女性の健康情報サービス「ルナルナ」などのサービスを展開するIT関連企業・エムティーアイは、従業員の不妊治療と仕事の両立を支援する制度として最長2年間休職できる「チャイルドプラン」や、通院治療や配偶者のサポートのために月2日まで休暇が取れる「ファミリーサポート休暇」を実施しています。同社人事部の岩田沙樹さんに、制度の概要から制度を利用した従業員の声、制度実施によって得られた効果などについてお話を伺いました。

不妊治療に取り組む社員の相談がきっかけ

――チャイルドプランやファミリーサポート休暇は、どのようなきっかけで生まれましたか? また、制度の概要を教えてください。

制度が生まれたきっかけは、不妊治療を行っている女性従業員から「毎日通院しているため仕事との両立が難しく休職するか退職するか悩んでいる」という相談があったことでした。当時の女性従業員の平均年齢は31.1歳と若く、その時点で不妊治療に取り組む従業員はまだ少ないことが予想されましたが、今後女性従業員の平均年齢が上昇すれば不妊治療に取り組む人が増える可能性があると考えました。経営層はすぐに導入を決定し、2013年に不妊治療のための休職制度「チャイルドプラン」をスタートさせました。

チャイルドプランの対象者は、不妊治療に取り組む勤続1年以上の女性従業員で最大2年間の休職が取得可能です。休職期間中は無給となりますが、経済的なサポートになればとその間の社会保険料相当額を全額会社が負担しています。一方で、一律休暇ではなく、不妊治療のための休暇が欲しいケースもあると予想されることから、月2回までの休暇を取得できる制度として「ファミリーサポート休暇」という制度も作りました。対象は勤続1年以上の従業員で、不妊治療に取り組む女性従業員だけでなく、男性側の治療や、妻の治療を夫がサポートをする場合もあることから男女問わず利用できます。

――制度を実施する上で工夫した点を教えてください。

現在のところ、制度の利用者はチャイルドプランが2名で、ファミリーサポート休暇の取得者はいません。一気に大勢の従業員が利用するような状況ではなく業務体制に大きな影響が生まれるものではありません。通常の休職制度と同様の手続きを踏んで、休職者の業務をスムーズに引き継げるように工夫しています。一方、ファミリーサポート休暇については、現状、取得者はいませんが休暇を取る際、上司に「不妊治療で休みたい」と直接伝えなくても、他の休暇同様に勤怠管理システム上で申請できる運用にしています。こうすることで少しでも社員の精神的負担や利用へのためらいを軽減できるようにしています。

また、不妊治療は非常にセンシティブな事柄なので、休暇の名称に「不妊治療」という直接的な言葉を入れませんでした。休暇の期間については制度開始時には最大1年間と定めましたが、人によって治療内容や期間が大きく変わることや、実際に取得した従業員から「1年では足りない」という声があったことから2年に延長したのも工夫した点です。

――制度に対する従業員の皆さんの理解はいかがでしたか?

もともと女性の健康管理に関する事業を行っているので、従業員から制度に対する反対意見はありませんでした。ただ、不妊治療への知識や理解は人によってかなり差があったことは課題だと感じました。特に男性は不妊治療について知る機会を得にくいことも考えられるので、2021年5月から7月に「オンライン不妊相談」の実証実験を行った際に、社内で不妊治療の基礎知識を学ぶセミナーや不妊治療についての知識を問うアンケートを実施して少しずつ理解を深めてもらいました。まだまだ知識が不足している部分があるので、今後も男女問わず知識を深められるような機会を持ちたいと考えています。

仕事を気にせず治療に専念できる仕組みを

――チャイルドプランを利用した2名の従業員からは、どのような感想を聞いていますか?

制度を利用した2名の従業員はともに、治療に集中できたことが非常によかったと話しています。最初に制度を利用した従業員は、制度創設前は有給休暇やフレックス制度を利用して通院と仕事を両立させていましたが、通院中に仕事の連絡が来たり、休んだ日の会議や研修について動画を見て補っていて、そういった日々の重なりからストレスを感じていたそうです。さらに薬の副作用で体調が思わしくないときもあり、こうした心身の疲れが仕事のパフォーマンスに影響していたそうです。制度を利用して休職することによってそれがなくなり、治療に集中できたと話していました。

もう一人の取得者は現在、制度を利用して休職中です。治療しながら仕事を続けるのは心も体も疲れてしまいますが、しっかり仕事を休めることでゆっくり不妊治療に向き合えるのがいいと話しています。

不妊治療は、病院や治療の段階によって治療スタイルが大きく異なるため、転院時や治療のステップをもう一段階上げたいというときに、仕事との両立が難しくなることもあります。ファミリーサポート休暇はまだ利用されていませんが、こうした制度があることも社員の安心感につながっていると感じます。

社員のプライベートも仕事も応援するために

――制度を実施することで、会社としてどのような効果を感じていますか?

当社では、従業員の妊娠・出産と仕事は、てんびんにかけるものではなく、プライベートも含めて従業員のキャリアを支援することが大切だと考えています。不妊治療に悩んだ従業員が退職を選択してしまうのは、本人はもちろん、会社にとっても本意ではありません。大事な人生の岐路に立ったとき「妊娠・出産したい」という思いと「仕事でチャレンジし続けたい」という両方の思いを持った従業員を後押しするために、不妊治療を支援する制度を導入してよかったと感じています。

不妊治療に関する2つの制度を利用した従業員はまだ少数ですが、コロナ禍をきっかけにスーパーフレックスやテレワークを導入し、介護や育児などと仕事を両立させている従業員も多くいます。こうした状況も踏まえて、不妊治療に特化した休職・休暇制度も継続させながら、全従業員が自身の事情に応じたライフとワークを両立させることができ、誰でも使いやすい制度をつくっていくことも重要だと考えています。




<取材先>
株式会社エムティーアイ 人事部 岩田沙樹さん
Webサービスやアプリ運営、システム開発などを手掛けるIT関連企業。女性のための健康情報サービス「ルナルナ」や、音楽・動画・書籍を配信する総合Webサイト「music.jp」などのモバイルコンテンツを中心に、「ヘルスケア」や「フィンテック」「音楽・動画・電子書籍」「生活情報」など、多岐にわたる分野のサービスを提供している。

TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト