企業と労働者を救済する制度「療養補償」と「休業補償」の違いとは?


「療養補償」は労災(労働災害)によるケガや病気の治療費を補償する制度です。労働者の救済になり、企業の負担軽減にもつながる療養補償は、新型コロナウイルス感染症を含めどんなケースに適用されるのでしょうか?
 
療養補償の概要や混同しやすい制度である休業補償との違いなどについて、社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表の岡佳伸さんに伺いました。

 
 

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療養補償とは


「療養補償」とは、業務中に発生したケガや病気の治療費を、労災保険(労働者災害補償保険)によって補償する制度の一つです。
 
原則として、労働者が業務上の労災(労働災害)によって被ったケガや病気の治療費は、企業が全額負担(補償)しなければなりません(労働基準法第75条)。
 
企業に過失や故意がなくても補償義務は生じますが、企業によっては財務上、難しい場合もあります。そこで、労働者の救済がきちんとなされるために、企業は労災保険への加入が義務づけられています。
 
労災保険料は企業の全額負担ですが、万が一労災が発生した場合、労災保険が企業の代わりに療養補償をしてくれるので、治療費を直接負担することはありません。

 
 

療養補償と休業補償の違い


療養補償と混同しやすい制度の一つに休業補償があります。休業補償も労災保険で補償されている制度ですが、2つの違いは以下の通りです。

 
 

◆療養補償と休業補償の違い


1.補償事由
療養補償……労働者が業務上の労災によって、療養が必要になった場合
休業補償……労働者が業務上の労災によって、労務不能になった場合
 
2.補償内容
療養補償……労災保険が治療費の全額を給付(医療機関での診察や処置・手術、薬剤等の支給)
休業補償……労災保険が賃金の約80%(休業補償60%+休業特別支給金20%)を給付(休業に入る直前3カ月分の賃金を暦歴数で割った数字が1日の給付額)
 
休業補償は待機期間の3日間が経過した後、4日目から支給します。待機期間の3日分の賃金は企業が補償(給与支給)しなければなりません。

 
 

新型コロナウイルス感染症も補償の対象


2020年より猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症も、療養補償や休業補償の対象となります。ただし、以下の条件を満たす場合に限ります。

 
 

◆新型コロナウイルスの補償対象

 

  1. 感染経路が業務によることが明らかな場合
  2. 感染経路が不明でも、感染リスクが高い業務に従事し、それにより感染した確率が高い場合


(参考:「業務によって感染した場合、労災保険給付の対象となります」厚生労働省)

 
 

療養補償の請求手続き


療養補償の請求手続きの一般的な流れは以下の通りです。書類の提出は原則として被災した労働者本人もしくはその家族が行いますが、企業が代行することも可能です。

 
 

◆企業が療養補償の請求手続きを代行する場合の流れ

 

  1. 労働者から労災が発生した旨の報告を受けたら、速やかに状況を把握
  2. 所定の書類に必須事項を記入
  3. 労働者が受診した医療機関、もしくは労働基準監督署に書類を提出
  4. 労働基準監督署の調査の対応


その後、労災が認定されたら、労災保険より直接医療機関または被災労働者に保険金が給付されます。
 
注意が必要なのは、労働者が労災指定病院(労災保険指定医療機関)で治療を受けた場合と、労災指定病院以外で治療を受けた場合では、書類の種類と提出先が変わる点です。

 
 

◆労災指定病院で治療を受けた場合


必要書類……療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
書類の提出先……被災労働者が受診した医療機関
※提出した書類に医療機関が証明をして、医療機関が労働基準監督署に提出

 
 

◆労災指定病院以外で治療を受けた場合


必要書類……療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)
書類の提出先……労働基準監督署
※書類に受診した医療機関の証明を受けてから、労働者もしくは企業が労働基準監督署に提出

 
 

療養補償の請求をする際の注意点


労災を認定するのは企業ではなく労働基準監督署です。労働者が療養補償の給付を希望した場合、企業は適切に援助し請求の手助けをする必要があります。また、以下の点を労働者にきちんと説明しておきましょう。

 

  • 労災保険で療養補償を受ける場合、労働者は健康保険被保険者証を使えません。医療機関の窓口で労災保険にて診療することを伝えます。
  • 労災指定病院以外で治療を受けた場合、労働者がいったん治療費の全額を立て替える必要があります。様式第7号を提出し労災認定後、立て替えた費用が労働者本人に支払われます。


労災指定病院は厚生労働省の公式サイトで検索することができます。労災指定病院で治療を受けるほうが、請求手続きが簡単に済みます。万が一に備えて、あらかじめ会社の近くにある労災指定病院を探しておくなど、スムーズに療養補償給付の請求手続きが行えるように準備しておくことが大切です。
 
<参考>
労災保険指定医療機関検索

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年11月時点のものです。
 
<取材先>
社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 代表 岡佳伸さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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