
2021年に、KickstarterのChief Strategy OfficerであるJon Leland氏は、週4日32時間勤務、いわゆる週4日勤務制の導入を同社に提案しました。仕事の基準は100:80:100、つまり80%の勤務時間に対して100%を支払い、100%の生産性を期待するというものでした。
「とんでもないことを言い出したと思われないかというのが、最大の懸念でした」と、Leland氏は言います。
週4日勤務のコンセプトはもはや、現実味のない空論でも非実用的でもありません。今日、多くの米国企業が週4日勤務の試験導入を実施しており、最新の調査では効果があることが分かっています。イギリスを拠点として、週4日勤務制を推奨する運動「4 Day Week Campaign」が、シンクタンクのAutonomyやケンブリッジ大学、オックスフォード大学、ボストンカレッジの研究者と協働で支援した最近のパイロットプログラムでは、イギリスの企業60社以上が2022年6月から12月まで週4日勤務を試験導入しました。
この取り組みは、一部の企業にとって、週4日勤務制についての画期的な発見につながりました。このプログラムには、マーケティング、金融、デジタルマニュファクチャリング、食品小売業など、さまざまな業種の企業が参加しています。参加企業に勤務する2,900名の従業員を対象としたアンケート調査の結果では、39%がストレスの軽減を報告し、従業員の71%がバーンアウト(燃え尽き)の症状の軽減があったと回答しました。また、約40%は以前より睡眠の質が上がったと報告し、54%は仕事と家庭の両立がしやすくなったと回答しています。
さらに、企業や管理職にとってもメリットがありました。企業の大部分は、生産性の水準と事業収益が一定に維持されたことを報告しました。その他、病欠日数は65%減少し、従業員の離職率は前年同期比で57%減少したということです。
プログラム参加企業のうち、92%はパイロット終了後も週4日勤務制を継続することを選択し、18%は恒久的な制度として取り入れることを確約しました。従業員の約15%は、給与がいくら増額されても、週5日の勤務スケジュールに戻ることには同意しないだろうと回答しています。
Indeed のデータによると、イギリスで週4日勤務制に言及する求人掲載数は微増しており、2018年には0.3%未満だったのが、最新の数字では0.9%になっています。「まだ1%未満ですが、増加傾向にあります。徐々に注目を集めています」と、Indeed Hiring Labでイギリスとアイルランドの労働市場を担当するEconomistのJack Kennedyは言います。
さらにKennedyは、「これは、オフィス勤務の事務職だけに限られるわけではなく、一部のヘルスケア分野や製造業、その他の対面でのサービス業などでも実際に見られる傾向です」と説明しています。
オーストラリアでの仕事を取り巻くトレンドに着目した、Indeed Hiring Labによる最近の分析では、2023年初頭の週4日勤務制に言及する求人数は全体の0.5%に過ぎませんでしたが、それでも2018年1月から2021年6月までの期間の平均より約50%高くなっています。2022年に、オーストラリアの Indeed 上で週4日勤務制に言及する求人検索の割合は、全求人検索の1%未満でしたが、これも3年前の2倍に相当します。
制度の実施にあたっては、さまざまな状況が想定されます。この制度をより深く理解するため、週4日勤務制を導入して成功した3企業(上記調査には未参加)のリーダーへのインタビューを実施しました。
Kickstarter:世界大手のクラウドファンディング企業では定着率が向上
ニューヨーク州ブルックリンに拠点を置くクラウドファンディングプラットフォームであるKickstarterは、2021年4月に、週4日勤務制のパイロットプログラムを開始しました。同社は、勤務時間数ではなく生産性を測定する、成果主義への移行を目指していたとLeland氏は説明します。「組織的なパフォーマンスを維持しながら、1週間の勤務時間から一定の時間を従業員に還元し、休息が取れるようにしたいと考えました。」
従業員は、6か月に及ぶパイロットが実験的な試みであることを理解していました。「従業員には、1週間の短い勤務時間で生産性を維持できなければ、週5日勤務に戻さなければならないと率直に伝えることが必要でした。」
1週間の通常勤務時間を32時間に抑えるのに、1か月以上かかったチームもありました。このプロセスを改善するために、上級管理職が関与する場合もありました。また週4日勤務といっても、全従業員がまったく同じように働いたわけではありません。例えば、ユーザーサポートチケットに対応するコミュニティサポートチームでは、上級管理職がより優れたツールや社外の支援体制を提供することで、問い合わせへの対応スピードが高まりました。最終的には交替制を採用し、他の部署の休日となる金曜日にも交替で対応しています。
週4日勤務制によって、Kickstarterは定着率を向上させ、最も優秀な従業員とチームをそのまま維持することができ、従業員を失って新しい従業員を訓練するためのコストを削減できました。「仕事を実行する能力に多大な影響がありました」とLeland氏は言います。「テクノロジー関連企業の多くで人員を削減する時代に、私たちは採用を継続しています。」
今日、Kickstarterは週4日勤務制を正式に採用していますが、これは変更不能ではなく、また生産性が落ちたということもありません。「仕事をこなす必要があることは分かっています」とLeland氏は話します。「ここぞというときには、週6日や7日勤務することも可能です。ただ、それが日常的である必要はないと考えています。明確なリーダーシップ、効率の良い会議、組織的な慣行により、通常は32時間でやるべきことを成し遂げることができます。」
DNSFilter:バーンアウトを軽減するセキュリティソフトウェア企業
新型コロナウイルスの感染拡大から1年、ワシントンD.C.に拠点を置くセキュリティソフトウェア企業のDNSFilterは、チームがバーンアウトに陥るリスクを回避する新しい方法を模索していました。
「自社が超成長段階に入ったとき、バーンアウトのリスクについては知っていました」と、CEO兼共同創設者のKen Carnesi氏は話します。「そうしたバーンアウトのリスクを緩和する非常に効果的な方法が週4日勤務制だということも、他のテック企業から聞いていました。」
DSNFilterでは、「業績を落とさず、締め切りを守る」という、成功に欠かせない基準を確立することから始めました。
2021年にDNSFilterは、交替制の週4日勤務制に移行しました。従業員は2つのグループに分かれ、各グループは隔週の金曜が休日となります。「自社の成長段階では、これが最善だと思いました。全員が金曜日に休む、またはオンコールの人員だけが金曜日に勤務するといった制度は、理想的とは言えなかったからです。」
Carnesi氏によると、週4日勤務制への移行は従業員のワークライフバランス、ストレス、満足度を大いに改善したそうです。また、その結果として生産速度も向上しました。「週末が3連休になるため、従業員は個人的な用事や、人と会う約束に使う時間が増えました。従業員は実際に勤務している4日間で、以前より多くの仕事をこなす傾向にあります。」
さらに、週4日勤務制は採用活動にも役立っています。Carnesi氏は、自社の内定受諾率が94%である理由として、「週4日勤務制が重要な差別化要因」だと話します。
G2i:短時間でより多くを達成する採用プラットフォーム
フロリダ州に拠点を置き、企業と開発者をつなげる採用プラットフォームのG2iでは、週4日勤務制の試験導入を実施しました。「従業員が仕事のペースを落とし、より健全に勤務時間を過ごせるようにするためです」と、Director of Growth Marketingを務めるMaebellyne Ventura氏は言います。
100%リモート勤務だったG2iは、2021年9月に6か月間のパイロットプログラムを開始する前に、パイロット導入前後で幸福度、エンゲージメント、ストレス、生産性を比較するための基本的な測定値の収集し、慎重に準備しました。チームは業務プロセスを監査して整理し、従業員は「完全に納得できたことだけに賛同する」ことを推奨されたとVentura氏は言います。「指針となるルールは、より数の少ない、影響力の大きい案件に集中することで、短時間により多くの仕事を成し遂げることです。」
チームメンバーは、時間的制約のない問い合わせやタスクには24時間以内に対応するというルールを設け、非同期のコミュニケーションや共同作業がうまくこなせるようになりました。「これにより、特に休日などに、すぐに返信しなければならないというプレッシャーからチームが解放されました」とVentura氏は話します。また、休暇中にきちんと休まない従業員がいた場合には、「休日であることを互いにやんわりと注意し合います。」
試験導入の結果生まれた、返信のペースを落とす文化により、職場のストレスが軽減され、仕事そのものの質も上がったとVentura氏は言います。「仕事に対してより集中力が高まるとともに、全般に質の高い、考え抜かれた返信になったと私は考えます。」さらに、クライアントに遅れをとらないため、G2iは交替制を採用し、1つのチームが月曜から木曜まで勤務し、もう1つのチームが火曜から金曜まで勤務しています。
こうした改善は、社内のあらゆる階層に影響を及ぼしました。「チームメンバーは、以前より休日に何をしていたかを頻繁に共有するようになり、人間関係を深めるのに役立っています」とVentura氏は説明します。経営陣の視点から見ると、週4日勤務制は従業員の定着率を高め、新たな採用候補者を引き付けるのに役立ちました。「労働市場での競争力を高めることにつながりました。他のどのような特典や福利厚生よりも、有能な人材を獲得できます。」
重要な差別化要因としての週4日勤務制
数年前まではとんでもないことと考えられていた週4日勤務ですが、Kickstarterの従業員には大好評で、広く受け入れられています。勤務時間を元に戻す予定はないとLeland氏は言います。「従業員には大きな影響があり、幸福度もエンゲージメントも向上しています。」
Indeed などのデータからも、このトレンドが継続的に人材市場での重要な差別化要因になると考えられています。「確実に広がりつつある現象だと理解しています」と、Indeed のKennedyは言います。「クリティカルマス(爆発的な普及に必要な市場普及率)を獲得し、主流になるのがいつかは断言できませんが、今後5~10年以内の可能性はあると思います。」
免責事項:この投稿で述べられている見解や意見は、必ずしも Indeed の公式の方針や見解を反映するものではありません。