アルバイトの無断欠勤・無断退職にどう対応する? 連絡方法、給与の精算、退職手続き etc.

「アルバイトが無断欠勤をして連絡がつかない」

「新しく採用した大学生が勤務初日に出勤してこない」

 

このように、アルバイト従業員が無断欠勤したり、音信不通のまま無断退職になったりした場合、雇用主はどのように対応すればよいのでしょうか。従業員の無断欠勤や突然の退職に悩まされる店主や企業の人事担当者のために、社会保険労務士の寺島有紀さんによくあるお悩みやその対策について伺いました。

 

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採用したアルバイトが初日に現れず、連絡が取れない場合

 

◆無断欠勤の従業員と連絡が取れない場合の対応策

 

――「今日から来るはずのアルバイト従業員が職場に現れなかった」迷惑な話ですが、こういった場合は、すぐにその人を解雇できるのでしょうか?

 

前提として、「14日の無断欠勤が続いた労働者への懲戒解雇を有効」とする判例があります。つまり逆を言えば、14日間程度までなら、会社は従業員の解雇や退職処理といったアクションを見送ることが必要です。

 

一般的に、無断欠勤したアルバイト従業員への連絡は、

 

  1. メール・電話連絡を複数回(2~3回程度)行う
  2. 内容証明郵便の送付を行う
  3. 自宅への訪問を行う

 

といったプロセスを経つつ、就業規則の規定に準じて自然退職や解雇手続きを進めるのが、会社にとってリスクの少ない安全な対応です。

 

とはいえ、解雇手続きを踏むには、まず解雇の通知が必要になります。これはなかなか煩雑ですので、あらかじめ就業規則に「行方不明となり出勤の督促にも応じない場合、自然退職とする」という条文を盛り込んでおきましょう。

 

◆電話で伝える内容や留守番電話、メールなどに残しておくべき内容

 

――初日に来なかったアルバイトやパートの方に対しては、どのように通知すればトラブルになりづらいのでしょうか?

 

電話がつながった場合は無断欠勤の理由を聞き、いつから出社できるのかといった調整を行うのが一般的です。しかし、電話が通じない場合は留守番電話やメールに、

 

  1. 無断欠勤となっている事実
  2. 返信・連絡が欲しい旨
  3. 引き続き連絡がつかない場合、内容証明郵便の送付や自宅訪問をさせていただく旨
  4. このまま無断欠勤が続く場合、就業規則どおり自然退職または解雇となる旨

 

の4点を伝えます。メッセージでも文面でも、決して相手を責め立てるのではなく、返信しやすい雰囲気で通知するのが大切です。特にアルバイト従業員が退職目的で故意に無断欠勤を行った場合、自主的に辞意を申し出やすくなり、結果的に対応がスムーズになります。

 

◆出勤実績のないアルバイト従業員の退職手続きについて

 

――そもそも、一度も出勤をしていない従業員に退職手続きは必要なのでしょうか?

 

アルバイト従業員が一度も出勤していないのであれば、給与の支払いは発生しません。また、そもそも入社初日に従業員から労働の提供がなく、その後も連絡が取れない場合には、就労の意思がないとみなされるので、「労働契約自体がなかった」と処理することも可能と考えます。その場合、社会保険や雇用保険上の入社・退社手続きも不要となります。

 

もし、初日から出勤しなかったアルバイト従業員と連絡がついた場合は、文面でその処理についての同意を、先方から取得・記録しておくことで、万が一のトラブルに備えることができます。

 

◆アルバイト初日の無断欠勤・無断退職を防ぐ方法

 

――事前に採用した従業員の出勤トラブルを防止するために、企業側ができることはあるのでしょうか?

 

アルバイトであっても、内定通知書や内定承諾書の取り交わしを行うことは大切です。こうした取り交わしによって、内定したアルバイト従業員に入社の意識を持っていただくという効用もあります。また、内定から入社までの期間を空かないよう調整することもおすすめです。

 

あるIT企業では、アルバイト従業員が入社する前日に「入社前日になりました。一緒に働けることを楽しみにしています!」といったメールを送っています。このように、会社として積極的に入社までフォローするのは、アルバイト従業員の入社へのモチベーションアップにつながるでしょう。

 

 

勤務実績のあるアルバイト従業員が無断欠勤した場合

 

◆無断欠勤が続いたアルバイト従業員の給料の支払い

 

――いままでちゃんと働いていたのに、急に来なくなったアルバイト従業員に給料を支払う必要はあるのでしょうか?

 

経営者や店長は「むしろ迷惑料をもらいたいよ!」なんて思うかもしれませんが、会社は従業員がこれまで働いた分の給与を支払う義務があります。これまで振り込み実績があるなら、すでに働いた分の賃金を所定の銀行に振り込みます。初月でまだ振り込み実績がない場合は、アルバイト従業員から銀行口座の提示を受け、当該口座に無断欠勤するまでの報酬を支払いましょう。

 

◆無断退職したアルバイト従業員に給料を支払う方法

 

――個人経営の店では、給料を現金で手渡しすることもあります。その場合はどのように対応すれば良いのでしょうか?

 

給料の手渡しは最近さすがに少なくなったようですが、退職時の賃金だけは手渡しという事業者もあるようですね。その場合、本人が会社に給与を受け取りに行く必要がありますが、連絡をしても取りに来ない場合は、下記のような手段で進めましょう。

 

  1. 家族や自宅の連絡先が分かる場合は、従業員本人に取りに来るよう依頼をする
  2. 従業員の口座番号がわかっている場合は、銀行口座に振り込む
  3. 従業員の住所に現金書留で給与を送る
  4. 会社で賃金に関する債権の消滅時効である2年間、給与を保管しておく
  5. 法務局に供託する

 

会社にとっては手間がかかりますが、上記のように柔軟な対応をしておくことによって、不払いで訴えられたときのリスクヘッジにもなり、結果的に余計な手間・コストをかけずに済みます。

 

◆制服など、雇用主からの貸与物を返却してもらうには

 

――お店の制服や社用のパソコンやスマートフォンを貸与したまま、アルバイト従業員の無断欠勤が続いている場合、どう解決すればよいのでしょうか?

 

無断欠勤をしたアルバイト従業員と連絡が通じる場合には、速やかに返却するよう依頼しましょう。一方、連絡がまったくつかない場合やこちらからの督促に応じない場合は、留守番電話・メール等で返却依頼文面を残します。また、身元保証人や緊急連絡先にも連絡をすることも検討します。

 

返却依頼文言には、一般に下記のような内容を盛り込んで、留守番電話やメールなどで督促します。

 

  1. 貸与物の内容(例:制服、社員証、名刺、モバイルPC)
  2. 貸与物が返還されていない事実
  3. 貸与物を返却する期限

 

それでも返却されない場合、内容証明郵便を送付して返却を督促することになります。

 

特に、貸与物がモバイルPCといった個人情報を含んだものの場合は、未返却によって企業に重大な損害が生じる可能性があります。返却されない場合は、会社が被った損害について従業員に損害賠償を請求するなど、強く返却を求める姿勢で対応することをおすすめします。

 

◆無断欠勤が続いているアルバイト従業員の退職手続き

 

――アルバイトが急に来なくなり、連絡が一切取れない場合、退職手続きを進めることはできるのでしょうか?

 

自社の就業規則に沿って決定することになります。就業規則に自然退職の条文を入れ、「本人が行方不明になり、30日以上連絡が取れないとき:30日を経過した日を退職日とする」といった記載をしておきましょう。これによって、「アルバイト従業員が急に来なくなり、連絡が全く取れなくなった」場合は、「無断欠勤から30日経過後を退職日とする」ことができます。

 

またアルバイトの場合、多くのケースで有期雇用契約を結んでいます。その方の契約期間終了がいつなのかということも加味し、契約期間満了日を退職日とするのも一案です。退職手続きでは、通常の社員の退職と同様、社会保険と雇用保険の喪失手続きを進めます。

 

◆無断欠勤によって店に不利益を与えた場合の損害賠償

 

――アルバイト従業員の無断欠勤・無断退職によってお店や企業が大きな損害を被った場合、企業側にできることはないのでしょうか?

 

代わりの人員配置での採用コストがかかったり、人手が足りずサービス提供ができなかったりすれば、無断退職をした元従業員に何らかの損害賠償をしたい気持ちはわかります。

 

しかし、損害と無断欠勤との因果関係の立証が難しく、実際に損害が認められた場合でも会社が期待するような賠償金額が認められるケースはほとんどありません。逆に、企業が個人を訴えることによって、予期せぬ風評被害が発生するリスクがあります。よほど悪質なケースを除いて、企業が無断退職者に損害賠償請求をすることはないでしょう。

 

◆アルバイト従業員の無断欠勤や無断退職を防ぐには

 

――就業中のアルバイト従業員が急に無断欠勤をしたり、連絡がとれなくなったりしないために、企業が取れる対策はあるのでしょうか?

 

会社や店にとって重要なことは、「突然の無断欠勤・突然の退職を未然に防ぐ仕組みづくり」です。労務の実務面では、アルバイト用の就業規則を策定し、これを周知するようにしましょう。また、リスク管理上は、アルバイト身元保証書や誓約書を取得することが役立ちます。可能であれば、採用時の必要事項に盛り込むことを検討しましょう。

 

さらに、改めて企業体質を振り返ってみることも重要です。従業員の労働環境が劣悪になっていないか? ハラスメントはないか? 賃金水準は適当か? こういった項目を今一度振り返ってみましょう。常日頃からアルバイト従業員との信頼関係を構築することを心がけましょう。

 

 

<取材先>

寺島戦略社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士 寺島有紀さん

ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応や企業の海外進出労務体制構築など、国内外で幅広く人事労務コンサルティングを行っている。著書に『これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理』(アニモ出版)がある。

 

TEXT:日西愛

EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
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