インクルージョン推進は小さな事から。Indeed で障害者支援を行うAccess Indeed にアドバイスを聞いた

By Indeed

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障害者雇用を推進したいが、従業員の理解を深め、障害に配慮した就業環境を整えるには、何から始めれば良いのかーー。そう悩む経営者や人事担当者の方は少なくないでしょう。

障害者の法定雇用率の達成だけを目的に採用しても、企業の受け入れ体制が整っていなければ職場定着には結びつかず、お互いにとって不幸な結果を招きかねません。

Indeed では、こうした従業員の多様性に関する課題を解決し、ダイバーシティとインクルージョン(D&I)の精神を社内から広げていくために、「Inclusion Resource Groups (IRGs)」と呼ばれるグループが活動しています。

IRGsには、LGBTQ+や女性支援、多国籍な文化の尊重など、さまざまな目的を持ったグループがあり、いずれも有志の従業員によって運営されています。メンバー固有の経験や視点も活かしたその活動は、Indeed のビジネスの成長にも貢献してきました。

今回は、障害やメンタルヘルス、ニューロダイバーシティ(脳の多様性)など、広い範囲でのアクセシビリティ(利用しやすさ)の改善や社内教育、従業員サポートに努めているIRG、「Access Indeed」のリーダーであるChristel Ghawi(クリステル・ガーウィ)に、これまでの活動や、企業がインクルーシブな文化を醸成するためにできる取り組みについて聞きました。


真剣な眼差しでインタビューに応じるクリステル・ガーウィ

ーー まず、Access Indeed の目的を教えてください。

目的はいくつかありますが、主には、障害やニューロダイバーシティに関する従業員教育や、インクルーシブな採用手法の促進、また、Indeedのプロダクトやサービスがより多くの人にとって利用しやすくなるよう、働きかけることです。

プロダクトのアクセシビリティに関して、開発に携わる従業員の相談にのったり、助言したりもします。

ーー これまでどのような活動をしてきたのですか。

日本で最初に行った大きなイベントは、「Life with an Invisible Disability (認知されづらい障害と歩む)」と題したストーリーテリングのオンラインイベントです。

私は「関節過可動型EDS」という遺伝性疾患を抱えていますが、杖を持っていなければ、見た目からは障害者とはわかりません。イベントでは、私自身が話し手となり、認知されづらい障害を抱えている人は自分が思うよりも身近にいることや、周囲ができる配慮について、APAC地域の従業員らに伝えました。

また、私が障害者として直面してきたマイクロアグレッションや、どのように障害と生きる方法を学んできたかなど、私自身の経験についてもお話ししました。

人々は障害を持つ人たちを「障害者」という大きなくくりで一緒くたに捉えてしまいがちですが、障害やニューロダイバーシティーなどの言葉には、人それぞれ、多様な状態が内包されています。名称的には同じ障害でも、ひとつとして同じものはありません。

参加者には、個人のストーリーとして障害と向き合うことにより、そのことを理解してもらえたのではないかと思います。従業員からは「自分の障害について打ち明ける勇気をもらった」「つらくても、トンネルの先には光があると感じられた」など、当事者からの感想も寄せられ、感激しました。

2022年2月には一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティと協力して、視覚障害者の方に、Indeedの検索サイトを実際に使っている様子を見せて頂くオンラインイベントを開きました。

目が見えないなかで携帯電話を使う様子や、Indeed のウェブサイトで仕事検索をしている様子を見せて頂き、便利な部分や使いづらい部分の正直なフィードバックをもらいました。

エンジニアの参加者からは「今まで、目が見えない人の携帯の使い方をよくわかっていなかったが、とてもよく理解できた。」という声もありました。それまでも、アクセシビリティとユーザビリティ(使いやすさ)を意識してプロダクト開発をしてきましたが、より多様な視点から使いやすさを考えるきっかけになったのではないかと思います。

そうした意味でも、当事者たちの経験をほかの従業員とシェアすることは、大切だと考えています。

このほかは、定期的にAccess Indeed のメンバーが参加するHackathon (ハッカソン)というオンラインイベントを開催しています。イベントでは視覚や聴覚に障害がある人でも、Indeed のサービスを問題なく利用できるかテストしたり、社内システムや設備の使い心地を確かめたりします。

