Indeed は、約20年間、AIを活用して「We help people get jobs.」というミッションに取り組んできました。Indeed のCEOであるChris Hyamsが、ChatGPTを開発したOpenAIのCEOであるSam Altman氏と対談を行い、AIが、社会と創造性、そして仕事の未来に与える影響について話しました。対談では以下の内容を取り上げています。
- 新しいテクノロジーの導入時に、ユーザー体験が果たす重要な役割
- 急速なイノベーションのペースについていくために、若者やコンピューターサイエンティストを目指す人ができること
- ツールの進化によって、クリエイティブな仕事への関わり方がどのように変化していくか
Hyamsは、Indeed とOpenAIとのパートナーシップが、いかにAIを活用したサービスや機能を強化し、採用プロセスをシンプルに、スピーディーに、そして人間味あるものにしているかについても説明しています。
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Chris Hyams:Sam、本日はお越しいただきありがとうございます。
Sam Altman氏:こちらこそお招きいただきありがとうございます。
Chris Hyams:Indeed とOpenAIはどちらもミッション中心の企業であり、Indeed は「We help people get jobs.」、OpenAIは「汎用人工知能が全人類に利益をもたらすようにする」ことをミッションに掲げています。この2つのミッションは互いをどう補い合っているでしょうか。
Sam Altman氏:さまざまな形があると思います。AGI(汎用人工知能)は、人々が自己表現し、新しいものを創造し、全人類に利益をもたらし、価値ある社会を築くための素晴らしいツールだと考えています。個人的には、人類が作り上げたツールで最も優れたものの1つだと考えており、未来の仕事や、人々が互いのために価値を生み出すことに与える影響もまた素晴らしいはずです。非常に期待が膨らみます。
Chris Hyams:AIという分野は1950年代から存在しています。1980年代から実用化され、過去20年ほどで人々の日常生活にかなり浸透しましたが、世間の関心は2022年11月から爆発的に高まりました。それまでのAIと違い、ChatGPTが人々の心を捉えた理由は何だと思いますか?
Sam Altman氏:テクノロジーのユーザー体験はいつでも非常に重要だと思います。すでにAPIには優れたモデルが存在していましたが、実際、ChatGPTの開発を始めたきっかけの1つは、私たちのAPIとPlaygroundを使ってチャット形式でテストをしている人々がいるのを見たからです。でも、このやり方は難しい。そこで、「もう少しモデルをチャットのインターフェースに近づけて、使いやすいデザインにすれば、大きな違いを生み出せるかもしれない」と考えました。その結果生まれたのは、予想よりはるかに大きな違いでした。
なぜこのタイミングだったのかという理由はうまく説明できません。GPT-3ではなかった理由や、GPT-4まで待つ必要がなかった理由は不明です。振り返れば、GPT-3.5は明らかに会話するAIが使用者の要望を十分に理解し、使用者が価値を得られるだけの有益な仕事を十分にこなせる基準を超えていました。しかし、テクノロジーと成果には複雑な関わりがあり、うまく組み合わさって掛け算的な効果が出て、人々に「なるほど、今理解できた」と思ってもらえればチャンスだと考えています。その瞬間が来ることはわかっていましたが、なぜそれが遅くもなく早くもなく、今なのかはわかりません。
Chris Hyams:私自身がよく聞かれる質問をお聞きしたいと思います。現在、AI関連のイノベーションのペースには目を見張るものがあります。今の大学1年生が卒業する頃には、大学で学んでいることの一部が時代遅れになっている可能性もあります。高校生や大学生に向けて、将来に備えるためには何を勉強すべきだと伝えますか?
Sam Altman氏:間違いなく明言できることが2つあります。1つ目はツールの使い方を学ぶことです。 私が学生の頃、コンピュータープログラミングは今ほど一般的ではありませんでした。当時の人はプログラミングについて、現在のAIについてと同じことを言っていました。つまり、「これによって物事は大きく変わり、今存在している仕事の多くがなくなるだろう」と予測したのです。私は、もしそれが本当で、プログラミングがそれほど大きな影響を及ぼすのなら、明らかにこのツールに習熟すべきだと考えました。プログラミングに関しては、ポジティブな結果を生み出したと思います。プログラミングが浸透したことで、一部の仕事はなくなり、それ以上に新しい物事が生み出され、私たちは多くの新しい能力を獲得しました。振り返ってみると、このツールに習熟したのはとても良い決断でした。現在も同じことが言えます。新しいツールに習熟することをおすすめする理由は、将来の仕事がどのようなものになるか、正確にはわからないからです。
将来にもたくさんの仕事があり、その多くは今とは多少異なるものになるでしょうが、仕事そのものがなくなることはありません。
2つ目は、すでに少し触れましたが、人間が本当に大切にしていることを掘り下げ、それを基に、未来の人々が求める体験や製品、サービスをどう作り、役立てられるかについて考えることです。それはどんな特定の知識よりも、価値があることのはずです。
Chris Hyams:先ほど創造性の話がありましたが、以前は、テクノロジーと自動化が得意なのは反復作業であり、人間と同等の創造性が要求されることではないとされていました。現在、OpenAI DALL-Eは画像を作成でき、ChatGPTは詩や小説を執筆できます。この種のツールが現在利用できることを考えると、人間の創造性と私たちの関係はどう進化すると思うか、考えをお聞かせください。
Sam Altman氏:繰り返しになりますが、過去の例では、カメラが発明されたときに「絵画や美術は終わりだ」と言う人がいた一方で、「カメラは素晴らしい新技術だ、優れた美術作品が生まれるだろう」と言った人もいました。これは創造性の終末だと言いたくなる気持ちは、AIについても同じだと思います。私自身はそうなるとは思いません。しかしツールチェーンが変われば、アウトプットも変わります。たとえば、アーティストは画像生成AIで素晴らしい作品を生み出しています。新しいAIツールで作家が優れた小説を書く日も近いでしょう。
昨夜、ある科学者と話しました。創造性の話とは関係ありませんが、頭から離れないのでお話しします。AIツールを使い始め、専門分野を研究してきた彼はこう話しました。「いつかAIに、がんを治すよう指示できると確信しています。AIは私に何度かメールを送信し、『ウェットラボでこの実験をして、結果を教えてください』と言ってくるかもしれません。それからAIは数週間考えて、私に他の実験を指示するでしょう。最終的に、そのがんは完治することになります」私が「そうなるでしょう。私もよく例に挙げます」と答えると、彼はこう言いました。「私はとても悲しくなります。もちろん、ひとりの人間としてはそのことを非常に喜んでいます。ですが、あなたの専門はAGIの作成で、私の専門はがん治療です。私が、がんを完治できる人になりたかった」彼はさらに言いました。「自分自身と闘っているようです。なぜなら、ひとりの人間としては、治療は早ければ早いほど良いですが、私個人の満足度の観点からは、ツールには完全な答えではなく、研究すべき点だけを示唆してもらい、私自身が答えを出したいのです」先ほどから私が信じてお話ししてきたこととは別に、彼の言葉が記憶に残っています。AIが私の仕事をより上手にこなせることは素晴らしいですが、長年取り組んできた仕事の楽しい部分は私が経験したいです。
Chris Hyams:考えさせられるお話ですね。Sam、本日はお時間を頂き本当にありがとうございました。仕事と採用を取り巻く環境で生きる Indeed のお客様は、AIテクノロジーが仕事に与える影響について日々考えていると思います。その点について、お話を聞けて本当に良かったです。感謝します。
Sam Altman氏:こちらこそありがとうございました。