求職者は採用企業と突然音信不通になり、採用担当者は履歴書の山に埋もれる。採用活動における課題は、双方にとって解決できないもののように感じられています。

キーポイント

  • 求職者の45%が、仕事探しのプロセスはより難しくなっていると回答しています。
  • 一方、採用企業はミスマッチのせいで、半数近くが候補者を見つけるのに苦労していると回答しています。
  • スキルファースト(職歴や学歴よりもスキルや能力を重視する)採用が役立つ可能性があります。 

Ben Classen氏は、昨年のほとんどの期間を就職活動に費やしてきました。マーケターであり、ブランドリーダーでもある彼の履歴書には、業界の賞や有名なブランド名が並んでいます。しかし、何百万人もの求職者と同様に、彼は採用市場の荒波に翻弄されています。不十分なコミュニケーション、複雑なプロセス、不明確な期待値は、特に彼を苛立たせました。ある時Classen氏は、5か月間音沙汰のなかった採用担当者からメッセージを受け取りました。

彼はこのように回答しました。「この決断ができること自体、多くの人にとっては贅沢なことだと分かっていますが、このような扱いを受けた以上、お断りいたします。貴社で働くつもりはありません」 

採用マネジャーと採用企業は、候補者とつながるのに苦労していると話します。調査対象の採用企業の58%が、採用活動がより困難になったと感じると答えています。(「大きな分断(Great Disconnect)」シリーズの今回のデータは、Indeed が最近発表したSmarter Hiringレポート(英語)より引用。)

「採用企業は、自社の条件に合う候補者が見つからない時にストレスを感じます」こう話すのは、Indeed の無料キャリア開発プログラムであるJob Search Academy(米国のみ)(英語)を率いるMatt Berndtです。「しかし、採用企業が使用している応募条件は、候補者の審査や採用、面接に本来使うべきものではありません」

要するに、求職者も採用企業も、求めているものを見つけられないことがあまりにも多いのです。企業と候補者がこの分断をどのように経験しているかをご紹介します。

これは「大きな分断(Great Disconnect)」シリーズの第3回の記事です。このシリーズでは、求職者が求めるものと実際の採用企業の対応との間で拡大するギャップについて取り上げています。詳細については、以下を参照してください。 

求職者と採用企業の間にあるギャップを埋めるには?
求職者の要望と採用企業の労働条件との間にある大きな分断

求職者は壁にぶつかっている

履歴書をアップロードし、送信ボタンを押しても、その後は音沙汰がありません。多くの求職者は、応募を送るのが無駄である、または採用プロセスが明確な道筋のない迷路のようだと感じています。Smarter Hiringレポートでは、求職者の45%が採用プロセスがより困難になったと回答しています。

「今までに経験したことのないことが起こっています」と、美容・ライフスタイルブランドでの15年の経験を持つSNSディレクターのAndrea Lee氏は言います。彼女はこの3か月間、フルタイムの仕事に就くため応募と面接を繰り返してきましたが、ホワイトカラーの採用市場が崩壊しているように感じると話します。

「対応に間違いはありません」とLee氏は言います。「適切な学位と経験、ポートフォリオを持っています。しかし、かつて重要だったそれらのことが、今では全く意味をなさなくなっています」

ヘルスケア、金融、テクノロジーの分野で働いてきたTAリーダーであるMelissa Grabiner氏は、採用市場が「ホワイトカラー不況(white-collar recession)」の渦中にあると述べています。

「私は20年間、採用活動に携わってきました」とGrabiner氏は言います。「企業の採用市場が、これほど困難で競争の激しい状況にあるのは見たことがありません」 

一部の求職者は、採用プロセスに長い時間がかかること、募集の一時停止やキャンセル、過剰な選考、そして幾度も面接を繰り返した後にリクルーターと音信不通になることが、常態化してきていると語っています。候補者たちは、連絡を待つ間、精神的に疲弊し、経済的な負荷を抱えたまま、先が見えない状態で過ごしています。透明性の欠如が、不確実な状況に拍車をかけています。求職者の31%が、給与情報が不明確であったり記載されていないと、応募が時間の無駄に感じると報告しています。

「魅力的な給与です、と言われても、私にとっては意味がありません」とLee氏は言います。「給与を見た瞬間、私はすぐにスクロールして飛ばします」

結局、候補者は給与よりも圧倒的に能力開発の機会を重視しています。ある求職者は「スキルは永久に残るが、お金は残らない」と言います。求職者の4分の3は、求人に応募するかどうかを決める際に成長の機会を優先していますが、41%はそのような機会について面接の段階まで知らされないと答えています。

こうした不満は、採用企業が改善すべきことを示すサインです。

「企業文化は上層部から始まります。経営幹部レベルでは、多くの企業が自社のCandidate Experience(候補者体験)を十分に把握していません」Grabiner氏はこう話し、人事担当者に、自社の募集中の求人に応募し、そのプロセスを直接体験してみることを勧めています。「企業は、常に候補者体験の理解に努めるべきです」

採用企業は条件に合わない応募に溺れている

求職者が壁にぶつかっているように感じる一方で、採用企業とリクルーターは、条件に合わない応募の海に溺れているように感じることがよくあります。 

最も多く寄せられる不満の一つは、応募書類の質の低さです。マネジャーのほぼ半数(42%)が、候補者を見つけるのに苦労していると回答しています。募集対象を広げても、結局は希望に合わない人材ばかりを引き寄せてしまうのです。

Indeed のクライアントサクセス担当VPであるJenna LaBellaは、一部の採用企業では、問題の出どころが社内にある可能性があると考えています。

「多くの場合、アプローチが迅速な企業は優秀な人材を獲得します」とLaBellaは言います。「しかし、企業は採用プロセスを過度に手間のかかるものにしてしまうことがよくあります。関わる人が多すぎ、ステップも多すぎるのです。これが採用の遅れや、バイアスの原因となっています」

採用プロセスは、仕事内容の記載から始まります。仕事内容があまりに広範で曖昧であると、プロセスが始まる前からミスマッチが生じます。

「仕事内容は、より具体的に記載し、曖昧さを減らして、実際の日常業務を正確に説明しましょう」と、Indeed のマーケティング担当VPであるPatrick Harrisonは言います。「仕事内容は、意図せずして詳細になりすぎることがあります。そうなると、職務にとって本当に重要なスキルを見極めるための時間が取れないため、採用が難しくなってしまうのです」

Harrisonによると、求職者は、自分たちが採用を逃す主な理由は、求人数が少ないなかで、条件を満たす大量の応募者と競い合っているからだ、と考えていると述べます。そのため、求人に応募する際は、応募先を厳選するよりも効率を優先する求職者が多いのです。その結果、採用企業のもとには職務に適していない候補者からの応募が殺到し、採用判断の際に迷いが生じることになります。 

LaBellaは、採用企業が採用対象に求めるスキルを完全に理解することができれば、このようなミスマッチはなくなると言います。

「私がまずお勧めしたいのは、応募条件を明確にすることです。採用企業は、職務に必要なものと必要でないものについて、自分たちの思い込みに疑問を投げかける必要があるでしょう」と、LaBellaは話します。(この取り組みに役立つ可能性のあるスキルファースト採用は、このシリーズの第4回で取り上げます。)

ギャップを埋めることがすべての人に利益をもたらす

現在の求職者と採用企業の間に生じている摩擦は、エンパシー(共感力)と明確なコミュニケーションが不可欠であることを浮き彫りにしています。求職者は不満を抱えて不確実な状況をさまよう一方、採用企業は条件に合わない応募の殺到に悩まされています。このギャップを埋めるには、採用に対するアプローチを見直す必要があります。 

「採用プロセスには、もっとエンパシーと説明責任を取り入れる必要があります。そうでなければ、優秀な人材を見つけることはできません」と、求職中のブランドマーケターであるClassen氏は言います。「すべての履歴書の背後には、一人の人間がいるのです」

このプロセスにおいて、私たちがお互いに人間であることを認識することは不可欠です。この事実を思い出すことで、採用企業と候補者の双方にとって、真のつながりが生まれ、より希望に沿った選択肢への扉が開かれます。これにより、有意義で人間味のある採用体験が実現します。