会社案内は、自社の魅力を知ってもらうために欠かせないツールです。採用活動においても重要な役割を担っています。求職者に興味を持ってもらうためには、どのような会社案内にしたらいいのでしょうか。魅力的な会社案内を作るためのポイントを、パラドックス ブランディングディレクターを務める井手亮介さんに伺いました。
採用活動における会社案内の役割
採用活動における会社案内の最大の役割は、企業の魅力を過不足なく、求職者に伝えることです。
合同説明会や求人サイトなどで自社に興味を持ってくれた求職者に対して、いかに自分たちの魅力を訴求し、求職者の志望動機を醸成できるか。これが採用活動ツールとしての会社案内のポイントになります。
ちなみに、会社案内の役割には採用活動ツールのほかにも、営業ツール(売上アップ)やブランディングツール(イメージアップ)などがあります。それぞれに内容を変える必要はありますが、これらすべてに共通するのは、目的を明確にし、企業が持つ独自の理念をストーリー(その企業にしか語れない思想)として読み手に伝えることです。
魅力的な会社案内を作るための流れとポイント
求職者にとって魅力的かつ記憶に残る会社案内を制作するためには、まずは企業が自社の魅力を正しく把握する必要があります。そのためにも、以下の流れで制作することをおすすめします。
1.目的やターゲットを明確にし、自社の魅力を整理する
従業員に話を聞くなど、できるだけ客観的な視点で自社の魅力を洗い出します。採用活動においては、求職者(新卒者もしくは中途採用者)がターゲットになります。求める人材がどういった情報を欲しがっているのかを考えながら、魅力に優先順位をつけます。
2.競合他社の分析
1と並行して、競合他社がどのような魅力を打ち出しているかリサーチします。たとえば、「常に新しいことに挑戦し、成長性がある」というコンセプトにしたくても、実態として競合他社であるA社には勝てない場合、別の魅力を打ち出す戦略の変更も必要です。
3.コンセプトを決める
自社の魅力を整理できたら、コンセプトを決めます。コンセプトとは、「どのような企業に見えたらターゲット(欲しい人材)に興味を持ってもらえるか」を一言で表すものです。仮に「挑戦する会社」と「家族的な社風」という2つの魅力を持っていたとしても、どちらをメインに打ち出すかによって、企業の見え方はまったく異なります。
4.コンセプトに見合ったコンテンツの企画と作成
3のコンセプトにあわせて、1で洗い出した魅力を最大限に引き出せるコンテンツを作ります。その際、従業員にインタビューするなど、現場の声を聞くことが大切です。登場人物の人選に重要なのは、ターゲットに近い年齢層や思考性を持った人をアサインすることです。
紙とウェブの会社案内、それぞれに役割をもたせる
紙の会社案内をそのままウェブに掲載している企業があります。複数の媒体を活用する場合、それぞれの性質の違いを把握し、役割分担を明確にしましょう。それにより採用活動にプラスの効果をもたらします。
◆ウェブ媒体の性質
- フラットで読み手が欲しい情報だけを抽出できる
- 様々なコンテンツを掲載しやすく、更新しやすい
◆紙媒体の性質
- 企業のメッセージやストーリーを伝えやすい
- 情報量に制限がある
ウェブの情報に対し、求職者は自分が知りたい情報だけを飛ばし見する傾向にあります。そのため、企業のメッセージやストーリーを伝えるにはやや不向きといえます。ただし、様々なコンテンツを掲載しやすく情報の更新も容易なため、企業の基本情報や採用条件、社員インタビューなど、状況の変化に対応しやすく情報のプラットホームに適しているといえるでしょう。
一方、紙の会社案内は、表紙から最後のページまで、順を追って見せることができるため、メッセージやストーリーを強く打ち出すのに効果的な媒体です。ページ数に限りはあるものの、企業が伝えたいことを上手に構成立てできれば、求職者の心を動かし、自社のファンを増やす力強いツールになります。
ターゲットとシチュエーションに考慮して求職者の心をつかむ
繰り返すように、魅力的な会社案内を作るには、目的を明確にすることが何よりも重要です。内容はもちろん、シチュエーションにも配慮することで、より求職者の心つかむことができます。
たとえば、合同説明会はたくさんの企業が集まる場所であり、求職者は多くの企業から会社案内を受け取ります。そのような状況で、30ページにもなる重い会社案内を渡しても、その場で読んでもらうのは難しいでしょう。
そこで、「あの会社、ちょっと気になるな」と思わせる仕掛けをした、簡易的な会社案内を合同説明会のブースに置いておきます。これをばらまきツールといいますが、まずは手に取ってもらい求職者と接点を持つ目的があります。
少しでも興味を持ってもらえれば、自社の公式サイトにアクセスしてくれるはずです。そこでは条件を含めたたくさんの情報が見られる採用サイトや、ウェブ版の会社案内を用意しておきます。さらに会社説明会に足を運んでくれた求職者に、改めて自社の魅力を詰め込んだ冊子を渡すことで、動機付けしていきます。
求職者とどこで接点をつくり、どこで共感を得て、どこで理解を深めるのか。こういった流れをある程度想定したうえで、ターゲットとシチュエーションに合った会社案内を作ることで、よりよい人材の獲得につながります。
※記事内で取り上げた法令は2022年10月時点のものです。
<取材先>
株式会社パラドックス ブランディングディレクター 井手亮介さん
2014年、株式会社パラドックスに入社。採用領域のクリエイティブ制作からキャリアをスタートさせ、近年は多くの企業の理念策定から理念浸透のプロジェクトに携わる。2019年4月よりパラドックス創研主任研究員を兼任し、サービス開発にも従事。2021年に9カ月にわたる育休を経て、現在はパラドックス創研専任として、メソッド開発や理念企業の研究を行っている。2020年、「日本BtoB広告賞 金賞」を受賞。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト