企業が面接のフィードバックを行う場合とは
企業は応募者に対し、面接の結果についての詳細をフィードバックすることは、基本的にありません。
ただし、その応募者がエージェントなどを介して選考対象となった人材である場合はその限りではなく、採用の見送りが決定した後に、エージェントに対するフィードバックが行われるケースも少なくないでしょう。なぜなら、企業側は自社が求める人材像をより正確に伝える必要があり、エージェント側は人材を効率的に紹介するために企業側のニーズを詳しく把握する必要があるためです。むしろ、今後のスムーズな取り引きのために、これは大切なすり合わせと言えるでしょう。
また、応募者が面接の最後の質疑において、「本日の面接について何かアドバイスをいただけませんか」と、自らフィードバックを求め、面接官がそれに応えるケースもあるでしょう。これはあくまで面接内での対話の一環であるため、応募者からすれば向上心をアピールする狙いもあるかもしれませんが、面接官には何らかの対応が迫られることになります。
この場合、企業側がすでにその人材の採用を決めているのであれば、入社後の期待も込めた何らかのアドバイスをするのは有意義でしょう。しかし、採用するかどうか検討中である、あるいは採用を見送る可能性が高いのであれば、その理由などを説明するのは決して得策とは言えません。
ネガティブなフィードバックを避けるべき理由
応募者の立場からすれば、それがどれほど的確な理由であっても、採用に至らなかった時点でそれはネガティブな結果です。その理由をあらためて言語化されることで、プライドが傷つけられ、気分を害する人もいるでしょう。それによって自社のイメージが悪くなるだけでなく、無用なトラブルの原因となる可能性もあります。
たとえば就活サイトに批判的な口コミを書かれたり、自社の商品やサービスに対して悪い風評を促すレビューを書かれたりするなど、悪意のある行動をとられることもあるかもしれません。
また、結果として自社とは縁がなかったとしても、その人物が後に、顧客や取引相手になる可能性もゼロではありません。面接の結果にかかわらず、友好な関係を維持できるよう努めるべきでしょう。
面接後の最善の対応とは
そもそも面接によって採用の見送りが決まる場合というのは、他の応募者との相対評価による結果であったり、社風や待遇、条件などとのギャップがあったりするケースも多いでしょう。つまり、必ずしもその人材の能力や人柄に欠点があるわけではありません。もし、明らかに自社の雰囲気と合わない人材を無理に採用しても、入社後に良い成果を発揮することは少ないため、双方にとって不利益な結果と言えます。
だからこそ、厳正な選考によって採用見送りという結果が出たのであれば、後に恨みを残さぬよう、簡潔かつ事務的に伝達が行われるのがベストです。企業には応募者の就活(転職)スケジュールに配慮して、できるだけ迅速にその結果を伝え、応募書類の返却など必要な対応を確実に行うことが求められます。
今回は縁がなくても、将来的にその人材が望むポストや職場に空きが出ることも考えられ、その際には企業側からアプローチすることもあるでしょう。その意味で、採用を見送った人材と良好な関係を保っておくことは、魅力ある人材をプールしておくことにも繋がるのです。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト