コロナ禍の影響でリモートワークが定着し、オフィス不要論が高まるなか、あえて2億円を投資してオフィスを拡大、ユニークなデザインの空間を設計した株式会社Legaseed。オフィスに様々な機能を持たせることで、顧客にも従業員にもメリットを生み出す同社の取り組みについて、広報・マーケティング事業部執行役員の田中美帆さんにお話を聞きました。
顧客が来社し、自社の理念やビジョンの世界観に触れてもらう
――コロナ禍の影響でオフィスを縮小する企業が増えるなか、新オフィスを品川に構え、あえて拡大した経緯を教えてください。
今の場所にオフィスを構えることになったのは、旧オフィスの老朽化がきっかけでした。2018年にビルの建て替えについて話があり、その頃からオフィスを探していましたが、なかなか希望の物件を見つけられずにいました。
2020年1月から新型コロナウイルスが世界中に蔓延しはじめ、物件に求める条件をどうしようか悩みました。私たちは企業が顧客のBtoBの会社ですし、リモート業務が増えると予想されたので、オフィスの規模を縮小してもいいのではという意見も出ました。しかし代表の近藤が「逆にオフィスに来てもらうことで業績アップにつなげよう」と提案し、今のオフィスに決まりました。内装は「都会のオアシス」をコンセプトとし、会社のありたい姿をオフィスで表現しました。森をイメージした部屋や人工芝を敷いた丘の部屋、飛行機の操縦席をイメージした部屋など、コンセプトに沿った様々な部屋があるので「テーマパークみたい!」と驚かれるお客様も多いです。
――前のオフィスも、秘密基地をイメージした部屋など、ユニークなオフィスを展開していたそうですが、このようなデザインにする狙いはどのようなところにありますか?
会社の理念・ビジョン・フィロソフィーは、目に見えません。オフィスという場所を使って、私たちが目指す世界観や創業からの歴史を体現していることも大きなポイントになります。
現在のオフィスは「都会のオアシス」をコンセプトにしています。コロナ禍での移転で、世の中も混沌としている状況の中、社員もお客様もリフレッシュをし、未来へ期待が持てるような空間にしたいという思いが込められています。
オフィスの入り口は洞窟からスタートします。ここでは創業からこれまでの歩みを表現しており、ロゴの意味と発展の歴史を壁画アートとして描いています。オフィス全体は、無限大(∞)のコースで美術館のように回遊できるようになっています。これには「オフィスの無限大の可能性」を信じる私たちの思いを込めています。
ただオフィスを見ても、一つひとつの意味や背景は伝わらないため、初めて来社されたお客様にはオフィスツアーを行っています。そのアテンドを社員が行うのですが、どこの場所で、何を説明するかも全て決まっており、誰がオフィスツアーをしてもきちんとお客様に情報が伝わるようにしています。
余談ですが、オフィスツアーをするためには、社内テストに合格しなければお客様を案内できません。その他にも会社の歴史やフィロソフィーにまつわるテストも年2回あり、お客様に質問されたときにすぐに答えられるようにもしています。たとえばこのオフィスをデザインしてくださったデザイン会社や、初めて融資をいただいた銀行の名前なども問題になっています。人が増え、組織が大きくなると分業化が進み、知らないことも増えていきますが、大切なことは全社員が把握し、関わってくださっているお客様や取引先の方に感謝のもてる組織でありたいと思っています。
ユニークなオフィスを活用することで、商談成約件数が4倍に
――こうしたオフィスがもたらす効果をどのように感じていますか?
オンラインだけの商談と来社いただいた商談の成立件数を比較すると、来社での相談の方が約4倍成約率が高かったというデータが出ました。これはオフィスがあることによって当社の考え方や思い、新卒の持つエネルギーを伝えることができ、契約に結びついていると捉えることができます。会社への理解を深めてもらうことは、同業他社と比較されるときに、自社を選んでもらう決め手にもなりうるものです。
また、メンバーや会社の様子を見てもらった方が、先方に安心感が生まれ、その後の仕事に良い影響をもたらします。
採用に関しても、「おしゃれなオフィス」で検索したことから、長期のインターンシップを受けてくれた学生さんもいました。さらにオフィスをロケ地としても貸し出しているため、会社の認知度拡大や場所の利用料としての収益が生まれるなど様々な効果をもたらしています。
――非常に充実したオフィスですが、リモートワークも実施しているのでしょうか?
リモートワークも実施しており、どちらを選択するかは各人の自由ですが、20代の社員を中心に毎日出社している人が多い状況です。というのも、若い世代の社員の場合、自宅に仕事に適した机や椅子がないなど環境が整っていないことも多く、出社した方が効率良く仕事に取り組めるようです。
また通勤が体を動かす機会にもなる、オフィスでコミュニケーションを取ることで気分転換にもなる、などの声も挙げられています。特に、新卒1~3年目で、まだ完全に一人で仕事が遂行できない段階では、上司や同僚にすぐに質問ができるなどの観点から自立するまではオフィスの方が働きやすいのではないでしょうか。
いろいろなかたちを試しているところで、2022年8月からは週2日はオフィスに出勤の方針に変更します。デザイナーなどの職種はフルリモートでも成り立ちますが、若いメンバーが直接デザインに関してディスカッションして成長する場合もあるので、出社して対面でディスカッションする機会を持つなど、より効果的な仕事の仕方を模索しているところです。
オフィスの可能性を最大限に生かして
――顧客対応にも、従業員の働きやすさにも効果があるオフィスをつくろうと考えるとき、どのようなポイントを押さえたらよいですか?
在宅でも仕事ができる時代に、あえてオフィスをつくるのであれば、オフィスを働く場所だけでなく、理念浸透や、業績アップも狙ってつくることがポイントだと考えます。
先ほどお伝えしたとおり、オフィスを通して会社の理念や想い、目指すビジョンをビジュアル化することができます。オフィス移転を通して、このオフィスに移転した後、どんな未来を創りたいのか?を真剣に考えるきっかけにもなります。
また、オフィスの随所にお客様に感動してもらう工夫もあると良いです。私たちは入口と出口を分けており、最後お帰りになる出口には「サンクスボックス」を設置していて、プレゼントとメッセージをお渡ししています。このように来社したお客様への感動ポイントを随所につくるのもおすすめです。
さらに、品川という立地を生かしてお客様が出張の際、無料でオフィスを使っていただける仕組みもつくっています。当社の担当者にとっても、顧客の経営者に要件もなく連絡することはハードルが高いですが、オフィスをご利用いただくことで接触頻度が増えると、仕事の話のきっかけが生まれたり、良好な関係性が築きやすくなったりします。
このようにオフィスを工夫し、あらゆる機能を持たせることで、顧客にも従業員にも良い効果を生み出すことが可能です。オフィスの可能性は無限大。各企業に合ったスタイルを検討してみてはいかがでしょうか。
<取材先>
株式会社Legaseed 広報・マーケティング事業部 執行役員 田中美帆さん
2013年創業の人材コンサルティング企業。「はたらくを、しあわせに」を経営理念に、社員40名ながら、300社以上の企業の新卒採用支援を行い、成長企業の組織づくりに貢献している。
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト