2019年4月より順次施行されている「働き方改革」関連法案により、働き方の見直しが進む中、スムーズに働き方改革を導入できずにいるケースも見られます。どのような問題点や課題が考えられるか、解決のポイントも含め、社会保険労務士法人名南経営の社会保険労務士、服部英治さんにお聞きしました。

働き方改革とは

◆多様性と柔軟性を重んじた働き方

厚生労働省によると、働き方改革とは「働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにするための改革」と定義されています。少子高齢化が進むなか、労働人口の増加や出生率の上昇、労働生産性の向上を目指して、50年後も人口一億人を維持し、職場・仮定・地域で誰しも活躍可能な社会を指す「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みといえます。

◆働き方改革における3つの柱

働き方改革の推進のためには、次の3つの柱が重要だと考えられています。

1.長時間労働の是正
「時間外労働の上限規制」や「年5日の年次有給休暇の確実な取得」により過重労働を防ぎ、仕事と生活が調和するワーク・ライフ・バランスを推進する

2.正規・非正規の格差の解消
正規雇用者と非正規雇用者との賃金・待遇格差を解消するためのガイドラインなどにより、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する

3.多様で柔軟な働き方の実現
自己裁量で1日の勤務時間を設定する「フレックスタイム制度」や「高度プロフェッショナル制度」により個々の事情に応じた働き方を推進する

いずれも働き方改革において重要な取り組みですが、特に長時間労働の是正は、多くの企業にとって大きな課題となっています。

働き方改革のデメリットを感じる企業が抱える背景

働き方改革への取り組みを負担に感じてしまう企業の背景として、慢性的な人手不足が挙げられます。人員が不足している状況では、従業員が時間外労働を減らしたり、有給休暇を取得したりすると業務量が分散できず、長時間労働の是正への取り組みが困難になります。その上、従業員を採用しても定着しなかったり、資金力が乏しく、積極的に採用活動を行いづらかったりするケースも見られます。

働き方改革を進めるための課題の洗い出しと解決方法

◆「割に合わない仕事」を見直す

自社が受注している業務案件から、安すぎる価格で引き受けている仕事を洗い出し、値上げ交渉を行ったり、思い切って契約を断ったりすることを検討します。短期的に売上は減少したとしても、長い目で見れば従業員の働きやすさや、企業の生産性の向上につながりやすくなります。

◆営業日・時間を見直す

たとえば飲食店などの場合、どの曜日や時間帯が忙しいかなどを分析し、年中無休から定休日を設けたり、営業時間を短縮したりすることで、従業員の長時間労働の是正が図りやすくなります。

◆業務を標準化する

特定の人物にしか進め方や進捗状況がわからない業務が多いと、過重労働につながります。業務に携わるメンバーが同じ成果を出せるよう、業務フローを整え、ルールに沿って業務ができるようにマニュアル化します。一例として下記のようなステップがあります。

  1. 担当者の業務フローを書き出すなどして可視化する
  2. 業務内容の工数や順序、業務の難易度などを分析し、より効率的な方法がないか見直す
  3. ほかのメンバーに共有し、特定の誰かがいなくても業務が進められるようにする。クラウドサービスなどを活用すると、進捗状況の共有などが容易になる

◆オンラインを活用する

会議や打ち合わせ、クラウドシステムを活用した業務など、オンラインでできる業務が多い日はテレワークを推奨するなど、柔軟性を持った働き方を認めて従業員の負担を軽減しましょう。

働き方改革推進時の注意点

「残業をさせないように」と安易に従業員の退社時間を早めても、業務量が変わるわけではありません。家に持ち帰って仕事をしたり、管理職の負担が増えたりと、働き方改革が進むどころか、過重労働が表面化しづらくなる危険性もあります。働き方改革の本質を理解し、生産性の向上を伴った改革を進めていくことが重要です。

人材不足のなかでも、業務の見直しなどにより、働き方改革は少しずつ取り組んでいくことが可能です。日々できる範囲から改善を行っていきましょう。




※記事内で取り上げた法令は2022年12月時点のものです。

<取材先>
社会保険労務士法人 名南経営 社会保険労務士 服部英治さん
大手社会保険労務士事務所を経て、1999年に名南経営に入社。全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援や、人事制度の改定支援をはじめ、各種人事労務相談に応じている。

TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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