企業ブランドとして高い認知度を誇るソニーグループ。しかし、厳しい採用環境のなかで採用に応募してくれる母集団を最大化するために「名前は知っているけど、働く場所としてはイメージできない」という潜在層にもリーチを広げたいという課題がありました。
同社は採用オウンドメディア「Discover Sony」の立ち上げと、そこからの情報発信による企業イメージの醸成や、性格検査の情報開示などの取り組みによって採用の強化を進めています。目指すは、採用活動を応募者の「感動体験」に変え、求職者との「縁」をつなぎ続けること。そこには、どのような採用戦略があるのでしょうか。採用グループ 統括部長の種子島由子さんと「Discover Sony」担当の森下航さんに聞きました。

■この記事のTips 
・採用の機会は、求職者ひとりにつき、一度きりというわけではない。
・求職者との「縁」をつなぐために、採用活動を通じて「感動」を与える。
・企業側の手間はかかっても、手をかけコツコツと地道に取り組むことが重要。

知名度はあるソニーグループ。しかし「働く場所」としてイメージしてもらえないという課題。

――ソニーグループは、知名度もあると思いますが、採用について何か課題はあるのでしょうか。

森下 企業やブランドとしての知名度は一定程度あるおかげで、応募数はある程度見込めています。ただ、例えばAIやクラウド、半導体などの領域で専門性を持つ人材、あるいは理系の女性といった特定の人材の応募数を増やす点では課題があります。

また以前より、ソニーグループを「働く場所」としてイメージできないといった声を伺うことがあり、社風や働き方に関する認知度が低い点も課題でした。入社した方からも同様の意見があり、入社前は「年功序列」「自由度が低い」というイメージを持つ方も少なくなかったのです。

森下航さん

――それらの課題も踏まえ、採用活動では具体的にどのような施策を行っているのでしょうか?

種子島 採用活動においては、従来からエージェントやダイレクトソーシング、リファラルなどのさまざまな採用チャネルの活用に加え、採用する部門とも協同して採用イベント開催等に取り組んできました。

また、多様な事業を持つ強みを活かして、グループ内で最適な配属先を検討・紹介していくようにしています。例えば、グループ企業の中で都市部から離れた場所に本社がある場合などは、企業単体としては応募者を集めることが難しいこともあります。そのため、まずソニーグループ全体で人材を採用し、働く場所だけではない、その企業固有の魅力や要素に惹かれた人材を配置するなどしています。

働く場所としてイメージを持ってもらうための手段の一つとして、2021年に立ち上げた採用オウンドメディア「Discover Sony」を活用した情報発信にも注力しています。

「働く場所」としてイメージを持ってもらうには、採用オウンドメディアでの情報発信が有効

――「Discover Sony」を通した情報発信で、工夫していることはありますか?

森下 第三者目線です。編集部には学生インターンも参加しており、企画を定期的に出していただいています。社外の意見を積極的に取り入れつつ、ソニーグループとして出したい情報とのバランスを取ることを意識しています。事業内容の説明よりも、職場の実態や実際の働き方、社員の想いや熱意にフォーカスすることを重視しています。

――そういったポイントは、他の企業にとっても参考になりそうですね。一方で、オウンドメディアで優秀な人材ばかりが取り上げられると、「自分はそのレベルに達していない」と思い応募をやめる人も出てきそうです。

森下 おっしゃるとおりです。若手社員の失敗談なども取り上げて、ソニーグループで働く人たちのキャラクターや人柄が伝わるように工夫しています。

種子島 大切なのは組織の多様性が伝わること。多様な知見、異なる視点を持った社員一人ひとりが互いに刺激し合うことで、仕事を通じてダイナミックな成長を実感できることもソニーグループならでは、です。「Discover Sony」に関わるメンバーも、年代は20〜50代と幅広く、ジェンダーや国籍もさまざまです。メンバーの多様性を企画に反映できるよう心がけています。

――「Discover Sony」には、退職された元社員のインタビューも掲載されていて驚きました。

森下 「なぜ入ったの?」「なぜ辞めたの?」「今は何をやっているの?」「戻ってみたいと思う?」という直球の質問を寄せた人気コンテンツになっています。ソニーグループから外に出たからこそ、第三者視点でソニーグループの良いところ・悪いところを赤裸々に語ってもらっています。

(左)森下航さん、(右)種子島由子さん

種子島 ソニーに限らないとは思いますが、仕事やキャリアはいつも順風満帆だとは限りません。苦労や失敗をして学んだこと、新たなチャレンジからの成長もある。そういう話は人間味があって面白いものです。ソニーは元社員とのつながりも強いですし、自由なカルチャーがあるために出戻り社員も多いです。

――「出戻りにも寛容」というのは興味深いですね。

森下 自由闊達なカルチャーから来ているものです。

種子島 ソニーは創業当時から一貫して、社員と会社が「お互いに選び合い、応え合う関係」であろうとしています。ファウンダーの一人の盛田さんが入社式で「入社をお祝いすると同時に、違う場所だと感じたら新しい場所を探しなさい」とおっしゃったのは有名です。社員はソニーという会社が自分にとって成長し、挑戦する場としてふさわしい場かを問い続け、会社はそれに対して応えられているかを常に確認していくという関係が、ソニーらしい企業文化でもあります。だからこそ、キャリア支援においても社員の自主性を重んじ、「自分のキャリアは自分で築く」という考え方がベースにあります。

――他に採用において工夫されていることをお聞かせください。

森下 冒頭でも述べましたが、特にAIやIT人材の獲得競争はますます厳しくなっています。その環境も踏まえ、処遇の1つとして、譲渡制限付き株式ユニット(RSU)という株式報酬制度も導入しました。

ソニーグループポータル | 譲渡制限付株式ユニット(RSU)導入の舞台裏 グローバル企業における人事制度設計のおもしろさとは!? (sony.com)

種子島 採用グループだけでなく、報酬、制度設計、キャリア形成等・人事に関わる部署全体での連携を重視しています。採用市場において競争力のある報酬水準を実現していくことはもちろん、入社後の育成など、人事全体の視点で考えていくことが大切です。

キャンディデイトエクスペリエンス(候補者体験)を向上させ、求職者との「縁」を育む採用活動

(左)森下航さん、(右)種子島由子さん

――ソニーグループで重視している「採用のゴール」はありますか?

種子島 ソニーグループのPurpose(存在意義)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。採用活動においても、「採用を感動で満たす」をミッションとしています。

――「採用」と「感動」を結びつけるために、どのような施策を行っていますか?

森下 基本方針は「キャンディデイトエクスペリエンス(以下、CX)」の向上です。例えば、今年度からエントリー時に実施する適性検査の結果を応募者全員にフィードバックしています。私自身も就活時にたくさんの企業の選考を受けましたが、結果を教えてもらったことは一度もなかったです。

面接を受けるという行為自体はチャレンジングなものであると同時に、成長の場でもあるのかなと思っています。自分自身がどう見られているのか知ることができるため、どのような結果であったかを教えてもらえるほうが、選考過程に満足感が生まれるのではという背景で、この施策を始めました。

種子島 面接においてもソニーグループが選ぶのではなく、「お互い対等な立場で選び・選ばれる」というスタンスを大切にしています。仮にその時点ではご縁がなくても、面接自体が良い体験になれば、その方の成長につながるかもしれまんし、「将来また経験者採用で挑戦したい」と思ってもらえるかもしれません。

また、ソニーグループの面接は、必ず個別面接です。採用活動では、必ず人が介在します。人がいる限り、そこには感情が動いていて、感情がどう動くのかを念頭におきながら、プロセスを設計することを大事にしていますね。

――丁寧なフィードバックや個別面接は、応募者からの企業の印象を大きく左右しそうですね。

森下 そうですね。ここを地道にコツコツやっていくことが、先々の採用にもつながっていくように思います。

――CXの向上が、新たな採用にも影響してくるということでしょうか?

種子島 はい、そう考えています。たとえばソニーグループでは、これまでの採用活動で接点のあった方々に登録していただき、採用情報を直接届ける「キャリア登録:キャンディデイト・プラットフォーム(以下CP)」を構築し、運用を始めました。先日、このCPから採用につながったケースが出ました。

その方は、以前応募していただいた際は求める要件に満たず、ご縁がありませんでした。しかし、その後別の会社でご経験を積まれ、求める要件に合致していましたので、採用につながりました。つまり、採用機会はひとり一度ではないということです。だからこそCXの向上が重要であると考えています。

(左)森下航さん、(右)種子島由子さん

――採用活動の中に「感動」という軸があること。そして、それによって求職者との縁を育み続けることが、ソニーグループの採用における強みであることがとてもよく分かりました。


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<取材先>
ソニーグループ株式会社 採用グループ 統括部長
種子島由子さん
総合電機、自動車、リテールや製薬会社など、さまざまな業界で人事を担当し、2022年にソニーグループ株式会社に入社。ソニーグループの採用活動を統括している。

ソニーグループ株式会社 採用グループ森下航さん
2021年にソニーグループ株式会社に新卒入社。採用オウンドメディアの運営などを中心に主に採用広報業務に従事。「Discover Sony」は発足から担当している。