急速に変化する時代の中で、従業員は常に最新のスキルの習得や維持を望み、またビジネスにおいてもそれらは必要とされています。今や、スキルアップやリスキリング(再教育)の機会は、単に会社から与えてもらえる特典ではなく、働く上で不可欠なものとなりました。企業にとってそうした教育プログラムは、従業員が実力発揮を支援し、組織の競争力を維持する重要な戦略のひとつだと言えるでしょう。
SHRM(米国人材マネジメント協会)と米国商工会議所財団による調査では、60%を超える企業が、従業員の研修は費用対効果が高い投資であると回答しています。テクノロジー研修、リーダーシップ育成、学習プログラムなど、何らかの方法で従業員が学ぶことは、企業側にとってもメリットとなるのです。それでは、従業員と企業が時代に取り残されないように学びを進めるためには、何をすべきなのでしょうか?
今回は、6人の専門家に、継続的な学習が従業員のためになり、企業にとっても欠かせない理由について聞きました。
従業員の学びへの投資は必ず返ってくる
「Long Life Learning: Preparing for Jobs that Don’t Even Exist Yet」の著者であるMichelle Weiseさんは、教育を受けてスキルアップを続ける従業員は、将来にわたり雇用主にとって貴重な人材となり、未来の働き方に対してももうまく適応する可能性が高いと言います。「今後、継続的なスキル開発は、誰にとっても当たり前になるでしょう」とWeiseさんは語ります。
従業員の継続的な教育に注力している組織は、生産性やエンゲージメント、定着率においてもより良い結果につながる傾向があります。米国のSHRMの調査によると、企業の58%が「スキル研修を実施することで定着率を向上できる」と回答しています。また、従業員の学びに力を入れている組織は、生産性が52%、収益性が17%高いという調査結果もあります。
オンライン学習サービスを提供するSpringboardの共同設立者兼CEOのGautam Tambayさんは、次のように語ります。
「最近では、社内の従業員のスキルアップよりも、外部からの採用と補充採用の方がコストがかかるため、定着率を上げることは重要です。スキルアッププログラムは、定着率が向上する上に、高い費用対効果が期待できます」
企業の未来への備えになる
学校や高等教育機関で学んだことだけでは、長いキャリアを乗り越えていくことはできません。Weiseさんによると、企業が求めるスキルと、従業員が実際に持っているスキルの違いを示すスキルギャップは、米国だけでなく世界各国で広がっています。
「過去40年間にわたり、雇用主は社外からスキルを持つ人材を採用することを選び、自社の従業員の育成をおざなりにしてきました」とWeiseさんは言います。しかし、経営者が社内の人材育成に取り組めば、中長期的には競争力が向上し、大きな成果が得られるのです。
オンライン学習サービスを提供するMasterClassのVP of EnterpriseであるNitin Guptaさんは、「テクノロジーの進歩とビジネスの変革のスピードはどんどん速くなっています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、新たなテクノロジーの導入が加速しているため、そうした変化に対応できない企業の状況はさらに悪化しています」と話します。Guptaさんによると、スキルギャップは特に、対人スキルなど容易に自動化できない分野で顕著に広がっているということです。
次世代のリーダーが育つ
人材管理ソフトウェアソリューションを提供するWorkhumanで、Global Talent Development担当し、Senior Directorを務めるStuart Curtisさんは、企業が従業員の学びに投資することで起きる連鎖反応について次のように語ります。
「従業員に学習の機会を与え、変動が激しい現代にも柔軟に対応できるアジャイル思考を浸透させることで、企業のイノベーションが推進され、より多くの革新的な人材を惹きつけられるようになるでしょう」
たとえば、米国のファストフードチェーンChipotleは、教育プラットフォームを展開するGuild Educationと提携し、10大学の100を超えるプログラムで学位を取得する機会を無償で従業員に提供しています。
ChipotleのDirector of Global BenefitsであるDaniel Banksさんは、「従業員の成長への投資は、社内外でのブランドアンバサダーを育てることにつながるだけでなく、将来の成長に備え、イノベーションを推進するリーダーの育成にも役立っています」と話します。
企業の公平性、ダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギングが促進される
Guild EducationでChief People Officerを務めるLorna Hagenさんは、マイノリティとして長く不平等な扱いを受けてきたコミュニティに属する人材を惹きつけ、定着させ、昇進させるために、継続教育は特に重要だと考えています。そのため、Guild Educationは企業と協力して、従業員に教育補助制度を提供しています。
「私たちが支援する学習者の半数は白人以外で、76%は親が大学に通っていないいわゆる第一世代の大学生です」とHagenさんは言います。たとえば、米国の有名小売業で働く黒人従業員で、Guild Educationのプログラムに最近参加した人は、参加しなかった人に比べ、昇進する確率が88%も高いことが分かりました。
Hagenさんは、「これまで取り残されてきた人々にキャリアアップの機会と、キャリアの幅を提供し、現場で働く人々の資格やスキルの格差を縮めることは、マイノリティの生活向上の機会にもつながります。そうした意味で、従業員教育はとても意義のあることでしょう」と話します。
このように、社内に学びの機会を大切にする文化を育むことで、すべての従業員がより深く仕事に関わっていると感じられ、自分の存在が尊重され、正当に評価されているという感覚が得られるようになります。
そうなれば、従業員にとって、より意欲が高まる職場になるでしょう。
この記事は米国版 Indeed LEADから翻訳・編集しました。
翻訳・編集:Indeed Japan 編集部