アルバイト採用の準備からアフターフォローまで一挙解説【はじめての採用ガイドブック】
「近々繁忙期に入るので、増員しておきたい」
「急に人が辞めてしまい、すぐに人員を補充したい」
「新しい施策に取り組んでいきたいので、これまでの業務を任せられる人材がほしい」
多くの業界や職場で人手不足が課題となる中、アルバイトを採用したいと考えている担当者の方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、アルバイト採用の経験があまりなかったり、募集はしているもののなかなか良い人材からの応募がなかったり、採用活動で悩まれているケースもあるかと思います。
そんな方に向けて、ここでは職場でアルバイト採用をする際の流れを、ストーリーをなぞりながらわかりやすく解説します。
都心から少し離れた場所で、小さめのカフェ&バーを営む店長・副店長と一緒に、採用ノウハウを学んでいきましょう。
開業から1年、常連のお客さんも増え、お店の売上も安定してきた。今までは夫婦で切り盛りしてきたが、そろそろフロアスタッフや調理の助手を増やし、新メニューの開発を始めたり、妻に楽をさせたりしたいと考えている。
開業から1年、常連のお客さんも増え、お店の売上も安定してきた。今までは夫婦で切り盛りしてきたが、そろそろフロアスタッフや調理の助手を増やし、新メニューの開発を始めたり、妻に楽をさせたりしたいと考えている。
アルバイト採用の基本の流れ
とあるカフェバーの店長と副店長が会話をしています。どうやらアルバイトの募集を始めるようです。
このお店はこれまで夫婦で切り盛りしており、アルバイト採用ははじめての経験。
どのように採用活動を進めていくのでしょうか。
まずはアルバイト募集にどんな方法があるのか調べてみることにした二人。N店長は自身の経験から、チラシをお店の中に貼ることでアルバイトを募集しようとしていたようですね。確かにそれもひとつの方法ですが、I副店長も言っているように、求職者の仕事探しもインターネットが主流になっています。その他、求人媒体への掲載や、ハローワークに求人を出すなど、求人情報の発信にはさまざまな方法があります。
方法 | 特徴 |
---|---|
ハローワークに求人を出す | ハローワークごとに管轄している地域が決まっていることから、地域に根ざした求人を行いやすい。アルバイトの募集も可能 |
求人媒体を利用する | より幅広いターゲットに対して求人情報を提示することが可能。費用がかかることが多いが、利用する求職者も多く、業界に特化した媒体などもある |
自社サイトで募集する | 自社サイトで募集すればコストを抑えながら採用活動が可能 |
SNSを活用する | FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを通して人材を募集する方法。採用コストがかかりにくく拡散力がある。応募者のアカウントを確認して求職者の適性を把握することもできる |
派遣会社に依頼する | 期間を定めて雇用する場合、派遣会社にスタッフの派遣を依頼するのもひとつの方法。短期的な人員不足を手軽に補うことが可能 |
求人検索エンジンに登録する | さまざまな求人サイトから効率的に情報が収集できるため、利用する求職者が増えている求人検索エンジン。採用する側もそこに求人情報を掲載することで、幅広い層をターゲットに求人をかけられる |
一口で「採用を始める」と言っても、その手法にはいろいろなパターンがあることがわかりました。自身の職場の状況や、採用の目的を確認し、適した手法を検討しましょう。
採用手法が決まったら、続いて採用のルールを確認しましょう。アルバイトを採用するにあたって、どのような点を意識すれば良いのでしょうか。
アルバイトの雇用ルールとは?
