そもそも募集要項とは?
そもそも募集要項とは、求人票に記載されている、応募条件や給与、勤務時間や労働内容といった内容のこと。たいていの求職者は、募集要項を見て条件を比較しながら応募する企業を決めます。そのため、なるべく効果的に応募者を集めるためには、いかに魅力的な募集要項を作成するかが重要になります。
しかし、企業によっては一般的な記載事項に基づいて事務的に募集要項を作成しているところも……。人材を募集している企業はたくさんあるため、ほかの求人に埋もれてしまっては、いつになっても必要な人材を集めることはできないでしょう。
募集要項に記載すべき事項は最低限抑えておく必要がありますが、どのように記載すれば求職者に魅力を感じてもらえるかを考えながら作成することが重要です。
募集要項に書くべき項目や書き方
適切な募集要項を作成するためには、まずは募集要項に書くべき基本的な項目を知っておく必要があります。項目に沿って必要な情報を入力していけばスムーズに募集要項を作成できるので、難しいと感じる人はそこまで多くないでしょう。
しかし、書き方によっては応募者が集まりにくくなるケースも……。多くの人が募集要項を作成する際に疑問を持ちやすい部分を把握しておけば、よりスムーズに募集要項を作成できるようになるでしょう。ここからは、募集要項に必ず記載する項目や多くの人が持つ疑問点、具体的な書き方の例について説明します。
◆募集要項に必ず記載する項目
募集要項に必ず記載する項目には、以下の6つがあります。
- 業務内容
- 就業場所
- 勤務時間
- 給与
- 保険に関する事項
- 契約期間
これらの項目を漏れなく記載すれば、募集要項としてある程度必要な情報が記載されていることになります。しかし、職業安定法といった労働に関するルールが変化したことによって、最近はより詳しい内容を記載しなければならなくなっていることに注意が必要です。
たとえば、試用期間や求人する事業所・個人名、派遣労働者として雇用するのかどうかといった項目も募集要項に記載しなければなりません。固定残業代を支給する場合は、給与の欄に明示すること、裁量労働制を設けていればその旨を記載すること、といったルールも設けられています。
募集要項に必要な情報が記載されていなければ、有効な求人として認められず、ハローワークや求人媒体などに掲載できなくなってしまうケースがあるので注意が必要です。
◆募集要項で疑問が出やすい部分とは?
必要な項目に沿って情報を入力していけば、比較的簡単に募集要項を立ち上げることができます。しかし、記載方法によっては求職者に企業の魅力を感じてもらえず、他社に流れてしまう危険性があるので注意が必要です。
ここからは、募集要項で疑問が出やすい部分について、詳しく説明します。
・職種や業務内容の書き方
職種や業務内容を記載するときは、求職者が就職後にどのような働き方をするのかを具体的にイメージできるよう意識することが大切。簡潔に業務内容を記載してスッキリとした募集要項に仕上げるのもよいかもしれませんが、他社と比較されると不利になることが考えられます。
たとえば、「飲食店の従業員」という職種で募集をする場合、接客や調理、洗い場や経理といった幅広い業務内容があります。端的な文言のほうが分かりやすいかもしれませんが、実際に働くときの様子をイメージするのは難しいでしょう。
あまりにも詳細に業務内容を書く必要はありませんが、大まかな業務内容をイメージできるような文言を考えておくことが大切です。
・就業場所の書き方
勤務先まで通勤する必要がある職種の場合、「どこで働くのか」という勤務先を明記しておくことは重要です。
募集要項には1つの勤務場所しか書いていなかったにもかかわらず、実際は就業場所が各地に点在しているケースも……。労働者によっては、通勤が負担になり退職してしまう人もいるので、就職後にミスマッチが発生するのはできるだけ避けておきたいものです。
転勤の有無や期間ごとに就業場所が変わるかどうか、1日の間に複数の就業場所が発生するかといった内容を分かりやすく記載しておきましょう。
・応募要件の書き方
募集要項の書き方で特に疑問を持ちやすい部分が、応募要件の書き方です。
たくさんの応募者を集めるためには、なるべく応募するハードルを低くすることが重要になります。しかし、あまりにもハードルを低くしすぎると、仕事に従事してもらうために必要な能力を持っていない応募者が集まってしまうかもしれません。
なるべく即戦力となる人材を確保したいと考える企業は多いですが、「誰でも歓迎」といった文言で応募要件を記載してしまうと、人材育成に大きなコストをかけてしまうことになってしまうので注意が必要です。
職務を遂行してもらうために最低限必要な能力を考えたうえで、適切な人材を集められるような応募要件を書けるようにしておきましょう。
・試用期間の書き方
試用期間があるかどうかという点は、意外と書き忘れてしまう企業が多いです。せっかく就職したにもかかわらず、就職後に初めて試用期間があることが発覚すると、トラブルに発展してしまいかねません。
試用期間について記載していなければ、ほとんどの求職者は「使用期間がない企業だ」と考えるでしょう。もし使用期間中のみ適用される勤務先や給与といった条件があるのであれば、あらかじめ明記しておくことが重要です。
◆募集要項の書き方の例
適切な募集要項を作成するためには、実際にどのように募集要項を作成すればよいかを確認しておくことが大切です。募集要項に記載する内容は企業によって違いますが、共通している部分も多いので、参考にしてみてください。
裁量労働制を用いる場合は、「裁量労働制により、1日あたり〇時間働いたものとみなす」と記載するなど、具体的な条件を提示しておく必要があります。固定残業代制度を導入している場合は、基本給手当の金額、時間外手当として支給される金額や割増賃金を支払う条件などについて明確に記載しておきましょう。派遣労働者を雇用する場合は、雇用形態の欄に「派遣労働者」と記載します。
魅力的な募集要項の書き方とは?
必要な人材をしっかり確保するためには、なるべく求職者が魅力を感じる募集要項を作成する必要があります。魅力的な募集要項を書くためには、以下の8つのポイントを意識することが大切です。
- どのような人材を募集しているかはっきりさせる
- 企業の持つ強みをアピールする
- 具体的な数字を用いて表現する
- 応募者のニーズを考える
- 応募するハードルを下げる
- 多様な表現方法を活用する
- 他社よりも魅力的な条件を設定する
- 就職後の状況をイメージしやすくする
これらのポイントを意識して募集要項を作成すれば、他社よりも魅力を感じてもらいやすくなり、応募者を増やすことにつながるでしょう。ここからは、魅力的な募集要項の書き方について詳しく説明します。
◆どのような人材を募集しているかはっきりさせる
募集要項を作成する際に、「ただ人を集めたいから」という理由で立ち上げてしまうと、一般的な内容になってしまったり、本当に求めている人材を確保するのが難しくなります。まずは、どのような人材にどのような仕事をしてほしいのかを明確にしておきましょう。
たとえば、飲食店での接客経験があるといったスキル面や、明るい人柄でお客さんと関わることが好きといったこと、完成した料理の提供やテーブルの後片付けといった業務内容を記載することなどが挙げられます。募集している人材が具体的であるほど、理想的な人材に応募してもらいやすくなるのです。
◆企業の持つ強みをアピールする
募集要項はありふれた内容になってしまいがちですが、企業の持つ強みをアピールしておくと、他社の求人と差別化を図れます。
企業としての将来のビジョンや社内の雰囲気、新入社員への教育制度や独自に設けている福利厚生制度など、求職者が魅力を感じるような内容を盛り込むのがおすすめです。
◆具体的な数字を用いて表現する
募集要項に具体的な数字を用いると、求職者の目をひきやすくなります。たとえば、「お客様の満足度は年々上昇しています」よりも、「お客様の満足度は前年よりも10%アップ」のほうが、募集要項を見た人に良い印象を与えやすいです。
ほかにも、従業員の職務満足度や顧客のリピート率など、数値化できる項目はたくさんあるので、企業の強みを数値として表せる部分を募集要項に盛り込みましょう。
◆応募者のニーズを考える
企業が手に入れたい人材を考えたうえで募集要項を作成することは大切ですが、求職者の目線で募集要項を立ち上げることも重要。
「仕事を通してマネジメントスキルを身につけられる」、「家事や育児と両立しやすい」、「能力に応じて高収入が期待できる」といった魅力的なキャッチコピーを考えることで、求職者の心に残る募集要項に仕上げることができます。
働きたいと思っている求職者が、仕事をするうえで何を求めているかを考えることで、企業と求職者の条件がマッチしやすくなるでしょう。
◆応募するハードルを下げる
なるべくたくさんの応募者を集めたい場合は、応募するハードルを下げることも大切。
「飲食店での調理業務」といった募集をかけると、「調理ができる人でなければ採用してもらえないのではないか」という印象を与えてしまいかねません。しかし、「未経験者歓迎」や「新人教育が充実している」といった文言を添えることによって、求職者が感じるハードルを下げ、応募しやすい募集要項に仕上げることができます。