メンバーからアクセシビリティに関するアイデアを募る場でもあり、車椅子でも利用しやすくするためのオフィス改修案が、実際に採用されたこともありました。

ーー 従業員の理解を深めるだけでなく、実際に会社のプロダクトやオフィスのアクセシビリティの向上にも寄与しているんですね。有志のメンバーによる運用は、どのように行っているのですか。

東京支部では、主に私を含む4人のグループリーダーがイベントの企画や運営を行っています。

社内のSlack という連絡ツールにあるAccess Indeed のチャンネルには、現在、87人の従業員が参加しており、イベント開催時などにボランティアを募れば、多くの人が積極的に手を貸してくれます。

このチャンネル上で、イベントを周知したり、障害やニューロダイバーシティに関する有用な情報をシェアしたりもしています。

ーー 日本では、身近に障害やニューロダイバーシティの課題について考える機会が多くありません。従業員にこうした取り組みに関心をもってもらうには、どうすれば良いのでしょう。

確かに、障害やニューロダイバーシティへの取り組みは、女性のエンパワーメントやiPride (LGBTQ+を支援する活動)などと比べると、とっつきにく印象があるようです。

Access Indeed に対しても、障害に関する知識がないのに会話に参加してもよいのだろうか、自分の無知な発言でだれか傷つけてしまうのではないかと不安を感じる人もいます。

しかし、実際は活動するために知識が必要なわけでありません。リーダーである私でさえ、決してすべてを理解できているわけではないのですから。学ぶ機会として参加することに意義があるのです。

「知識が無いと参加できない」という誤解を払拭するため、私たちは社内にAccess Indeed の資料を配布し、サポートしたい気持ちや、学びに対してオープンな気持ちがあれば誰でも参加できるグループだと伝えています。

また、自分にはあまり関係がない領域だと考えている人には、障害を抱える人はすでに身近にいることを、データを示して知ってもらうことも良いでしょう。 厚生労働省の調べ(令和4年3月)によると、日本の人口の約8%はなんらかの障害を抱えていると示されています。

加えて、ある日、自分自身が、障害を持つ当事者になる可能性も考えられます。歳を重ねれば、足腰が弱ったり、目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなることもありますよね。

人生のどこかで、誰もが障害と向き合う可能性が高いということを知ってもらえば、興味を持つ人も増えるのではないでしょうか。

インタビューに応じながら微笑むクリステル・ガーウィ

ーーAccess Indeed のように、社内に障害やアクセシビリティの課題に取り組むグループをつくるメリットは何だと思いますか。

3つ浮かびました。

ひとつは、社内にポジティブな変化を作り出すきっかけが掴めるということです。アクセシビリティなどについて考える機会ができ、メンバーには学んだことをシェアしようとする責任感が生まれるかもしれません。

そもそも、何かしらの障害を抱える人が一人もいない企業というのは少ないはずです。社内にサポートが必要な人がいれば、そうしたグループが支援し、インクルージョンを推進する必要があるでしょう。

例えば、障害者を受入れるために必要なものは、車椅子が通れるスロープや、広めのドアなどに限りません。障害の特性にあったマウスを提供したり、視力が弱い人のためにパソコンの文字を読みやすくするソフトウェアを導入するなど、受け入れ体制を整えるためにできる事は様々です。

また、日本には障害者の雇用に関する支援機関が多数あるため、全てを社内グループで抱え込む必要もありません。支援を受けながら、働きやすい環境を整えていけます。社内にそういったことについて学び、啓蒙していくグループがあるのは、非常に良いことだと思います。

ふたつ目は、インクルージョンに取り組むことで、採用市場においても優位に立てることです。

今の日本の採用市場は、仕事を探している人の方が少ない売り手市場です。こうした状況でも、障害者やニューロダイバージェントの採用体制が整っていれば、自社が求める優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

例えば、近年は、ニューロダイバージェントの人材が持ち合わせている事が多い、高い集中力や分析的思考などを見込み、高度なIT人材として採用・育成する企業も増えています。こうした人材採用が可能になるという意味で、企業にとって大変重要なことです。

最後は、障害者やニューロダイバージェントの人材が働きやすい環境を整えることで、すでに社内にある才能から、より価値を生み出せるようになることです。

例えば、発達障害の人は、自身も周囲もそうだと気づかないうちに採用されることもよくあります。しかし、働き始めてから、管理されたり、指示されたりすることに違和感を感じてしまう人もいます。

