企業に義務付けられているマイナンバー管理とは


社会保障・税制度の効率性、透明性を高め、利便性の高い社会を実現するためのインフラとして2016年1月にスタートしたマイナンバー制度。従業員やその家族のマイナンバー管理の責務を担う、労務・人事担当者が押さえておくべきポイントとは、一体どんなものでしょう。制度の概要と合わせて、社会保険労務士法人・名南経営の服部英治さんに伺いました。

 
 

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システムを活用するなど多くの企業が厳格に管理


――マイナンバーが導入されて6年目になります。中小企業における管理の実態を教えてください。
 
導入当初は、マイナンバーの管理が乱雑になる企業が多いのではと懸念していましたが、厳密に管理している企業が多いという印象を持っています。背景としては、ペーパーレス化が進み、紙でのやりとりが減少傾向にあったことも影響し、デジタルデータとして厳しく管理し始めたのでしょう。
 
マイナンバーの収集、保管、利用、破棄までをクラウド上で完結できるシステムサービスも登場しています。費用はかかりますが、安全性が高く手間も省けるため、外部システムをうまく活用する中小企業も多いように感じます。
 
――改めて、従業員のマイナンバーが必要になるのはどのような場面でしょうか。
 
マイナンバーは、法律で定められた社会保障、税および災害対策に関する特定の事務を行うときに必要です。具体的に、社会保障分野では、健康保険や雇用保険、年金に関する書面、税関係では、給与所得の源泉徴収票などにマイナンバーを記載することになります。
 
そもそもマイナンバーは、個人の情報を一元化させることで、国民の利便性の向上や行政機関の業務の効率化、所得や行政サービスの受給状態を把握しやすくし、困っている人に細やかな支援を行うことを目的としているものです。従って、企業にとって大きなメリットがあるわけではありませんが、大切な個人情報を預かる責務があるので、慎重な管理が求められるところです。
 
――従業員からマイナンバーを収集する際の注意点を教えてください。
 
マイナンバーの提供を求めるときには、あらかじめ個人番号が具体的にどのような業務に使われるのかを周知させておきましょう。その上で、従業員からマイナンバーを収集する際には、個人の番号確認に合わせて身元確認が必要です。個人番号カード(マイナンバーカード)を取得している場合は、それだけで身元確認もできますが、通知カードや個人番号が記載された住民票で番号確認をする場合は、運転免許証やパスポートなどの身元を確認できる書類が必要です。
 
ちなみに、従業員の被扶養者の番号も収集する必要があり、手続きによって本人確認の方法が異なりますが、年末調整の扶養控除等申告書など多くの場合は従業員が確認者となるので、会社が改めて本人確認を行う必要はありません。
 
収集方法は、小規模事業所の場合は個人番号カードや通知カードなどのコピーを紙で提出するケースもあるかと思いますが、セキュリティ面やペーパーレス化の影響で、スマートフォンなどで番号を撮影し、身元確認書類と合わせてデータで担当者に提出するケースも増えているようです。

 
 

あらゆる面から安全管理措置を講じる


――収集したマイナンバーを管理する際に注意しなければならないのはどのようなことでしょうか。
 
マイナンバーの運用や管理にあたっては、情報が漏えいすることがないよう、より厳密な安全管理措置を講じることが求められています。「情報は漏えいするもの」という認識に立った上での管理が必要になります。具体的には番号法(マイナンバー法)に基づいて、下記4つの観点から、安全管理措置を講じなければなりません。

 

  1. 人的安全管理措置・・・情報漏えいなど、事故発生に備えた組織体制を整える
  2. 組織的安全管理措置・・・事務取扱担当者に対する監督、教育を行う
  3. 物理的安全管理措置・・・パソコンや電子データの盗難防止策を講じる
  4. 技術的安全管理措置・・・外部からのアクセス防止策を講じる


私が実際に耳にしたなかには、Excelにマイナンバーを入力したものの、作業が面倒でパスワードなどを設定していない例や、書類を社内で回覧する慣習がある企業でマイナンバーが記載された書類が複数の人の目に触れてしまったという事例も。改めて上記の安全措置を確認してほしいです。
 
ただし、小規模な企業に大企業と同等の安全対策を求めることは現実的ではありません。とはいえ、漏えいすることによるリスクは甚大であることから、最大限の注意を払いながら管理をしていってもらいたいものです。

 
 

企業の信用にダメージを与える情報漏えい


――もし情報が漏えいしてしまった場合、どのような罰則があるのでしょうか。
 
万が一、情報が漏えいした場合には、個人情報保護法よりも厳しい番号法に基づいた罰則が適用されます。たとえば、マイナンバー関係の事務に従事する者が、マイナンバーを提供、または盗用した場合には「懲役3年以下、または150万円以下の罰金」もしくは併科が課せられます。また、情報漏えいが起きてしまった場合には、漏えいさせた担当者だけが処罰されることがないよう、企業に対しても罰則が適用される、両罰規定が設けられています。
 
マイナンバー情報が漏えいしてしまうと、賠償請求の発生や企業の社会的信用が失墜してしまう可能性もあります。さらには、流出してしまった従業員のマイナンバーを新たな番号に変更しなければならず、有料で通知カードの再発行をしなければなりません。このような事態にならないよう、ルールを守って安全な管理を心がけましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年10月時点のものです。
 
<取材先>
社会保険労務士法人 名南経営 社会保険労務士 服部英治さん
大手社会保険労務士事務所を経て、1999年に名南経営に入社。全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援や、人事制度の改定支援をはじめ、各種人事労務相談に応じている。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト

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