An elder person talking in a room

この記事は、英語で書かれた記事を日本語に翻訳したものです。オリジナル版のリンクやデータについては、翻訳上の編集などを行っておりません。

米国の労働人口で唯一、2020年から2030年にかけて人数が増えると予測されている年齢層は、75歳以上の人たちです。

この米国労働統計局のデータをAARPの記事で見たとき、私は衝撃を受けましたが、当初の驚きが落ち着いた後には誇りを感じました。私自身は今年初めに65歳になり、本サイト、「Lead with Indeed」の編集長としてフルタイムの仕事を心から楽しんでいます。周囲からこれまでに退職について聞かれたこともありましたが、その予定はまったくありません。  

しかし、この統計については数多くの疑問も生じました。従業員の年齢構成比で最も増えているのが、なぜ75歳以上なのでしょうか。これは企業にとってどのような意味があり、そして年齢の高い求職者を惹きつけ、サポートし、定着させるために何ができるのでしょうか。 

こうした疑問に答えるため、私は以下の方々にビデオチャットでインタビューを行いました。

  • 米国の高齢者団体AARPでSenior Advisor for Employer Engagementを務めるHeather Tinsley-Fix氏 
  • Indeed のSenior Client Success Specialistで、Indeed の従業員向けリソースグループ(Employee Resource Group、ERG)である「All Generations Empowered(様々な年齢層の従業員を支援するコミュニティ、AGE)」の米国責任者を務めるVirginia Campoy 
  • ダブリンを拠点とし、Indeed のFinance部門のStrategy and Operations担当Vice Presidentであり、上記AGEのExecutive Sponsorを務めるDaniel Corcoran  

今回のインタビューの要点をまとめ、編集したものを以下にご紹介します。実年齢の公表のほか、AI(人工知能)が年齢の高い従業員に与える影響や、60~70代以上の従業員を惹きつけ、特有のニーズをサポートするための戦略について話し合いました。

75歳以上の従業員についての統計は意外に思いますか?

Tinsley-Fix氏:そうでもないですね。このトレンドは、過去5~10年にわたって拡大してきたものです。人口の高齢化が進んでいるため、従業員も高齢化しています。アメリカ人の平均年齢は現在、38.8歳ですが、2060年までに約43歳になると予想されています。さらに2034年までには、米国史上で初めて65歳以上の成人の人口が18歳以下の子どもの人口より多くなるでしょう。

このトレンドにはいくつかの理由があります。人々は昔より健康で長生きしています。70代以降も働き続ける場合、もちろん収入が必要な場合もありますが、多くの人がまだ貢献できることがあると感じるからこそ働いています。そうした人たちは、仕事を持つ生き方や社会とのつながりを好みます。さらに、子どもの出生率も減少しています。 

Corcoran:このトレンドが米国だけに限られたものとは思いません。日本やドイツなど、国際経済のメディアでも、全体的な人口動態の変化による高齢化に関する報道を目にします。異なる世代の人材が労働人口に加わる理由は数多くあり、常にお金が理由というわけではないと思います。年齢の高い人たちの中には、必要に駆られてではなく、自分がなじんだ生活水準を維持したいという理由で仕事を続けている人もいます。

AARPでSenior Advisor for Employer Engagementを務めるHeather Tinsley-Fix氏

AARPでSenior Advisor for Employer Engagementを務めるHeather Tinsley-Fix氏 

先日、The Wall Street Jounal紙に、企業が積極的に年齢の高い求職者を対象に、採用活動を行っているという記事が掲載されました。その理由は、年齢の若い同僚と比較して、豊富な経験があり、勤勉で、信頼性も高いとみなされるためです。皆さんはどうお考えですか? 

Tinsley-Fix氏:あらゆる年齢層の従業員が、組織に何かをもたらすことができます。複数の世代が混在することは、イノベーションを引き起こし、企業に真の競争優位性を与える場合があります。また、いまだに厳しい労働市場では、すべての求職者が必要とされています。それぞれの世代グループの間にはもちろん違いがありますが、そうした違いは人が考えるほど大きくありません。

Campoy:信頼性があることは、どの年齢でも評価される強みです。採用(TA)チームがそのことを理解し、年齢に基づく固定観念や差別が、年齢の高い求職者だけでなく、あらゆる求職者に及ぼす影響を把握することが重要です。以前、年齢の若い従業員が何人か私のところに来て、自分たちは若すぎることが理由で昇進を先送りにされたと言いました。その役職に必要な経験があったにもかかわらずです。

Concoran:Virginia(Campoy)の意見について、企業は経験を重視する姿勢を保つよう意識すべきだと思います。ときには、職務経験よりも、その人材が役職にもたらすスキルが最も重要になることがあります。経験は時間とともに身に付くものだからです。年齢を問わず、一定の職種で必要とされるスキルを持つことは可能です。

(左)Indeed のERG「All Generations Empowered(AGE) 」の米国責任者を務める、Virginia Campoy
(右)AGEのExecutive Sponsorを務めるDaniel Corcoran 

(左)Indeed のERG「All Generations Empowered(AGE) 」の米国責任者を務める、Virginia Campoy
(右)AGEのExecutive Sponsorを務めるDaniel Corcoran  

Virginia、50歳以上の従業員として、Indeed で働くのはどのようなものか教えてください。実年齢をカミングアウトする経験はありましたか? 

Campoy:Indeed に入社する前、年齢が原因で、誰も私をリクルーターとして採用してくれないという人生の岐路に立たされました。しかし、私はまだリタイアする準備もできていませんでした。Indeed のClient Specialistの求人掲載を見たとき、自分にはテクノロジー業界の背景がないという事実について考えましたが、とにかく応募することに決めました。面接でマネジャーは、私の緊張をほぐしてくれました。彼は履歴書を見るのではなく、私の人事での実務経験について知るための会話を続けたのです。 

採用されてから私は、自分が部門で最も年長であることを知っていました。それが苦しくて、髪をずっと染めていたいと思いました。周囲の環境や自分がどう見られているか、どのような服装をするかにとても敏感になっていました。幸いにも、非常に人間味のあるマネジャーが私らしくいられる環境作りをしてくれたため、私は自分を偽る必要がなくなりました。さらに、コロナ禍は間違いなく、そうしたことすべてから私を解放してくれました。 

Martin:それには私も共感できます。私が Indeed に入社したのは2020年3月で、新型コロナウイルスの感染拡大によるオフィス閉鎖と強制的な在宅勤務の直前でした。入社後の数日間を除き、対面で同僚とやり取りを行っていなかったため、コロナ禍と、ビデオ会議で私が表示される小さくて四角いZoom画面のせいで、私は実年齢を隠すようになりました。テクノロジー業界では年齢差別がよく知られているので、何人もの友人から、同僚に年齢を打ち明けないようアドバイスを受けました。

3年後、65歳に近づいたとき、私は「どうにでもなれ」と思って決心し、マネジャーに私が何歳になるかを話しました。彼女は熱心に、チームにも知らせるように言いました。私は話してよかったと思います。職場でありのままの自分でいられることは、自信につながり、私が恐れていたようなキャリアの妨げにはなりませんでした。 

Director of Employer Content Marketingを務めるJim Martin

Caption: Director of Employer Content Marketingを務めるJim Martin

人口知能は、60代70代以上の従業員にどのような影響を与えると思いますか? 

Tinsley-Fix氏:65歳~75歳でまだ仕事をしている人は、高度な専門知識やスキルを身に付けている可能性が高いと思います。その一例として、NASAでは従業員の36%が55歳以上だと聞いたことがあります。何年も宇宙関連の仕事に就いて、膨大な量の高度な専門知識を身に付けた人たちが働いているのです。そういう意味では、彼らが自動化によって置き換えられる心配はおそらく少ないでしょう。しかし、AIの学習と開発のスピードがいかに速いかを考えると、誰もが同じ状況にあると思います。 

Corcoran:採用活動については、AIにできることもできないことも数多くあります。たとえば、AIは「Human Resources」(人的資源、人事)から「Human」(人)をはずすことはできません。また、機会に焦点を当てることも重要です。AIが原因となり、今日存在する多くの仕事が将来には存在しない可能性があります。しかし、AIのおかげで、今日存在しなくても、将来には数多く存在する仕事もあるでしょう。 

Tinsley-Fix氏:今後、組織も従業員も年齢を問わず、常に適応することに慣れる必要があります。状況が変わっても、仕事は遂行されなければなりません。そこで問題となるのは、企業として学習能力や、レジリエンス(心の回復力)、適応力を持つ人材をどのように採用するのか、ということです。

企業は年齢の高い人材をどのように惹きつけ、サポートし、定着させれば良いと思いますか? 

Corcoran:すべての年代の求職者に対して求人はありますが、そこには困難な課題もあり、企業はそれぞれに異なる世代が直面する可能性のある困難について、認識を高めることが大切です。

たとえば、Indeed のAll Generations Empowered(AGE)のEMEA支部では、「menopause in the workplace」(職場での更年期)というイベントを開催し、地元のパートナーと協力して認知度を高めるツールキットを作成しました。こうしたイベントの成功を、全社的に広めたいと思います。 

Tinsley-Fix氏:企業がまず最初にできることは、Indeed が実行したように、AARP Employer Pledge Programに参加することです。私たちは年齢のインクルージョンチェックリストなど、組織に役立つリソースを提供しています。 

企業は、自社の年齢の高い従業員が持つ価値を認め、スキルを高く評価し、トレーニングやスキルアップに関して必要とするサポートを認識することが大切です。年齢の高い従業員は、スキルアップの際に細部まで徹底する傾向にあり、年齢の若い同僚と比べて少し時間がかかることがあります。その点を理解して受け入れ、思慮深く対応するだけでも、年齢の高い従業員をサポートできます。 

さらに、本当に重要なのは、企業のブランディングが年齢やジェンダーなど、自社が惹きつけたいと考える人材を反映していることです。勤務の柔軟性を活かして、年齢の高い従業員を定着させる方法は数多くあります。たとえば、従業員が数年かけて徐々に勤務を減らしていく、段階的な定年退職プログラムなどが挙げられます。従業員は定年退職する準備ができるまで、50%~75%程度の仕事を続けたいと希望する可能性があるためです。別の選択肢としては、年齢の高い従業員をコンサルタントとして再雇用するという方法も考えられます。 

最も優秀な従業員を維持するには、企業文化でビロンギング(自分の居場所があること)の意識と、仕事に対する目的意識を与える必要があります。給与額も重要ですが、最終的には年齢にかかわらず、インクルージョンが本当に大事だと言えるでしょう。

HERE TO HELPのエピソードはこちら

2020年の「Here to Help」のエピソードでは、Indeed のCEOであるChris Hyamsが、Indeed や他の組織があらゆる世代の従業員をどのように迎え入れているかについて、Virginia Campoyと対談しています。