労災とは
「労働災害」の略である労災は、労働者が業務や通勤時に事故にあったり、病気になったりすることを指します。負傷や病気に対して保険給付を行う「労働者災害補償保険(労災保険)」の意味で使われることが多くなっています。
労災保険への加入は任意ではなく義務にあたります。1人でも労働者を雇用したら、事業者は労災保険に加入しなければなりません。保険料は社会保険等と異なり、事業者の全額負担になるので要注意を。
アルバイト従業員に労災は適用されるのか
労災保険は、雇用形態に関係なく全ての労働者に適用されます。したがって、正社員だけでなくアルバイトやパート従業員も労災保険の対象です。また、労災保険で受けられる給付内容は雇用形態で区別されないので、アルバイトやパートと正社員の差はありません。
労災が適用されるケース・適用されないケース
労災が適用されるケースはどんなものが考えられるのでしょうか。まず、労働災害には「業務災害」と「通勤災害」があります。
◆業務災害
業務災害とは、業務上の負傷や疾病、障害または死亡のこと。業務災害が原因で労災保険の給付を受けるには「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たす必要があります。
- 業務遂行性:仕事中に発生したけが・病気であるかどうか
- 業務起因性:仕事がけが・病気の原因になったかどうか
「業務遂行性」や「業務起因性」がなければ、業務災害と認められません。
・業務中の場合
所定労働時間内や残業時間内に事業所で起こった災害は、原則として業務災害と認められます。また、営業の外回りなどで社外にいる場合も会社の管理下にあるので、よほどのことがなければ業務災害と認められます。
【業務災害として認められる例】
飲食店でアルバイト従業員が火傷をした場合
アルバイト従業員が外回り中に転倒してけがをした場合
・業務外の時間で会社の管理下にある場合
昼休みや就業時間前後などは実際に業務を行っていないので、“私的行為”とみなされます。ただし、社内施設の不備によって災害が起こった場合などは業務災害と認められることもあります。
◆通勤災害
通勤災害とは、労働者が通勤中に被った負傷や疾病、障害または死亡のこと。労災保険の給付を受けるには「労働者災害補償保険法」で定義された通勤の要件を満たしている必要があります。通勤中、事故に遭った場合はもちろん、行き帰りの途中に子どもを保育園に送迎するといった日常的な行為の中で起きた事故も通勤災害と認められます。
ただし、遠回りの経路で通勤した場合や、休日にアルバイト先へ行く場合などは通勤災害と認められません。
◆労災の認定
事業所を管轄する労働基準監督署が労災の認定を行います。労働基準監督署の調査結果によっては、労災が認められないケースもあります。業務時間中や通勤時間のけがなら必ず適用されるわけではないことは、必ず理解しておきましょう。
事業者はどんな対応・処理が必要なのか
◆被災者の救護などの現場対応
まずは被災者の救護が最優先です。最寄りの労災指定病院へ搬送・治療を行います。次に被災者の家族への連絡、重大な労働災害の場合は警察署や労働基準監督署に連絡を入れます。
◆事故状況の把握と原因の調査
警察署や労働基準監督署が行う現場検証や事故聴取に対応します。現場検証を行うまでは、可能な限り災害現場の保存に努めましょう。また、誰が・いつ・どこで災害に遭ったかを詳しく記録しておくと、その後の申請など様々な場面で役に立ちます。
◆労働基準監督署への届出・申請
労災事故が発生した場合、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出する義務があります。
事故によって労働者の休業日数が4日以上になる場合は、災害発生後に速やか(1週間から2週間程度)に提出しなければなりません。労働者の休業日数が3日以内ならば、以下の期限までに行う必要があります。
【書類の提出期限】
- 1月~3月に発生した分→4月末まで
- 4月~6月に発生した分→7月末まで
- 7月~9月に発生した分は10月末まで
- 10月~12月発生した分は1月末まで
◆再発防止策の検討・実施
事故の再発を防ぐために、設備や道具の改善、作業手順書の改訂などを行い、社内で安全衛生教育を実施することをおすすめします。
労災保険に加入し、労働災害の発生には速やかな対応を
事業者は必ず労災保険に加入しなければなりません。また、労災保険で受けられる給付には正社員、アルバイトの区別はないのでご注意ください。労働災害が発生した場合は速やかに対応し、再発防止に取り組むことが肝心です。
※記事内で取り上げた法令は2019年12月時点のものです。