採用面接の様子など、面接を受けた応募者が採用情報をSNSに書き込むことは、内定取り消しの理由になるのでしょうか。SNSが日常的に利用されている現代、担当者は採用活動にまつわる情報管理も欠かせません。SNSに関連する内定取り消しについて、弁護士法人ブレイス・弁護士の渡邉直貴さんに伺いました。
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求人を作成する採用面接情報の守秘義務を負う人・負わない人
個人情報保護法により、企業は面接者の個人情報を社外の第三者に漏らしてはいけない守秘義務を負っています。個人情報とは、氏名、性別、生年月日などの個人を識別する情報はもちろん、個人の身体・健康情報、職種・経歴などの事実や判断、評価など、すべての情報についてです。
一方、原則として、面接者には採用面接情報についての守秘義務はありません。あくまでも面接者の倫理観に委ねられているのが現状です。
そのため企業は、採用面接情報を他者に漏らさない、SNSで拡散しないなどの注意喚起はできても、強制的に口止めする権利はありません。面接時に、守秘義務を課すための秘密保持契約書や誓約書などを交わしていれば別ですが、そのような企業は少数です。
内定取り消しの有効性の条件
企業が正式な内定通知を出し、応募者がこれに応じた時点で「内定」が成立します。法律上、すでに労働契約が成立した状態であり、正式には「始期付解約権留保付労働契約」の成立といいます。
「始期付」とは、「労働契約の開始時期を内定成立の時期ではなく実際の入社日とする」という意味です。「解約権留保付」とは、「入社までにやむを得ない事由が発生した場合には内定を取り消すことがある『解約権』が付いている」という意味です。
「解約権」が付いているとはいえ、理由もなく内定を取り消すことはできません。なぜなら、内定が成立した時点で労働契約も成立しており、「内定取り消し=解雇」という解釈が成り立つからです。
つまり、「やむを得ない事由」には、解雇と同程度の厳しい要件が課されます。「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」と認められない限り、内定取り消しは不当解雇に当たります(労働契約法第16条)。
「SNSへの書き込み」を理由とする内定取り消しの是非
SNSへの書き込みを理由に内定を取り消す場合、採用面接情報の内容が企業の「機密情報の漏洩」に該当するかどうかが問題となります。ただ、面接時に企業の重要な顧客情報や技術情報などに触れることは考えにくく、採用面接がいかに独創的・個性的な方法であっても、機密情報そのものとなることは考えにくいでしょう。
面接内容が公開されることで想定問答を準備する面接者が現れ、公正な選考が困難になるという側面も考えられます。しかし、面接における質問が漏洩したからといって、必ず合格できるものではありません。これをもって「機密情報の漏洩」と評価することも困難です。
企業を誹謗中傷し、社会的信頼を失墜させるような書き込みは、「会社に対する誹謗中傷」という内定取り消し事由(解雇事由)に該当します。この場合、面接者の誹謗中傷によって企業が重大な損害を受けたという証明が必要です。証明できなければ、「客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるもの」という判断にはならず、やはり内定取り消しが有効となる可能性は低いといえます。
つまり、採用面接情報をSNSに投稿したことを理由とする内定取り消しは、非常に難しいといえます。
内定を出す前に面接者のSNSに対する考え方をチェックする
「内定」はまだ労働契約が結ばれていない状態と誤解されがちですが、解雇と同等の意味を持ちます。内定取り消しのハードルは高く、安易に内定取り消しを選択しても無効になる可能性が高いので、慎重に検討してください。
繰り返しになりますが、SNSへの書き込みを理由とする内定取り消しは非常に困難です。そういった事態への発展を防ぐためにも、面接においてSNSに対するリテラシーを確認する、逆に企業側のSNSに対する考えを伝える、また内定を出す前に面接者のSNSをチェックするなど、できる限り面接者のSNSに対する考え方を確認することが賢明です。
※記事内で取り上げた法令は2022年9月時点のものです。
<取材先>
弁護士法人ブレイス 弁護士 渡邉直貴さん
京都大学法学部卒業。弁護士としてのモットーは「局地的な勝敗」ではなく「終局的な解決」。お客様がより幸せになれる終局的な解決に向けた多面的なアドバイスで、安心感と満足感を与える法的サービスを提供。税理士・社労士・メンタルヘルスマネジメントⅠ種の資格も有している。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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