
完璧に練り上げられたブランド広告にこだわるのはやめましょう。今日の労働市場で人材を惹きつけるのは、誠実なストーリーです。大手企業が従業員アドボカシー(従業員自身が自社ブランドを支持し、宣伝すること)を活かしてどのように差別化を図っているか、そして自社の戦略の成果をはかる方法をご紹介します。
キーポイント
- 最近開催された Indeed のLeadership Connect(日本での展開は未定)では、人事・採用担当リーダーが採用ブランディングで経験した問題と、成功した戦略について知見を共有しました。
- 求職者の共感を得られる、従業員主体の誠実なストーリーテリングの価値を認識する企業が増えるのに伴い、発想力を活かしたアプローチも増えています。
- 効率的なブランディングツールキットと、明確なガイドラインは、シームレスに社内外の認識を一致させるのに役立ちます。
今日の求職者は、洗練された求人広告よりも、誠実さと透明性を強く求めています。優秀な人材を惹きつけることに成功している企業は、職場での偽りのない体験を反映した、従業員主体のストーリーを作り上げることで、既存のルールを打ち破っています。
「従業員のストーリーを共有するメリットを認識する企業が増えるのに伴い、採用ブランディングに成功したとみなす基準も高くなっています」Indeed でEmployer Brand and Recruitment MarketingのSenior Program Managerを務めるMegan Nicholsは、最近開催された Indeed のLeaders Connectのグループミーティングでこう話しました。「トップダウンの完璧なメッセージを作る時代は終わりました。今は、従業員に偽りのない体験を共有してもらい、職場の特徴を伝えるストーリーを共同で作り上げることが大切な時代です」
このミーティングで大企業の人事・採用担当リーダーは、採用ブランディングで直面する問題や、ブランディングに成功するための方策などについて、知見を共有しました。Nicholsは Indeed のアプローチから例を挙げて説明し、絶えず進化する労働市場で一歩先を行くための実践的な戦略を紹介しました。
進化を続ける職場環境に成功をもたらす、現実的な採用ブランド戦略を詳しく見ていきましょう。
共同での採用ブランド作成に従業員を関与させる
誠実なストーリーテリングは、採用ブランディングにおいて最も強力な手段です。このため、自社の従業員にブランドストーリーを語ってもらうことが大切になります。これはコンテンツの説得力を高めるだけでなく、ブランドに対する従業員の当事者意識を育み、認識を一致させるのに役立ちます。
- 従業員を中心としたストーリーにしましょう。Indeed のような企業では、従業員のストーリーが採用サイトやSNSで中心に据えられ、組織全体の多様な意見を反映しています。「私たちにとって、ストーリーテリングは中心的な存在です」とNicholsは言います。「Indeed のSNSで従業員のストーリーをアピールしているほか、採用サイトのデザインを一新し、従業員の声が目立つようにしています」
- EVPを作成する際に従業員の協力を求めましょう。まずは、従業員への価値提案(Employee Value Proposition、EVP)を定義する際に、従業員にも関与してもらい、従業員の声が偽りなく確実に反映されるようにしてください。従業員をディスカッションやフォーカスグループに招待して経験や意見を共有してもらい、社内の従業員アンケートを通してフィードバックを求めましょう。
- EVPを指針として採用ブランディングに取り組みましょう。有意義なEVPを作成した後は、そのEVPを活用して採用ブランディングのテーマを形づくり、より影響力のある従業員のストーリーの構築に役立てます。
また、動画やソーシャルツールを使用して、従業員がコンテンツをより素早く簡単に作成し、共有できるようにすることをお勧めします。たとえば、Indeed は従業員アドボカシープラットフォームの「EveryoneSocial」を利用し、従業員の声を取り上げてブランドを強化しています。
「私たちは自社の従業員基盤を活かし、数回のクリックでシンプルかつ分かりやすく従業員ブランディングを強化できるようにしています」と、AvanadeでTalent Acquisition & OnboardingのGlobal Headを務めるPaul Phillips氏は話します。
体系的な従業員アドボカシープログラムを構築する
体系的なアンバサダープログラムがあれば、従業員に、熱意のあるブランドのプロモーターになってもらうことができます。
- ブランドグッズで従業員の興味を引きつけましょう。たとえば、Avanadeのタレントアンバサダープログラムでは、ブランドグッズと交換できるポイントを従業員に報酬として付与します。「従業員のエンゲージメントを高め、私たちのメッセージを強調できる優れた方法です」とPhillips氏は言います。
- シンプルで魅力的な特典を提供しましょう。非公式の報奨も、従業員の関与を促すには効果的です。コンテンツをシェアした従業員にギフトカードや賞品が当たる抽選券を提供したり、公の場で従業員の貢献を称賛したりする組織もあります。そうしたアプローチをとれば、士気が高まるだけでなく、一貫したアドボカシーも促進されます。
- 自ら模範になりましょう。従業員アドボカシーを促すアプローチがどのようなものかを問わず、リーダーの関与は欠かせません。「シニアリーダーが積極的に最新情報を共有すると、全員の方向性が定まります」とNicholsは話します。「リーダーが関与することで、アドボカシーの重要性を従業員に示すことができます」
