社員への食事補助と聞くと、社員食堂を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし最近では、野菜が買える自販機や食事チケット制度など、バリエーションが増えているようです。
食事補助を導入することで、企業および従業員はどのような効果を得られるのでしょうか。食事補助の選択肢や福利厚生費用として計上するための注意点、導入時に検討すべきポイントについて、福利厚生代行サービス事業を手掛けている株式会社リロクラブの柏木二郎さんに聞きました。
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求人を作成する公平性が重要 福利厚生として食事補助をするメリット・デメリット
――福利厚生として食事補助を導入している企業は、どれくらいあるのでしょうか?
民間の調査によると、2~3割程度の企業が食事補助を取り入れています。我々がサポートしている企業の業種は、工場を持っている製造業や郊外に拠点がある物流会社が多いですね。
地方の工場だと、近隣に飲食店やコンビニが無いケースが少なくありません。その場合、従業員の定着や採用効果を高めたいのであれば、食事補助の導入は必須に近い施策となります。
――食事補助は、企業および従業員にとってどのようなメリットがありますか?
企業側のメリットとしては、従業員の栄養管理をしつつ食事をサポートできる点が大きいでしょう。そのほか、ブランディングや他社との差別化、従業員の満足度向上、一定条件内であれば福利厚生費として計上できる、といった点が挙げられます。
従業員側のメリットとしては、食事代の節約や健康管理、集まって食事をすることによるコミュニケーション活性化などがあります。ただし、公平性に注意してください。
――公平性というのは?
たとえば同じ会社でも「地方の工場には食堂があるけど、東京本社のオフィスにはない」など、拠点によって格差が生まれてしまう可能性があります。また、営業職の場合「終日外出しているので、会社では食べられない」というケースもあるでしょう。社員食堂や弁当の支給があっても、利用できない従業員がいると不公平感が出てしまいます。食事補助を導入する際は、なるべく公平・平等になるよう注意しなければなりません。
――なるほど。では食事補助のデメリットは?
社員食堂でいえば、設置費用や場所の問題、従業員がメニューに飽きてしまうといった点が挙げられます。配達弁当の場合は、マンネリ化と発注業務に手間がかかる点がデメリットです。食事チケット制や現金支給では、従業員が何を食べたか正確には把握できません。
このように、食事補助は制度によって一長一短があります。もし提供する方式を間違えると、本来の目的とズレてしまうかもしれません。
食事補助のバリエーションと選び方
――食事補助には、どういう種類があるのでしょうか?
企業で導入されている主な制度は下記のとおりです。
- 社員食堂
- 弁当の配達
- 現金支給
- 置き食(惣菜、野菜など)
- オフィス内コンビニ
- 飲食店で使える食事チケット
- カフェテリアプランのポイント制
- 福利厚生サービス内の飲食充実や割引特典
最近では野菜が買える自販機や、提携している飲食店で使える食事チケット、カフェテリアプランなどバリエーションが増えています。
――カフェテリアプランというのは?
企業が従業員に一定の補助金(ポイント)を支給し、従業員はそのポイントの範囲内で福利厚生メニューを選択・利用できる運用形態です。従業員が一律の福利厚生を享受するのではなく、自分に必要なメニューを自発的に選択するスタイルです。
弁当や置き食の費用に対してポイントを使う、飲食店での費用を後から申請するなど、柔軟な運用を行っている企業もあります。
――様々な食事補助のやり方がある中、企業側はどういう観点で選べばいいのでしょうか?
「従業員の健康をサポートしたい」「満足度を上げたい」「採用面でPRしたい」など、目的によって適した制度は変わるでしょう。
先ほども申し上げたように、公平であることを前提に考えなければなりません。「Aさんは恩恵を受けられるけど、Bさんは受けられない」ということがないよう、食事補助の制度を検討してください。最近では在宅勤務が増えているので、働き方に沿っているかどうかも重要なポイントです。
非課税の条件は? 福利厚生費用として計上するための注意点
――福利厚生費用として食事補助の代金を計上するための条件とは?
次の2つの条件を満たしていれば、食事補助を福利厚生費として計上でき、非課税となります。
- 食事代金の半分以上を従業員が負担する
- 企業側が補助できる1人あたりの上限金額は、1カ月3,500円まで
社員食堂はもちろん、弁当の配送や食事チケットのサービスも、この条件に合わせて運用しているケースが多いですね。
――もし要件を満たさない場合は?
上限金額を超えた分は課税対象となります。また、食事手当を現金で支給する場合はすべて課税されます。なぜなら「食事に限定する」「管理が証明できる」という2点も非課税のルールに含まれているからです。現金で支給してしまうと、食事に使っているかどうか把握できないため、課税対象となるのです。
ただ、残業や休日・深夜勤務では若干ルールが緩和されています。
――通常の勤務時間とどう違うのでしょうか?
残業や休日出勤の場合は、現物支給に限り全額を福利厚生費として計上できます。つまり社員食堂や弁当であれば、従業員の負担はゼロとなります。また深夜勤務では、食事の現物支給が難しいケースも多いでしょう。その場合、1食あたり300円以下の現金支給であれば福利厚生費として計上できます。
食事補助の条件は国税庁のホームページに詳しく記載されていますので、導入する前に参照してください。もし判断が難しい場合は、税理士や所管の税務署に相談し確認したうえで運用することをお勧めします。
――ほかに、計上面で注意しなければならない点はありますか?
チケット制の食事補助では、電子マネーでのサービスを提供している会社があります。ただし、電子マネーであっても「代金の半分以上を従業員が負担」「1人あたり月3,500円まで」といった条件は同じなので注意が必要です。
コロナ禍による変化も 導入時に検討すべき観点
――食事補助を導入する際に留意すべき点を教えてください。
まず、導入する目的は何かを明確にしなければなりません。従業員同士のコミュニケーションを深めたいのか、健康支援なのか、満足度を上げたいのか、採用・リクルーティング効果を高めたいのか。目的を決めた上で、どういう方法が適しているか考える必要があります。
健康支援が目的であれば栄養管理がしやすい社員食堂や現物支給、満足度を上げたいのであればメニューの自由度が高い食事チケットや食事手当がよいでしょう。あらかじめ従業員の要望を聞いておくことも、方向性を決めるうえで重要です。
――コロナ禍以降、リモートワークの普及によって変化した部分もあるのでは?
社員食堂の使用頻度が減ったことで、デリバリー系の補助やカフェテリアプランへ切り替える企業は増えています。ただ、すぐに社員食堂を廃止することはできず、弁当支給やキャッシュバックなどで補完するケースが多いですね。
あとは、コロナ禍による影響で、コミュニケーションの一環として「ちょい飲みセット」を従業員の自宅へ配送し、オンライン飲み会をするといった新しい支援形態も登場しています。
――最後に、食事補助を検討している企業の担当者に向けてアドバイスをお願いします。
導入すべき食事補助の形式は、目的次第で変わります。まずは目的を明確にしてください。次に重要なのは公平・平等の観点です。食事補助の運用は、どうしても利便性や拠点によって格差が出てしまいます。なるべく多くの従業員が納得できる制度を選びましょう。
最近では、従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に実践する「健康経営」に取り組む企業が増えてきました。また、従業員の中には「細かく栄養管理しているので、自分で弁当を作って持っていきたい」と望む人もいるでしょう。
日々働き方が変わり、従業員のニーズも多様化しています。福利厚生代行サービスのように、食事サービスの割引を含めた幅広い福利厚生に対応することも選択肢の1つです。食事補助だけにこだわるのではなく福利厚生全体を鑑み、これからの時代やニーズに合った運用かどうか意識しながら検討されると良いでしょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
参考:
国税庁「No.2594 食事を支給したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
<取材先>
株式会社リロクラブ
コンサルティングセールス第1ユニット ユニットマネージャー 柏木二郎さん
2015年に株式会社リロクラブ入社。福利厚生管理士・健康経営アドバイザーの資格を有し「福利厚生倶楽部」の営業マネージャーとして、企業が抱える課題に真摯に向き合い、日々、解決に尽力している。従業員エンゲージメントの向上とコスト削減を両立するプランニングに定評があり、特にカフェテリアプランのコンサルティングを得意とし大手企業からの信頼も厚い。「Relo総務人事タイムズ」のアドバイジングにも参画し、福利厚生サービスに関する情報発信にも積極的に取り組んでいる。
TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト
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