事業所内保育事業とは?

By Indeed

従業員の子どもや地域の子どもを保育するために、企業が主体となって保育所を設置・運営する「事業所内保育事業」。設置・運営するメリットやその方法について、特定社会保険労務士の岡佳伸さんに解説していただきました。

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事業所内保育事業とは

事業所内保育事業は認可外保育に分類されていましたが、内閣府が2015年に策定した「子ども・子育て支援新制度」により、市区町村の認可事業となりました。

背景には待機児童の解消があり、従業員の子どもは「従業員枠」として事業所内保育所に優先的に入所できます。

◆事業所内保育施設を設置するメリット

  • 従業員への福利厚生としてアピールできる
  • 従業員の定着率アップにつながる
  • 地域の子どもを受け入れる「地域枠」を設定することで地域貢献できる
  • 企業のイメージアップにつながる

◆事業所内保育施設を設置するデメリット

  • 準備期間・初期費用がかかる
  • 設置時の書類作成・提出の手間がかかる
  • 運営費用がかかる

事業所内保育事業の特徴

◆子どもの年齢

対象は0〜2歳ですが、4月1日の段階で満3歳になっていなければ受け入れ可能です。年度の途中で3歳の誕生日を迎えても、3月末までは在籍できます。

企業は満3歳以上の子どもに対し、必要な教育または保育を提供できる「連携施設」を確保する必要があります。その方法は、保育所の運営を自社でするか外部委託するかで異なります。自社で運営する場合は連携先を一から探す必要があり、外部委託の場合はその会社が運営する保育園を連携先とするケースが多いです。

◆地域枠の定員

国が定める基準を目安として、市区町村が個々に設定します。

◆保育料

国が定める上限額の範囲内で、市区町村が設定します。

事業所内保育事業は、「地域型保育事業」の一つに分類されます。下記は、地域型保育事業の認可基準です。

事業所内保育事業は子どもの数によって分類が異なります。A型の場合、職員の配置基準や職員資格が保育所と同じです。B型は保育士の配置基準が少なく設定されています。保育士の確保が難しい場合、まずB型として運営し、A型に移行するケースがあります。

小規模保育事業A型の場合、 職員数は保育所の配置基準+1名。 職員資格は保育士。 保育室等の広さは、0、1歳児1人当たり3.3㎡、2歳児1人当たり1.98㎡。 給食は自園調理(連携施設等からの搬入可)で調理設備、調理員が必要。  小規模保育事業B型の場合、 職員数は保育所の配置基準+1名。 職員資格は1/2以上が保育士で、保育士以外には研修を実施。 保育室等の広さは、0、1歳児1人当たり3.3㎡、2歳児1人当たり1.98㎡。 給食は自園調理(連携施設等からの搬入可)で調理設備、調理員が必要。  小規模保育事業C型の場合、 職員数は0〜2歳児1人につき3名。補助者を置く場合は0〜2歳児2人につき5名。 職員資格は家庭的保育者。 保育室等の広さは、0〜2歳児1人当たり3.3㎡。 給食は自園調理(連携施設等からの搬入可)で調理設備、調理員が必要。  家庭的保育事業の場合、 職員数は0〜2歳児1人につき3名。家庭的保育補助者を置く場合は0〜2歳児2人につき5名。 職員資格は家庭的保育者と、家庭的保育補助者。 保育室等の広さは、0〜2歳児1人当たり3.3㎡。 給食は自園調理(連携施設等からの搬入可)で調理設備、調理員が必要。  事業所内保育事業の場合、 職員数は0〜2歳児1人につき1名。 職員資格は必要な研修を終了し、保育士、保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者。  参考情報として、 保育所の場合、 職員数は0歳児1人につき3名。1、2歳児1人につき6名。 職員資格は保育士。 保育室等の広さは、0、1歳児は乳児室1人当たり1.65㎡、ほふく室1人当たり3.3㎡。2歳児以上は保育室等:1人当たり1.98㎡。 給食は自園調理で、公立は外部搬入可。調理設備、調理員が必要。
参照:内閣府「地域型保育事業の概要」

※1……保健師、看護師または准看護師の特例を設けている
※2……市町村長が指定した研修を受けた保育士、保育士と同等以上の資格及び経験を保有していると市区町村長から認められた人

◆企業主導型保育事業との違い

従業員の子どもを保育するために企業が保育所を設置する企業主導型保育事業があります。それぞれの違いを下記の表に記載しました。

事業所内保育事業の場合、管轄は厚生労働省。 職員(定員20名以上の場合)は保育士。 認可施設であり、申し込み先は市区町村。 子ども1人につき認可保育施設としての整備費・運営費の補助金が支給される(金額は市区町村によって異なる)。 対象年齢は0〜2歳児。  企業主導型保育事業の場合、管轄は内閣府。 職員(定員20名以上の場合)は保育士、家庭的保育者。 認可外施設であり、申し込み先は保育所。 整備費・運営費の補助金がある。対象年齢の制限はなし。

なお、企業主導型保育事業は令和3年度募集の結果で定員に達することが見込まれたため、令和4年度の新規募集は実施していません。

◆ベビーシッター派遣事業とは

従業員の子育て支援として企業が利用できる制度に「ベビーシッター派遣事業」があります。ベビーシッター派遣事業の実施事業者が事業主に1枚2,220円分の割引券を交付し、従業員がベビーシッター派遣事業を利用した場合、交通費などの実費などを除く利用料金の一部または全部を助成するものです。

・1回当たりの割引額

対象児童×2枚(最大4,400円、多胎児2人:9,000円、多胎児3人以上:18,000円)
※ひと家庭につき、1カ月に24枚まで利用可能

・利用可能な子どもの年齢

  • 小学校3年生までの児童
  • 下記のア〜ウに該当する小学校6年生までの児童
    ア.「身体障害者福祉法」(昭和24年法律 283号)第15 条第4項の規定に基づき身体障害者手帳の交付を受けている場合
    イ.「療育手帳制度について」(昭和 48 年9月27日厚生省発児第156号通知)に基づき療育手帳の交付を受けている場合
    ウ.その他、地方公共団体が実施する障害児施策の対象となるなど、ア、 イのいずれかと同等程度の障害を有する

・利用手数料

大企業:割引額の8%
中小企業:割引額の3%

利用条件などの詳細は、内閣府の「ベビーシッター派遣事業実施要綱」に記載されています。

事業所内保育事業には準備期間や費用がかかりますが、ベビーシッター派遣事業はインターネットで申請でき、かかる費用も発行手数料のみです。事業所内保育事業と合わせて利用できるなど、比較的使いやすい制度です。

事業所内保育事業を設置する場合

◆事業所内保育所設置のステップ

事業所内保育所を設置する際、下記ステップを踏む必要があります。

1.市区町村の要綱を確認
まずは、下記項目を事業所のある市区町村に確認します。

  • 待機児童の数
  • 事業所内保育所の設置要件(施設最低基準など)
  • 申請書類の受付期間
  • 補助金の金額 など

2.設置場所の検討
事業所の敷地内または近隣地で施設最低基準を満たす場所を探します。

3.運営方法の検討
保育所を自社で運営するか、外部に委託するかを検討します。詳細は後述します。

4.保育所の設計・施工

5.保育事業の準備

  • 保育所の備品用意
  • 職員の採用
  • 運営マニュアルの作成(利用開始に伴う基準、教育・保育の提供に伴う基準、管理運営に関する基準、撤退時の基準) など

6.書類の準備・提出
必要書類を揃えて市区町村の窓口に提出します。書類の内容は、市区町村で大きな違いはありませんが、様式が異なります。

なお、1〜6までのステップの間に市区町村とのやりとりが何度か発生します。

事業所内保育事業の運営方法

事業所内保育事業の運営には、自社で行うケースと外部に委託するケースがあります。

◆自社で行うメリット

  • 自社に保育所運営のノウハウが蓄積される
  • 職員の採用や教育を自社で行うことができる

◆外部に委託するメリット

  • 保育所運営のノウハウを持っている
  • 保育士の確保を任せられる
  • 市区町村とのやりとりを任せられる
  • (運営会社によっては)行政へ提出する書類の作成支援をしてもらえる
  • (運営会社によっては)3歳以降の子どもが入れる保育所を運営している

注意点

事業所内保育事業を進める際の注意点は下記の通りです。

◆従業員のニーズや地域の待機児童の状況などを確認する

従業員数が少ない企業や待機児童が少ない地域の場合、事業所内保育所のニーズそのものが少ない可能性があります。状況を把握しないまま設置してもデメリットばかりが大きくなってしまいかねません。まずは、従業員や市区町村に状況を確認しましょう。

◆申請書類の受付期間を把握しておく

書類の受付期間は市区町村ごとに異なります。下記の千葉市のように短期間で締め切るケースもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

例)千葉市の事業所内保育所の書類受付期間

  • 開所日:2023年度4月1日
  • 受付期間:2022年8月3日〜5日

受付期間に間に合わない場合、2024年度の受付になります。

◆年に1回市区町村による調査がある

通常の保育所と同様に、国が定めた基準をクリアしているかなどを確認するための調査があります。運営を外部委託している場合も企業が管理する必要があります。

事業所内保育所の設置・運営には、時間や人手、金銭面など様々な負担が生じます。たとえ運営を外部に委託しても、最終的な責任は企業側が負うことになります。

「産休育休取得率が高く、育休取得後に離職する従業員が多い」「地域に待機児童が多い」など事業所内保育所の必要性を見極めるほか、まずは「ベビーシッター派遣事業」を利用して状況を見るなど段階的に考えるのも方法の一つです。



※記事内で取り上げた法令は2022年7月時点のものです。

<取材先>
社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 特定社会保険労務士 岡佳伸さん
大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演など。キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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