「てんかん」のある人は日本に約100万人、100人に1人の割合でいると推定されています。治療によって7割程度の人が症状をコントロールできる慢性疾患であり、多くの職場でてんかんのある人が活躍していますが、発作に対しては就業上の配慮が必要となることもあります。てんかんのある人も周りの従業員も、どちらも安心して長く働ける職場づくりのために必要な知識や行うべき配慮について、公益社団法人日本てんかん協会の田所裕二さんに聞きました。
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求人を作成するてんかん発作は治療によって抑制できる
――てんかんのある人は100人に1人と聞きました。多くの人が発症しているのに、てんかんがどんな病気なのかはあまり知られていないように思います。
「てんかん」は、脳の神経細胞(ニューロン)に突然発生する激しい電気的な興奮により発作が繰り返し起こる疾患です。
「てんかん発作」というと、多くの人は「突然、口から泡をふいてバタンと倒れてしまう」というイメージを持っているのではないでしょうか。前触れもなく急にけいれんを起こすこともあり、昔からてんかんは「よく分からない」「なんとなく怖い」と思われてきました。今なお病気に対する誤解や偏見が根強いため、てんかんがあることを隠す人も多いのです。
実は、意識を失っていきなりバタンと倒れてしまう発作は、てんかんの発作のごく一部です。意識を保ったまま「手やまぶたなど身体の一部がピクピクと動く」とか「チカチカとした光が見える」というてんかん発作の症状もあります。他にも突然体の力が抜けて倒れてしまったり、急に意識が途切れてぼんやりしてしまったりする発作も起こります。人によって現われる症状が様々であり、一般化が難しいこともてんかんの特徴です。
――てんかんの原因について教えてください。
てんかんは脳炎、髄膜炎、脳出血、脳梗塞、脳外傷など、脳内の障害や傷が原因となることもありますが、様々な検査をしても異常が見つからない原因不明のてんかんも少なくありません。乳児から高齢者まで誰もがかかる可能性のある病気です。
同時に、抗てんかん薬の服用を続けるなど適切な治療を受ければ発作を抑制できる病気でもあります。てんかんのある人のうち、7割程度は通院治療を続けつつ、問題なく通常の生活を送ることができています。
発作の特徴を理解して適切な対応を
――治療によってある程度症状がコントロールできる疾患でありながら、てんかんのある人は就職するときに苦労したり、職場でトラブルになったりすることもあると聞きました。
てんかんのある人は病気を理解してほしい気持ちはあっても「てんかんと知られたら差別されてしまうのでは」と不安に感じていることが多いものです。病気のことを言い出せないまま入社し、職場で発作が起きてしまい「なぜ今まで言ってくれなかったのか」とトラブルになるケースもあります。
また、てんかんがどんな病気なのか分からないと、けいれんなどの発作が起こったときに職場の人は慌ててしまいます。「ぼんやりしてしまう」タイプの発作だと「勤務時間中に居眠りをしている」と誤解されてしまうこともあるようです。
会社も従業員も、お互いにてんかんについて理解し「どんな発作が出ることがあるか」「どんな時に発作が起こりやすいか」「発作が起きたら周りはどう対応するべきか」と確認しておくことが大切です。
――職場でてんかん発作を起こした場合には、すぐに救急車を呼ぶべきでしょうか?
必ずしもその必要はありません。実はてんかん発作はほとんどの場合数秒~数分間でおさまり、その後は普段通りに過ごせることが多いのです。事前に「けいれんが1分くらい続く」と聞いていて、その通りの発作であれば特に何もする必要はありません。倒れたときに危なくないよう、ぶつかりそうな物を遠ざけておく程度で大丈夫です。もしも聞いていた発作と違う症状が現われたり、長く続いたりする場合は救急車を呼んだ方がよいでしょう。
本人や主治医とコミュニケーションを取る
――職場で発作を起こしてしまう可能性を考えると、てんかんのある従業員にどんな業務を任せればいいのかと悩む企業も多いのではないでしょうか。
てんかんがあるというだけの理由で業務を制限するなど、偏見を助長することはあってはなりません。しかし、発作がまだコントロールされていないことを知りながら運転をさせていたり、あるいは企業が発作が起こりやすい環境にあることを放置したまま、従業員がてんかん発作による事故を起こしてしまった場合には、事業主の管理責任が問われます。
人によって発作の原因も症状も違うのがてんかんの特徴ですから、どんな業務をどれくらい任せても大丈夫かは、本人や主治医とよく話し合って決めましょう。本人や主治医と普段から丁寧なコミュニケーションを取り、リスクに備えていれば、万が一事故が起こってしまった場合にも事業主の過失とされることはないでしょう。
――発作や体調について従業員や主治医から正確な情報を得ることが大切なのですね。
その通りです。しかしながら、障害者雇用の場合などを除き、採用面接の際に健康状態について詳しくヒアリングすることは難しいものです。前述したように、てんかんがあることを周りに伝えていない方は少なくありません。
たとえば、勤務中にぼんやりしたり、居眠りをしていたりするように見える従業員をいきなり責め立てるのではなく「体は大丈夫?」「疲れているのでは?」と、体調を気づかうような声かけをしてはどうでしょうか。
また、てんかん発作を起こしてしまった従業員にも「どうして隠していたんだ」と詰問するのではなく、「従業員の健康を気づかっているから聞かせてほしい」「業務ではどんなことに気を付けるべきか考えていきたい」と伝えてみてはと思います。企業がてんかんに対して理解がある、あるいは理解しようと努めている姿勢を示せば、従業員も自分の病気について話しやすくなるのではないでしょうか。
――他にも、職場で配慮するべき点などはありますか。
てんかん発作の出やすい状況が分かっていれば、避けられる環境があるといいですね。たとえば「光感受性発作」といって、テレビや電子機器の光の点滅などの刺激で発作が起こる人もいます。また、睡眠不足や疲労が蓄積された場合に発作が起こりやすくなる人が多いと言われています。業務が過重になりすぎないように業務量を調整し、適切に休憩や休暇が取れるよう本人も周りも注意していくことが望ましいでしょう。
「てんかん」について知りたいときの窓口は
――企業や経営者がてんかんについて情報を得たり、相談ができたりする窓口があれば教えてください。
私たち日本てんかん協会にご連絡いただければ、てんかんに関する情報提供が可能ですし、パンフレットなどの資料をお送りすることもできます。企業向けの研修会や勉強会でお話しすることもできますのでお問い合わせください。
また、独立行政法人高齢・障害求職者支援機構のホームページにも、事業主のためのQ&Aや職場でのてんかん発作の対応や未然防止などについて分かりやすくまとめた資料が掲載されています。
各都道府県にある「地域障害者職業センター」でも、てんかんのある人と働く際にどんな配慮が必要かといった相談ができます。障害者手帳を持っている人はもちろん、手帳を持っていない人の相談も可能です。
<取材先>
田所裕二さん
公益社団法人 日本てんかん協会(波の会)理事・事務局長
てんかんに関する調査研究、正しい知識の普及啓発、てんかんのある人々の療育指導等に取り組む、てんかんのある人や家族、医療関係者などによる全国組織。ソーシャルワーカーとして、およそ40年間てんかんや精神疾患のある人とその家族の社会援護・相談支援活動を全国で行っている。
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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