子守りをしながらオンライン会議をする人

初めての産休・育休が近づき、Caroline Ferraroneは母親になるのを楽しみにしていました。その一方で、職場復帰したときに、今と同じチームの同じ職種で仕事を続けていけるのか、今後キャリアアップしていけるのかなど、失われてしまうかもしれない仕事の機会について悩んでいました。

「育児と仕事の両立については知らないことが多く、最初に産休・育休を取得した際は本当に不安でした。男性が多数を占めるチームでも、私が自分の役割を十分に果たしていると証明するために、常に全力を出さないといけないと感じていました」と、Indeed でSenior Manager of U.S. Marketingを務めるFerraroneは言います。

Ferraroneは出産予定日の8日後、陣痛が来た日まで働きました。産休・育休中は、重要な意思決定において自分の意見を反映できず、除外されたような気持ちになりました。仕事に復帰してわずか数週間後、将来的な機会を逃すリスクを恐れた彼女は、無理して数回の出張に行くことを引き受けました。

「自らに重いプレッシャーを課した状態でした。マネジャーや他のリーダーは、私が出張することをまったく期待していなかったのです。しかし、会社に大きな貢献ができる人材であることを、自分で証明しなければならないと感じていました」と、彼女は話します。

Indeed のDirector of SMB Product Marketingであり、Parents and Caregivers IRG(インクルージョン・リソース・グループ)の共同設立者でもあるSherrie Nguyenは、以前の職場での産休明けは、全員に迷惑がかかっている状況のように感じたと語ります。

「人生で最も困難な時期だったことを覚えています。母親としても、従業員としても、妻としても失格だと感じていました」と言います。Nguyenは母親としての義務を果たすために、勤務時間中に何度も搾乳し、何度も病欠で休まざるを得ませんでした。 

「当時は、自分への期待値が高すぎた上、社内規程も制度もその期待に応える役には立ちませんでした。世界保健機構(WHO)が推奨する母乳育児をすべき期間と、出産する母親が取得すべき休暇日数に関する社内規程が一致していないことに気付かず、自分の失敗だと考えていました。そのことに気付いたのが、Indeed でParents and Caregivers IRGを設立したきっかけです」。

この知見を得てから、「私自身の失敗ではなく、うまくいかないようになっていたのだということが分かってきました」と、Nguyenは説明します。

子を抱える母親

産前・産後休業や育児休業でよくある課題を解消するには

上記のストーリーは、産前・産後休業や育児休業を取得する女性が直面する現実の、ほんの一部でしかありません。 

全力で仕事に取り組み、プライベートは業務に持ち込まないような従業員が理想とされる社会は、母親になりたての女性には不利だと言えるでしょう。産後は女性にとって最も困難な時期であることに加え、米国においても、女性が家事や育児のほとんどを担っているのが現状です。米国のある調査によると、働く父親の42%に比べ、働く母親の68%が、心身の極度の疲労によるバーンアウトの経験があることが分かっています。 

それでは、母親である従業員の活躍を支援するために、組織はどのように職場のエクスペリエンスを向上すべきなのでしょうか?次に、産休前後や育休中に働く母親が仕事をしやすいようにする、7つの改善点をご紹介します。

1. 働く母親をメンターやコミュニティとつなぐ

従業員とマネジャーが必ず自社独自の休暇制度や休業制度を認識し、産休・育休と職場復帰のベストプラクティスについてアドバイスを受けられるようにしましょう。母親になりたての従業員が、自身も母親である組織内のシニアリーダーからアドバイスを受けられるメンターシッププログラムを作ることもお勧めします。 

子育て中の従業員を対象としたIRGを結成することも、支援の機会を提供するだけでなく、つながりやビロンギングの意識を育むのに役立つ場合があります。例えば、Indeed のParents and Caregivers IRGは、出産、養子縁組、里親としての子どもの受け入れから最大26週間の連続有給休暇が取得できる、ペアレンタルケアギバーリーブ(養育者休暇)という規程を訴えてきましたが、最近、Chief People OfficerのPriscilla Korantengによって導入されました。

