仮配属とは、入社後に複数の部署で一定期間ずつ働くことを指します。しかし、企業によって定義がまちまちで、中には導入していない企業もあります。仮配属の必要性や導入手順について、企業の採用代行や人材育成に携わる株式会社アールナインにお話を聞きました。

仮配属であっても「お客さん扱い」はしない

――仮配属の定義を改めて教えてください。

仮配属とは、新入社員にできるだけ多くの部署を見てもらうために、短いジョブローテーションを回していくことです。ただし、仮配属の定義は企業によってバラバラで、各部署を数週間ずつ経験するケースもあれば、工場に2年勤務することを仮配属と呼ぶケースもあります。これは仮配属を研修の一環として捉えているか、研修が終わった後の一定期間内の配属を指しているかによって異なります。

――仮配属では、どんな業務を任せるとよいでしょうか?

一人の社会人に任せるつもりで、仕事を用意しておくことが大切です。新入社員は入社1年目であっても、会社に貢献したいと思っています。毎日見学で終わったり、資料の誤字脱字のチェックをさせたりと、簡単な業務しか与えずに「お客さん扱い」していると、会社に貢献できていないという意識からモチベーションが下がってきてしまいます。

また、他社で働く大学の同期が早い段階から仕事を任されて活躍していると、「遅れをとった」という意識を持ち、最悪の場合には転職活動をして会社を辞めてしまうことにもなりかねません。

たとえば営業であれば、先輩と営業先に行って名刺を交換したり、議事録を取ったりと、取引先の担当につける以前のすべての業務を任せるようなつもりで、一定の責任を与えてあげるとよいでしょう。

仮配属するかどうかは、会社の状況によって判断する

――仮配属を導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか?

仮配属のメリットは、入社後の新入社員の能力や配属の希望を考慮したうえで配属を決められることです。選考・採用から入社までは時間のラグがあり、入社時には新入社員の考えやモチベーションの方向性が変わっていることもあるので、入社してからの新入社員の状態を見極められるのはメリットの一つといえるでしょう。

また、多くの部署を経験することで、新入社員が全社における自分の仕事の役割を知ることができるのも利点です。自分の仕事に意味を見いだせないと、「自分は会社の歯車の一部に過ぎないんだ」と感じ、モチベーションが下がってしまうこともあります。仮配属で全社的なマクロ視点を獲得しておくと「自分の仕事はこの事業のこの部分を担っているんだ」と思え、仕事に対して前向きに取り組むことができます。

――仮配属をするデメリットはありますか?

多くの部署を見て回ることで、新入社員が「絶対にこの部署に配属されたい」という強い希望を持ってしまう可能性があります。そうなると、希望どおりの配属がなされなかったときに不満を抱いてしまう、モチベーションを低下させてしまうなど、かえって悪影響を及ぼすケースも中にはあります。

また、仮配属を受け入れた部署には、新入社員を教育する一定の負担がかかります。仮配属のメリットが得られない場合は仮配属をすべきではないでしょう。

――仮配属をすべきケースとすべきではないケースは、どのように見極めるとよいでしょうか?

仮配属をしなくてもいいケースは、すでに配属がうまくいっている場合です。採用の段階で配属先を見極められており、実際に配属しても離職が少ない、社員の活躍が早い会社は仮配属をする必要はありません。

一方で、配属後に多くの人が辞めてしまう、社員がなかなか活躍しない、部署異動を3年後にしてみたら異動したそれぞれが活躍するといったケースでは、配属がうまくいっていない可能性があります。こうした場合は、仮配属をして新入社員の適性を見極める時間をとってみるのも方法の一つです。

また、ベンチャー企業は若手であっても1人の社員が担う責任が大きくなるため、各社員を適した部署に配属させられるかが重要です。「その人の『得意』を活かせるのはどの部署なんだろう」と考えるために、仮配属をしたほうがいいケースもあります。

――では、過去の配属がうまくいっているかどうかもきちんと調べておく必要がありますね。

選考や配属の結果が適切だったのかを判断するために、各部署にヒアリングすることは重要ですね。各部署で高く評価される人材の条件や、どんな風に活躍しているか、どんな人ならもっと活躍できていたと思うかなどの聞き取りをしたうえで、選考や配属の基準を決めていくといいと思います。

採用や配属がうまくいったかが一定の期間が経たないと判断できないところが、人事の仕事の難しいところです。そうした判断基準は一朝一夕にはわからないため、退職率や活躍する人材に関するデータの蓄積・分析も進めていくとよいでしょう。

仮配属をするなら、部署全体で受け入れ体制をつくる

――具体的には、どのような手順で仮配属を進めていけばよいでしょうか?

研修が終わった後にいくつかの部署を1カ月ずつくらいで回ってもらうのが良いかと思います。全部署を回るのが理想ですが、部署数が多い場合は最低でも3部署ずつくらいを見て回れると、会社の全体像をつかみやすくなります。

ちなみに当社の場合は、入社前の段階からアルバイトとして全部署で働いてもらい、4月1日に配属を発表します。入社前に全部署を経験したうえで適性を見られるので、仮配属する必要がなくなり、4月1日から即戦力になってもらえるかたちです。

ただ、企業ごとに規模や課題が異なるので、どのような形式が良いのかは一概にはいえません。自社の状況と仮配属に期待することを鑑みながら、自社に合った仮配属のあり方を考えていくとよいでしょう。

――仮配属後に起きるトラブルとして、どんなことが考えられますか?

仮配属中に活躍できないことでモチベーションが下がってしまうことですね。そうなってしまうことの理由の一つとして、受け入れ部署との連携がうまくいかないことが挙げられます。

先ほどもお伝えしたように、新入社員を教育するのは部署にとって一定の負担がかかります。さらに仮配属の場合は、配属するかどうかもわからない社員を教育しなければならないわけですから、できれば受け入れたくないと考える部署も出てくるでしょう。

部署が協力的でないと、新入社員が十分な教育を受けられず、モチベーションの低下につながります。

――では、仮配属するにあたってどのような準備をしておけばよいでしょうか?

まずは各部署のマネージャークラスの上司に、仮配属の重要性を伝えてください。部署レベルでは仮配属のメリットがなくても、会社全体における重要性を伝えることで、実施する意味があると思ってもらえる可能性があります。マネージャークラスの上司だけではなく、部下たちにも何らかのかたちで仮配属の重要性を伝え、部署全体の意思統一をさせておくことが大切です。

また、仮配属の重要性とあわせて、どんな新入社員が来るのかについても伝えておいてください。名前も覚えてもらえないような状況下で働かされると、新入社員の心理的負担がかかるためです。

具体的には、新入社員のプロフィールスライドや仮配属の重要性を伝える資料をつくって配布する方法があります。また、ミーティングや説明会など対面で説明できる機会を設けるのも良い方法です。

仮配属は、適切な配属をするための判断材料になる可能性がある一方で、新入社員のモチベーションを下げるリスクもあります。仮配属を行う場合は、受け入れ体制をしっかりと整えることが大切です。



<取材先>
株式会社アールナイン
「~人が介在することで、【活き生き】と働ける世界を~」を目標に掲げ、人材に関するソリューションを提供する企業。採用、人材育成、社員の定着など企業が抱える様々な課題に、人事・採用・教育など各分野で豊富な経験を持つ当社の人材プロフェッショナル(約900名)が介在して課題を解決し、職場をよりよくするためのサポートを行う。企業のお悩みに合わせたサービス提供により、2009年の設立以来、約550社の企業と取引実績がある。(2022年11月現在)

TEXT: 佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + ノオト