人材を取り巻く環境は急速に変化していますが、過去3年にわたり形作られた現在の採用活動の課題が解消されるきざしは、しばらくの間は見られそうにありません。Indeed とGlassdoorによる最近の「Hiring and Workplace Trends Report 2023」(採用と職場に関するトレンドレポート)では、全世界的な労働人口の高齢化で労働力不足も長期化しており、これに伴って求職者の力が増し、報酬や勤務形態の柔軟性、企業文化といった面で採用企業により多くの条件を要求するようになると予測しています。
「今後数年間は、採用企業にとって、求職者を惹きつけ、採用し、維持するのが困難な状況が続くでしょう。採用企業は引き続き、労働者の高齢化と人材獲得競争の激化という課題に取り組む必要がある上に、人口移動のトレンドも変化しています。求職者をどこで探し、自社をどう差別化するのかという点において、採用企業は革新的に対応する必要があります」と、Indeed のChief Economistで上記レポートの共著者であるSvenja Gudellは述べています。
では、2023年に求職者に選ばれる採用企業になるには、何ができるのでしょうか。
「企業は採用活動にだけ注力するのではなく、社内の人材を生かすということにも目を向ける必要が出てくるでしょう。昨今の人材獲得競争の激化は、一部の企業が求職者を容易に惹きつけている一方、ほかの多くの企業では、自社の従業員を活かしきれず、人材が流出していることが原因にあげられます」と Indeed でEnvironmental, Social and Governance(ESG)担当Senior Vice Presidentを務めるLaFawn Davisは言います。
本記事では、企業が2023年以降も採用活動で成果を得るためにできる取り組みについて、DavisやIndeed の人材採用リーダーが提言するの4つのアドバイスを紹介します。
1. ウェルビーイングへの投資が人材獲得につながる
現在の求職者市場で人材を惹きつけて確保するためには、従業員のウェルビーイングを大切にする姿勢が重要だとDavisは言います。
「求職者は給与だけではなく、職場での心身の健康維持を可能にする、さまざまな要素を求めています。採用活動にだけ注力するのではなく、雇用した従業員の維持や育成にも投資する企業は、そうした従業員を大切にする姿勢が差別化となり、人材を獲得しやすくなるでしょう」と、Davisは説明します。
Davisはまた、職場のウェルビーイングをサポートする最初のステップは、従業員の声を聞くことだと言います。Indeed の「Work Wellbeing 2022 Insights Report」(職場のウェルビーイングに関する2022年版分析レポート)によると、90%の人が、継続的に働くには職場について感じていることが重要だと答えた一方で、勤務先の企業が幸福度やウェルビーイングを測定していると回答した人は49%に留まりました。
「Indeedでは、従業員の意見や気持ちを重要な情報だと捉えています。今、私たちは従業員が会社について何を考え、どう感じているかが、企業の利益と同じくらい重要な指標であると考えるべき時期にきているのです。なぜなら、企業は従業員なしでは、製品を作ることも売ることもできないからです」と、Davisは言います。
企業が自社の職場のウェルビーイングを測定するには、従業員エクスペリエンスを全体的に捉えるために、次のような項目を検討すると良いでしょう。
- 従業員には目的意識があるか?
- 従業員は満足しているか?
- 従業員はストレスを感じていないか?
- 従業員は継続して学習する機会を与えられているか?
- 従業員の実績は正当に評価されているか?
- 従業員は勤務形態の柔軟性を与えられているか?
- 従業員は組織内で信頼感を得られているか?
「私たちはもっと早く、従業員の気持ちに関する測定を始めるべきでした。従業員がどう感じているかや、日々の生活に満足し、ニーズが満たされているかを軽視してきた事実は、仕事だけでなく、文化や社会にとっても有害です」と、Davisは話します。
2. 厳しい労働市場ではスキル重視の採用が必須
人員削減を進める企業がある一方、求人件数は過去最高の水準となり、欠員の補充も困難な労働力不足の状態が続いています。採用企業がこうした厳しい労働市場を克服するには、学歴やバックグラウンドに捉われず、人材プールを拡大するためにもスキル重視の採用に注力し、適格な人材を適切な職種に採用すると良いでしょう。
「求めている人材を見つけるのはどんな労働市場でも難しいかもしれませんが、スキルテストやワークサンプルテスト、適性検査の実施は評価から主観を取り除き、候補者のポテンシャルを知るのに役立つでしょう」と、Indeed でExecutive Vice President and General Manager of Enterpriseを務める、Maggie Hulceは言います。
スキル重視の採用を取り入れる利点についてHulceは、一例として、職歴に空白期間があることが採用の障害となっていることを指摘します。就業していない期間があることが履歴書に書かれている場合、その候補者が採用面接に呼ばれる確率は45%低くなります。子育てや介護中の求職者、特に過去に労働市場を離れた女性の場合、無職の期間には理由があるはずです。今のように人材が不足しているときに、職歴の空白期間が求職者の職場復帰を妨げるべき理由はありません。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を機に起きた大規模離職では、過去最多の求職者が新たに未経験の業種で仕事を探しています。そうした求職者の履歴書は過去の仕事を反映してはいますが、必ずしも現在の能力や希望職種を表していないことがほとんどです。
そういった履歴書の機能とは反対に、スキル重視の採用手法は「有能な人材を予測する組織の能力を強化します。採用プロセスがより客観的でデータドリブンになるほど、採用の成功と失敗から収集する知見も多くなり、優れた人材を惹きつけるより多くの改善策が実施できるでしょう」と、Hulceは言います。
3. 成功する企業はDEIとESGの取り組みへの投資を継続する
経済の不確実性が高い状況では、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)や、ESG(地球環境、社会、ガバナンス)をめぐるイニシアチブは真っ先に中止になることがよくあります。たとえばGlassdoorのデータによると、米国と英国では2021年と比較して、DEIプログラムを提供する企業に言及している福利厚生関連のクチコミ数は、2022年の第1~第3四半期にわたり減少し続けています。
しかし、厳しい時代だからといってそうした取り組みへ注力しなくなることに対し、Davisは採用企業に注意を促します。Indeed Hiring LabとGlassdoorによるレポートでは、18~34歳の従業員の65%が、企業の経営陣に人種や民族のダイバーシティが不足している場合、採用オファーを断る、または離職すると回答しました。また、米国の従業員の74%は、新しい仕事を検討する際、企業のDEIへの投資は「非常に重要」または「どちらかと言えば重要」と回答しています。
「公平でインクルーシブな職場を構築しているかだけでなく、活躍できるような文化と職場が企業に備えられているかどうかが、求職者にとっても、既存の従業員にとっても大切になっています。それができなければ、両者ともそうした条件を満たす他社に就職、または転職するでしょう」と、Davisは説明します。
ダイバーシティとインクルージョン、そしてESG戦略への企業の取り組みは、既存の従業員のモチベーションを高められるだけでなく、消費者からの反応にも良い影響を与えるとDavisは付け加えます。
「消費者は、企業ブランドが発信するメッセージに基づいて購入を決定します。今の時代はすべてがつながっています。DEIやESGに取り組む企業に対して、消費者は商品を購入したいと思い、求職者は働きたいと思い、従業員は定着したいと思うのです」。
4.採用活動の未来をさらに人間味あるものにする
採用企業や採用担当者、労働者が直面している問題を認識しながらも、Indeed の採用リーダーは未来に希望を持っています。
「世界規模の危機的状況により、私たちはやっと職場にもっと人間味を取り入れようという方向へ進むことができたと思います。ずっと以前から欠けていた部分なので、取り戻したという表現は使いません。全員が共有した体験から、仕事に何か新しい要素がもたらされたと思います。それは、日々、思いやりと配慮を持って互いに接することであり、仕事の最も重要な一部になっています」と、Indeed のCEOであるChris Hyamsは言います。
Davisにとって、従業員のニーズや仕事にもたらす要素といった人間味を重視することは、2023年も引き続き、不確実性を乗り越えるための鍵だと言います。
「困難な状況を乗り越える企業は、従業員を重視した取り組みを、最優先事項として全力で取り組みます。労働市場が厳しさを増すことで、求職者が『これが私の全スキルです』と提示し、採用企業が募集職種をスキルベースで検討するようになった時、変化が生まれると思っています。さまざまな業種や仕事で、さまざまなニーズが見つかるでしょう。2023年に私が望むことは、不安な状況であっても、そこから素晴らしい結果が生まれることです」