◆多様な表現方法を活用する
募集要項と聞くと、堅いイメージを持つかもしれません。しかし、業種によっては、ひらがなやカタカナ、漢字の使い方やバランスによって、募集要項を見た人に与えるイメージを変えることができます。
たとえば、「車の製造」では機械的な印象を与えますが、「クルマの製造」とすると、自動車にこだわりを持っていたり、先端技術を取り扱っているようなイメージを与えることが可能です。どのような表現方法を用いれば求職者の心に響きやすいのか、よく考えたうえで募集要項の文言を決めましょう。
◆他社よりも魅力的な条件を設定する
他社の求人と比較する際に特に注目されるのが「労働条件」の部分。労働条件が明らかに劣っていれば、応募してもらえる可能性が低くなってしまいます。
給与だけでなく、労働時間や業務内容、休日数や福利厚生の充実度といった条件が、同じ業種の求人よりも劣っていないかを確認し、なるべく魅力的な条件を提示できるようにしておきましょう。
◆就職後の状況をイメージしやすくする
実際にあなたの企業で働いたら、どのような生活を送ることになるのかをイメージしやすいと、求職者も応募を検討しやすくなります。
業務内容や給与、勤務場所や教育制度などを具体的に記載しておくことによって、就職してからのミスマッチを防ぐことにもつながります。他社との違いを作るためにも安心して応募ができるかという点を意識してみましょう。
募集要項を作成する際に注意すべきの書き方とは
ある程度自由に記載できる募集要項ですが、注意点を理解したうえで作成しなければ、思わぬトラブルが発生する危険性があります。具体的な注意点として、以下の4つが挙げられます。
- 性差別的な表現は避ける
- 賃金について具体的に記載する
- 条件などをそのまま記載しない
- 年齢を限定しない
これらの注意点を意識しながら募集要項を作成すれば、スムーズに人材を集められるようになるはずです。ここからは、募集要項を作成する際に注意すべき書き方について、詳しく説明します。
◆性差別的な表現は避ける
男女雇用機会均等法では、募集や採用に関して性差別的な表現をおこなうことが禁止されています。たとえば、募集する際に「男性のみ募集」や「女性限定の仕事」といった文言を記載するのはNGです。退職した男性社員の穴埋めをするために男性のみ募集することや、管理職に昇進できるのを男性に限定するといったことも禁止されています。
場合によってはペナルティを受けることになるケースもあるため、募集要項を作成する際は十分注意しておきましょう。
◆賃金について具体的に記載する
労働者とのトラブルで特に多いのが、賃金に関するもの。募集要項に記載されていた賃金と、実際に支給される賃金が異なるといったトラブルが代表的で、募集要項に記載されている賃金が曖昧になっていることが原因のひとつだといわれています。
魅力的な賃金を記載すれば応募者が集まりやすいですが、就職後のトラブルを避けるためにも齟齬がないよう具体的に示しておくことが大切です。
◆条件などをそのまま記載しない
記載すべき項目に沿って条件等を入力すれば、時間をかけずに募集要項を完成させることができます。しかし、ありきたりな表現ばかり記載されていると、他社との差別化を図りにくく、求職者の目にとまりにくい募集要項になってしまいます。
ある程度の時間や手間がかかるかもしれませんが、企業が求めている人材を集めるためには、求職者の目線に立って文言を考えることが重要。募集要項を見た人がどのような印象を持つのかを考えながら、客観的な目線で作成しましょう。
◆年齢を限定しない
職業対策法では、年齢によって働く機会を制限することを禁止しています。そのため、「重量物の運搬があるので50歳未満限定」や、「若い女性向けのファッションを扱うので40歳未満限定」といった募集方法は認められません。
たとえ体力が必要な仕事や若い女性向けのファッションの仕事であっても、若い人しか従事できないとは限りません。具体的な業務内容や必要な資格などを明記することによって、必要な人材を確保しやすくなるような工夫が求められます。
まとめ
ここでは、募集要項がどのようなものであるか、募集要項に記載すべき項目や魅力的な募集要項の書き方、実際に作成する際の注意点などについて説明しました。なるべく理想的な人材を採用するためには、他社との差別化を図りながらミスマッチを防ぐような具体性のある条件を明示することが重要です。
ここで説明した内容を参考にして、求職者が安心感を持って応募できるような募集要項を作れるようにしておきましょう。