求人検索エンジンのIndeedを使って募集を行うことに決めた2人。次は採用にあたってのルールを確認しながら、採用条件を検討しているようです。
一口に「条件」といっても、賃金や勤務時間など、決めるべき項目はたくさんあります。適切な採用条件を整理するにはどうしたら良いのでしょうか。
アルバイトの給与ルール
アルバイトやパートなどのパートタイム労働者は、正社員と比べて所定の労働時間が短く、多様な働き方が想定されます。労働条件や待遇を巡ってトラブルにならないよう、採用にあたっての条件や待遇については、明確な内容で求職者に提示しましょう。
なお、雇用者から労働者への賃金の支払い方法については、労働基準法第24条で基本となる5つのルールが定められています。これは「賃金支払いの5原則」と呼ばれ、給与支給時の大前提となる考え方です。正社員だけでなく、アルバイトやパートにも適用されます。
② 直接払う
③ 全額払う
④ 毎月1回以上払う
⑤ 一定の期日に払う
なお、アルバイト・パート従業員にも、「源泉徴収票」の発行は必須です。源泉徴収票の発行については、こちらの記事(「アルバイト・パートに発行する源泉徴収票の基本」)を参照してください。
時給の決め方
原則として、賃金は雇用主と労働者との間における取り決めで自由に設定できます。しかし「最低賃金」という言葉が一般的に知られているように、その下限は地域ごとの「地域別最低賃金」と業者や職業ごとの「特定最低賃金」として法律で定められています。
「地域別最低賃金」とは、産業や職種を問わず、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用される最低賃金です。これは本社がある都道府県ではなく、支店・営業所などの事業場がある都道府県の最低賃金に従います。
業者や職業ごとの「特定最低賃金」とは、特定の産業や職業において、地域別最低賃金よりも高い水準を定めることの必要性が認められたケースで適用される最低賃金です。なお、飲食店のアルバイトについては対象外であり、本記事の例では該当しません。
アルバイトの時給は、エリアに応じる「近隣同業他社の相場」と、社会状況や業界トレンドに応じる「労働市場の相場」という2つの相場によって決定するのが一般的です。両者を把握して適切な時給を設定することは、アルバイト採用の成功への基本です。
これまでの人生経験からなんとなくで決めがちな給与ですが、明確な基準が定められていることがわかりました。
採用活動を円滑に進めるためには、言われてみれば当たり前と感じるようなことでも、きちんと確認をしておくことが大切です。
次はアルバイトを含め、「人を雇う」ということに関するルールについて、少し詳しく見てみましょう。
「労働」に関する法律の基礎知識
これまでのお話から、N店長はあることに気づきます。
二人はここで改めて、法律について確認することにしました。「雇用する側」として、最低限知っておくべきものをまとめました。
法律名 | 内容 |
---|---|
労働基準法 | 最低限守られるべき労働条件の基準を定めた法律 |
労働契約法 | 労働契約の基本ルールについて定めた法律 |
職業安定法 | ハローワークのような公共の職業安定機関や民間の求人サービスにおいて、適切な求人を行うことを目的とした法律 |
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(旧雇用対策法) | 労働市場政策の基本ルールを定めた法律 |
男女雇用機会均等法 | 雇われる側が性別を理由に差別されることを防ぎ、能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を目的とした法律 |
働き方改革関連法 | 残業時間の上限規制 同一賃金同一労働 |
2020年4月より、大企業から導入がスタートした「同一労働同一賃金」は、非正規労働者(パートタイム、有期雇用、派遣)として働く人の賃金にかかわる新しい制度として注目されています(中小企業は2021年4月から)。
「同一労働同一賃金」とは、正規社員と非正規社員の不合理な待遇の差を解消し、どのような雇用形態を選んでも、納得して働けるよう、働き方の多様性と自由な選択の実現をめざす考え方です。
注意するべきその他の諸ルール
高校生アルバイトを採用する際のルール
満18歳未満を雇用する際には、次の点に注意をしましょう。
ルール | 内容 |
---|---|
労働条件を明示 | 年少者のアルバイトであっても、使用者は労働契約の締結にあたって、賃金・労働時間などの労働条件を必ず明示する |
労働契約は本人と結ぶ | 労働契約は本人が結ばなければならず、親や後見人が代わって結ぶことはできない 賃金の支払いについても、本人に直接、または本人同意の上で指定された銀行等の口座に振り込む |
年齢証明書等の備え付け | 労働基準法第57条により、市役所・区役所などで発行される「住民票の写し」など、年少者の年齢を証明する公的な書類を事業場に備え付ける |
また、労働時間について、原則として以下のような勤務は禁じられています
・1日8時間、1週間で40時間を超える勤務
・午後10時から翌日午前5時までの深夜時間帯の勤務
外国人アルバイトを採用する際のルール
求職者の国籍が日本以外にある場合、次の資格で滞在している人であれば採用が可能です。
・「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった身分に基づき在留する人
・留学生や家族と一緒に滞在する人(勤務時間は1週間28時間以内の制限あり)
また、応募書類や面接を通して、求職者の国籍が日本国外にあるとわかった場合は、在留資格を確認し、ハローワークへの届け出が必要です。なお、「特別永住者」は届け出の対象外です。
「人を雇う」ことについての基本的なルールが把握できたところで、次はいよいよ「求人票」の作成です。
求人票は職場と求職者の接点ですので、細心の注意を払って作成する必要がありますが、二人はどうでしょうか……?
アルバイト求人票の基本とは?
アルバイト採用のルールが把握できたところで、N店長はさっそく求人票を作ってみることにしました。
「求人票」には、応募条件や給与、勤務時間や労働内容といった内容をまとめた募集要項が必要です。アルバイト採用への応募を考えている求職者は、基本的に、この募集要項を見て条件を比較しながら判断をします。
そのため、効果的な採用活動のためには、いかに魅力的な募集要項とするかが重要になります。
ではまず募集要項の基本から確認していきましょう。
募集要項に最低限記載すべき6つの項目
募集要項に必ず記載するべき項目には、以下の6つがあります。
就業場所
勤務時間
給与
保険に関する事項
契約期間
これらの項目を漏れなく記載すれば、募集要項としてある程度必要な情報が記載されていることになります。しかし、その内容には注意が必要です。職業安定法などの労働に関するルールが変化したことで(厚生労働省 平成29年職業安定法の改正について)、以前に比べより詳しい内容の掲載が求められるようになりました。
たとえば、試用期間や求人する事業所・個人名、派遣労働者として雇用するのかどうかといった項目も募集要項に記載する必要があります。また、固定残業代を支給する場合は、給与の欄に明示すること、裁量労働制の場合はその旨を記載することといったルールも設けられています。
上記の項目をベースに、特に注意が必要なポイントについて、紹介します。
勤務時間のうち、残業などのイレギュラーな勤務時間について
パートやアルバイト従業員の残業は、それを雇用条件としてあらかじめ明示しているのであれば問題ありません。採用時に書面で明示する「労働条件通知書」の内容が根拠になります。
保険について
事業者は、一定条件を満たすアルバイト従業員を、「健康保険」と「厚生年金」を含む社会保険に加入させる義務があります。今回のようなアルバイト募集に際しても、下記のような条件を満たすことが想定される場合には、社会保険の加入を考慮する必要があるのでご注意ください。
(1)正社員の4分の3以上の勤務時間と労働日数があること
(2)次の5つの条件を満たすこと
A:週の所定労働時間が20時間以上である
B:賃金月額が月8.8万円以上ある
C:1年以上の雇用が見込まれる
D:従業員数501人以上(厚生年金の被保険者数)の勤務先である
E:学生ではない(※夜間や定時制などに通っている学生は加入できる場合もある)
より詳細な説明や手続き方法は「アルバイトの健康保険加入はどう処理すべき?」をご覧ください。
また、令和4年10月から、勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満であり、かつ、止められる条件すべてに該当する従業員短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用要件が拡大されます。詳しくは「短時間労働者とは? 各種保険の加入要件」をご覧ください。
追加して募集要項に記載しておきたい項目
上記の6つの項目に加え、下記のような内容も募集要項に盛り込むことで、求職者の採用後に感じる違和感を減らし、雇用の安定につながる可能性があります。
① 試用期間
② 休憩時間のルール
③ アルバイトのシフト管理
①試用期間
アルバイトの試用期間を設けることで、ミスマッチを防ぎ雇用側と従業員の双方にとってメリットを感じられる人材採用が期待できます。
しかし、試用期間はあくまでも長期雇用を前提としたものです。簡単に解雇できるわけではないので、採用する際はそれなりに見極めることが重要です。試用期間の役割を理解し、必要であれば上手に活用していきましょう。
②休憩時間のルール
アルバイト従業員の1日あたりの労働時間における休憩時間は以下のように定められています。
1日あたりの労働時間 | 法律上、最低限必要な休憩時間 |
---|---|
6時間以内 | なし |
6時間〜8時間 | 45分以上 |
8時間を超える | 60分以上 |
③アルバイトのシフト管理
アルバイト採用後のトラブルを避けるため、なるべく書面を通してお互い認識のすり合わせを行うようにしましょう。
学業とアルバイトが両立できるよう、無理のないシフトを組むことを意識し、試験期間の把握や、就職活動などシフトの変動にも柔軟に対応しましょう。
また、ハラスメント対策として相談窓口の設置や相談しやすい環境づくりも意識してください。
N店長は求人票の不足部分が理解できたようです。では、求人票にはさらにどんな要素が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
自分のお店の特徴や強みのアピール
本当に自社に合った人材を惹きつけるためには、お店として求める条件をただ発信するだけでは不十分です。職場の雰囲気や求める人物像をなるべくわかりやすく盛り込むようにしましょう。
今回の場合、N店長が希望するような「イタリアン好きの方歓迎」に加え、今は二人で切り盛りしていてアットホームな環境であること、常連さんもいて賑わっていること、お客さんにより楽しんでもらうためのメンバー募集であることなど、職場の空気感や募集の背景などの情報を記載するといいでしょう。求人情報を見る求職者はそこで働く自分を想像しやすくなります。
また、福利厚生や社内研修などを見直してみることも、自社の特徴や強みに気づきやすくなるでしょう。
飲食店のアルバイトの場合、求職者はシフト、時給、勤務地といった基本的な条件に続いて、「まかない」や「交通費支給」などのメリットの有無で比較をするケースが多くなっているようです。
キッチンでの勤務を志望する人の中には、N店長のように調理師免許の取得をめざすなど、アルバイトを通して資格を取りたいと考えている方もいますので、アルバイトの方に免許や資格取得支援をしているのでしたら、支援制度があることを明記することもおすすめです。
アルバイト採用につながりにくい求人原稿とは?
ここまで「良い求人票」を作成するためのポイントを確認してきましたが、逆になかなか採用につながりにくい求人票の特徴も確認しておきましょう。
自分の職場の求人票に該当箇所はないか、以下の点でチェックしてみるのもおすすめです。
(2)抽象的でわかりにくい(具体的な数字などが記載されていない)
(3)情報が少ない(勤務地住所、交通アクセスなどが記載されていない)
(4)未経験歓迎と言いながら、専門用語が多い
実際になにをするのかわからない、情報が少ない、難解な専門用語が多いといった求人票では、「このお店で働けるかな」と求職者を不安にさせ、応募につながらないことが多いものです。
特に「未経験者歓迎」の場合は、専門用語や業界特有の言い回しなど、経験者でないとわからない文言の使用は避けましょう。詳しくは「求人原稿のわかりやすい書き方と例文」をご覧ください。
ここまで紹介してきたように、募集要項として必須の内容や、職場にマッチした人材の採用のために掲載するべき内容など、一口に「求人票」と言っても考えるべき項目は多くあります。
Indeedにアカウントを作成したら、自社の企業情報を登録。
その後、求人票の基本情報を入力していきます。
入力項目は以下のとおりです。
・基本情報
募集する職種名
職種カテゴリー(プルダウンで選択)
会社名
勤務地
・応募設定
応募の受付方法
電話での問い合わせや応募の可否
応募形式(「Indeedカンタン応募」か「Indeed履歴書応募」)
→「Indeed履歴書応募」とは履歴書の提出が必要な応募を指します。
雇用形態(アルバイトや正社員など)
給与(年収月給など表示単位は選択可)
・仕事内容
仕事内容およびアピールポイント
求める人材
勤務時間、曜日