もし、従業員のマネジメントに難しさを感じていたり、ニューロダイバージェントの人と働くことを考えているのなら、そうした人のニーズを知り対応していくことは、その従業員にも、会社にもメリットになることを知ってほしいです。

ーーAccess Indeed のようなグループを立ち上げ、インクルージョンを推進するためのアドバイスをください。

まずは、有志の人で小さく始めることです。知識がある人、障害を抱える当事者の人など、「こういう人がグループにいるべき」といった固定観念は捨てましょう。私達も、以前に車椅子に乗っていた人、目の見えにくい人、ただ障害者をサポートしたい人など、多様な4名でスタートしました。

活動についても、最初はできることをすれば良いと思います。一緒にコーヒーを飲みながらテーマに沿っておしゃべりをしたり、関連する記事を読んだり、ビデオを鑑賞して話合うなど、簡単なことから始めると良いでしょう。

そういったグループが存在するだけで、支援したいと考えている人がいるというメッセージを社内外に届けられます。

しかし、目的は明確にしておきましょう。障害者にとってより良い職場環境を作りたいのか、障害者雇用に注力したいのか、自社の商品をインクルーシブしたいのかなど、範囲を決めると取り組みやすくなります。

また、グループの人に取り組む時間を与えることも大切です。Indeed の場合、グループリーダーであれば労働時間の10%を、公式メンバーであれば5%を、このIRGの活動に充てても良いということになっています。

有志のメンバーだとしても、インクルージョン促進のために余分に働いてもらうのではなく、日々の業務時間の一部をそうした活動に割けるようにすれば、メンバーのモチベーションも高まり、責任感が生まれます。

インクルージョンが進めば、多様性のある人材の採用にも前向きになれ、より広い人材プールにアプローチできるなど、企業としてもメリットは大きいはずです。

インタビューに応じるクリステル・ガーウィ

ーー最後に、 Christel さんが Access Indeed のリーダーを務めるモチベーションを教えてください。

自分が障害者というのはありますが、根本にあるのは、私が経験してきたような困難に直面している人たちをサポートしたいという気持ちだと思います。

私自身、自分の障害を受け入れ、人に話せるようになるまでに長い時間がかかりました。やっと、本当の意味で受け入れられるようになった時、周囲にも、自分と同じように、職場や移動におけるアクセシビリティの低さや、差別、マイクロアグレッションといった壁に遭遇している人がたくさんいることに気づいたのです。

そうした人達に、障害を抱えることは、人生の終わりなどではないことを示したいです。私自身、障害から来る体の痛みを感じながらも、それらと共に生きる方法を見出せたからです。

もうひとつのモチベーションは、私の学生時代の体験からきています。私は15歳のときに、ノルウェイのUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)に進学しました。そこで最初にできた親友が、ダヴィードという全盲の青年でした。

彼は、当時はめずらしかった点字付きのノートパソコンを使って文字を打ち、パソコン上の文字もスクリーンリーダーを使用して読んでいました。

分厚い本をすごい速さで読み終え、内容を細かに教えてくれたりするダヴィードと過ごすうち、彼は私にとって「支援の必要な障害者」ではなく、ただ私と同じ人間で「たまたま目が見えない人」になりました。

そうした経験から、エンジニアの道を歩みはじめた私には、視覚障害者でも問題なくウェブサイトを閲覧できる、デジタル・アクセシビリティを推進したいという情熱が自然と湧いてきました。

Indeed 社内はもちろん、デジタル・アクセシビリティを世界へ広げていくことは、私のモチベーションであり、目標のひとつです。

ーー 私たちもできる事を始めたいです! ありがとうございました。

お話しを聞いたのは…

Indeed のオフィスで微笑むクリステル・ガーウィ

Christel Ghawi (ガーウィ•クリステル)

Indeed Japan の シニアQAマネージャー。Indeed の Access Indeed(アクセス・インディード)グループの APAC Chairとして、アジア太平洋地域のアクセシビリティに関する社員主導の活動を監督する。普段はQAスペシャリストとして、ソフトウェア開発におけるやテストマネジメントなどを担当。レバノン出身。

鞄につけられた赤いヘルプマークのタグ

Christel が鞄につけていた「ヘルプマーク」。外見からは分かりづらい障害や疾患などがある人が、周囲に支援や配慮を必要としていることを伝えられるマークです。

PHOTO: 久米脩哉

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