高等専門学校(高専)は、実践的な技術者を養成する高等教育機関です。高専生は実習・実技を中心とした専門教育を受けるため、多くの企業から「即戦力の人材」として重視されています。
高専卒の採用は、高卒や大卒の採用とどう違うのでしょうか。高専生を採用するメリットや手順、注意すべきポイントについて、メディア総研株式会社の新潟真也さんにお聞きしました。
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求人を作成する高専生を採用するのは難しい? 高専の概要と求人倍率
――はじめに、高専とは何か、特徴について教えてください。
高専の正式名称は「高等専門学校」で、中学校の卒業生を受け入れ、技術系のカリキュラムを中心に教育する高等教育機関です。大学との違いは、「どれだけ手を動かせる人になれるか」に重きを置いているところ。授業は実習や演習が中心で、専門職として働けるように教育します。
一般的な知名度は低いかもしれませんが、専門的な教育を受けた優秀な人材を輩出しているため、産業界からは「即戦力になる学生が多い」と評価されています。主な学科は、機械、電気電子、情報、物質化学、建築土木の5分野です。
高専には、5年間学ぶ「本科」と、さらに追加で2年間学ぶ「専攻科」が設置されています。専攻科は、大学でいうところの大学院と捉えると分かりやすいでしょう。5年間の本科が終わった後の進路は、「就職」か「専攻科進学」か「一般の大学へ編入学」の3パターン。専攻科の後の進路は「就職」か「一般の大学院に進学」の2パターンです。本科生のうち約6割が就職し、残り4割が進学しています。
――高専生に対する求人倍率は、どれくらいなのでしょうか?
各校のホームページに掲載されているものを引用すると、たとえば舞鶴高専の本科生が35.5倍(2021年度)、久留米高専の本科生は36倍(2020年度)で、専攻科はさらに高い倍率となっています。就職希望者の就職率は、ほぼ100%です。
――かなり高い倍率ですね。高専生が人材市場で注目を集めている理由とは?
大きく2つに分かれます。長年にわたり高専生を採用している大手企業は、優秀さを理解しているため、毎年必ず採用したいというのが本音です。
一方、中小企業では、若い人材を集めることが難しくなってきている中で、高専に目を向けるケースが増えています。しかし、「高専生をターゲットにするのは、高卒や大卒より難しい」という事実を理解していない企業が多いようです。
――企業が高専生を採用するメリットは? 大卒とどう違うのでしょうか?
一番大きなポイントは、高専生のほうが入社後すぐに「手が動く」という点でしょう。とくに製造業は、工場の機械をメンテナンスしたり、より生産性が上がるよう構築したりする技術力を求めています。そこに高専生のスキルが合致するのです。
大学では理論を中心に学びますが、手を動かす時間は圧倒的に高専生の方が多いため、企業にとっては即戦力に繋がります。
また給料面では、本科の卒業生は20歳で採用となるため、大学の初任給と比べて月給を1~2万円ほど低くしている企業が多いようです。ただし今後は、高専卒も大卒と同じにするか、逆に高くしないと採用できなくなるかもしれません。
かなり短いスパンで終わる? 高専生の採用スケジュール
――高専生を採用する方法について教えてください。
「学校推薦」と「自由応募」の2つがあり、本科生は学校推薦が基本になっています。学校推薦とは、学校側が推薦状を書き、企業に学生を紹介する形式です。
一方、専攻科生の採用では、一般の大学生と同じような形式の自由応募が増えます。本科と専攻科を合わせると、学校推薦が8割、自由応募が2割くらいでしょう。
――学校推薦は、具体的にどう進めるのでしょうか? 自由応募との違いは?
学校推薦で応募する学生は、1社ずつしか受けられません。一般の就職活動のように、複数の会社へ同時にエントリーすることができないのです。逆に企業にとっては、学校からのお墨付きということで、選考の回数を重ねる必要がないというメリットがあります。実際、学校推薦では「面接は1回のみ」としている企業がほとんどです。また学生側には、「もし学校推薦で企業から内定をもらったら、辞退しない」というルールもあります。
自由応募は、一般の大学生と同じような採用フローになるため、選考回数が多くなります。また、学生は同時に複数の企業へ応募できるため、内定を出しても断られる可能性が出てきます。基本は学校推薦で進めるほうがよいでしょう。
――高専生の採用で注力すべきポイントは?
