授乳服の企画・販売を行うモーハウスでは、1997年の創業時から子連れ出勤を導入しています。子連れ出勤に対するルールや工夫、当事者の心構え、導入によって得られる効果などについて、同社代表取締役の光畑由佳さんにお話を聞きました。
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求人を作成する創業と同時に自然な流れでスタート
――モーハウス創業のきっかけと、子連れ出勤を導入した経緯を教えてください。
モーハウスの創業のきっかけになったのは、生後1カ月の次女を連れて電車に乗ったときに泣き出してしまい、仕方なくその場で授乳するという経験をしたことでした。その経験から、人前でも肌を見せることなく授乳できる機能的な授乳服をつくりたいと考え、モーハウスを立ち上げました。収益よりも社会的課題の解決を目指す側面が大きく、仕事を手伝ってくれたのはその考え方に共感してくれたお母さんたちでした。彼女たちが子連れで仕事を手伝ってくれたことが子連れ出勤の取り組みの始まりです。
その数年後、経済紙で子連れ出勤について取材を受けました。「女性の働き方」という切り口で、女性がこれまで諦めていたことも実現できると紹介されて大きな反響がありました。出産後に働くことを諦める人も多いのだと実感し、現在に至るまで子連れ出勤の制度を続けています。
――子連れ出勤を実施するにあたって、社内ではどのようなルールを定めていますか?
子連れ出勤というと、社内託児所があり、保育士がいる環境を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちの会社では、従業員であるお母さんが直接自分の赤ちゃんのお世話をしながら仕事に取り組んでいます。
対象となる子どもの年齢は、おおよそ1歳までとしています。というのも、歩くようになると親の手を離れて動きたくなるため目が離せず、仕事がしづらくなり、子どもがケガをするなどの危険性が高まるからです。1歳くらいまでの時期は一般的に育休を取得する時期にあたりますが、希望者があえてその時期に子連れ出勤を経験することで、その後の職場復帰がスムーズに進みます。とはいえ、母子の負担が大きくならないよう、出勤は1日4時間程度、2日連続で出勤をしないというルールを定めています。
ショッピングセンターの店舗で子どもを抱きながら勤務する従業員もいました。細かいルールは店舗ごとに異なりますが、オムツ替えなども自店の近くにスペースを設けるなど、お母さんと赤ちゃんが一緒にいても働きやすい工夫をしています。
赤ちゃんが泣く前の対処で仕事もスムーズに
――赤ちゃんが泣いてしまって仕事がはかどらないなど、困ることはないですか?
実は、会社に視察に来た人たちから「赤ちゃんはどこにいますか?」と聞かれることがよくあります。そのくらい静かな環境で仕事ができています。
赤ちゃんが泣くのは、お腹がすいた、オムツが気持ち悪いなど困った状況を訴えたいからです。抱っこをして、子どもの間近で仕事をしていると赤ちゃんが何に困っているかに気付きやすくなり、泣く前に授乳する、オムツを替えるなどして対処ができるため、泣かずに済むというわけです。
子どもを育てていると「授乳は3時間以上空けないといけない、抱き癖がつくから抱っこし続けてはいけない」など子育ての“常識”とされることや“当たり前”に縛られてしまい、苦しくなってしまうこともありますが、ここでは仕事といかに両立していくかを重要視しています。赤ちゃんのお世話をいかに楽に、正しい情報で効率よく行うかを考えながら従業員は赤ちゃんを泣かせない術を身に付けていきます。従業員が仕事をしながら上手に赤ちゃんと接する姿を長年見てきたので、私は、子連れ出勤は育児のトレーニングにもつながるものだと感じています。
――社内には子どもが苦手な人がいることもあります。こうした場合でも、みんなが気持ち良く仕事ができるようにするコツはありますか?
職場には、子どもが苦手な人、子どもを望んでも授からなかった人など様々な事情を抱えた人がいます。お母さんだけが優遇される特別な存在ではありません。みんなが気持ち良く働くためには、子連れ出勤をしているお母さん自身が「赤ちゃんがいるから迷惑をかけても当たり前」などと考えず、周囲に助けてもらったら感謝をして「会社には仕事をしに来ているのだ」という意識を持つことが一番大切です。
一方で、苦手意識のある人は、子どもと触れ合う機会が少なかったり、抱っこして泣かれてしまったりした経験なども要因になっているのではと私は考えています。モーハウスには視察で人が訪れますが、赤ちゃんたちは初対面の人に抱かれても泣かず、たいていニコニコしています。モーハウスで子連れ出勤を経験した子どもたちは、普段から働く大人に囲まれているので人見知りが少なくなるのだと感じています。子連れ出勤が増えることで、子どもの社会性が育まれ、笑顔の赤ちゃんと触れ合う経験をする大人が増えるという好循環が生まれると、子育てに対して温かい社会環境の醸成につながるのではないかとも考えています。
乳幼児との子連れ出勤が、会社への復帰を早める
――中小企業で子連れ出勤を取り入れる場合のポイントを教えてください。
子連れ出勤は、私たちのような乳幼児や子育て関係の事業ではない業種でも取り入れることが可能です。導入する際に大切なポイントは、実施する時期です。コロナ禍の影響で子連れ出勤を取り入れた企業もありますが、1歳を過ぎてから導入するところも多く、逆に難しさを感じているのではないかと想像します。モーハウスで実施しているように、まずは産後から1歳ごろまでの育休の期間中に、練習として会社に何度か連れていくことから始めてみてはいかがでしょうか。
また、企業のなかには、お母さん従業員が働きやすい環境整備の一つとして、授乳服をプレゼントしている企業もあります。働くお母さんをサポートするグッズを企業が用意できると仕事がしやすくなる側面もあるので、企業側が女性の悩みに敏感になって支援できると従業員は心強いのではないでしょうか。
――子連れ出勤の導入を検討する企業の人事・労務担当者にメッセージをお願いします。
企業で女性が活躍していても出産を経て退職してしまう現状があり、日本の企業内で女性管理職が増えにくい原因にもつながっています。
出産後の女性は職場復帰に対して様々な不安を抱えていますが、子連れ出勤を経験することによって自信を持つことができ、会社への復帰が早くなるきっかけになります。企業にとっても人材確保につながるので、女性の働き方の選択肢を増やす意味でも、ぜひ導入を検討してみてください。
<取材先>
有限会社モーハウス 代表 光畑由佳さん
産後の新しいライフスタイルを提案するため、授乳服の制作を開始し、1997年にモーハウスを創業。同社の事務所や店舗などで「子連れワークスタイル」を実践し、内閣府の女性チャレンジ賞など様々な賞を受賞している。子育てと社会を結びつける活動をするNPO子連れスタイル推進協会代表理事。
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト
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