メディアは、過去3年間にわたり、コロナ禍で現場の働き手やハイブリッド勤務の従業員、管理職が、心身の極度の疲労を感じる、いわゆる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の状況に陥っている状況を報じてきました。これは、有能な人材獲得の責任を担う採用担当者や人事部長にも言えることです。

従業員コミュニケーション・プラットフォームを提供するWorkvivoの調査では、HR担当者の97%が過去1年に精神的な疲労を感じたと回答し、98%は過去6か月以内にバーンアウトを感じたと回答しています。また最近開催された Indeedのイベント、 「Indeed Leadership Connect Recharge」の登録者のうち、約65%が世界的な人材不足は、今後10年間も悪化していくと考えていることがわかりました。

こうした人事担当者の状況を、国際的な消費財メーカーのReckittでSenior Vice President of Human Resourcesを務めるChristine Geissler氏は、「まるで靴をもたない靴の修理屋のようです」と指摘しています。「自社の従業員をケアする方法を知っていても、自分自身を同様にケアすることを怠っているのですから」。

本記事では、人材業界がバーンアウトで受ける影響について、6人のHRおよび人材獲得(TA)リーダーに聞いたキーポイントを3つ、ご紹介します。 

HRとTAにかかるプレッシャーは増している

人材業界で働く人なら誰でも、求職者や従業員の心変わりに苦戦したことがあるでしょう。より高い報酬やワークライフバランスを求めて大量の労働者が離職している昨今、多くの企業が採用活動に困難を感じています。人材獲得のために競合他社と競っている採用担当者にとっても、厳しい環境です。

しかし、McKinseyGartnerのデータを見ると、採用活動は今後も厳しさを増しそうです。最高財務責任者の54%が、今後12か月間に企業が直面するであろう最大の課題は、採用と定着であるという洞察に同意しています。同時に、テクノロジー系の業種ではレイオフ(一時解雇)が混乱の要因となっており、採用担当の従業員さえもが解雇される事態になっています。 

20年以上、人事分野で働いてきたGeissler氏は、「現在はHR分野で働く上で最高のタイミングであると同時に、最悪のタイミングであるともいえます。経営陣が人事を企業全体のソリューションの一部として認識するようになり、HRは敬意を持って扱われるようになりました。経営陣はHRに大きな権限を与えようとしていますが、それは同時にHRにかかるプレッシャーが増すことを意味します」と、指摘します。

コロナ禍に起因したHR界隈の混乱に加えて、ベビーブーム世代の定年退職に伴い、採用活動をさらに困難にする長期的な人口動態の変化も起こっています。Indeed とGlassdoorが公開した「2023 Hiring and Workplace Trends Report」(採用と職場に関するトレンドレポート)によると、今後、2022年に従業員の4分の1を占めたベビーブーム世代が一斉に定年退職し、最も若いベビーブーム世代も2024年には60歳になることがわかっています。

世界銀行も、多くの欧米諸国で、今後10年間にわたり生産年齢人口が減少し続けることになると予測しています。つまり、採用担当者は、引き続き、より少ない求職者からの欠員補充を迫られることになり、採用活動は更に困難を極めていくことが考えられるのです。

さらに、小売業者やメーカーのソリューションパートナーであるWIS Internationalで、Senior Director of Talent and Engagementを務めるErik Kershner氏は「求職者が採用企業に求めていることは、5年前とは大きく異なります。もはや企業は給与の期待に応えるだけでは十分ではなく、解決すべき問題は完全にシフトしたのです」と語ります。

また同氏は、46%の従業員が、過去1年の間に「職場で幸せだと感じるための水準が高くなった」と回答したという統計に触れ、「自社の採用ニーズと求職者の高まる期待の間で採用担当者が板挟みとなり、バーンアウトに陥る恐れがあります」とコメントしています。

採用担当者のバーンアウトは、次世代にも影響し得る

採用活動は大変な仕事で、ストレスは想定内という考え方もあるでしょう。しかし、ストレスとバーンアウトの違いを知っておくことは大切です。適度なストレスは、仕事の原動力となり、新たな状況で活躍するモチベーションとなります。

一方、バーンアウトはストレスが持続する状態で、意欲やエンゲージメントの低下、孤立など、適度なストレスの効果とは真逆の影響をもたらします。バーンアウトした採用担当者には、人材獲得の業界から距離を置く選択をする人もいるでしょう。 

「採用活動は、どこまでやっても終わりがないと感じる仕事です。そうした状況では、自分の気持ちを後回しにしがちで、バーンアウトに陥りやすいと言えます。昨今の人材業界の状況からプレッシャーがかかるなか、さらに自分自身にもプレッシャーをかけてしまうのです」と、技術職専門の採用担当者で、テクノロジー関連のキャリアに転職する求職者を支援するJupiterHRの創設者の、Jermaine Murray氏は言います。

採用リーダーの中には、今後、大量の採用担当者が離職して業界を去る事態となり、その影響が10年間ほど続くと危惧する人もいます。

「今後、何を持って、人材獲得のように高いストレスがかかる仕事に新たな人材を惹きつけていけるというのでしょうか?」と、医療従事者に医療用衣類を提供するNixon MedicalでVice President of Human Resourcesを務める、Dr. Veronica Hawkinsは言います。

「求職者に、人材採用の職種、特にリーダー職を魅力を感じてもらうために、できることが果たしてあるのでしょうか。人事担当の欠員補充に長い時間を要しているのを見ても、こうした仕事に就きたいと思う求職者は多くないのでしょう」。

企業は、採用担当者にも、リフレッシュや充電期間が必要不可欠であることを認識し始めています。今後成功する採用担当者の条件として、Hawkins氏はワークライフバランスやメンタルヘルスの管理などが基本要件になると確信しています。

「メンタルヘルスなどに関わる会話は、当たり前のことになってきています。たとえば、人々にかかりつけ医や、行きつけの歯科や眼科があるのは普通のことですよね。そこで私は、求職者にも、保健衛生の習慣として、メンタルヘルスを専門とするかかりつけの相談機関があるかと尋ねることにしています。こうした期待値をあらかじめ設定しておくことが大切です」と、Hawkins氏は話します。

企業は自社のHRやTA担当者の状況を把握し、積極的に行動すべき

メンタルヘルスのように測定しづらいことを管理するのは難しいものですが、従業員の話をよく聞き、内容をよく検討すれば、従業員の充電期間を支援したり、バーンアウトを予防したりすることにもつながります。公式か非公式かを問わず、定期的に話を聞く機会を設けましょう。

「組織内に、バーンアウトを予防する体制を整備したい場合、大切な要素のひとつがコミュニケーションです。パフォーマンスレビューだけでは十分ではなく、従業員の様子を見ながら、会話を深める必要があります。絶えず変化する未来に向けて進むとき、採用担当者をサポートする方法も改善されていくべきでしょう」と、ホテル管理会社のIsland HospitalityでSenior Vice President of Human Resourcesを務める、Tonya Moore氏は語ります。

採用担当者の状況を把握する企業側の努力も必要ですが、採用担当者自身も、自分の気持ちに耳を傾け、仕事の境界線を見極めながら、自身のウェルビーイングに気を配る姿勢が求められます。

Virgin OrbitでHead of Talent Acquisitionを務めるJoey Lee氏は、「先日、バスケットボールのコーチをしていて膝を痛めたのですが、けがのことを考えないように仕事に没頭して、回復の時間を十分に取りませんでした。そんな私の様子を見たチームは、私が自分の健康を優先していない、責任感を持ってケガにも対処して欲しいと求めました。私自身が、チームに伝えていたアドバイスを守れていなかったのです」と、自身の経験を話します。

WIS InternationalのKershner氏は、HR分野で働く人々に、自分の時間を確保することも勧めています。

採用担当者は、複数の優先事項を抱えながら、組織内のさまざまな部署の欠員補充にも、すばやく対応しなければならないことが頻繁にあるはずです。 Kershner氏は、そうした状況でも集中できるように、意識的に自分のための時間をカレンダーのスケジュールに割り当てているといいます。

「スケジュールをコントロールできていないと感じるときこそ、自分のための時間を捻出し、確保しておくことをお勧めします。優先事項が多く、スケジュールがいっぱいでも、自分自身の優先順位を下げないことが大切です」。

RockittのGeissler氏は、有給休暇を必ず取得するよう努力することで、自分のための時間を確保しています。私たちが休息の価値を認め、休息と生産性の関係を認識するためには、チームの文化にそれを浸透させることが必要だと言います。

「私は仕事と同じくらい、休暇にも真剣に取り組むタイプの人間です。休暇中は仕事のことは考えず、携帯電話はビーチタオルの中にしまい込み、メールやチャットも確認しません。私のチームにも、同じように休暇を楽しむよう奨励しています」と、Geissler氏は話します。

企業が優れた人材を継続的に惹きつけるには、自社の人事担当者がモチベーションを維持できるよう、考える必要があります。人事担当者は、すべての人を満足させるという大きな仕事を任されています。だからこそ、まずは、人事担当者自身の幸福とウェルビーイングを確保することが重要なのです。

Geissler氏は、自社の組織のリーダーがHRとTAの従業員のために開催した感謝の気持ちを伝えるディナーと、そうしたアクションの大切さを振り返ります。求人市場には、HRとTAの担当者だけでは解決できない、大きな力が働いています。しかし、HR担当者に感謝の気持ちを表し、コミュニケーションと充電期間を促進する企業は、より良い結果を得られるでしょう。

「ビジネスリーダーがそうした姿勢を示せば、大きな効果が期待できます」。

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