振り返りのフレームワーク「YWT」とは

By Indeed

YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)は、日本能率協会コンサルティング(JMAC)が開発した振り返り・内省のフレームワークです。名前の通りシンプルでわかりやすい日本発の手法ですが、ほかの手法と比べるとどのような違いがあるのでしょうか。

YWTのフレームワークを10年以上にわたり実践しているソニックガーデン代表取締役の倉貫義人さんに、YWTの特徴について伺いました。

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YWTとは?

YWTは日本で開発された振り返りのためのフレームワークです。「やったこと」「わかったこと」「次にやること」の日本語の頭文字を組み合わせたこの手法は、シンプルで誰でもすぐに実践できるのが特長です。

自分がやったことを省みて、次の経験に活かしていく。こうした「振り返り」はビジネスの現場で成長していく上では欠かせないプロセスです。具体的には、次のようなプロセスで思考・実践していきます。

Y:やったこと
まずは自分がやったこと=取り組んだ事柄を、思いつくままに書き出しましょう。このとき、感想や反省は不要です。主観は交えずに、自分がやったことの事実のみをアウトプットしてください。頭の中で思い描くだけでは漏れが出てきてしまうので、紙に書き出すことをおすすめします。

W:わかったこと
Y(やったこと)の内容を振り返りながら、その経験を通じて自分はどんな発見や学びがあったか、どのような感情を抱いたかを考え、記録しましょう。Y(やったこと)を骨組みにして、W(わかったこと)で肉付けしていくイメージです。

ただ知っただけの表層的な情報とは違って、「自分はこの手の仕事は向いていないと思っていたが、やってみたら案外楽しかった」といった経験に基づく発見は学びを深めてくれます。

T:次にやること
Y(やってみたこと)の結果としてW(わかったこと)が浮かび上がってきたら、最後は「次にやること」もおのずと見えてきます。「あそこはもう少しああすればよかった」などの反省や改善点を「次にやること」として記録しましょう。

やったこと、わかったこと、次にやることを振り返ることで、経験が次に活かせるようになります。実体験に基づく気付きと学びの両方を得られることが、YWTの大きなメリットと言えるでしょう。

YWTとKPTは何が違うのか

YWTと近い振り返りのフレームワークとして、KPT(ケプト)があります。

YWTとKPTの違いは、YWTが個人の学びの可視化に向いているのに対して、KPTはチームの学びを抽出することに適している点です。

Keep, Problem, Tryの頭文字から成るKPTは、プロジェクト全体を振り返って「うまくいったこと」「継続すること」(Keep)と、「うまくいかなかったこと」「今後はやめたほうがいいこと」(Problem)を書き出し、最後に両方の意見を踏まえて今後着手すべき対応策(Try)をまとめる方法です。

YWTが経験を通じて得られた個人の中の発見にフォーカスする振り返り(=リフレクション:反射・内省などの意)であるのに対して、KPTは一緒に活動したメンバー同士やチームで取り組み、改善に目を向ける振り返り(=レトロスペクティブ:回顧)になります。

どちらも同じく「振り返り」の意味を持ちますが、リフレクションが人間性の成長を促すのに対して、レトロスペクティブは生産性の向上に重きが置かれる、と捉えてよいでしょう。

YWTのメリットとは

YWTの強みは、先に述べたように「個人の成長にフォーカスした振り返り」である点です。

近年の仕事の特徴として、再現性が低い仕事が主流になっている点が挙げられます。

新聞配達のように、同じ時間帯に、同じ家に、同じ新聞を届けるようなルーチンワーク、つまり再現性の高い仕事はどんどん減っています。1970年代の製造業のように、大量に同じものを作る形から、多様化するニーズやサービスに対応する時代へと変化しているからです。同じものを作る作業の多くは、すでに機械やコンピュータの仕事になりつつあります。

