どんな企業にもブランドイメージがあります。イメージが良いほど事業の面では有利であり、また、人材採用もスムーズに運ぶはずです。では、企業がブランドイメージを高めるためにはどうすればいいのでしょうか。大手企業の採用・人事責任者を経験してきた株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんに話を聞きました。
企業のブランドイメージを決定する要素とは
企業名や商品名を耳にした消費者が、とっさに頭の中に思い浮かべるイメージのことを、ブランドイメージと呼びます。
ブランドイメージが何によって構築されるかといえば、商品やサービスなどマーケットに直結する要素が第一に挙げられます。当然、商品の品質に定評のある企業ほど、ブランドイメージは良いものになります。また、テレビCMなどの広告戦略によってつくられる部分も大きいでしょう。
ただし、こうしたイメージはあくまで対外的なものであり、主には消費者などの顧客層に向けたものです。これに対して、人材採用マーケットにもブランドイメージは存在しています。たとえば「○○社はいろんなことに挑戦させてくれる社風があるらしい」とか、「△△社は独立心旺盛な社員を応援してくれるムードがある」などといった、入社後のビジョンにつながるものがそれにあたります。
対外的なイメージと採用向けのイメージは似て非なるものであり、企業の採用担当社はこれらを明確に分けて考える必要があるでしょう。
企業のブランドイメージは採用にどう役に立つのか
企業の間で採用競争が激化する昨今においては、この採用向けのブランドイメージを、いかに戦略的に構築するかが重要です。商品やサービスはよく知られていても、それを提供するのがどのような会社であるか実体があまり伝わっていない企業は、採用面で苦戦する傾向があるからです。
逆に、たとえば給与などの待遇が業界内で突出していること、若手にも活躍の機会がしっかり与えられる社風であることが周知されていれば、自ずと採用マーケットでの知名度や人気は向上します。
応募者の母数が増えれば、それだけ優れた人材を採用しやすくなり、結果的に企業の競争力アップにつながることは言うまでもありません。
採用向けのブランドイメージをつくるうえでの注意点
もし、ブラックな企業体質や待遇面の不備などが口コミで拡散してしまえば、採用マーケットにおけるブランドイメージは著しく低下します。どれほど商品がヒットしていても、これでは採用はうまくいきません。
また、どれほど従業員にとって良い会社でも、入社して初めてわかる魅力では意味がありません。大切なのは、そうした従業員の満足度をあらかじめ採用マーケットに向けて発信し、できるだけ広く周知を図ることです。
さらに、自社が求めている層や、理想の人材にそうしたブランドイメージを訴求することも重要です。そのためには採用計画の最初の段階で、どのような人材を確保するために募集をかけるのか、十分に検討を重ねておく必要があるでしょう。求める人材のペルソナを細かく具体化し、そこへ向けてどのようにブランドイメージを伝えていくかを考えるべきです。
ただし、ブランドイメージとは一朝一夕に向上するものではありません。こと採用戦略においては特に、何かひとつの施策によってイメージアップを図るのは困難で、採用活動全体を通してブランドイメージを育む意識を持つことが大切です。
人材募集を告知する広告のクリエイティブや、選考プロセスの設計、面接時の対応など、求職者のイメージを左右する要因は枚挙にいとまがありません。人材マーケットを意識したイメージ戦略を見直すことが、良い人材を採用することにつながっているのです。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト