「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」は採用面接の際に必ず準備しておくべき質問として、多くの就職活動をする学生に知られています。企業としても学生の持つスキルや特性を知るために、頻繁に質問していたのではないでしょうか。
そんな定番の質問であった「ガクチカ」に、コロナ禍で大きな変化が起こっているといいます。新卒者や、社会人経験の少ない若い世代を採用する際に企業が重視すべきこと、またそれを確認するためには面接でどんな質問をすればよいのでしょうか。企業と学生のマッチング支援に携わる、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツの酒井利昌さんに聞きました。
Indeedに求人を公開しませんか?
求人を作成する取り組みの「成果」よりも「過程」の確認を
――そもそも「ガクチカ」とは何でしょうか? なぜ、採用面接において「ガクチカ」が盛んに採用されるようになったのでしょうか。
「ガクチカ」とは「学生時代に力をいれたことは何ですか?」という質問を略したものです。就職活動をする大学生や、企業の人事担当者にはよく知られている言葉です。
中途採用の場合であれば、面接時に過去に勤めた会社でどんな仕事をしたか、何に注力してどんな成果を出したかを話してもらえれば、その人がどんなスキルを持っていて、自社でも生かしてもらえるか否かを判断することができます。
しかし、新卒採用の場合、企業で勤務した経験がほとんどないか、インターンシップの経験などのごく短期間であることが多いものです。ですから、その人の持つ能力や特性を確認するための質問として「学生時代に力を入れてきたこと」を質問するようになったのだと考えられます。
――組織の中で働く上で、その学生がどんな力を発揮できるかを確かめるための質問なのですね。
そうですね。「ガクチカ」を聞くと、その方が何らかの成果を求めて取り組んできた行動を語ってくれます。語られる内容の中から、リーダーシップであったり、計画を立てて実行する力であったり、あるいは対立する意見を調整する能力であったりと、その方の持つスキルや得意なことを推し量ることができるのは「ガクチカ」を聞く大きなメリットになります。
一方では、学生時代に取り組んだことの成果ばかりを強調して、その方が何をしたかが曖昧になってしまうケースもあります。たとえば「部活で全国大会に出場した」とか「優勝した」と言われると、すごい経歴だと感心してしまいますよね。しかし、本当に確かめたいのは「優勝した」という事実以上に、その方がどんな行動をしてチームの優勝に貢献したか、ということではないでしょうか。企業は「ガクチカ」で語られる輝かしい成果のみにとらわれず、その成果に至るまでに本人がどんなねらいで、どんな行動を起こしたかをきちんと聞くことが大切です。
コロナ禍で「ガクチカ」が語れない学生も
――「ガクチカ」の定番は、サークルやボランティア活動、アルバイトの経験だと考えられていました。しかし、コロナ禍で今の大学生はこうした活動が大きく制限されています。「ガクチカ」の他に、どんな質問をすると学生の適性や能力を確認することができるでしょうか。
新型コロナウイルス感染対策のため、日本で初めて緊急事態宣言が出されたのが2020年です。現在は2022年ですから、これから就職活動を始める大学生は、大学生活の多くをコロナ禍による行動制限を受けながら過ごしてきた方々です。入学式もできず、授業もリモートが中心という学生が少なくありません。当然、課外活動も大きな制限を受けてきたでしょう。
こうした学生たちには、「ガクチカ」といっても必ずしも大学4年間の経験にこだわらなくてもいいのではないかと私は考えます。もう少し長期的な視点を持ち、中高生時代の経験まで含めて聞いてもいいと思います。当時、チームの中でどんな働きをしたか、困難にぶつかったときどんな行動を起こしたか、それらの行動について今の自分はどう解釈しているか、を質問することが重要です。
「ガクチカ」はあくまでその方を理解するための「きっかけ」の質問です。ある成果に至るまでに、その方が何をして、何を学び、どんな努力を重ねてきたのかを深掘りして問うことで、初めてその方が採用後に活躍してもらえるだけの能力や意欲があるかを判断できるのではないでしょうか。
学業への取り組み方を質問する
――「力を入れたこと」「どんな成果をあげたか」だけを聞くのではなく、「ガクチカ」を手がかりに、目標達成までのプロセスを深掘りして聞いていくことが大切なのですね。
そうですね。また、そもそも近年では学生が「学業」をどう頑張ってきたかを重要視する企業も増えています。
単に大学の成績の良い学生を採用する、ということではありません。たとえば、成績表を見ながら「なぜこの科目を履修したのですか?」と面接で質問します。この質問の意図は「自分の課題を認識して、自ら学習すべきことを考えて取り組めるか」ということです。どんな思いで講義に臨んでいたかを聞くことで、学生の課題の捉え方や行動の特性を確認することができます。
――課外活動の経験を聞かなくても、企業で活躍できるスキルを持っているかを確認することはできるのですね。
また、これからはビジネスの現場でも「学習習慣のある人」、つまり常に現状の課題を認識して、それに併せた学習方法を自ら設計して、実行できる人が求められています。この点からも、学生が学業に取り組んできた姿勢について質問することには大きな意義があると考えます。
ビジネスに「正解」があった今までの時代は、積極的に学習しなくても仕事をしながら実務を覚え、上司に言われた通りに働いていれば、大きな失敗をすることはほぼありませんでした。
しかし、ビジネス環境はめまぐるしく変わっています。過去の成功体験や、当たり前とされていた常識が通じなくなることの方が多い時代です。これまでには誰も経験したことのない状況を前にして、能動的に創意工夫や新しい挑戦ができる人がビジネスの現場に必要です。
たとえば、ビジネスの現場で求められるスキルは「マネジメント」「リーダーシップ」「コミュニケーション」「マーケティング」などです。これらは企業で働いていれば自然と身につくというよりは、積極的に本を読んだりセミナーを受講するなどして、最新の情報を学習し、習得していかなければなりません。誰かに言われなくても、自分から積極的に学習する習慣のある人は、企業でも成長するポテンシャルがあると考えられるのではないでしょうか。
<取材先>
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ コンサルタント 酒井利昌さん
学習塾業界、人材サービス業界を経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツへ入社。年間150日以上の研修、セミナー、営業・採用コンサルティング支援に従事。新入社員や若手社員向けの研修なども実績多数。
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト
Indeedに求人を公開しませんか?
求人を作成する