2004年に Indeed で初めて採用された従業員には、犯罪歴がありました。
当時、Indeed の共同創業者であるRony KahanとPaul Forsterは、起業したばかりの自社のITインフラを構築するソフトウェアエンジニアを探しており、求人募集の結果、刑務所に服役した経歴があり、インターネットの利用を禁止されたこともあるエンジニアを採用することになったのです。
そして、このエンジニアが今の「 Indeed.com」の基盤を構築し、その功績は立ち上がったばかりのIndeed にとって、かけがえのないものとなりました。
Indeed のCEOであるChris Hyamsは「(創業者の2人が)大きな過ちを犯し、報いを受けた人に対してチャンスを与えていなければ、今日の私たちはなかったと言っても過言ではないと思います」と、話します。
つまり、Indeed には過去の犯罪歴などにかかわらず、優秀な人材は誰でも求人の選考対象となる資格があるという、「公平な採用プロセス(Fair-chance hiring)」の考え方が、創業当初からのDNAとして組み込まれていると言えるでしょう。
私たちにできることはまだたくさんあり、今後もこの取り組みを続けていきます。
たとえば先日、「公平な採用プロセス」は Indeed のESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みで重点分野の1つとなり、Indeed は、2030年までに雇用市場で障壁に直面している3000万人の求職者の就業を支援し、採用プロセスで発生する犯罪歴に対する差別や拒否的態度を取り除くことを目指しています。

それでは、なぜ組織は今、公平な採用プロセスについて検討すべきなのでしょうか。
Chrisは、「これまでで最も厳しい労働市場において、働く人を増やすことは誰にとってもプラスになります」と言います。
米国の労働需要の高まりは未だに就業希望者の数を上回るため、より多くの優秀な人材が採用されるように支援することは最優先事項です。犯罪歴のある求職者を含め、見過ごされがちな人材の活用は必要不可欠と言えるでしょう。
また、従業員の定着とパフォーマンスの面では、司法に裁かれた経験のある求職者を採用すべき、説得力のあるビジネスケースもあります。
さらに、米国におけるGeorge Floydさんの殺害と、その後の人種問題への対応を求める運動以来、大企業は、これまでの採用や人事の慣習を見直し、人種間の公平性とダイバーシティの取り組みをさらに強化すると発表しています。
刑事司法制度の処分における人種格差があることを考慮した場合、公平な採用プロセスのために尽力することは、人種間の公平性への取り組みを実現するひとつの手段となります。
続いて、公正な採用プロセスのためにIndeed が実施しているイニシアチブと、組織の人事および人材獲得(TA)のリーダーが活用できるキーポイントを紹介します。
Indeed が公平な採用プロセスを重要視する理由
Indeed では、「We help all people get jobs.」というミッションを掲げ、求職活動中に直面する障壁をできるだけ取り除き、すべての人々が仕事を見つけられるようにすることが大切だと考えています。
過去に刑務所や留置所、移民拘留センターなどの拘置施設に収監または留置され、司法制度の処分を受けた求職者が直面する障害の大きさは計り知れません。
米国で犯罪歴を有する人は7000万人にも及び、成人の約3人に1人に犯罪歴があることになります。また、犯罪歴がある米国人求職者の失業率は、全国平均の5倍となっています。
さらに、米国の刑事司法制度における人種格差には十分な裏付けがあり、特定の人種が犯罪歴を持つ確率を高めている可能性があります。
人種差別による過度の犯罪化は格差をさらに広げ、アメリカ人の白人に比べ、黒人の受刑率は約6倍も高くなっています。また、アメリカ人の黒人は、逮捕、有罪判決、量刑など法手続きのあらゆる段階で、不当な処罰に直面することもあるのです。
「We help all people get jobs.」というミッションに基づき、Indeed では自社のプラットフォームやパートナーシップ、社内でのキャリア、金融資産を活用してリソースの提供し、犯罪歴のある求職者の就業支援に取り組んでいます。
「公平な採用プロセス」の実現へ向け進化するIndeed の取り組み
近年、公平な採用プロセスに向けた Indeed の取り組みは、主に5つの分野で進化しました。
- Indeed で求職中のすべての求職者に、公平な採用プロセスへの取り組みを明確に伝えています。
先日、米国でIndeed に掲載された求人票のすべての紹介文に、次のような文言を追加しました。
「Indeed は、過去に刑事司法制度による処分を受けた方も含め、さまざまな経歴を持つ方々を大切にしています。Indeed は、服役した経験のある方など、犯罪歴のある求職者にも公平に雇用の機会を提供できるよう取り組んでいます」。
- Indeed は、できる限り身元調査の公平性を保つ努力をしています。
Indeed では、候補者に条件付きの内定を提示するまで、犯罪歴に関する情報は参照していません。
2015年に Indeed は身元調査の規定を更新し、犯罪歴のある求職者を採用するさいの基準となるプロセス(ベストプラクティス)を改善しました。プロセスの再設計を通じて、すべての候補者にとってインクルーシブなプロセスを構築することができました。
Indeed が実践するベストプラクティスの1つは、犯罪の性質、犯行の時期、そして候補者が求める仕事内容を考慮して、候補者を評価することです。
しかし、Indeed においても、どのような犯罪の性質や時期であれば、特定の仕事内容に適切と言えるのか、正確には分かりません。たとえば、ある職務に就く資格がない犯罪を、果たして特定できるでしょうか。
多くの企業が行き詰まるのもこの点でしょう。自社内で犯罪の性質や時期を考慮し、適切な仕事内容を判断するのは簡単ではありません。その結果、組織の中には難しい判断に時間と労力をかける代わりに、犯罪歴のある候補者の採用を一切受け入れないという方針を定めるところもあります。
Indeed では、犯罪の性質や時期、仕事内容を考慮したベストプラクティスを実践するため、一定の基準と職種の業務内容に照らして、犯罪歴を評価する裁定方法が成功を収めています。
各国からの訓練を受けた代表者で構成される裁定委員会を社内に設置し、個々人の細かな差異と希望する職種を考慮し、個人を評価するプロセスを開発しました。
プロセスでは、下記が定められています:
- 身元調査会社からの結果を検討し、職種への適格性に影響を及ぼす可能性がある候補者については、個別アセスメントを行う
- 犯罪行為から経過した時間や、候補者が量刑の軽減のために取った行動、また犯罪と職務内容の関連性など、さまざまな要因を考慮する
- 候補者へのアンコンシャスバイアスを緩和するため、評価のさいにはジェンダーや氏名など個人を特定する情報を一切含まない
また、裁定する側の心の準備も大切です。候補者の身元調査の結果、犯罪歴があるとわかったとき、個人的な感情や恐怖が生じる可能性もあるからです。
たとえば、多くの人は非暴力的な犯罪が原因で服役していますが、候補者に性犯罪歴やDVの前科があった場合、どうすれば良いのでしょうか。感情的な論点を伴う問題ですが、無視することはできません。
こうした判断に向き合う裁定委員会のメンバー、そして Indeed の全従業員は、従業員支援プログラム(EAP)を利用でき、家族の問題やストレス、経済的または感情的な問題に対して、メンタルヘルス関連のサポートが受けることができます。
3. Indeed は、求職者に犯罪歴の抹消サービスを紹介しています。
米国で既に犯罪歴の抹消資格を取得した人のうち、取得後5年以内に犯罪歴の記録を抹消していると推定されるのはたった6.5%です。現行法の下で資格があるにもかかわらず、最大3000万人の成人が犯罪歴の抹消を行っていないことになります。
このため、 Indeed は2022年2月に1000万ドルを投資し、犯罪歴の抹消サービスやIT機器、交通手段を無料で提供するEssentials to Workプログラムを開始しました。この取り組みの一環として、各地の法務パートナーにリソースを提供し、数千人の求職者の犯罪歴を抹消しました。
- Indeed は、地域自治組織と連携し、司法制度の処分を受けた求職者の就労をサポートしています。
たとえば 、犯罪歴のある求職者に教育や訓練を施し支援しているソフトウェア開発会社のBanyan Labsと協力し、OJT研修プログラムを通して、求職者が卒業後に就業できるようサポートしています。
この提携により、Banyan Labsの「Persevere」プログラムを卒業した開発者がすぐに適所に配属され、仕事として実地経験が積めるようになりました。
Banyan Labsの「Persevere」プログラムの受講生の様子。(映像の言語は英語です)
- Indeed は、今後も従業員への教育と訓練を改良していきます。
公平な採用プロセスのポリシーが定められている企業でも、ポリシーと実際の行動にはギャップが生じ得ます。ポリシーを実践していくには、従業員への正しい訓練とサポートを提供することが重要です。
Indeed が「2030年までに障壁に直面する3000万人の求職者の就業を支援する」というESGへの取り組みを発表した後、多くの従業員やリーダーらが抱いた疑問は、「Indeed では公平な採用プロセスを提供できているのか?」ということでした。
Indeed においても、公平な採用プロセスの意味と事業における重要性を全従業員に確実に理解してもらうには、できることがまだたくさんあったのです。
その気付きから、Indeed では「公平な採用プロセスに関するFAQ」を作成し、従業員全員が身元調査を含む現在の採用活動について理解できるようにしました。
今後もTAチームおよび各採用担当マネージャー向けの研修教材を改良し、公平な機会を提供するベストプラクティスが実践されるようにします。
公平な採用プロセスに取り組むステップ
公平な採用プロセスに向けた計画を策定するさいに、企業が実施できる具体的なステップを紹介します。
- 求人情報などの採用リソースにおいて、候補者と従業員に自社の取り組みを明確に伝える
求職者は、自分が検討される可能性が高い求人へ応募したいと考えてます。自社の公平な採用プロセスへ取り組みを求人情報や企業のウェブページに記載することで、犯罪歴のある求職者の応募を後押しできます。
- 公平な採用プロセスへのポリシーを明示し、現状を変える意欲を示す
採用企業の多くは法律により、犯罪歴のある応募者も検討することが定められてため、国や地域の法令の詳細を確認しておくことが大切です。
しかし、実際には、コンプライアンスとして必須とされる範囲を超えて取り組んでいくことをおすすめします。Indeed においても、必ずしも法律上要求されていない事項を含む、「公平な採用プロセス」のためのベストプラクティスを遵守しています。
ベストプラクティスを全社に対して明確に示し、適用することで、曖昧さやケースバイケースの意思決定をなくすことができるでしょう。
- 周囲と協力する
犯罪歴のある求職者をサポートする目標を、自社だけで追求する必要はありません。地域社会の支援パートナーと協力すれば、出所した求職者に合わせたサポートを提供できます。
- 研修の機会を提供する
自社の採用チームに対し、面接で犯罪歴に関する質問をしたり、スクリーニングを行ったりしてはならないことまた、候補者を選考する過程で公平かつ平等な意思決定を行うことを教えましょう。
事業主のための支援機関があります
犯罪歴のある求職者の採用に前向きだけれど、何から始まれば良いのかわからないという場合は、事業主向けの支援機関や制度を利用しましょう。
例えば、Second Chance Business Coalitionと、同連合が提供しているOnramps Guide、また、Society of Human Resource Managementが提供しているBackground Checks toolkitやGetting Talent Back to Workプログラムなども役立ちます。そのほか、前述のBanyan Labsが提供している、Center for Employment Opportunities、Defy Venturesなど、参考になるリソースは多数あります。
日本の場合は、厚生労働省の「刑務所出所者等の雇用について」のWebページや、同省や法務省が展開する「協力雇用主パンフレット」、「コレワークパンフレット」などを参照してみましょう。
この記事は米国版 Indeed LEADから翻訳・編集し、一部追記しました。
翻訳・編集:Indeed Japan 編集部