「就労移行支援」は、一般企業等で働きたい障害者と企業をつなぐサービスです。就労移行支援事業所「Kaien」の代表取締役 鈴木慶太さんに就労移行支援の有効な活用方法についてお聞きしました。


障害者雇用のミスマッチを防ぐ


就労移行支援では、「就職したいけれど自分に合う職場が分からない」「働くために必要なスキルが不足している」と感じている障害者に対し、最大2年間のスキルアップのための就労トレーニングや就職活動のサポートを提供します。
 
また、障害者と企業の間に立って、障害者雇用で企業に配慮して欲しいことや、労働条件の調整なども担います。企業に対して「正式に採用する前に、職場実習をさせてもらえないか」「最初からフルタイム勤務ではなく、短時間勤務から徐々に勤務時間を長くできないか」といった提案や相談も行っています。
 
「就労移行支援」は障害者総合支援法に基づき、行政からの給付金と障害者が支払う利用料によって運営されていますが、企業は「就労移行支援」のサービスを提供する企業や団体と連携する際の費用は一切かかりません。障害者と企業の間のすれ違いを防ぎ、双方にとってメリットが大きいサービスのため、「就労移行支援」を利用して就職する人は年々増えています。

障害者雇用の経験がない企業にも安心


就労移行支援事業所が行う支援の内容は、大きく分けると主に以下の3つになります。

1. 障害の理解促進と心身の体調管理のサポート

就労移行支援事業所を利用する障害者の半分以上は、精神障害や発達障害と呼ばれる障害のある人たちです。その中には大人になってからうつ病などを発症した、あるいは発達障害であると分かったという人も多くいます。その場合は知的な障害がないことが多く、面接の受け答えもスムーズなため、障害者本人も企業も特別な配慮をせずとも普通に働けると思いがちです。しかし、勤務を開始すると本人が思う以上に体力がなかったり、体調が安定しなかったりすることがあります。
 
就労移行支援事業所ではまず、障害者自身の障害の特性を学ぶとともに、服薬管理や体調不良時の対処法を明らかにします。また、週に数日~毎日、事業所に通うこと自体が生活リズムを整え、自身の体力や体調を見極めることにもつながります。企業にとっては基本的な体調管理ができている人を雇用することができるため、採用後の勤怠トラブルが発生するリスクを減らせます。

2. 職業スキルの獲得・職場実習の機会の提供

就労移行支援事業所の利用者は20~30代の若い方が多いこともあり、あいさつや業務に関する報告・連絡・相談など職場で必要となる基本的なビジネスマナーやコミュニケーションを学ぶグループワークを行うこともあります。基本的なITスキルや、本人の希望や特性に応じてプログラミングなどを学ぶプログラムを提供する事業所もあります。
 
また、企業での就労体験も行います。障害者自身のトレーニングになることはもちろん、企業にとっても障害のある人と働く時の配慮や工夫を学び、自社に適した人材像を見極める機会にもなります。

3. 雇用のマッチングと職場定着の支援

障害者と共にハローワークに赴いて仕事探しをしたり、企業の見学や面接に就労移行支援事業所のスタッフが同行したりすることもあります。スタッフが障害者本人と企業の両方を見て、適切なマッチングのサポートをします。
就職後も半年間は「定着支援」と呼ばれる障害者本人との面談や、必要に応じて企業に対し環境調整のアドバイスを行います。企業側に障害者雇用のノウハウがない場合でも、スタッフから雇用継続のために必要な配慮や、本人の能力が発揮できる業務内容などの助言を受けることが可能です。

就労移行支援事業所との連携で採用・育成をスムーズに

体調の不安定さゆえに勤怠を安定させるのが難しい精神障害者も、就労移行支援を利用して心身の状態を整え、定着支援も行うと早期離職率を下げることが可能になると言われています。企業側にとっても、採用後に「障害」と「企業での労働」のどちらの知識も持つ就労移行支援事業所のスタッフに相談できるのは心強いものです。
 
就労移行支援事業所でトレーニングを積んだ人を採用したい場合は、障害者向けの求人票に「就労移行支援事業所を利用している方を歓迎します」と書くのも一つの手段です。また、各地に就労移行支援を手がける企業や団体はたくさんあるので、インターネットなどで調べて実習生の受け入れを申し出ることもできます。実際に利用者から応募があった場合は、就労移行支援事業所のスタッフにも面接に同席してもらうと良いでしょう。
 
SDGsやCSRの観点から障害者雇用の推進に積極的な大企業が増えていますが、中小企業ではまだ1人も障害者を雇用していないところが少なくありません。国も障害者雇用の取り組みに優れた中小企業を認定する制度(もにす認定制度)を作るなど、今後は中小企業にもさらに障害者の雇用が求められていくでしょう。
 
そして、少しの配慮があるだけで目覚ましい活躍をする障害者もいます。地域の就労移行支援事業所との連携は、自社で長く戦力となって働いてくれる人を採用するという効果をもたらすはずです。

<取材先>
鈴木慶太さん
株式会社Kaien 共同創業者・代表取締役。長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。1,000人以上の発達障害の方の就労支援に現場で携わる。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)などがある。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう!ダウンロードはこちら