交通アクセス
待遇、福利厚生
その他
タグ選択(社員登用あり/残業なし/週1日からOKなど、最大3項目選択可能)
次に求職者への質問項目を選択します。
・応募資格
生年月日
氏名のふりがな
職務経験
学歴
勤務地
資格
免許
言語
Indeedへの登録方法や求人情報の入力方法の詳細については以下を参照にしてください。
加えて、Indeedの「企業ページ」なら写真なども掲載しながら企業の詳細なイメージの発信ができ、自社の空気感を詳細に発信することが可能です。
サポート体制も充実も充実しているので、困ったときは相談することも可能です。
N店長も、求人票は「なんとなくのイメージ」で作成せず、入れ込むべき要素を整理して、明確に記載することの大切さがわかったようですね。
アルバイト求職者の対応から面接、採用可否の連絡まで
N店長が求人検索エンジンに求人情報を掲載した2日後、さっそく応募が来たようです。
応募に対するリアクションが遅れると、面接まで至らないこともあり得ます。応募が来たタイミングでできるだけ早く返信し、応募者にお礼を伝えましょう。
求職者からの応募に対し、素早くリアクションをするには、応募状況がきちんと管理されているかが重要です。
Indeedは求人情報を掲載するだけでなく、掲載した求人情報に対する応募者の管理もできます。
以下のように、自社の管理画面から、選考中の応募者や、面接の予定、次にやるべきことなどが把握可能です。
ページ上部にある「応募者」タブから、以下のような各応募者の管理画面に進みます。
それぞれの応募者の選考状況が一覧で表示され、選考状況の確認のほか、応募者へのメッセージ送付や、面接のオファーなども可能です。
Indeedの応募者管理機能の詳細な使い方については、以下をご覧ください。
面接で押さえておきたい6つのポイント
実際の面接では、以下のようなポイントを意識しましょう。
①面接の心構えをしておく
「雇用する側だから」と高圧的にならないようにしましょう。面接によって審査されるのは求職者だけではありません。求職者も自分が望む通りの職場か確かめようとしていることを忘れないようにしてください。採用する側も、求職者から審査をされているという意識を持ちましょう。
②人材要件をきちんと押さえておく
「どんな人と一緒に働きたいか」といったイメージをしっかり持っておくことも重要です。それには経験や技術だけでなく、「人物像」も含まれます。「なんとなくいい感じがする」といったフィーリングも場合によっては重要ですが、面接後によくその人物を分析し、自分たちが求める人物像に近いかどうかを考えてみましょう。
③質問項目を決めておく
面接をスムーズに進め、決められた時間内に求職者がどんな人材であるか判断できるよう、事前に質問する項目は定めておくようにしましょう。求職者によって質問を変えることも必要ですが、基本的な質問については統一しておきます。
④評価の方法(合格基準)を決めておく
経験や技術を問う場合には、どれほどの経験年数や技術力であれば合格とするか、その基準を定めておきましょう。「言葉遣いが正しい」「自分自身のことについて順を追って説明できる」といった数字にならない基準も重要です。
⑤面接から一定時間をおいて評価する
その場で合否を伝えることはできるだけ避けましょう。時間をおいて分析することにより、より冷静な判断ができます。また、面接後のやりとりなどでもどんな人物かがわかる場合があります。そのようにして判断材料が増えれば、より適切な人物を選ぶチャンスも増えるものです。
⑥面接時間
アルバイトの場合は特に、休憩が必要になるほど長く拘束することは避けましょう。1回あたり30分から1時間程度を目安にすると良いでしょう。店舗内を案内する場合も、その時間を含めて考えるようにしてください。
さて、N店長がアルバイト面接をすることになりましたが……?
採用面接時の質問で、気をつけるべきことについて理解しておきましょう。N店長も気づいたように、仕事以外の場では話題に出やすい内容であっても、避けるべきものがあります。
面接で聞いてはいけないNG質問
出身地や家族構成というのは、実は採用面接において、求職者に聞いてはいけない質問です。場合によっては行政指導や改善命令の対象になることもあります。
厚生労働省では、採用選考において次の2点を基本的な考え方としています。
基本的人権を尊重する
求職者の適性、能力のみを基準とする
これに従って、雇用条件・採用基準に合ったすべての人が応募できるよう、雇用者は「公正な採用選考」を行うことが求められます。そのため、求職者の適性・能力とは関係ない事柄を採否の判断要因にしてはいけません。具体的には、以下のような直接業務にかかわりのない個人情報などがそれにあたります。
・本籍・出生地に関する質問
・家族に関する質問
・生活環境や家庭環境に関する質問
つまり、「求職者・応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適性・能力を持っているかどうか」という公正な基準で採用選考を行うことが必要です。そのため、本人に責任のない個人情報に関する質問は必ず避けるようにしなければなりません。また、思想・信条にかかわる事項の把握につながる質問もNGです。
求職者を見極めるための質問例
求職者求職者を見極めるために有効な質問例を見ていきましょう。
アルバイトの場合は特に、その職種での仕事がはじめてである人も少なくありません。未経験者の場合には、「仕事内容に興味を持っているか」「具体的に知ろうとしているか」などに注目すると良いでしょう。
応募者が学生である場合、人となりや能力を確認するために学校生活など、仕事・職場以外の経験を確認するのも一つの方法ですが、プライベートな内容になる可能性もあるため、注意が必要です。あくまでも仕事に関する内容に絞っての質問が無難でしょう。求職者からの発言であれば問題はありません。
なお、コミュニケーション能力については、過去について質問するよりも、面接における受け答えから見極めることが重要です。下記のような質問に対する答えには必ず感想を述べて会話を重ね、情報を引き出していくようにしてください(名前、住所、学校など、個人情報に対する感想は不適切です)。
知りたい内容 | 質問例 |
---|---|
業界への関心度を知りたいとき (※未経験であれば仕事内容を知らないのは当然である点に注意) |
・この業界のニュースなどに関心を持つことがありますか?それはどんなニュースでしたか? ・普段(飲食店など)を利用していて、自分もできればやってみたいと思う仕事はなんですか? |
仕事への適性が知りたいとき (※未経験であれば仕事内容を知らないのは当然である点に注意) |
・この仕事のどんなところに興味がありますか? ・このような仕事には、前から興味を持っていたのですか? ・この仕事に興味を持ったきっかけがあれば教えてください |
職種に生かせる能力があるか知りたいとき(※過去にアルバイトや就職などで仕事をした経験がある場合) | ・今まで経験したことがある仕事について教えてください ・やりがいを感じた仕事、自分が好きだと強く感じた仕事はどんなものですか? ・この仕事で大切なことはどんなことだと思いますか? |
問題に直面した際の対応力が知りたいとき(※過去にアルバイトや就職などで仕事をした経験がある場合) | ・今までの仕事で失敗したことがあれば教えてください ・それをどんなふうに解決しましたか? ・同じ失敗を防ぐにはどうしたらいいと思いますか? |
もちろん、求職者が話しやすいように、雰囲気作りも重要です。ポイントは次の通りです。
・なるべく書類を見たり、メモをしたりせずに、求職者に視線を向ける
・求職者の回答に相づちを打ちながら共感する
・求職者の回答に興味を持ち、回答内容についてさらに質問をする(言葉のキャッチボール)
・質問するだけでなく、採用後の時給アップや、役職が上がる(アルバイトリーターや時間帯責任者といった、アルバイト従業員のなかでグレードがある場合など)ことなどをきちんと示し、期待感を与える
・面接を受けてくれたことに感謝の言葉を述べる
・アルバイト希望者が退出するまで、きちんと視線を向けて見送る
「Web面接」を取り入れる方法も
コロナ禍を通じてパソコンやスマートフォンの画面越しに面接を行う「Web面接」が浸透しつつあります。飲食店のアルバイト採用においては、利用されるケースは多くはないかもしれませんが、今後お店の周辺に引っ越してくる予定の方など、遠方に住んでいる求職者と前もって会話ができるというメリットなどがあります。
Web面接には上記のように「移動の必要がない」という点のほか、「面接時間が選びやすい」などのメリットがある一方で、採用する側は求職者の雰囲気が、求職者の側は職場の雰囲気がつかみにくいという点に注意が必要です。対面での面接と比べ、得られる情報が少ないため、お互いの認識がずれてしまう危険性が高くなってしまう可能性があります。
もし求職者が多い場合には、まずオンライン面接を行い、第二次選考として後日改めて対面面接を行うといった「ハイブリッド面接」が有効です。店舗を見てもらう際には、フロアやキッチン、バックヤードやトイレなどまで見てもらうほうが実際にその職場で働く際のイメージがしやすいでしょう。
複数の求職者から応募が来た場合など、面接の日程調整などの作業が煩雑になり、思わぬミスにつながる可能性があります。加えて、Web面接など新たな手法を取り入れるとなるとより注意が必要です。
Indeedのサービスについて、ここまで求人情報の掲載と、応募者の管理について紹介しましたが、それらに加えて面接の設定にも対応しています。オンライン面接もIndeed上で行えるため、採用活動の一連の流れが完結できます。
応募者との面接の設定には、[自社の管理画面]→[応募者一覧ページ]→[応募者詳細ページ]と進み、[応募者詳細ページ]の上部右にある「面接を予約するボタン」を押すと以下の画面になります。
日付、面接形式を入力し、応募者に宛てたメッセージを入力し、「招待状を送信」のボタンを押すと、面接の招待がメールで応募者に送付されます。
このとき、面接形式で「Web面接」を選択すると、招待メール内にリンクが掲載されます。
招待メールを受け取った応募者が、内容を承諾すれば設定は完了です。
Indeed上でのオンライン面接のやり方の詳細は以下をご覧ください。
採用可否の連絡
選考通過を知らせるメールは「いつ」「どこで」「なにをするか」を明確にしましょう。メールで連絡する場合、文章の作成ポイントは以下の通りです。
・必要な情報は箇条書きにするなど、できる限り無駄な言葉を省く
・文節や句読点で改行し、話のまとまりごとに行間を空けるようにするなど、レイアウトを意識する
すぐに使えるテンプレート例は「選考通過を知らせるメールの書き方と例文」をご覧ください。
面接のポイントも理解できたことで選考も首尾よく進み、二人はめでたくアルバイトの大学生Tさんを採用することになりました。
採用活動という響きからも「人が採用できたらゴール」と思いがちですが、重要なのはそのあと。お互いが気持ちよく働けるような環境作りを意識しましょう。
アルバイト採用後の対応は?トラブルにも備えておく
先日採用したTさんはホール担当ですが、彼は「イタリアンが大好きなので、ゆくゆくは調理も勉強したい」と言っています。飲食について幅広く勉強していきたいという前向きな気持ちがあるようで、N店長は大喜びです。
二人が言うように、早い段階から採用後に発生しうる対応について考えておくことは非常に大切です。労災や待遇、採用した人になにかしらのトラブルがあるケースについても想定しておきましょう。
労災
労働者が業務や通勤時に事故にあったり、病気になったりする「労災」。飲食店の場合、調理中の火傷や、割れた食器によるけがなどがあることも十分に考えられます。労災保険は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されます。したがって、正社員だけでなくアルバイトやパート従業員も労災保険の対象となり、加入が義務付けられています。
待遇の変更
たとえば、アルバイトスタッフの勤続年数が長くなり、スキルの向上も見られると判断し、そのスタッフの更なるモチベーションのために時給アップを検討するとなった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?すでに雇用している場合、どのように時給を変更したら良いのか、時給のアップ&ダウンを行う際に知っておきたいルールについて確認しましょう。
時給アップ
従業員の昇給に関しては、下記を考慮した上で決定します。
従業員の勤続年数
従業員の知識、経験、技術向上の度合い
会社の業績
就業規則などによる取り決め
ただし、従業員の中には所得制限を超えないように働いている人もいるため、昇給を検討する際に昇給を行っても問題ないかを本人に事前確認しておくのがおすすめです。
時給ダウン
逆になんらかの事情で時給を下げることを検討するケースもあるかもしれません。日本では労働契約法の第3条で「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする」と定められています。
そのため、事業者が一方的に従業員の時給を下げることは従業員に対する不利益変更にあたり、違法となる可能性があります。
ただし、合理的な理由があり、事業者と従業員の双方が時給の引き下げに合意した場合、時給を下げることが認められるケースもあります。また、従業員の勤怠や業務態度に問題があり、懲戒処分として一時的に減給を行うことがあります。
無断欠勤・無断退職、解雇
「アルバイトが無断欠勤をして連絡がつかない」「新しく採用した大学生が勤務初日に出勤してこない」……このように、アルバイト従業員が無断欠勤したり、音信不通のまま無断退職したりといったケースは避けたいものです。
労務の実務面では、アルバイト用の就業規則を策定し、これを周知するようにしましょう。また、リスク管理上は、アルバイト身元保証書や誓約書を取得することが役立ちます。可能であれば、採用時の必要事項に盛り込むことを検討してください。
また、改めて職場の雰囲気や企業文化を振り返ってみることも重要です。従業員の労働環境が劣悪になっていないか、ハラスメントはないか、賃金水準は適当かなどについて確認するようにしましょう。
現実に無断欠勤や無断退職が発生した場合の具体的な対処法は「アルバイトの無断欠勤・無断退職にどう対応する? 連絡方法、給与の精算、退職手続き etc.」をご覧ください。
また、なんらかの事情で、雇用主が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要があります。30日前に伝えられなかった場合は、解雇予告手当として30日分の平均賃金を支払わなければなりません。
解雇に至るまでの一般的な流れは次の通りです。
(2)配置転換・減給・降職など
(3)(1)~(2)を経て、改善が見られない場合、再度面談による改善指導・目標設定
(4)退職勧奨
Tさんと働くことを通して、2人は自分たち以外の従業員が気持ちよく働くにはどうするべきかを改めて考えるようになりました。
当初考えていた売上の分析や、新メニューの考案も進み、お店はこれまで以上の人気店となっているようです。
まとめ
あれから1年。N店長とI副店長はさらに3名のアルバイトを採用。Tさんは一番の先輩アルバイトとして大活躍しています。
実は、N店長もI副店長も、数日前から「そろそろあのとき二人で勉強した『時給アップ』の知識が役立つときでは!」とあれこれ準備をしていました。大事な「パートナー」として活躍してくれているTさんに対し、「きちんとした形で応えたい」と思ったのでしょう。
N店長とI副店長は、アルバイト採用を重ねるうち、新たな課題と向きあい、店舗経営についてもよりよい方向性を見いだせたようです。ぜひみなさんも二人のやりとりを参考にしてみてください。アルバイトの募集方法や、面接のコツ、雇用後の対応など、みなさんのお店でも役立ち、同時にお店の発展にもつながることを願っています。
Indeedで採用活動をもっと効率的に進めたいという方は、「Indeedスタートガイド」や「マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう」にてIndeedの仕組みや使い方について分かりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
* 無料掲載の場合、利用規約・弊社が定める掲載基準・及び使用制限が適用されます。
https://jp.indeed.com/legal?hl=ja#tos