インターンシップは、今のところ採用に直接繋がるものではありませんが、自社のことを学生に知ってもらう良い機会です。学校側としても、学生にインターンシップを受けさせたい希望は強いようです。インターンシップを実施すれば、高い確率で学生からの応募が期待できます。
また、高専生専用の採用サイトを作っている企業は極めて少ないため、用意しておけば他社との差別化になります。入社後にどんな仕事をするのか、高専生へのメッセージを伝えることができれば、かなり有効となるでしょう。
――高専生の採用スケジュールは? 一般的な採用手順との違いを教えてください。
高専では、1月末~2月に学年末試験があります。ここで単位を取らないと進級できないため、学生はテスト勉強に集中しなければなりません。したがって、学生が就職活動をスタートするのは3月くらいから。4月には選考が終わり、5月のゴールデンウィーク明けに就職先が決まります。つまり、かなり短いスパンで就職活動が終わるのです。企業は、まず第1のピークをしっかりと押さえておかなければなりません。
ただし、就職希望者のうち半分ぐらいは4月の選考で落ちます。矛盾しているように思うかもしれませんが、最初の選考で全員合格にするわけではなく、人気が集中する企業は落とさざるを得ません。第2のピークは、最初の合否が決まった後、5月末から6月上旬ごろ。高専生を採用するには、そのタイミングも逃さずに行動する必要があります。
「高専生なら誰でもいい」はNG あえてハードルを高くする
――高専生の選考過程では、どのような点を重視すべきでしょうか?
高専の本科卒は、大卒に比べると2歳若いため、「受け答えがまだ幼い」「コミュニケーション能力がやや不足している」という声をよく聞きます。
ただ、高専生を採用したい企業にとっては、技術力があるかどうかが重要なポイントです。コミュニケーションスキルは、それほど重視しなくてもいいのではないでしょうか。適性検査や筆記試験も同様で、実施するとしても評価配分を低くしたほうがいいと思います。
――面接では、どのような質問をすればいいのでしょうか?
高専卒の働き方は主に技術専門職となるため、総合職に異動できる企業は少ないでしょう。そうなると、「一番上のポジションは工場長」などキャリアの先が見えてしまい、人によってはワクワク感を感じられないかもしれません。面接では、技術職のキャリアについて学生に説明し、意思を確認しておきましょう。
――企業側からキャリアパスを提示しておかないと、入社後にミスマッチが起きるかもしれない、と。他に実施すべき施策はありますか?
社員に高専生のOBやOGがいるかどうかは、学生が気にするポイントの1つです。もし1人でも高専卒の社員がいれば、最大限に活用してアピールしてください。
また、新卒にこだわらず中途で高専出身者を採用するのも一つの手です。高専の学生は母校に愛着があるため、卒業した後も学校を訪れ、先生にキャリアの相談をする人が少なくありません。もし学校訪問で先生に会えれば、「新卒の学生だけでなく、卒業生で転職希望の人がいれば紹介してください」と伝えるといいでしょう。
――最後に改めて、高専生の採用を検討している企業の人事・採用担当者に向けてアドバイスがあればお願いします。
「高専生を採用したい」と考えているのに、高専について知らない担当者が多いと感じます。したがって、まずは知ること、実際に学校へ足を運ぶことが第一歩です。ただ、先生方は忙しく、コロナ禍の影響で訪問自体を断られるケースもあるかもしれません。その際は、弊社のような高専に特化したサービスを提供している会社に頼る手もあります。
高専では、先生も学生たちも「優秀な技術力がある」という自負を持っています。したがって、企業側から「入社後は高いレベルの業務を任せたい」と伝えれば、強く響くでしょう。昨今は人材不足のため、採用のハードルを低くして「誰でもいいですよ」とアピールする企業が多いようですが、それは逆効果です。むしろ「難しい業務を担当してもらうけど、頑張れば大卒よりも評価する」と明確に言える企業は注目されます。高専生の採用は、ハードルをあえて高くした方がよい場合もあります。
最後に、給料面も大きなポイントです。大卒と同じ業務を任せるにも関わらず、給料を低くしている企業が少なくありません。大企業も中小企業も、優秀な高専生を採用したいのであれば、給与面での配慮も必要ではないかと思います。
<取材先>
メディア総研株式会社 取締役
新潟真也さん
TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト
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