2. 個々の従業員に合わせたアクションプランを事前に設定する

妊娠から出産までが予定通りに進むとは限らないため、できる限り早く、スムーズな移行について話し合っておきましょう。例えば、産休・育休中に緊急連絡が必要な場合どういった連絡方法が適切かなどについて、母親となる従業員から意見を聞くことが大切です。育児とキャリアのバランスに関しては、誰もが異なる考え方を持っているため、それぞれに必要なサポートも異なります。どのような選択でも、従業員に決定権があることを伝えましょう。 

3. 状況の変化に備える

出産や産後期間の体験は、特に初産の場合はそれぞれの女性で異なり、想定外の事が起きることもあります。変化する状況に対応できるように柔軟なプランを維持し、女性従業員のニーズに合わせて、休暇中の適切なエクスペリエンスを決めてもらうことが大切です。

4. インクルーシブなプロセスを構築する

産休・育休中の女性は、昇進の候補から除外されたり、面接の機会を自ら辞退するなど、キャリアアップの機会を逃す可能性があります。米国で McKinseyとLeanIn.Orgが実施した調査によると、女性は、女性であることや子育て中であることが「昇給や昇進、出世のチャンスで自分が認められない、または除外される一因となった」と回答する割合が男性よりも高いことが分かっています。さらに米国全体で、最初の子どもが生まれた後には、男性よりも女性の方が賃金が下がっています

例えば、産休・育休中の従業員に配慮して上級職への昇進に関する面談などを延期するなど、育児休暇中の女性従業員が含まれることを前提とした昇進と評価の制度を策定することをお勧めします。これにより、キャリアアップの機会を幅広く提供し、男女賃金格差を縮小するのに役立つと言えるでしょう。

5. 職場復帰をサポートする

職場復帰は、働く母親や子育て中の従業員が最もサポートを必要とする段階ですが、残念ながら組織の多くがうまく対応していないようです。この段階では、母乳育児を行っている従業員のために、十分な搾乳スペースや設備を用意するほか、女性が短期間で復職するために必要な柔軟性やアドバイスを提供するのがポイントです。 

働く母親が再び仕事に慣れ、仕事と家庭を両立できるように、1か月の移行期間を導入し、柔軟な勤務形態を維持しましょう。例えば、最初の週は通常勤務時間の25%働き、第2週は50%、第3週は75%、第4週で100%に戻すのも良いかもしれません。また、新入社員向け研修と同様に、しっかりした職場復帰研修プログラムを実施し、女性従業員が自社の規程や制度、また自分の業務範囲について再確認できるようにすること、復帰の際に調整がしやすくなる場合があります。

6. 第三者のリソースにつなげる

働く親のために、産休・育休前後のリソースを提供する組織と提携しましょう。例えば、現在 Indeed では、家族形成に関わるさまざまな医療サポートを提供するMavenや、養育者が仕事と生活のニーズをうまく管理するのに役立つプラットフォームであるMother Honestlyを従業員が利用できるようにしています。また、Parentalyという企業は、すべてのジェンダーの従業員が休暇取得プロセスをより簡単かつ分かりやすくするため、育児休暇プランニングのほか、職場復帰のためのリソースや研修を提供しています。

7. 人としての思いやりを持って話し合う

それぞれの女性にとって親になる体験は、人種や民族、社会経済的な地位など、さまざまな要因によって大きく異なる場合があります。育児休暇から復帰する各従業員の生活状況にマネジャーが真摯に関心を寄せ、積極的に従業員が抱える問題やニーズに積極的に向き合い、率直に対話を始めることは、インクルージョンとビロンギングのサポートに大きな役割を果たすでしょう。 

「子どもが病気になったとき、柔軟に保育サービスを受けられる人は限られています」とFerraroneは話します。「子育てがどういういうものか十分に認知されているとは思いませんし、いつどのように働くかに関してできることは、各自の状況に大きく左右されます」。 

判断が難しい時には、「調子はどうですか?」、「必要なものは何ですか?」、「何か手伝えることはありますか?」という3つのシンプルな質問をすることをNguyenは推奨しています。

「あなたが同僚か上司かを問わず、働く母親に何が必要かを尋ねることが大切です。状況が似ていても、ニーズやアプローチは異なるはずです。産休・育休後に復帰する従業員は出張や新たな仕事の割り当ては望まないだろうし、大きな責任は引き受けたくないだろうなどと勝手に判断せず、従業員に尋ねてみてください」と、彼女は言います。