の分量や内容に応じた給与を設定する
今回のような業務委託採用の場合、既に社員として働いている人の給料などをもとに、業務内容、仕事で必要な能力に対応させた額を判断しましょう。実際に働くようになった後で、給与を見直したり、成果による加算を行ったりするということを記載するのも有効です。
ポイント③社内制度や福利厚生について記載する
NさんとIさんの会話で出たように、備品や資料の購入補助といった従業員の業務をサポートするような制度などがあり、業務委託の方も対象となるケースは求人票に記載するようにしましょう。



採用につながりにくい求人原稿とは?
ここまで「良い求人票」を作成するためのポイントを確認してきました。反対に、なかなか採用につながりにくい求人票の特徴も確認しておきましょう。以下の点で、作成した求人票に該当箇所がないか、チェックしてみてください。
(1)仕事内容が明確に書かれていない
(2)抽象的でわかりにくい(具体的な数字などが記載されていない)
(3)情報が少ない(勤務地住所、交通アクセスなどが記載されていない)
(4)未経験歓迎と言いながら、専門用語が多い
実際になにをするのかわからない、情報が少ない、難解な専門用語が多いといった求人票では、「ここで働けるかな」と求職者を不安にさせ、応募につながらないケースが多くなってしまいます。
今回は経験者を採用することを目的としたケースなので該当しませんが、「未経験者歓迎」の場合は、専門用語や業界特有の言い回しなど、経験者でないとわからない文言の使用は避けましょう。詳しくは「求人原稿のわかりやすい書き方と例文」をご覧ください。
一口に「求人票」と言っても、募集要項として必須の内容や、職場にマッチした人材の採用のために掲載するべき内容など、考えるべき項目は多くあるのです。



求人票に入れ込むべき要素を整理して記載できたNさん。いよいよ募集開始です。
業務委託採用の応募者対応から面接、採用可否の連絡まで

求人票を出したところ、さっそく応募者が来て、Nさんは大喜びです。応募者の中には、業務委託で出社とテレワーク併用で働きたい方、地方在住で完全にテレワーク希望の方などがいます。さっそく書類選考を進めていくことになり、NさんとIさんは応募書類を確認することに。押さえるべきポイントについても見ていくようです。





履歴書や職務経歴書などの書類選考
提出された履歴書や職務経歴書などを参考にしながら、書類審査や面接を進めていきます。経験値やスキルを確認することも重要ですが、今回は業務委託での採用となるため、働き方についてのスタンスを確認するようにしましょう。
履歴書では、特に過去の経験やスキルを重点的に確認しましょう。人材を募集する際、大多数の企業が応募者に提出を求める履歴書ですが、これには志望動機、学歴や職務経歴、取得資格といった、基本的事項を確認する目的があります。応募者がどのような人物かを判断するための材料であり、その後、応募者と面談をすることになります。
職務経歴書とは履歴書とは別物で職務についての詳細が記載される書類です。応募者がこれまで携わってきた仕事の詳細を知るために提出してもらう書類で、自社が求めている人材とのマッチングを見極める上での参考になります。企業側が指定しない限り、フォーマットはなく書き方は自由ですが、応募者がどのような内容を記載してくるかも、合否の判断材料になります。職務経歴書では次のようなポイントをチェックしましょう。
(1)自社が求めている職種を強調している
(2)採用者の立場に立ってわかりやすく整理されている
(3)在籍期間や退職理由を明記している
さて、次に面接をすることになったNさんとIさん。面接の日程調整を進めているようです。







面接
面接では以下のポイントを意識しましょう。
①面接設定、注意点
応募が来たらなるべく早く対応しましょう。応募通知が来た場合にはお礼の返信(あるいは電話)を、電話での募集の場合はお礼をしつつその場で簡単なヒアリングをします。氏名、連絡先、経験者か未経験者か、希望の勤務条件などを確認し、折り返し連絡する旨を伝えてください。
②面接での質問内容
一般的な質問以外にも、今回のようなケースでは過去に関わった作品や提示されたポートフォリオなどをもとに、その制作においてどのような経験やスキルを得たかについて聞きましょう。作品制作・執筆にかかった時間、得意ジャンルなども重要です。
また、「面接で聞いてはいけない内容」を把握しておきましょう。応募者が自発的に話し出す場合には問題ありませんが、企業側から尋ねてはいけない内容については、しっかりと把握しておきましょう。また、求職者の適性・能力とは関係ない事柄を採否の判断要因にすることも、同様に認められていません。
【避けるべき質問の例】
・本籍・出生地に関する質問
・家族に関する質問
・生活環境や家庭環境に関する質問
③面接時に見るべきポイント
今回の業務委託採用の場合、経験やスキルを重視するものですが、今後のキャリアプランについて確認することも重要です。それから、応募者が業務委託という働き方を続けていく予定なのか、正社員になる希望はあるのかなどについても確認してみてください。
そして、NさんとIさんが取り入れることにしたオンライン面接ですが、対面とは異なる注意点があります。しかし、うまく使い分けることできちんとした審査が可能です。
④オンライン面接の注意点
オンライン面接に関しては、次のような注意点を押さえておきましょう。距離や時間を問わないことが大きなメリットであるオンライン面接。実施するにあたっての注意点は次の通りです。
1. 候補者が準備できるよう十分な時間を与える
2. 静かで邪魔のない場所を選んで面接を行う
3. インターネット接続を確認する
4. オンライン面接の招待をメールで候補者に送る
5.服装もビジネス用のものを
6. 対面での面接と同様の緊張感を持つ
また、Iさんが言っていた、対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド面接」を実施する企業も増えています。オンラインと対面でそれぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。

Indeedのサービスについて、ここまで求人情報の掲載と、応募者の管理について紹介しましたが、それらに加えて面接の設定にも対応しています。オンライン面接もIndeed上で行えるため、採用活動の一連の流れが完結できます。
応募者との面接の設定には、[自社の管理画面]→[応募者一覧ページ]→[応募者詳細ページ]と進み、[応募者詳細ページ]の上部右にある「面接を予約するボタン」を押すと以下の画面になります。

日付、面接形式を入力し、応募者に宛てたメッセージを入力し、「招待状を送信」のボタンを押すと、面接の招待がメールで応募者に送付されます。
このとき、面接形式で「Web面接」を選択すると、招待メール内にリンクが掲載されます。
招待メールを受け取った応募者が、内容を承諾すれば設定は完了です。
Indeed上でのオンライン面接のやり方の詳細は以下をご覧ください。
⑤採用可否の連絡
基本的には複数の企業に応募していると考え、できるだけ早めに合否の連絡をしましょう。他の連絡に紛れてしまわないよう、メールのタイトルに「選考結果に関しまして」とするなど、工夫するようにしてください。





まとめ

「じゃあ、その件は業務委託のMさんをアサインしよう」「Sさんが出社したときにこの資料渡しておいて」……そんなやりとりが増えたM社。業務委託で3名の方と契約を交わすことができました。2名の方は出社とテレワークの併用で業務にあたってもらいますが、もう1名の方は地方在住のため完全にテレワークで対応してもらっています。また、希望する場合には正社員登用の可能性もあると伝えてあります。






業務委託採用がうまくいって、会社自体もうまく機能し、事業拡大も順調なようです。業務委託の導入にあたって整備や調整は必要ですが、よい人材と出会えるチャンスが増加すると言えるでしょう。
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