複数のチャネル間で一貫したブランディングを維持する
採用ブランドの一貫性が確保されていれば、社内のメッセージと、自社に対する世間の評価は一致することになります。残念ながら、自社ブランド強化のためにオンラインで従業員の声を取り上げることには欠点があります。それは、一貫性のない、あるいは悪質な伝え方のせいでメッセージが曖昧になる可能性があることです。
- ブランディングツールキットに投資しましょう。似たような課題に直面している場合は、従業員がアドボカシーの取り組みで使用できるブランディングツールキットやテンプレートを作成し、ブランディングの一貫性を維持することをお勧めします。そうしたリソースにSNS利用時のガイドラインや、定型の投稿内容、承認済みのハッシュタグなどを含めると、従業員が自社のイメージと一致するコンテンツを簡単にシェアできるようになります。
- SNSのコンテンツを常に確認しましょう。定期的な監視は依然として欠かせません。「自由さと一貫性のバランスを取ることが大切です」と、Northern TrustでGlobal Talent Acquisition Operations担当VPを務めるBrooks Thurston氏は言います。「弊社のSNSツールキットは、決まった枠組みを提供する一方で、従業員が自分らしさを加える余地もあります」
従業員に社外へのクチコミ投稿を促す
企業クチコミは、求職者が応募を決める要因としてますます重視されるようになっています。このため、新人研修の期間中や、毎年の入社記念日のような節目に、従業員にクチコミを投稿するよう積極的に促すことでも、自社ブランドの信頼性を高められる可能性があります。
- 第三者プラットフォームを活用しましょう。ある採用担当リーダーによると、フィードバックを集めながら自社の注目度を高める経済的な方法として、新規採用者に新人研修の期間中、Indeed とGlassdoorにクチコミを投稿するよう依頼したそうです。
- 採用ブランディングの指針としてデータを利用しましょう。Indeed やGlassdoorのようなプラットフォームでは、組み込みのアナリティクスにより、追加のアンケート調査費用をかけることなく分析情報を入手できるため、場所ごとに回答を区分し、エンゲージメントを測定して、競合他社と比較することができます。「クチコミから明らかになるテーマを知るのは興味深いです」とNicholsは言います。「私たちはそのデータを利用し、EVPを改善して、社内外のメッセージが一致するようにしています」
- 新人研修時のクチコミ投稿に留まらないようにしましょう。大きな節目ごとにアンケート調査を繰り返し実施し、採用後の従業員体験をより包括的に把握して、現職の従業員から肯定的なクチコミを引き出すことが大切です。
従業員アドボカシーの費用対効果を測定する
自社の採用ブランディングの取り組みが持つ価値を証明するには、費用対効果の指標を、アプローチの中心である従業員主体の戦略と一致させます。従業員アドボカシーや求職者のエンゲージメント、社外のクチコミといった成果を追跡すると、従業員のストーリーテリングをビジネスの具体的な結果につなげる上で役立ちます。
費用対効果を測定するには、認知度と影響力を反映する指標を追跡しましょう。
- トラフィックとエンゲージメント:サイト訪問数やSNSのエンゲージメント(いいね、シェア、コメント、フォロワーの増加)などの指標と応募者数は、ブランドの注目度を示すものです。たとえば、Indeed では採用ブランド専用のハッシュタグを使用して、従業員の関与を追跡し、共有されたストーリーがブランドメッセージと一致しているかどうかを評価します。
- 応募の質:成功するためには、応募数を増やすことだけでなく、募集中の仕事に関連性が高い応募であるかどうかも大切です。条件に合う応募者数の着実な伸びは、効果的なブランディングを示す重要な指標だと言えます。「私たちは認知度と質に注目しています」とThurston氏は言います。「関連性の高い応募者が増えているか、応募者の流れが改善されているか、などです」
- 応募者のフィードバック:採用された応募者と不採用だった応募者の両方に対してアンケート調査を行うことで、応募者体験に関する貴重な知見が得られます。Phillips氏は、そうしたフィードバックが採用プロセスの改善に役立ち、ブランディングに関する目標との一致を確実なものにできると話します。
- 紹介プログラム:紹介率の高さは、組織への強い信頼を示します。従業員が紹介を通じて自社を支持するのは、健全な採用ブランドの兆候だと言えるでしょう。
これらの指標を組み合わせると、自社の戦略の効果について包括的な理解が得られ、改善点を特定できるほか、具体的な費用対効果を経営陣に示すこともできます。
従業員をブランドの支持者として位置づける
今日の労働市場で優秀な人材を惹きつける、強固な採用ブランドを構築するのに必要なものとは何でしょうか。最終的には、従業員に自社の強力な支持者となることを依頼する一方で、一貫性のあるメッセージを維持し、成果を測定する意欲が求められます。
「従業員にありのままの体験を共有するよう促すことは、共感を得られる採用ブランドを構築するための最も効果的な方法です」とNicholsは説明します。「自社がどのような組織で、入社する価値があるのはなぜかを真に反映した、職場のストーリーを作り出すことが大切になります」