結果、あらゆる仕事において創造性、クリエイティビティが求められるようになってきました。

だからこそ、個々人のスキルや成長が重要になってくるのです。一人ひとりの従業員が自分の体験を振り返り、そこから抽象化して学びを得ることは、間違いなく従業員の成長につながります。個人の中に学びが蓄積されていけば、違う現場、違うプロジェクトのような再現性のない仕事においても柔軟に対応できるようになるからです。

限定的なスキルを磨くよりも、自分の中で見出した抽象的な学びのほうが応用できる時代になった、ということもできるでしょう。

YWTを実践するときの注意点

シンプルでわかりやすいYWTですが、実践するときには次の3つの点に注意しましょう。

◆プロジェクトは「最中」にこそ振り返る

「振り返り」と聞くと、プロジェクトがすべて終わった後で総括する印象がありますが、YWTの手法を活かすためには1週間に1度はチェックする、というように定期的に途中で振り返りの時間を挟んでください。

「やったこと、わかったこと、次にやること」を定期的にチェックすることで、プロジェクトの進行中で適切な方向修正ができるようになります。こまめに成果と改善点を確認することで、後半戦も効率よく乗り切るようになるでしょう。

車を運転する人は、ハンドルを切るときの感覚を思い出してください。前方を見ながら少しずつハンドルを切らないと、車は思うような方向に進めず衝突してしまいます。

◆YWTを進行スケジュールに組み込む

目先のタスクを片付けることに気を取られると、「振り返り」の優先順位はどうしても下がります。「このプロジェクトが全部終わったら振り返ろう」と先送りにした挙げ句、いざ終わると気が抜けてしまったり、次のプロジェクトに意識が向いたりして、振り返りがなおざりになることも珍しくありません。

そうなることを防ぐために、あらかじめ会社のスケジュール表にチーム全員が各自で「振り返り」の時間を予定として組み込んでおくことをおすすめします。

◆最初のうちは伴走者がマスト

YWTはシンプルな手法ですが、最初から誰でも使いこなせるわけではありません。特に、若い世代が自分一人でアウトプットをすると、どうしても見方に偏りや漏れが生じます。自分の頭で考えることが大前提ですが、最初のうちは上司やマネージャーが内省のプロセスに伴走して、「こういう見方もできるよね」「よい視点だね」と改善ポイントをアドバイスするとよいでしょう。

このとき注意すべきは、価値観を押しつけないことです。「それは間違っている」と上からジャッジするのではなく、見落としている視点に気づきを促すようなアドバイス、当人が自信を持てるような肯定的な助言を心がけてください。

伴走期間は人や職場によって異なりますが、最低でも3カ月は続けましょう。私たちの会社では4月入社の新入社員に毎年YWTの手法を教えていきますが、3~4カ月もすればだいぶ勘所が掴めるようになります。

最初のうちは上司側にコストがかかりますが、当人がコツさえ掴めるようになれば自律的に思考・行動できる頼もしいチームメンバーが増えていくことにつながるでしょう。

YWTは木こりにとっての斧と同じ

木こりと斧を例に考えてみましょう。「忙しいから」「先にやることがあるから」といって「振り返り」から目を背けて走り続けている状態は、切れ味の悪い斧でなんとか木を切ろうと苦労している木こりと同じです。

ビジネスパーソンにとっての振り返りの時間は、木こりにとっての斧を研ぐ時間と同じです。斧を研ぐことが日常の習慣になれば、木を切るときの作業はもっとラクに効率よくなるでしょう。

自分の経験から得た気づきや学びは一生モノの財産です。YWTがビジネスの習慣として組み込まれるようになれば、経験を成果に変えていけるはずです。



<取材先>
株式会社ソニックガーデン代表取締役
倉貫義人さん

大手SIerにて経験を積んだ後、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい働き方の取り組みを行っている。近著に『テレビ会議で顔を出せ! リモートワークの新常識45』(監修)など。

TEXT:阿部花恵
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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