面接にやって来る候補者は、自社に何を求めて応募してきたのか? その真意を探ることは、面接において重要なことです。そこで大手企業の採用・人事責任者を経験してきた株式会社人材研究所・代表の曽和利光さんに、近年の候補者が会社に求めるものの傾向や、上辺だけでない本音を聞き出すテクニックをお聞きしました。
候補者は会社に何を求めているのか?
面接で相対する候補者が、自社に何を求めているのかは、企業にとって大切な情報です。相手が求めるものと自社の実態に乖離があり、それに気づかないまま入社に至った場合、現実とのギャップから早期の離職につながるからです。
就職市場では、様々なメディアやシンクタンクが、就活する人が何を求めているのかというトレンド調査を行っています。近年は概ね、安定性とやりがい、そして給料などの待遇が上位を占めている印象を受けます。
なお「安定性」というと、昭和や平成の時代には経営面での安定を指していましたが、最近は会社の経営状況だけでなく、自分自身が継続して安定的に成長できる環境を指していることが多いようです。つまり、その会社で働くことでスキルアップでき、何らかの理由で万が一離職を余儀なくされたとしても、活躍の場が広がるキャリア形成が求められているわけです。
面接で上辺だけではない答えを引き出すテクニック
しかし、面接で候補者が求めているものを的確に聞き出すのは、意外と簡単なことではありません。かしこまった雰囲気では、どうしても耳障りのいい問答に終始してしまいがちです。いかに本音に迫り、その人物の本当の姿をあぶり出せるかが面接官の腕の見せ所といえます。
そこで、相手の本音を上手に聞き出すためには、当人の思想や考え方を聞くのではなく、「過去にやってきたこと」に絞ってフォーカスするべきでしょう。前職(あるいは現在の職場)でどのような行動を取り、どのような成果をあげてきたのかをデータとして聞き出すのです。
また、希望する職種や目標などの個人的な考えについて聞く際には、「きっかけ」「意見」「行動化」という3つのポイントに分けて掘り下げるのが有効です。
たとえば、「海外市場を対象にグローバルな仕事がしたい」と言う候補者に対しては、なぜ海外志向に至ったのかその「きっかけ」をまず聞き出し、次に海外市場で日本企業がどう戦っていくかという「意見」をヒアリングします。さらに、海外市場に向けて仕事をするために、どのような努力をしているのか、「行動化」したことを聞きます。
もしも相手が上辺だけの言葉で向上心をアピールしようとしていたなら、いずれの質問でも曖昧模糊とした回答しか得られないでしょう。逆に、真剣に自分の思いを伝えようとする候補者は、この3つの切り口でその熱意を明らかにすることができるはずです。
ミスマッチを防ぐために押さえておきたいポイント
就職活動では、企業側はあくまで自社にマッチする人材を採用することが目的であり、候補者側は望む職場に就くことが目的です。その意味で、いくら面接でのやり取りが盛り上がったとしても、企業と候補者が互いの本質を理解していなければ、どちらも望む成果は得られません。
入社後のミスマッチを防ぐために面接官が気をつけなければならないのは、自社について抽象的にではなく、できる限り具体的に伝えることです。
たとえば、自己成長を求める候補者に対しては、自社がどのようなプロジェクトを進めていて、そこで社員がどのように活躍しているのかを、事例を挙げて説明するべきでしょう。また、待遇面にこだわる候補者に対しては、実際の給与はもちろん、社員の残業状況や有給取得率などを提示するのがベストです。
こうしてミスマッチが起こる部分を一つずつ解消していくことが、真に自社に合った人材の採用に繋がるのです。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん 京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト
