
Indeed のChief EconomistであるSvenja Gudellが、Indeed Hiring Labの新しいデータと分析情報を共有し、労働市場の今後の動向や、生成AIが仕事に与える影響、私たちが仕事の未来を形作る方法を明らかにします。
キーポイント
- 労働者の需要の増加と供給の減少により、わずか数年で人材不足が起きる可能性があります。
- Indeed のデータによると、企業はスキルファースト(職歴や学歴よりもスキルや能力を重視する)採用を受け入れ、希少な人材を獲得するために福利厚生を優先していることがわかります。
- Hiring Labの調査によると、生成AIは多くのタスクを支援する一方で、職業で必要となるスキルについては、完全に人間に置き換わることはまだできません。
結局のところ、生成AIは人間の仕事を奪うことはありません。人間の力なしでは、たった一つのタスクさえ管理できないのです。米国テキサス州ダラスで開催されたIndeed FutureWorks 2024で、Svenja Gudellは人事担当者である参加者に対し、「生成AIが人間に置き換わる可能性が非常に高いスキルはなく、まさにゼロです」と話しました。
Indeed の経済研究部門、Hiring LabのChief Economistとして、Gudell自身はチームとともに労働市場について、また直近では生成AIによって仕事が消える可能性について、深層分析を行っています。新しいHiring Labの分析情報に関するプレゼンテーションで、Gudellは企業がデータを数値として見る以上に、人として見ることで、採用戦略で差別化を図れると強調しました。
「働く母親が、もっと柔軟な勤務形態を提供する仕事を見つけたい場合。最近大学を卒業して、奨学金の完済を支援してくれる仕事を見つけたい場合。企業が自社の従業員にAIが与える影響を理解したい場合。こうした人々とそのストーリーが、私たちのデータと調査の根幹をなしています」とGudellは説明します。
Gudellが共有した主な分析情報は以下のとおりです。
労働の需要と供給の変化により、人手不足が間近に迫る
労働者はみんな、どこに行ってしまったのでしょうか。コロナ禍前と比べ、労働の需要は依然として高い傾向にあると言えますが、求められる労働力がどこから来るのかははっきりしない、とGudellは説明します。
- 現在、Indeed の求人掲載数は、2020年2月より13%増えています。
- 先進諸国のほとんどでは、25歳~54歳の合計人口の割合は減少することが予想されています。
- 米国の労働市場は十分に堅調で、労働者を労働人口に継続して参入させることができますが、過去と比べて迅速に仕事が獲得できるほど好調ではありません。
これは何を意味しているのでしょうか。高年齢により定年退職する労働者の数が、彼らを代替する新たな労働者の数よりも多いため、世界的に全年齢で労働参加率が低下しています。準備を整えておかないと、2026年の初めまでには人材不足の影響を受けることになります。
人材を求めて競争する採用企業が今、できること
スキルファースト採用のアプローチを取り入れ、より多様性を持ち、従来とは異なる経歴を持つ候補者を含むように、人材プールを拡大しましょう。
- 2022年以降、Indeed 上の大学卒の学歴要件を記載した求人は、20%から17%へと減少しました。
- 一定の職歴年数を求める求人掲載の割合も、40%から30%に減少しました。
給与の透明性に投資し、最初から求職者の条件と一致させることで、給与の交渉にかかる貴重な時間を節約しましょう。
- Hiring Labの調査によると、求職者が転職する最大の理由は報酬であることが分かっています。
- 米国内の求人掲載のうち、給与情報が含まれるのは57.2%で、5年前と比べて20%増えました。
- 賃金上昇率は鈍化しており、2021年の約9%をピークに、現在は3.3%に落ち着いていますが、それでもコロナ禍前よりもやや高い割合です。
- Hiring Labの調査によると、求職者は現金の報奨に強く反応することが分かっています。予算の制限により賃金を上げられない場合、契約金の支給を検討しましょう。2024年8月の時点で Indeed では、コロナ禍前のレベルである3.7%と比べ、契約金について記載する求人が引き続き増加しています。
柔軟な働き方の選択肢を提供して、より多様な分野からの候補者を多く惹きつけ、ワークライフバランスを維持できるよう支援しましょう。
- 在宅勤務やハイブリッド勤務の求人は、コロナ禍以降、3倍に増えています。
- Indeed での在宅勤務やハイブリッド勤務の仕事の検索数は増加しており、減少する傾向はありません。
福利厚生を手厚くすべき理由は、候補者が、自社の求人投稿をクリックするか、競合他社を選ぶかの決定的な要因になる可能性があるためです。
- 求人掲載の59%は、採用企業が提供する福利厚生を少なくとも1つ記載しており、2020年初めの40%未満と比べて増加しています。
- 新しい福利厚生を追加できない場合は、すでに提供している福利厚生を明確に記載することが大切です。Indeed のデータによると、特に低賃金の仕事では、より多くの福利厚生を記載している求人掲載に興味を持つ求職者が増えていることが分かっています。
最も一般的で、競争力を高める福利厚生の詳細については、求人掲載の福利厚生に関するHiring Labの調査シリーズをご覧ください。
AIにできることは多くても、人間の仕事はできない
AIと人間の違いは何でしょうか。Hiring Labの新しい調査では、Indeed に掲載された数百万件の求人から2,800以上のスキルを特定し、生成AIがそれらのスキルを行使する能力を評価しました。チームが実施した「非常に低い可能性」から「非常に高い可能性」までの5段階評価で明らかになったことは、以下のとおりです。
- Indeed が特定して評価した、数千のユニークな職業スキルの中で、「非常に高い可能性」で生成AIが取って代わるものはありませんでした。
- Hiring Labが評価したスキルの3%未満のみ、テクノロジーが取って代わる「可能性がある」という結果になりました。これらは、経理や会計、広告などの分野での技術的なスキルが多い一方で、調理スタッフや運転手などの対面での職種は、影響を受けにくいとなっています。
- 生成AI関連の仕事は、2022年後半にツールが登場して以来、急増しています。しかし、依然として米国の求人1,000件に対し、1件の割合でしかありません。

これは何を意味しているのでしょうか。AIがあなたの仕事を脅かすことはありません。生成AIの急速な進歩や、大規模な労働者の置き換えに対する恐れがあるにもかかわらず、テクノロジーが簡単に、職場での人間のスキルに取って代わる日はすぐには来ないでしょう。調査によると、生成AIが職業に与える影響は、その職務で必要なスキルをテクノロジーがどれほどうまく行使できるかによります。
実際に手を使って実行することが求められるスキルの割合が高い職種では、生成AIは反復的な作業を支援することができます。より典型的な「オフィスワーク」では、生成AIは多くの技術的なスキルや、ある程度の問題解決能力に優れている場合があります。しかし、今日の生成AIが人間による監視なしに、職業スキルを完全に習熟する可能性は低いでしょう。
人材獲得でのAIの活用はどうでしょうか。AIはスキルファースト採用戦略をサポートできるものの、やはり限界があります。AIは、候補者の評価や面接で必要となる人間の判断や、やり取りに取って代わることは不可能です。全体として、Gudellは、テクノロジーは、典型的な人事職の業務のうち12%のタスクにおいて人間を置き換える「可能性がある」に過ぎず、「非常に可能性が高い」とすら言えないと強調しました。
置き換わる「可能性がある」タスクには、履歴書を要約する、求人内容を作成する、面接の質問を生成する、などが含まれます。ただ、Gudellは、より少ない労力でより多くのことを達成するために、このテクノロジーを統合することで、すべての業界のチームが差し迫る人材不足を克服するのに役立つと説明します。
「現時点では、生成AIが人間の仕事を奪うことはありませんが、生成AIの使い方を知っている人に、仕事を奪われる可能性は大いにあります」とGudellは言います。「ツールとしてのAIを受け入れることが、変わりゆく労働市場で競争力を保つための鍵となります」