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コロナ後へビジョンを示せる企業に人は集まる [第6回] 不確実な時代に「人を活かす経営」とは? FeelWorks 代表・前川孝雄が読み解く、いまどき採用キーワード

 

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第6回 コロナ後へビジョンを示せる企業に人は集まる


新型コロナ感染症のパンデミックが世界を覆い、すでに1年以上が経過しました。各企業ともにコロナショックに襲われた苦しい模索期を経て、今後の歩む道を踏み固める時期を迎えているとも言えるでしょう。コロナ禍は働く人たちに将来の不安をもたらしており、ここに対応できるかどうかが喫緊の経営課題にもなってきています。私たちは、1990年代のバブル経済の崩壊や、2000年代のリーマンショック、2010年代の東日本大震災など、これまでも大きな危機に直面し、それぞれ乗り越えてきました。コロナ後を見据え、いま企業にはどのような取り組みが求められるのか。FeelWorks 代表・前川孝雄さんが考察します。

 
 

資金繰りに奔走、助成金・協力金頼み経営の先に未来はない


長引くコロナ禍で、多くの企業が苦しい経営を余儀なくされてきました。国内の爆発的な感染拡大は回避傾向にあり、希望をもたらすワクチン接種の道筋も見え始めました。とはいえ、変異種ウイルスの拡散や、緊急事態宣言後のリバウンドの怖れなど、先行きの不透明感は拭えません。
 
このさなか、私は一部の企業経営者の姿勢に、やや気になるものを感じています。それは、国や自治体に対する各種の給付金・助成金の継続や拡大の要望。さらには社会保険料の減免要望など、諸々の財政支援を求め続ける動きです。予期せぬコロナ禍に見舞われ、突然の経営苦境に立たされた初期段階での国や自治体の支援は、スピード面や手続き面の課題はあったとはいえ、意義の大きいものでした。実際、昨年の倒産企業数はそこまで酷い状況には陥りませんでした。しかし、コロナとの戦いが1年を超えるなか、いまだ国や自治体に財政支援を求め続けることは経営のあるべき姿でしょうか。
 
公的財政支援の原資は、そもそも私たちが納めてきた税金や社会保険料のストック、または国債など国の借金です。青天井ではなく、その過払い分は後々、全て私たち自身や次世代の借金として重くのしかかってくるもの。すでに、雇用保険の積立金は5年前の4割に減少し、枯渇が懸念されています。コロナ禍以前から指摘されていましたが、国家財政じたい、年間税収500兆円に対し支出が1000兆円と、先進主要国中でも際立った赤字体質。このまま民間企業が公的支援を求め続ければ、その先には財政破綻が近づくのみかもしれません。
 
そもそも、国や自治体は、直接、経済的な付加価値を生み出す主体ではありません。民間企業が不断の創意工夫を続けることで付加価値を生み出し、その収益から税金や社会保険料を支払うことで国の財政が成り立ちます。そう考えれば、厳しいようですが、公的助成に頼り続ける企業に未来はありません。

 
 

ピンチの中にチャンスを創り出す突破口を探し出せ


コロナ禍も2年目となり、自分たちの業界や経営に与える影響も見えてきました。また、ニューノーマルでの働き方や生活のパターンも、徐々に定まってきました。現在は、自社にできる創意工夫や新たなビジネスモデルを考案し、一歩踏み出す時期ではないでしょうか。
 
コロナ禍にも負けず、ピンチの中にチャンスを創り出す突破口を探し出し、むしろ業績を伸ばした優れた経営者の事例に学ぶことも有効です。以下、私が注目する経営者の事例を挙げましょう。

 
 

◆【事例1】厳しい環境下に“勝機”を見る「分けて考える」経営


その一人は、星野リゾートの星野佳路社長です。観光業界が壊滅的な打撃を受け、大半の企業が茫然自失で目先の資金繰りとリストラに追われるなか、早々に攻めの戦略を考案し、スピード感をもって断行しました。刮目すべきは、「コロナ禍で観光は全てダメ」と考えず、市場を分解してとらえ、打ち手を見出す「分けて考える経営」です。
 
観光の不振内容を市場セグメント別に見ると、①インバウンド、②国内団体ツアー、③ビジネス客、④首都圏・関西圏など感染状況が厳しいエリアなどで、これらは当面手の打ちようがない。しかし、⑤地元でくつろぐ「マイクロツーリズム」なら鉱脈があると見たのです。また、時間軸で見ると、⑥現時点では、需要は総じて厳しい。しかし、⑦ワクチンが行き届き、人々が集団免疫を獲得する時期になれば、持ち直す希望が持てる。そこで今は、各地域の魅力を再発見でき、近隣や県内の人が大いに楽しめるサービスづくりに全力を傾け、それを将来の財産にもする。そうしたビジョンを打ち出し、全社一丸で取り組んだのです。
 
その結果、狙い通り、2020年にはマイクロ・エリアの利用者比率を大きく伸ばすとともに、前年より稼働率を伸ばす人気施設が複数出るなど、驚嘆すべき成果を上げています。

 
 

◆【事例2】「いかなる環境でも利益を出す」経営


また、幅広い生活用品を手がけるアイリスオーヤマの大山健太郎会長の経営も注目に値します。大山氏は先代経営者の父親の急逝を受けて、19歳の若さでプラスチック加工工場の経営を引き継ぎました。以来、56年間の経営で幾多の困難を乗り越えながら、ホームセンターと直接取引する問屋機能を包含した「メーカーベンダー」という業態を確立。この度のコロナ禍では、いち早くマスクの量産に取り組み、社会の需要に応えることなどで、何と過去最高益を生み出したのです。
 
大山会長の近著のタイトル「いかなる時代環境でも利益を出す仕組み」(2020年9月発行、日経BP)は、同社の経営理念の第一条に掲げた言葉とのこと。著書で大山氏は、オイルショック時の経営難の辛い経験から、二度と社員のリストラをしないために利益を出し続けることを絶対条件に据えたと述べています。そして、自社の業態や強みに固執せず、マーケットインならぬユーザーインこそが最も重要だとしています。
 
すなわち、表層的な市場動向に左右されず、常に顧客の真のニーズに寄り添い、自社の事業を変幻自在に変えていくことが、社会や顧客にとって、また社員自身にも幸せをもたらすとの強い信念を貫いているのです。「何を扱う会社か」でなく、「何が目的の会社か」が重要との主張を徹底しています。

 
 

暗闇の向こうに希望を見出せる理念やビジョンに社員はついてくる


以上の例に共通するのは、何時も顧客ニーズに徹底的に寄り添いながら自らを変化させていく姿勢と、社員を守るために絶対に会社を成長させ続けようとする、意志と戦略と行動です。民間企業経営者の本来あるべき姿を教えられ、頭が下がる思いです。
 
加えて痛感するのは、ピンチの中でこそ自社の経営理念やビジョンを明確化し、社員やステークホルダーに発信し続けることの大切さです。コロナ禍という、いつ明けるとも知れない暗夜のなかで、社員は自分たちがなすべきこと、向かうべき方向を見失えば、右往左往し士気を落とすばかりです。しかし、トンネルの向こうに掲げられた明かりのように、希望の光を経営者が見せることで、社員は自分たちの向かうべき道を信じ、まい進できるのです。
 
働く人たちの将来への不安が蔓延するなかだからこそ、コロナ後をしっかりと見据え、魅力ある経営理念やビジョンを示せる企業にこそ人は集まることを、すべての経営者が認識するべきではないでしょうか。

 
 
 


Profile
前川 孝雄
株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師
 
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。(株)リクルートを経て、2008年に人材育成の専門家集団㈱FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・バワハラ予防講座」(2021年リリース予定)等で、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。(一社)企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員等も兼職。連載や講演活動も多数。著書は『本物の「上司力」』(大和出版)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)等33冊。最新刊は『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)

 

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